SGRAメールマガジン バックナンバー

  • Invitation to SGRA Cafe #16

    *********************************************** SGRAかわらばん875号(2021年6月17日) 【1】第16回SGRAカフェへのお誘い 「安全であること:環境と感覚、ジェンダー、人種、セクシュアリティから考える」 【2】寄贈書紹介:『芸術の価値創造:京都の近代からひらける世界』 *********************************************** 【1】第16回SGRAカフェへのお誘い SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす皆さまに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回は初めて京都を拠点とするハイブリッド形式で、第16回SGRAカフェを開催します。皆さまの積極的なご参加をお待ちしています。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。 テーマ:「安全であること――環境と感覚、ジェンダー、人種、セクシュアリティから考える」 日時:2021年7月17 日(土)午後3時~4時30分 方法: 会場(定員20名)とオンライン(Zoom)開催 会場:Impact_Hub_Kyoto(京都市上京区) https://kyoto.impacthub.net/access/ 言語:日本語 参加申込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4VHnLNp6TU6FHQm01Bvnlg お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] 03-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 日本社会は「安全」だと言われているが、「安全」であるということは何を指しているのだろうか?本イベントでは、様々な立場や視点から「安全」の意味および基準を考え直し、社会的な構造・環境と、その構造が個人に及ぼす影響について対談する。コロナ時代となった現在は社会格差が広がり、弱い立場にいる人たちがより危険な状況に陥りやすくなっている。ジェンダーや人種、セクシュアリティなど、様々な視点と立場から安全および社会における差別・不平等について話し合う。できるだけ多くの人々にとってより安全な社会をつくるために、自分は何ができるのか?自分にとって安全な場所を見つけるために何をすればいいのか?身近な問題から社会的な構造まで、安全について考えてみよう。 性暴力被害者の支援をしている中島氏やBLM活動をしているジャクソン氏、シェルター運営者など、さまざまな視点から安全について話し合う。本イベントの目的は、日本にいる人々の経験を知り、「知る」ことから活動につなぐことである。「安全」という単純に思われている概念を考え直し、自分は本当に「安全」と感じているかということを、参加者に考えてもらいたい。自分のまわりを安全にするため、もっと安全な環境を見つけるためにはどうすればいいのか、という実践的な話にまでつなぎたい。 会場とオンライン方式の同時開催で、質問はトークの中で受け付ける。東京の渥美財団ホールともオンラインでつなぎ、渥美奨学生有志がディスカッションに参加する。 ◇スピーカー: 中島幸子(NPO法人レジリエンス) キナ・ジャクソン(BLM関西、Black Women in Japan) いくのがくえんスタッフ ◇司会/モデレーター: ソンヤ・デール(SGRA関西) ◇Q&Aサポート: イザベル・ファスベンダー(同志社女子大学) 下記リンクよりプログラムをご覧ください http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/06/SGRA-VCafe16Programfinal3.pdf -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で東京国立博物館アソシエイトフェローの武瀟瀟さんから共著書をご寄贈いただきましたので紹介いたします。 ◆平芳幸浩、三木順子、井戸美里編『芸術の価値創造――京都の近代からひらける世界』 はげしく社会の価値観がかわっていった近代日本。新たな時代の波にもまれ、京都ではさまざまな芸術的創造活動が展開した。その具体的な事例を考証する。 出版社:昭和堂 刊行日:2021/04/26 ISBN:9784812220269 体裁:A5・400ページ 定価:4,400円 詳細は下記リンクからご覧ください。 http://www.showado-kyoto.jp/book/b561374.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • XIE Zhihai “Recommendation of Laid-back Life”

    *********************************************** SGRAかわらばん874号(2021年6月10日) 【1】エッセイ:謝志海「ゆるい生き方のすすめ」 【2】寄贈書紹介:山室信一「モダン語の世界へ――流行語で探る近現代」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#673 ◆謝志海「ゆるい生き方のすすめ」 今回は私が留学生として日本で暮らすようになって驚いたことから話そう。初めて暮らした場所は東京で、それまでは北京にいた。中国の首都から日本の首都へ来たわけだが、東京の街のきれいさにはおどろいた。治安もとても良い。そして飲食店の丁寧かつ素早い対応がどの店も同じというのが、一番びっくりしたことかもしれない。テーブルにつけばすぐさまウェイターが水を持ってきてくれる。その水はいつも氷が入っていて冷たい(中国から来た私にとって冷たいお水に慣れるのは少し時間がかかった)。注文しようと思えば、ウェイターを呼ぶ前にテーブルへ来てくれることもある。店内とキッチンを動き回りながらテーブルのお客さんを見ていてくれているのだろう。例え500円ぐらいの食事をする時でも同様なので、私は内心「ここまでしなくてもいいよ」、と思うことがある。コップの水が冷えていなくても構わないし、多少は店員に放っておかれても気にしない。そんなことを感じるのは無愛想な店員が多い中国から来た私だけだろうか? しかし日本での生活も長くなるにつれ、こんなに平和で至れり尽くせりの国で「生きづらさ」を感じながら暮らしている日本人も多い感じがしてきた。コロナ禍の前から薄々感じていたのだが、これだけ街が整備されていて、使いやすい公共交通機関があり、飲食店に関わらず、どの店の店員もプロフェッショナル。それなのに行き交う人はこの平和を謳歌しきれておらず、何かに追われるかのように足早に無表情で移動している。この謎が解けないまま、新型コロナウイルスというパンデミックに見舞われ、とうとう街を歩き回る自由を奪われた。そして外国人観光客は日本からいなくなった。すると「マスク警察」なるものが現れ、マスクをしないで外へ出る人や、鼻まで覆わない人を市民が見つけ互いに言いつけ合う、なんてことまで話題になった。日本人自ら生きづらい社会にしてしまったのなら、なんてもったいないことだろう。 もう少し肩肘張らずに暮らせる社会であってもいいのにと私は思う。他人がマスクをしていなくても、自分がしっかりマスクをし、手洗い消毒をしていたらよいわけだし、何より他国に比べたら、かなり衛生的だ。留学仲間だったインド人の友人は、たまに行く海外の学会から帰ってきた時や、里帰りから日本に戻るたびに、日本は世界一、町中(まちじゅう)がきれいな国だと言っていたことを思い出す。日本にいる日本人が、自分のいる社会を厳しいものへ、厳しいものへと高めている一方に思えてしまう。 しかし「今の日本人の生きづらさ」に疑問を呈している日本人がいた。自身で会社を経営し、慶応大学でも教えている若新雄純先生が、日本の「生きづらさ」の要因を「正しさ」を求め過ぎるからではないかと指摘している。なるほど飲食店に座れば、さっと目の前に冷たい水が置かれることは「正しい」ことで、日本人には当たり前になり過ぎていると考えれば納得がいく。そして今でこそマスクなしで外へ出る人はいないが、マスク警察も、正しさを求め過ぎる所以(ゆえん)だろう。これでは正しさへの要求に歯止めがかからなくなり、ますます生きづらい社会になってしまう。 これ以上「正しさ」を求め過ぎない社会に変えていくのがよいだろう。例えば、中国に限らず欧米の電車は時々遅れることが当たり前だ。しかもどのくらい遅れてくるかのアナウンスすらない。乗客も待たされることが前提かのように動じてもいない。一方、日本は数分の遅れでも、プラットホームにきちんとアナウンスが入り、お詫びも頻繁に流れる。待たされている人間にとってはなんともありがたい情報だが、日本以外の国で電車に待たされてばかりの私は、なぜこんなにも遅延の謝罪に一生懸命なのだろうと思うほどだ。アナウンスの回数を減らすだけでも、鉄道会社の従業員、そして会社全体のストレスが少し緩和されるかもしれない。そして何より、乗客は電車遅延のアナウンスに数分のズレがあっても気にしないことだ。電車を待ちながら、スマートフォンでも眺めていたら、5分間なんてあっという間なのだから。 若新先生の研究分野は人と組織のコミュニケーションで、その研究の先に「許せる社会」を作りたいそうだ。具体的には、もう少し基準を緩くして消費者が間違いを許せる社会になればよいと思う、と提言している。そうか、相手を許すことによって、自分もまた社会で楽に生きられるということではないか。この考え方は日本以外のどの場所でも「有効」だが、今の日本にはとても「必要」かもしれない。 生きづらさに気づき、そこから目を背けず、この状況を変えようと思う人がいるなら日本の社会の未来は明るい可能性を秘めている。私は飲食店でぬるい水が出てきても、料理と一緒に水が運ばれてきても一向にかまわない。 <謝志海(しゃ・しかい)XIE_Zhihai> 共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA特別会員で京都大学名誉教授の山室信一先生から近刊書をご寄贈いただきましたので紹介します。 ◆山室信一『モダン語の世界へ――流行語で探る近現代』 モボ・モガが闊歩した1910~30年代の日本では、国民の識字率の向上やマスコミの隆盛、日露戦争と第一次世界大戦の勝利などを背景に、外来の言葉と文化が爆発的に流れ込んだ。博覧強記で知られる歴史学者が、当時の流行語を軸に、人々の思想や風俗、日本社会の光と影を活写する。『図書』連載のエッセイ、待望の書籍化。 出版社:岩波書店/岩波新書新赤版1875 刊行日:2021/04/20 ISBN:9784004318750 Cコード 0236 体裁:新書382頁 定価:1,144円 詳細は下記リンクからご覧ください。 https://www.iwanami.co.jp/book/b570600.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • YU Ning “I Coincidentally Started Studying Japanese”

    *********************************************** SGRAかわらばん873号(2021年6月4日) 【1】エッセイ:于寧「偶然から始まった日本語学習」 【2】国史対話メルマガ#30を配信 平山昇「第5回『国史たちの対話の可能性』円卓会議参加記」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#672 ◆于寧「偶然から始まった日本語学習」 日本に留学してから日本語を勉強し始めたきっかけについてよく聞かれた。まったく視野に入れていなかったのに日本語学科に入ったのは「運命」だとしか答えようがない。それは母の「山口百恵と三浦友和夫婦への愛」がもたらしたものなのだ。 大学出願票を記入した時には外国語を専攻する発想がなかったので、当然、日本語を候補にすることもなかった。中国の大学出願票には「希望する学部でなくても、その大学に入学する意思があるかどうか」という項目があり、「はい」とチェックを入れていた。そうしたら、第一志望校の南京大学に合格したものの、学部の希望は通らず、枠が余った日本語学科へ変更させられた。日本語を専門にすることはあまりにも予想外だったため、浪人することも考えた。その時、日本語学科への入学を強く後押ししてくれたのが母だった。「将来日本語が出来るようになったら、日本に連れて行ってもらいたい。山口百恵さんと三浦友和さんに会えるかもしれないから、通訳してもらうわ」と。 1980年代に青春時代を送った母は日本映画の大ファンだった。当時中国に輸入された日本映画は一世を風靡し、多くの中国人が日本の映画スターに魅了されていた。母もその一人で、とにかく山口百恵と三浦友和夫婦が好きで、私も子どもの頃から二人に関する話を何度も聞かされた。日本語を勉強して何をするかは全く分からなかったが、少なくとも「山口百恵と三浦友和夫婦に会いたい」という母の夢には役立てるかもしれないと思い、とりあえず日本語学科に入学した。 実際に日本語を勉強し始めたら、意外と早い段階で語学の楽しさを感じることができ、日本について知れば知るほど、日本の文化に魅力を感じるようになった。自分の選択ではなかったものの、日本語学科に入って良かったと思うようになった。大学3年生の時に、長野県小諸市日中友好協会のご招待を受け、ホームステイで1週間日本に滞在した。初めての訪日だったが、日本人の家に泊まり込み、市民祭りにも参加した。日常に溶け込み、肌で日本文化を感じる貴重な体験だった。教科書の限界を痛感し、日本をより知るために留学を決めた。 しかし、日本で何について研究するかには頭を悩ませた。日本に関心が芽生えてきたものの、アニメやアイドルが好きで日本語を専攻するようになった同級生と異なり、研究すべき分野をなかなか特定できなかった。当時は「草食系男子」が日本で話題になり、中国のメディアにも取り上げられていた。自分も「草食系男子」だと同級生に言われ、ジェンダー研究に関心を持つようになった。南京大学では毎年、日本語学科の共催で東京大学の先生たちによる集中講義が行われており、たまたまその年に現在の指導教官がジェンダーの視点で映画を分析する講義を行った。私は即座にその指導教官のもとで、ジェンダー理論と映画研究を専攻することを決めた。 その後、「草食系男子」をテーマにした卒業論文を書き下ろし、留学選考に無事に合格して、今日本で勉強ができるようになっている訳だ。日本留学のきっかけを聞かれる度に、自分が今に至ったのは一連の偶然の結果であったことを改めて認識させられる。偶然で始まったものが自分の人生の方向を左右するとは思わなかった。自分の選択ではなかったものの、正解に導かれている気はする。やはり、当時後押ししてくれた母に感謝なのだ。母を日本に連れて行き、映画で見た日本の風景を見させてあげたい。可能性はほぼないが、母が山口百恵と三浦友和夫婦に会えることになったら、通訳になり、きちんと「二人への愛」を伝えるように努める。 <于寧(う・ねい)YU_Ning> 2020年度渥美国際交流財団奨学生、国際基督教大学ジェンダー研究センター研究員。中国出身。南京大学日本語学科学士。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士前期課程修了。研究テーマ「中国インディペンデント・クィア映像文化」「中国本土におけるクィア運動の歴史」。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史対話」メールマガジン第30号を配信 ◆平山昇「第5回『国史たちの対話の可能性』円卓会議参加記」 昨日は、Zoom開催となった第5回「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議に参加しました。 中国・韓国・日本の3カ国の歴史研究者が近代史の中の感染症についての研究報告をしました。 ・朴漢珉(東北亜歴史財団)「開港期朝鮮におけるコレラ流行と開港場検疫」 ・市川智生(沖縄国際大学)「19世紀後半日本における感染症対策と開港場」 ・余新忠(南開大学)「中国衛生防疫メカニズムの近代的発展と性格」 感染症そのものは人類にとってたいへん困ったものだけど、歴史研究の対象としてはこれほど面白いものはないと思い知らされました。なぜなら、三人の先生方の報告から、日本・中国・韓国(朝鮮)といった国家の枠組みでの理解がまったく通用しない歴史像がみえてきたからです。 市川智生と朴漢珉の両氏の報告内容からは、朝鮮の中央政府が統一的な開港場の防疫規則を整備していなかった段階ではそれぞれの開港場ごとに外国官吏と現地官吏と居留民社会の協力関係のあり方が異なり、それによって対策の状況が異なっていた、だからこそ、感染症対策をする現場での国をこえた協力という点では、「日本の開港場/朝鮮の開港場」という違いよりも、「横浜・神戸・長崎・元山/仁川・釜山」の違いの方が際立っていた、ということがみえてきました。 続きは下記リンクからお読みください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2021HirayamaNoboruEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Nurmuhammat “My Study in Japan”

    *********************************************** SGRAかわらばん872号(2021年5月27日) 【1】エッセイ:マリダン・ヌルマイマイティ「私の日本留学」 【2】第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(最終案内) 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」(5月29日、オンライン) 【3】催事紹介:第28回持続可能な共有型成長セミナーへのお誘い 「持続可能な共有型成長に向けたポリシーブリーフ」(5月31日、オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#671 ◆マリダン・ヌルマイマイティ「私の日本留学」 私は日本から直線距離にしておよそ4,348㎞離れた遠い世界にある東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)からやって来たウイグル族出身の留学生である。私が子どもの頃、周りの人が使っている家電製品や人気の車はほとんど日本製だったので「日本の知識、技術はすごい」という印象が芽生えた。小学生の頃から始まった日本の漫画やアニメに対する興味も好印象をもっと深めることになった。 1990年代後半、インターネットの広がりによって世界で海から最も遠いところにいる我々が世界をもっと知るチャンスが生まれた。医者になりたいという夢を持っていた私にとって、日本は知識や技術、発明生産能力や経済水準などだけでなく、医療水準も世界トップレベルであることが分かった。これが日本留学を決意した一番のきっかけだったと思う。そして大学に入る前から、本当の力を持つ立派な医者なるために、日本で世界トップの医学を学びたいという夢を持つようになり、2015年にやっと、その夢を実現することができた。 最初の日本語学校、そして大学院、ほとんどが学生生活だった。その間にしたいろいろなアルバイトでの「半社会人生活」も楽しかった。その中で、来日から私が感じてきた日本のイメージはほとんど変わらなかった。例えば、とてもきれいな、発展した国日本は確かに前に思っていた通り、別世界だった。今まで見てきた人々の中でも、とても礼儀正しい民族だった。負けず嫌いで、いつも非常にまじめな態度にすごく感動した。さすが、「大和民族」日本人だと。 それでも、やはり以前の印象と少しずれているところもあった。日本に来る前、日本人は本が大好きで、電車の中ではみんな本や新聞を読んでいるということをよく耳にした。来日して自分の目で見てみたら、日本人は書籍が大好きで電車の中で本や新聞を読んでいる人もまだいるものの、それほど多くはないし、ほとんどは年上の人だった。若い人は本の代わりにスマートフォンにはまっていた。 一番びっくりしたのは最近の日本人の結婚と人口の減少率だ。今の若い日本人は結婚ということがあまり気にならないようだ。人口はどんどん減少しており、あと50年で日本の人口はどうなるのか、こんな素晴らしい民族がだんだんいなくなるのかなとちょっと心配している。 初めての海外生活で日本に到着してから、ルールや生活の常識が違うため、何度も壁にぶつかった。しかし、留学を決めたのは私自身、苦しくても耐えるしかなかった。苦痛も孤独もやる気に変えて、一生懸命がんばった。これは、留学する人には避けられないことである。しかし、努力は自分を裏切らない。アルバイトで初めて日本人の友達ができ、奨学金に受かり、おかげでアルバイトもやめて、時間をサークル活動と勉強に回して楽しい学生生活を満喫し、大学院を無事に卒業することができた。 6年間の留学生活の中で一番の感想は「困難に遭ったとき、逃げずに、諦めずに、向き合って、努力を貫くことが大事だ」ということだ。いろいろな事が自分の思うように行かなくても、諦めないでください。今不足している部分を考えて、その欠点を埋め合せれば次はきっとできる。 最後に、留学を考えている方へ。最初は文化の違いや言語の壁、そして経済面の問題、様々な挑戦に向き合わなければならない。誰しも辛い目に遭ってしまうだろう。しかし、諦めてはいけない。苦難を乗り越える経験は、きっと人生の宝になる。人生の修行だと思いながら、初心を忘れずに頑張ってください。 <マリダン・ヌルマイマイティ Mardan_Nurmuhammat> 2020年度渥美国際交流財団奨学生。ウイグル族出身。順天堂大学医学研究科神経学専攻。中国大連医科大学臨床医学学士。順天堂大学医学研究科神経学博士後期課程修了。研究テーマ「光遺伝学を用いたiPS細胞由来ドパミン神経細胞のα-シヌクレイン分泌調節」。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(最終案内) ◆「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 日 時:2021年5月29日(土)14:00~16:20 方 法:Zoomウェビナーによる 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_-25TkTM2QnSHiJtebc6VOg お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 歴史、経済、安保がリンケージされた複合方程式をうまく解かなければ、日韓関係は破局を免れないかもしれないといわれて久しい。日韓相互のファティーグ(疲れ)は限界に達し、日韓関係における復元力の低下、日米韓の三角関係の亀裂を憂慮する雰囲気は改善の兆しを見せていない。尖鋭な対立が続いている強制徴用(徴用工)及び慰安婦問題に関連し、韓国政府は日本とともに解決策を模索する方針であるが、日本政府は日本側に受け入れられる解決策をまず韓国が提示すべきであるという立場である。なかなか接点を見つけることが難しい現状である。これからどうすればいいか。果たして現状を打開するためには何をすべきなのか。日韓両国政府は何をすべきで、日韓関係の研究者には何ができるか。本フォーラムでは日韓関係の専門家を日韓それぞれ4名ずつ招き、これらの問題について胸襟を開いて議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。 ■プログラム ◇司会 金雄煕(キム・ウンヒ)仁荷大学教授 第1部・講演とコメント(14:05~15:05) <講演1> 小此木政夫(おこのぎ・まさお)慶応義塾大学名誉教授 「日韓関係の現段階-いま、我々はどこにいるのか」 <コメント> 沈揆先(シム・キュソン)ソウル大学日本研究所客員研究員 <講演2>李元徳(イ・ウォンドク)国民大学教授 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-韓国の立場から」 <コメント> 伊集院敦(いじゅういん・あつし)日本経済研究センター首席研究員 第2部・自由討論(15:05~15:45) 講演者と討論者の自由討論 ◇討論者 金志英(キム・ジヨン)漢陽大学助教授 小針進(こはり・すすむ)静岡県立大学教授 西野純也(にしの・じゅんや)慶応義塾大学教授 朴栄濬(パク・ヨンジュン)国防大学教授 第3部・質疑応答(15:45~16:15) ZoomウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付けます。 プログラムの詳細 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/J_19th-JKAFF_Program.pdf ポスター http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/19thJKFF_J.png 韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/05/02/jkaff19/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第28回持続可能な共有型成長セミナーへのお誘い SGRAフィリピン代表でフィリピン大学ロスバニョス校准教授のマキトさんから、オンラインセミナーのご案内をいただきましたのでご紹介します。関心のある方は直接お申込みください。 ◆持続可能な共有型成長に向けたポリシーブリーフ Towards_Sustainable_Share_Growth_Policy_Briefs 新型コロナウイルスの大流行による社会の混乱は持続可能な共有型成長の必要性を提示していますが、システマティックな議論には至っていません。本セミナーでは、SGRAフィリピンが長年追究してきた持続可能な共有型成長について、政策議論のための情報を提供し、研究の取り組みを促進し、世界・国・地方レベルのリーダーたちが活動していくために有用な提言をめざします。 日時:2021年5月31日(月) 午前9~12時(フィリピン時間)/午前10~13時(日本時間) 方法:Zoomによる 言語:英語 申込:https://bit.ly/3b85xzX 詳細は下記リンクからご覧ください。 https://qr.paps.jp/Z2iIN ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • CHO Sojin “Meaning of Studying about ZENKYOTO”

    *********************************************** SGRAかわらばん871号(2021年5月20日) 【1】エッセイ:趙沼振「『全共闘』を研究するという意味」 【2】寄贈本紹介:包聯群『現代中国における言語政策と言語継承』 【3】第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」(5月29日、オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#670 ◆趙沼振「『全共闘』を研究するという意味」 韓国で学部の時から現在まで一筋に「日本学」を専門として勉強してきた。中学2年生の時に初めてJ-POPを聞いたのがきっかけで、日本の文化に興味を持つようになった。音楽のメロディーから聞こえてくる日本語の歌詞はよく分からなかったけれど、韓国とは違う特有の雰囲気が良かったのかもしれない。そこから映画やドラマなども見るようになり、独学で日本語の勉強を始めた。そして高校生になり、趣味で終わらせたくなかったから、数多い外国語のなかで日本語の授業を選択した。おそらくあの時から、心のなかで決めていたのかもしれない。大学に行くなら専門は必ず「日本学」だと。私はJ-POPを聞く趣味を持つ中学生から、日本学専攻を選んだ大学生に成長した。 学部生活の間に東京へ交換留学したおかげで、頭のなかで想像していた「日本」の実際の姿に出会うことができた。ひたすら面白い日々を過ごしていた留学生活のなかで、韓国に戻って就職するより、大学院に進学してもっと「日本」を研究したいと思った。そこで、私の研究テーマである日本の学生運動史・社会運動史、「全共闘」に出会ってしまったのだ。 初めて全共闘という言葉を知ったのは、韓国で大学院のゼミを受けていた時だった。そもそもゼミのテーマが「1960年代の日本」で、私には見慣れない日本の歴史像であった。学部の時には、日本の近世・近現代史という科目があり、本格的に日本史を勉強した記憶はあった。だが、1960年代の「歴史」はなかなか扱われていなかった。1950年代までが「戦後日本史」という枠組みがはっきりと決まっていた。日本の1960年代は、「政治の季節」という表現で描かれながら、さまざまな事件の連続という印象が強かった。そのため、堅苦しく論述される「歴史」というよりは、熱く報道され続ける「過去」のニュースのようにみえる時期として感じてしまったのである。当時を生きていた学生たちは、大学の問題から発して社会と国家のことについてまで深く考え悩んでいた。そして、彼らの意見を表すために、闘争のかたちで異議を申し立てた。こういったところが非常に面白かった。1960年代後半に相次いで発生した各大学の全共闘運動に最も興味を惹かれたのである。 そのなかでも日大全共闘が最も面白いという印象を受けた。当時の日大全共闘は、左翼文化の系統を立ててきた東大全共闘とは異なっていた。集会が禁じられ、一般的な学生活動すらできなかった日大生は政治的にもナイーブであり、運動の戦略や戦術も分からない状態だったという。にもかかわらず、日大理事会の約20億円の使途不明金問題が引き金となり、セクト的対応から離れた日大全共闘ならではの運動スタイルが築かれたわけである。一連の日大闘争は予測不可能なマス(Mass)的存在が登場することによって、まさに想像がつかない「1968年」の同時代性を持つ「スチューデント・パワー」誕生の瞬間であった。そして、日大闘争は次第に大規模なスケールになり、「日大全共闘のバリケードは世界最強」だという評価を受けるようになった。彼らの姿から、今を生きている私にもその生々しい情熱がはっきり伝わったのだ。「これは面白い」。当時の日大全共闘の情熱に匹敵するものは、現在の日本においてはこれっぽっちもないだけに面白いと思った。 60年安保を皮切りに本格的に学生運動が活性化し、全共闘運動により「若者」または「学生」が民主主義を唱える自発的な役割に区切りをつけたといえる。その後、若者から大人に、学生から社会人になった彼らによって闘争体験の記憶を共有する世代層が固くつくられた。そのため、「1968年」という時代に対する記憶が一種のノスタルジーとして回顧され続けてきたともいえる。しかし、今日の若者は当時の記憶に対して常套的なイメージを描いているだけで、共感を覚えることはなかなかできない。そこからジェネレーション・ギャップが生じてしまったと考えられるのではないだろうか。さらに、メディアを通じて「団塊の世代」または「全共闘世代」とレッテルを貼られたことにより、世代間のコミュニケーションが断絶されたのかもしれない。 そのため、今の若者に「1968年」の時代背景と価値観をインプットすることより、同じ「若者」として同時代性を感じさせることが重要だと思う。今の若者は当時のことを振り返ってみて「記憶」することはできないけれど、想像して「理解」することはできるはずだ。そして「学ぶ」「若い」「学生」という枠組みから共感を覚え、徐々にパラダイムを転換させていく練習を積んでいく必要があると私は思っている。 <趙沼振(チョ・ソジン)CHO_Sojin> 2020年度渥美国際交流財団奨学生。韓国出身。東京外国語大学大学院総合国際学研究科国際社会専攻。淑明女子大学日本学科学士、修士。東京外国語大学大学院博士前期課程修了。研究テーマは「日大全共闘」「日本の学生運動史・社会運動史」。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で大分大学教授の包聯群さんから編著書をご寄贈いただきましたので紹介します。 ◆包聯群編著「現代中国における言語政策と言語継承 第五巻」 2020年12月26-27日に大分大学(オンライン)にて実施された第八回日中国際ワークショップ「現代中国における言語政策と言語継承―少数言語を中心に」での口頭発表に基づいた研究が中心となる論文集。主にヨーロッパと日本、中国国境を跨る少数言語、中国の外国語教育政策、及び中国国内におけるアルタイ系言語のモンゴル系諸語、満洲―ツングース系言語などが含まれている。 出版社:三元社 ISBN:978-4-88303-526-7 発行日:2021/03/25 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) ◆「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 日 時:2021年5月29日(土)14:00~16:20 方 法:Zoomウェビナーによる 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_-25TkTM2QnSHiJtebc6VOg お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 歴史、経済、安保がリンケージされた複合方程式をうまく解かなければ、日韓関係は破局を免れないかもしれないといわれて久しい。日韓相互のファティーグ(疲れ)は限界に達し、日韓関係における復元力の低下、日米韓の三角関係の亀裂を憂慮する雰囲気は改善の兆しを見せていない。尖鋭な対立が続いている強制徴用(徴用工)及び慰安婦問題に関連し、韓国政府は日本とともに解決策を模索する方針であるが、日本政府は日本側に受け入れられる解決策をまず韓国が提示すべきであるという立場である。なかなか接点を見つけることが難しい現状である。これからどうすればいいか。果たして現状を打開するためには何をすべきなのか。日韓両国政府は何をすべきで、日韓関係の研究者には何ができるか。本フォーラムでは日韓関係の専門家を日韓それぞれ4名ずつ招き、これらの問題について胸襟を開いて議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。 ■プログラム ◇司会 金雄煕(キム・ウンヒ)仁荷大学教授 第1部・講演とコメント(14:05~15:05) <講演1> 小此木政夫(おこのぎ・まさお)慶応義塾大学名誉教授 「日韓関係の現段階-いま、我々はどこにいるのか」 <コメント> 沈揆先(シム・キュソン)ソウル大学日本研究所客員研究員 <講演2>李元徳(イ・ウォンドク)国民大学教授 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-韓国の立場から」 <コメント> 伊集院敦(いじゅういん・あつし)日本経済研究センター首席研究員 第2部・自由討論(15:05~15:45) 講演者と討論者の自由討論 ◇討論者 金志英(キム・ジヨン)漢陽大学助教授 小針進(こはり・すすむ)静岡県立大学教授 西野純也(にしの・じゅんや)慶応義塾大学教授 朴栄濬(パク・ヨンジュン)国防大学教授 第3部・質疑応答(15:45~16:15) ZoomウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付けます。 プログラムの詳細 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/J_19th-JKAFF_Program.pdf ポスター http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/19thJKFF_J.png 韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/05/02/jkaff19/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • LIU Yichen “Difficulty of Executing Dialogue”

    *********************************************** SGRAかわらばん870号(2021年5月13日) 【1】エッセイ:劉怡臻「『わたしの青春、台湾』から見る対話の困難さ」 【2】寄贈本紹介:ヴィラーグ『介護・福祉の現場でともに学び、働くための外国人スタッフの理解』 【3】第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」(5月29日、オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#669 ◆劉怡臻「『わたしの青春、台湾』から見る対話の困難さ」 2020年は新型コロナウイルスの感染が広がり、非常に大きな変化があった一年だった。縁あって映画『私たちの青春、台湾』の字幕翻訳、映画監督傅(フー)・ユーの自述的著書『わたしの青春、台湾』の翻訳チームに参加する機会を得た。外出を控えなければならない不自由な生活の中、翻訳の確認作業のため、何度も映画を見直し書籍を繰り返して読んだ。母国語で書かれている内容でも、日本人の先生方に解説するために、歴史背景と用語についていろいろ調べた。傅監督と編集者が自分とほぼ同じくらいの年で、言及されている台湾近年の社会情勢とその変化について、実は私も体験してきた一人なんだと思いつつ、出身や置かれている環境の違いによって見方も変わることをあらためて実感した。 映画『私たちの青春、台湾』は傅監督の「ひまわり運動」(2014年)を回想するモノローグから始まるドキュメンタリーで、運動の中心人物陳為廷(チェン・ウェイティン)と中国出身で台湾留学中の蔡博藝(ツァイ・ボーイー)をめぐって、運動に参加した喜怒哀楽と葛藤が描かれている。最後に監督自身も被写体になり、陳と蔡の前で告白して、自分の矛盾や無力をさらけ出した。 日本で上映される際、ポスターやタイトルだけ見ると、台湾の社会運動の成功が描かれているものと思われるかもしれない。ところが、この作品はそのような期待を完璧に裏切るものである。運動を起こしたヒロインは偶像として作り上げられ、結局失意に沈んでいくことになってしまうありのままの様子が映し出されている。そして、監督も自分が最初にこの運動の主人公である二人にかけた期待が裏切られ、そういう状況に直面している「揺れ」を強く感じて、戸惑っている。その戸惑いまでもドキュメンタリーに呈している。 社会運動とは、英雄のような誰かに一方的に期待をかけることではなく、自分を投げ出し、行動しながら物事を理解していくことだということがドキュメンタリーを通してわかる。運動はただ起こせば良いものではない。その後にも続いていく反省と行動こそが本当の変化をもたらす。しかし、変化は簡単に起こるものではない。 今回お手伝いをさせていただいた機会に、映画だけではなく、監督の著書を読んでいろいろ考えさせられた。「もしわたしたちが前に向かって進みたいなら、まず自分が傷ついたことを意識することから始める必要がある。台湾では、わたしたちが経験してきた歴史と現在の政治状況によって、おそらく多くの人が、成長の過程の中でみな傷ついたり、排除されたり、自分で限界を線引きしてしまったり、コミュニケーションをとろうとしたときに生まれつきの立場の壁にぶつかったり、話したことが曲解されてしまうと感じたり、最も身近な人とさえ理解し合えなかったりしただろう」という監督のことばに何度も心を打たれた。 台湾は日本統治期、祖国光復、そして国民党一党支配の権威主義体制時代を経て、世界最長となる38年間の戒厳令を体験した。その中で、政府が反共産主義という理由で、時局を批判した人間を逮捕、処刑する白色テロが横行した。同時に、70年代からは外交的な孤立を体験してきた。台湾の民主化運動は最初、そのような反体制の社会運動から基盤を築いてきた。1986年になって初めて野党の結成が認められ、実質的な選挙が行われ、民主化への一歩を踏み出した。 それに伴い、労働運動や環境保護運動、女性運動などが高まっていった。ところが、選挙が行われるたびに、青陣営(国民党)と緑陣営(民進党)は支持を得るために台湾のイデオロギーをめぐる論議を繰り広げることになる。いわゆる台湾アイデンテイテイというものがしばしば取り上げられ、強調され、日常生活の家族や友人の間でも喧嘩のタネになっている。そのため、異なる出身の台湾人が感情的に傷ついたり、傷つけられたりすることを繰り返す。そのゆえ、対話の混乱と困難はますます増している。 イデオロギーをめぐって話しあう際に、先にラベルを貼り付けてしまうこと、あるいは先に貼り付けられることはよくある。しかし、これもまた台湾国内の話だけにとどまらず、外国で生活する際にもよく体験したことでもある。自分はなぜそう思うのか、なぜそういう風に思ってきたのか、その思いが生じる背景とは何か、いかなるファクターが作用しているのか、一歩進んで追求してみたら、絡まった情緒や見方の糸が解かれるチャンスになるのではないか。 翻訳作業の過程で、デジタル担当大臣オードリー・タンさんから推薦文をいただいた。翻訳チームを悩ませたものに「公共事務」という言葉があった。英語にすれば「Public_affairs」にあたるが日本語には当てる概念が見つからない。民間の人や団体が政治に参加して行政に関与して活動するという意味だが、当てはまる概念が見つからないことはチーム内の日本人の先生に衝撃を与えた。それをめぐって、みんなで何度も意味の確認と訳語探しに腐心した。私たちはそれによって日本と台湾の社会システム構造上の違いを初めて認識するようになった。 人間同士、お互いの共通項を求める前に、まずお互いの違いに気づき、認めて、理解して伝えることはなかなか難しいことだと体得した。字幕を翻訳すること、監督の著書を読むこと、翻訳チームに参加する中で、この体験が自分への一番のプレゼントである。 <劉怡臻(リュウ・イチェン)LIU_Yichen> 2020年度渥美奨学生、台湾出身。明治大学大学院教養デザイン研究科文化領域専攻。研究テーマは「植民地台湾における石川啄木文学の受容」。国立台湾大学日本語文学研究科学士、修士。思潮社編集部のアルバイト、2020台湾文学祭詩人楊牧/洛夫ドキュメンタリー映画(邦訳)監修協力などを経験。共著には『世界は啄木短歌をどう受容したか』(桜出版、2018)、『日本歴史名人:Nippon所蔵日語厳選講座』(台北EZ叢書館、2020)など。現在、東京語文学院に勤務、慶応義塾大学湘南藤沢高校第二外国語講師を担当。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で長崎国際大学講師のヴィラーグさんからご著書をご寄贈いただきましたので紹介します。 ◆ヴィラーグ ヴィクトル『介護・福祉の現場で ともに学び、働くための 外国人スタッフの理解』 外国人介護スタッフとともに働き、指導するために、表情やしぐさ、言葉のつかい方、時間のとらえ方などに表れる文化の違いを、どう理解すればよいか解説した一冊。外国人人材が単純労働の担い手でなく、ケア向上の新戦力になるために必要な多文化理解をすすめることができる。 出版社:中央法規 ISBN:978-4-8058-8299-3 判型:A5 頁数:224頁 発行日:2021/04/25 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.chuohoki.jp/category/C01/8299.html -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) ◆「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 日 時:2021年5月29日(土)14:00~16:20 方 法:Zoomウェビナーによる 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_-25TkTM2QnSHiJtebc6VOg お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 歴史、経済、安保がリンケージされた複合方程式をうまく解かなければ、日韓関係は破局を免れないかもしれないといわれて久しい。日韓相互のファティーグ(疲れ)は限界に達し、日韓関係における復元力の低下、日米韓の三角関係の亀裂を憂慮する雰囲気は改善の兆しを見せていない。尖鋭な対立が続いている強制徴用(徴用工)及び慰安婦問題に関連し、韓国政府は日本とともに解決策を模索する方針であるが、日本政府は日本側に受け入れられる解決策をまず韓国が提示すべきであるという立場である。なかなか接点を見つけることが難しい現状である。これからどうすればいいか。果たして現状を打開するためには何をすべきなのか。日韓両国政府は何をすべきで、日韓関係の研究者には何ができるか。本フォーラムでは日韓関係の専門家を日韓それぞれ4名ずつ招き、これらの問題について胸襟を開いて議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。 ■プログラム ◇司会 金雄煕(キム・ウンヒ)仁荷大学教授 第1部・講演とコメント(14:05~15:05) <講演1> 小此木政夫(おこのぎ・まさお)慶応義塾大学名誉教授 「日韓関係の現段階-いま、我々はどこにいるのか」 <コメント> 沈揆先(シム・キュソン)ソウル大学日本研究所客員研究員 <講演2>李元徳(イ・ウォンドク)国民大学教授 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-韓国の立場から」 <コメント> 伊集院敦(いじゅういん・あつし)日本経済研究センター首席研究員 第2部・自由討論(15:05~15:45) 講演者と討論者の自由討論 ◇討論者 金志英(キム・ジヨン)漢陽大学助教授 小針進(こはり・すすむ)静岡県立大学教授 西野純也(にしの・じゅんや)慶応義塾大学教授 朴栄濬(パク・ヨンジュン)国防大学教授 第3部・質疑応答(15:45~16:15) ZoomウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付けます。 プログラムの詳細 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/J_19th-JKAFF_Program.pdf ポスター http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/19thJKFF_J.png 韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/05/02/jkaff19/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • CHEN Yan “SGRA Cafe #15 Report”

    *********************************************** SGRAかわらばん869号(2021年5月6日) 【1】第15回SGRA-Vカフェ報告 陳えん「SGRA-Vカフェ『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力の報告」 【2】国史対話メルマガ#29を配信 金賢善「第5回国史たちの対話―伝染病の時代に伝染病の歴史を振り返る」 【3】第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」(5月29日、オンライン) *********************************************** 【1】第15回SGRA-Vカフェ報告 ◆陳えん「SGRA-Vカフェ『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力の報告」 3月20日(土)、第15回SGRA-Vカフェが開催された。コロナ禍のためオーディエンスは全員オンラインで参加する形式で行われたが、オンラインだからこそ日中韓「同時通訳・同時翻訳付き」の3言語開催が実現できたとも言える。今回の企画・準備・運営においては、新型コロナウィルス対策や新たなオンラインの可能性を探るさまざまな試みが行われ、視聴者の積極的な参加と財団スタッフの努力によって、世界中から集まった200人を超える参加者を満足させるウェビナーに「仕上げ」ることができた。 今回のテーマ設定の背景にささやかなストーリーがある。2年前に日中映画に関するSGRAチャイナフォーラムが北京で開催されたことをきっかけに、私は「いつか“アニメ”に関連するテーマも取り扱ってみたい」と思い始め、2019年度のチャイナフォーラムで大塚英志先生をお誘いして日本のマンガ・アニメ業界の特徴とされている「メディアミックス」について語っていただいた。その際の反響が良かったので、今度は東京で開催するSGRAカフェでもアニメに関連するテーマを取り上げたいという思いがあった。当初は「アニメの文化研究」をテーマに、と考えたが、具体的な話の「入口」がなかなか決まらなかった。その理由は、アニメ研究の歴史はあまり長くないにもかかわらず、メディアの発展に伴いアニメ自体の在り方も急速に変化し続けているということ、また、代表的な作品・作家・時代と現象の事例が意外と多いと言うことからであった。 悩んでいた時に、タイミングよく話題作が現れた…!――『鬼滅の刃』である。興行収入が『千と千尋の神隠し』を抜いて歴代ランキング第1位になり、原作のファンだけではなく、世界中のアニメファンやそれまでアニメに興味が無かった人々からも注目を集めていた。そこで早速、アニメーション研究家の津堅信之先生に「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」というテーマをお伝えし、講演内容を考えていただいた。偶然にも津堅先生の著書は中国語と韓国語にも翻訳されていたので、今回の3言語開催のウェビナーにとっては最適なゲストだったと言えよう。 当日は、同時通訳はもちろん、投影されるスライドも3言語対応で用意された。また、ウェビナーのQ&Aに寄せられたコメントをリアルタイムで3言語に翻訳するべく、渥美奨学生のみなさんもオンラインで待機してくださった。定時に開会後、2016年度奨学生の全相律さん(韓国出身)が渥美財団とSGRAの紹介をし、筆者(中国出身)から講演ゲストの津堅先生を紹介した。この部分のアレンジも運営側の特別な手配がうかがえる。 第1部の津堅先生の講演は、『鬼滅の刃』がヒットした理由の分析とその実像の説明から始まった。そして、実は『鬼滅』の劇場版(或いは映画版)は原作のファンをターゲットにして制作されただけで、そのビジネスモデルははるか前から日本のアニメ業界で形成されていたもので、一般人にまで広まる空前の大ヒットとなることは誰も想像だにしなかった、と説明された。スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫は、「(興行収入)100億円までは作品の実力、それ以上は社会現象」と語っている。今回その「社会現象」が起きた理由については様々な専門家が分析しているが、津堅先生は無視できない事実として2点挙げられた。一つは、新型コロナウィルスの感染拡大によって、多くの映画の公開が延期になり、映画館に生じた空き時間に『鬼滅』が集中的に上映されたこと。実際、とある映画館の4つのスクリーンで、15分おきに上映が始まるという普段ではありえない状況が起きていた。 もう一つは、劇場版の『鬼滅』の映像美やストーリー性の高さが原作のファンを満足させる質の高いものだったため、初期の段階で見に行った原作ファン(10日間で100億円を超えた)の口コミがかなり良く、原作ファン以外の観客も「それほど評判なら一度は見に行こう」と考え、非常に大きな相乗効果が生まれ、その「相乗効果」が「興行収入歴代トップ」の結果をもたらした。余談として、『鬼滅』の中で、「全集中」という言葉が出てくるが、これが実社会でもあらゆる場面で使われ、津堅先生によると「総理大臣が国会でも使っていた」とのことだった。(注:2020年11月2日の衆院予算委員会で『全集中の呼吸』で答弁させていただく」と答弁。江田憲司立憲民主党代表代行の質問に) では、この大ヒットとなった『鬼滅の刃』現象は日本アニメの歴史の中ではどのように位置づけられるだろうか。津堅先生は、1960年代から日本アニメがたどってきた道を整理しながら、その「魅力」がどこにあるのを分析された。 戦後の代表作で日本初の長編アニメ『白蛇伝』の公開後、1963年の『鉄腕アトム』テレビシリーズが日本アニメの「特徴」と「伝統」を作り上げた。毎週30分が1話のサイクルで放映するパターンの定着である。当時は世界でもテレビアニメの供給がまだ少なかった時期で、先行していたアメリカのテレビアニメは1話5~10分の長さでギャグネタを1つだけ紹介するのが主流だった。それに対して、日本アニメは1話が30分だったので、キャラクターの感情をより豊かに描くことができた。その後、時代の変化と共にテレビアニメが多く制作されるようになった現在でも、この1話30分パターンが続いている。 70年代に入るとテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)と『機動戦士ガンダム』(1979年)が子ども向けではない複雑なストーリー、キャラクターの心理描写を重視し、「ヤングアダルト」向けという世界的に見て稀なジャンルを確立した。この頃からテレビアニメの人気作において、オリジナルのストーリーから長編アニメが制作され、映画館で公開される「劇場版」という新ジャンルが生まれた。以上の2点から、人気マンガを原作としてテレビアニメ化し、その後劇場版をつくるという一連の制作スタイルが一つの定型となり、これが『鬼滅の刃』へとつながっている。 80年代のアニメ業界はマンガ雑誌「週刊少年ジャンプ」連載のテレビアニメ化の全盛期を迎え、代表作の数々(『ドラゴンボール』『SLAM_DUNK』『幽☆遊☆白書』『るろうに剣心』『One_Piece』など)が、それぞれ異なるブームを形成した。スタジオジブリの活動が本格化した時期も80年代。宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』(1984年)、『天空の城ラピュタ』(1986年)、『となりのトトロ』(1988年)など現代を鋭く批判し社会性を帯びた一連の作品が、それまでアニメに興味のなかった観客からも注目された。 90年代以後、人気マンガが原作の制作スタイルとジブリのオリジナルアニメ映画がそれぞれの発展を果たし、それに加えてアニメ制作におけるデジタル化が進み、日本独自のデジタル技術が発達した。 以上のように日本アニメの歴史を整理した後、津堅先生が日本アニメの「独自性」と「文化力」をまとめた。ジャンルが多様でヤングアダルト向け、また、3DCG(=3ディメンション・コンピュータグラフィックス)ではなく2D(=2ディメンション)デジタルを中心に発展してきた日本アニメが、国外に対する新たな日本文化として発信され、アニメの舞台になった国内スポットが注目されたり、登場する日本食が流行したりする現象をもたらした。 盛りだくさんだった講演後、第2部の対談では私自身がインタビュアーとなり、津堅先生と3つの話題を中心に語ってみた。まずは、講演の中では触れられていなかった『鬼滅』の内容について、主人公のキャラクター設定が従来の「ジャンプ系主人公」より「成長のスピードが遅い」「相対的に弱い」点についてお話を聞いた。津堅先生からみれば、これまでと大きな違いはなく、やはり日本アニメの伝統通り主人公が成長するプロセスを強調しながら表現している、と述べられた。また、「これから誰が日本アニメを見るのか」「観客の多様化や変化は日本アニメに影響するか」という話題に対しては、海外の観客が大幅に増えていることを前提として、日本アニメ自体を最初から世界向けに企画・制作すべきだというのが津堅先生のご意見だった。 最後に、津堅先生の研究の重要な論点の一つと繋がる「アニメ」と「アニメーション」の使い分けについて伺った。津堅先生は商業的アニメと芸術系のアニメーションの区別や、ファミリー向けと大人向けのジャンル分け、および制作スタイルの違いあるいは地域などによって言葉の定義が異なると説明された(例えば欧米では、ポケモンはファミリーの棚に、ジブリが「アニメ」に、ディズニーが「アニメーション」になど;中国でも「動画」「動漫」などがある)。また、こうした言葉の使い分けについては、地域の文化の中での変遷を分析することで理解が進むと強調された。 第3部のオーディエンスからのQ&Aでは、多くの質問の中から2012年度渥美奨学生のソンヤ・デールさんに代表的な内容をピックアップしてもらい、「日本アニメの海外展開」や「アニメ研究を始めたきっかけ」、「日本アニメの暴力表現」などについて津堅先生と筆者とがそれぞれの経験と理解からお答えした。 3言語「同時通訳・同時翻訳」を実現した初のオンライン版SGRAカフェが終わったが、SGRAでは今回の経験を生かして「次は英語の同時通訳もつけてさらにグローバルに発信する」を目指すらしい。今後のウェビナーがどのような「盛り上がり」を見せるのか、楽しみである。 当日の写真 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/15thSGRA-Vcafe_Photos.pdf フィードバックの集計 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/Cafe15_questionnaires.pdf 当日の録画 https://youtu.be/ojYU5fhUZzQ <陳えん(ちん・えん)CHEN_Yan> 京都精華大学マンガ学部専任講師。2017 年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。研究領域はアニメーション史、日中アニメ・マンガ交流史、「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活動中。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史対話」メールマガジン第29号を配信 ◆金賢善「第5回国史たちの対話―伝染病の時代に伝染病の歴史を振り返る」 「中国・韓国における国史たちの対話の可能性」は1月9日、オンライン(ウェビナー)で行われ、日中韓3国の19世紀における伝染病の流行と防疫に関する発表と活発な議論が行われた。また、空間を越え、100名以上が参加し、リアルタイムでチャットを通じての質問も行われた。趙珖・国史編纂委員会委員長が開会挨拶で指摘したが、オンラインで開かれた今回の「国史たちの対話」はこれまでとは違った意味が付与されなければならないだろう。コロナの危機の中で新しい形の会議が円滑に行われるように万全を期してくださった関係者のみなさんにまず感謝申し上げたい。 反面敎師 2020年、コロナが韓国を覆った頃「科学が発達した今日、感染症と防疫の歴史を研究することにどんな意味があるか」と聞かれたことがあった。当時、感染者の経路が時々刻々と私たちの携帯電話に伝達され、注意を要する状況であったし、疑いの症状がある時は準備された検査キットで早く検査を受けることができた。そんな状況の中で、感染症と防疫の歴史を研究することが現在の私たちの暮らしにどんな意味があるのかと疑念を持つことは変なことではなかった。疾病史を研究する私はこの質問がしばらくの間気になり、それに対する答えについて悩み始めた。この「国史たちの対話」は気になっていたこの質問に対する答えを探す旅程のようなものであった。 続きは下記リンクからお読みください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2021KimHyunsunEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) ◆「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 日 時:2021年5月29日(土)14:00~16:20 方 法:Zoomウェビナーによる 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA](日本) 共 催:(財)未来人力研究院(韓国) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_-25TkTM2QnSHiJtebc6VOg お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 歴史、経済、安保がリンケージされた複合方程式をうまく解かなければ、日韓関係は破局を免れないかもしれないといわれて久しい。日韓相互のファティーグ(疲れ)は限界に達し、日韓関係における復元力の低下、日米韓の三角関係の亀裂を憂慮する雰囲気は改善の兆しを見せていない。尖鋭な対立が続いている強制徴用(徴用工)及び慰安婦問題に関連し、韓国政府は日本とともに解決策を模索する方針であるが、日本政府は日本側に受け入れられる解決策をまず韓国が提示すべきであるという立場である。なかなか接点を見つけることが難しい現状である。これからどうすればいいか。果たして現状を打開するためには何をすべきなのか。日韓両国政府は何をすべきで、日韓関係の研究者には何ができるか。本フォーラムでは日韓関係の専門家を日韓それぞれ4名ずつ招き、これらの問題について胸襟を開いて議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。 ■プログラム ◇司会 金雄煕(キム・ウンヒ)仁荷大学教授 ◇開会の辞 李鎮奎(イ・ジンギュ)未来人力研究院理事長 第1部・講演とコメント(14:05~15:05) <講演1> 小此木政夫(おこのぎ・まさお)慶応義塾大学名誉教授 「日韓関係の現段階-いま、我々はどこにいるのか」 <コメント> 沈揆先(シム・キュソン)ソウル大学日本研究所客員研究員 <講演2>李元徳(イ・ウォンドク)国民大学教授 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-韓国の立場から」 <コメント> 伊集院敦(いじゅういん・あつし)日本経済研究センター首席研究員 第2部・自由討論(15:05~15:45) 講演者と討論者の自由討論 ◇討論者 金志英(キム・ジヨン)漢陽大学助教授 小針進(こはり・すすむ)静岡県立大学教授 西野純也(にしの・じゅんや)慶応義塾大学教授 朴栄濬(パク・ヨンジュン)国防大学教授 第3部・質疑応答(15:45~16:15) ZoomウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付けます。 ◇閉会の辞 今西淳子(いまにし・じゅんこ)渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表 プログラムの詳細 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/J_19th-JKAFF_Program.pdf ポスター http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/19thJKFF_J.png 韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/05/02/jkaff19/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Invitation to Japan-Korea Future Forum #19

    *********************************************** SGRAかわらばん868号(2021年4月29日) *********************************************** ◆第19回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 下記の通り日韓アジア未来フォーラムをオンラインにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか」 日 時:2021年5月29日(土)14:00~16:20 方 法:Zoomウェビナーによる 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 主 催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会[SGRA](日本) 共 催:(財)未来人力研究院(韓国) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_-25TkTM2QnSHiJtebc6VOg お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 歴史、経済、安保がリンケージされた複合方程式をうまく解かなければ、日韓関係は破局を免れないかもしれないといわれて久しい。日韓相互のファティーグ(疲れ)は限界に達し、日韓関係における復元力の低下、日米韓の三角関係の亀裂を憂慮する雰囲気は改善の兆しを見せていない。尖鋭な対立が続いている強制徴用(徴用工)及び慰安婦問題に関連し、韓国政府は日本とともに解決策を模索する方針であるが、日本政府は日本側に受け入れられる解決策をまず韓国が提示すべきであるという立場である。なかなか接点を見つけることが難しい現状である。これからどうすればいいか。果たして現状を打開するためには何をすべきなのか。日韓両国政府は何をすべきで、日韓関係の研究者には何ができるか。本フォーラムでは日韓関係の専門家を日韓それぞれ4名ずつ招き、これらの問題について胸襟を開いて議論してみたい。日韓の基調報告をベースに討論と質疑応答を行う。 ■プログラム ◇司会 金雄煕(キム・ウンヒ) … 仁荷大学教授 ◇開会の辞 李鎮奎(イ・ジンギュ) … 未来人力研究院理事長 第1部・講演とコメント(14:05~15:05) <講演1> 小此木政夫(おこのぎ・まさお) … 慶応義塾大学名誉教授 「日韓関係の現段階-いま、我々はどこにいるのか」 <コメント> 沈揆先(シム・キュソン) … ソウル大学日本研究所客員研究員 <講演2>李元徳(イ・ウォンドク) … 国民大学教授 「岐路に立つ日韓関係:これからどうすればいいか-韓国の立場から」 <コメント> 伊集院敦(いじゅういん・あつし) … 日本経済研究センター首席研究員 第2部・自由討論(15:05~15:45) 講演者と討論者の自由討論 ◇討論者 金志英(キム・ジヨン) … 漢陽大学助教授 小針進(こはり・すすむ) … 静岡県立大学教授 西野純也(にしの・じゅんや) … 慶応義塾大学教授 朴栄濬(パク・ヨンジュン) … 国防大学教授 第3部・質疑応答(15:45~16:15) ZoomウェビナーのQ&A機能を使い質問やコメントを視聴者より受け付けます。 ◇閉会の辞 今西淳子(いまにし・じゅんこ) … 渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表 プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/J_19th-JKAFF_Program.pdf ポスターは下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/04/19thJKFF_J.png ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • XIE Zhihai “Unstoppable Hate Crimes for Asians”

    *********************************************** SGRAかわらばん867号(2021年4月22日) 【1】謝志海「止まらぬアジア人へのヘイトクライム」 【2】催事紹介:日中韓三国協力国際フォーラム2021 「TCS設立10周年を迎えて:次の10年に向けての新たな日中韓パートナーシップのあり方」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#668 ◆謝志海「止まらぬアジア人へのヘイトクライム」 現在米国ではアジア系住民に対する嫌がらせが後を絶たない。日本ではあまり重要視されてこなかったこの出来事だが、3月30日にバイデン米大統領がアジア系への差別と暴力に追加対策をとると発表。これを受けて加藤官房長官が3月31日に「日本政府としてはアメリカ政府の個々の政策についてコメントする立場ではないが、人種などによって差別が行われることは、いかなる社会においても許容されるものではないという立場だ。また現地大使館や総領事館を通じて状況についてよく注意し、在留邦人などの安全確保にしっかりと努めていく」と記者会見で述べた。 テレビニュースでもアジア人差別の現状が伝えられるようになった。私も偶然米国からのニュース映像を観た。ニューヨーク市マンハッタンの街角で、アジア人の女性が白人男性に蹴られ、うずくまった。その場に倒れている女性をお店の中から見た別の男性は、助けに外に出るどころか、助けを乞うなと言わんばかりにドアを閉めるという、情のかけらもないものだった。被害者は65歳のフィリピン人女性で「おまえはここにいるべきではない。」と言われながらの暴力だったそうだ。 昨年ミネソタ州で警官の暴行により圧死した黒人男性(ジョージ・フロイド氏)の悲しみが癒えぬ間に、米国ではアジア人が差別の対象になっていると知り、私はこれまで感じたことのないようなやるせない気持ちになった。米国にいる全てのアジア系住民は、家を一歩出れば、コロナウイルスだけでなく、差別にも気をつけながら、覚悟を決めて外出しているのではないだろうか?そう考えると、日本で暮らしている私は平和だなあと思う。自分たちと同じアジア人が日々の生活で、差別や暴力に怯えながら暮らしている現状を米国以外の国にいるアジア人全員がもっと把握しておくべきだと思った。 しかし、なにかが起きると行動が早いのも米国で、サンフランシスコ州立大学が人種などを勉強するいくつかの学部と合同で、「STOP_AAPL*_HATE」というサイトを一年ほど前には立ち上げていて、全米各地でアジア人が差別にあったケースを集計している。これによると2019年に比べて2020年はアジア人へのヘイトクライムは2.5倍に増えた。そして差別や暴力の被害に遭うのは、アジア系の老人、続いて女性に多いことが浮き彫りとなった。 確かに、先述のニューヨークでのヘイトクライムもシニアのアジア人女性だし、もうひとつ記憶に新しい出来事と言えば、その事件の少し前に起きたジョージア州アトランタでおきた若い白人男性による銃撃で、死亡した8人のうち6人がアジア系の女性だった。さらに、この事件の報告をした報道官の警部が犯人をかばう発言とアジア人女性を軽視するような含みを持っていたため、後味の悪いものとなった。この事件の翌日、バイデン大統領はハリス副大統領と共にアトランタまで出向き哀悼の意を伝えたという。この2つの事件は3月に起きたもので、バイデン大統領は月をまたがずに、アジア系アメリカ人を守ることを強化する決断を下したのである。 しかし少し調べてみると、在米日本国総領事館から「アジア系住民に対する嫌がらせ等に関する注意喚起」と題したEメールを、在留届を提出している日本人に配信したのも3月であり、日本の外務省は米国の現状をきちんと把握している。日本国内でももう少し深くアジア人への人種差別が深刻化している様を伝えるべきだと思う。我々こそがアジア人なのだから。 アジア系住民への差別の発端はトランプ前大統領がコロナウイルスのことを「チャイナウイルス」と繰り返し言ったことからだとされている。その尻拭いをバイデン新政権が行なっているだけと言えばそれまでだが、バイデン大統領はアジア人を後回しにしていない。同時にアジア系自身も黙って時が過ぎるのを待つだけではなく、ヘイトクライム撲滅のデモをしたり、ヘイトクライムに遭ったらレポートし共有する場を設けたりしている。アジア系市民が被害に遭った時の防犯カメラの映像を繰り返しテレビで流すだけでなく、差別に立ち向かう様まで伝えることも大切だと思う。そして私のような日本にいる中国人は、コロナウイルスを理由に日本でヘイトクライムは受けていないということを米国に伝えるべきかもしれない。 *AAPL=Asian_American_Pacific_Islanders アジア・太平洋諸島系アメリカ人 <謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai> 共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】SGRA会員の道上尚史様からオンラインイベントのご案内をいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は下記より直接お申込みください。 ◆日中韓三国協力国際フォーラム2021 「TCS設立10周年を迎えて:次の10年に向けての新たな日中韓パートナーシップのあり方」 日中韓三国協力事務局は日中韓三国の協力促進を目的として、2011年に三国政府が設立した国際機関です。本フォーラムは私ども事務局の一大年次事業であり、三国の政治・経済・社会文化全般についての議論を通じて、三国協力の更なる発展につながる提言を提供し、北東アジアの平和と繁栄に向けた三国協力の意義を啓蒙することを目指しています。 【日時】2021年4月27日(火)10:00―16:00 【形式】オンライン(Zoom使用) 【言語】日中韓英の同時通訳あり 【参加費】無料 【各セッション参加者及びテーマ】事前登録リンクをご参照ください 【事前登録】http://sv.mikecrm.com/miIe4LS 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://tcs-asia.org/jp/board/notice_view.php?idx=3787&pNo=1 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • YUN Jaeun “Myanmar Issues and Korea”

    *********************************************** SGRAかわらばん866号(2021年4月15日) 【1】エッセイ:尹在彦「ミャンマー問題と韓国、そしてアジアの民主主義」 【2】寄贈本紹介:ボルジギン・フスレ編著『国際的な視野のなかの溥儀とその時代』 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#667 ◆尹在彦「ミャンマー問題と韓国、そしてアジアの民主主義」 韓国はこれまで、他国の民主主義の問題に深く関与してこなかった。1990年代以降においてようやく民主化したという認識より、国内事情が優先視された。他方で欧米、とりわけ米国による民主化支援への不信感も影響していた。韓国が権威主義体制に置かれていた時代、米国は冷戦体制を理由に韓国の民主化に後ろ向きだった。1970年代には朴正煕政権が自らの人権弾圧問題を覆い隠すため、米議会にお金をばらまく、いわゆる「コリア・ゲート」も発覚する。そのため、韓国では民主化が外部要因なしに「自生的」に成し遂げられたという認識が強い。 ただし、一つの例外があるとしたら、それはミャンマー問題だ。韓国は日本と共に難民問題に極めて消極的だ(2019年の難民認定率は両国ともに0.4%)と知られているが、毎年最も多く認定されているのはミャンマー国籍の人々だ。アウンサン・スーチー率いる国民民主連盟(NLD)の韓国支部も1997年に設立されている。同年に大統領に当選した金大中は、国際社会で軍事独裁政権に対抗したスーチーへの支持を呼び掛けていた。自伝で金大中はミャンマー問題への特別な関心を述べている。 このような背景から年初に勃発したミャンマー軍部のクーデターは、韓国政府にとって無視するわけにはいかない事案だった。デモ隊に対する軍人・警察の弾圧は、韓国のニュースにも盛んに取り上げられている。文在寅政権は3月以降、次々と行動に出ている。文在寅本人は3月6日「ミャンマー軍と警察の暴力的な鎮圧を糾弾し、アウンサン・スーチー国家顧問をはじめとした収監された人々の釈放を求める」とSNS上で訴えた。12日にはミャンマー軍部への軍事物資の禁輸措置を取り、政府開発援助(ODA)の見直しも示唆した。韓国政府のミャンマーに対するODA規模は約9000万ドル規模(2019年)で、これまでの抑制的対応から一転したとの評価も出ている。 韓国は中国の少数民族(ウイグル、チベット)や香港の問題に対しては発言を控えており、北朝鮮人権問題においても政権によって正反対の反応を示してきた。こういった事案は基本的な外交路線、即ち「国益」とも深く結びついており、単純に「人権・価値」だけで対処できる問題ではない。日本も米国との「安全保障協議委員会(2+2)」で中国を名指しで非難したものの、EUや米国の制裁には追随していない。中国の激しい反発や経済問題の影響もあると考えられる。 現地のミャンマーでは韓国政府の対応がそれなりに評価されているようだ。ツイッターやフェイスブック上で韓国政府や韓国人に支援を求めるコメントは少なくなく、ミャンマー人の韓国語の書き込みも多くみられる。 3月16日、日本のラジオ番組(「荻上チキSession」)に出演したミャンマー人留学生はあえて韓国に言及しながら、日本人の支援が必要だと切実に訴えた。しかし、残念ながら日本社会の反応は普段の反中感情と絡み合った中国問題に比べると生ぬるい。個人的に違和感を覚えたのは日本のニュースの伝え方だった。3月2日、NHKは「『申し訳ありません』在日ミャンマー人 コロナ禍のデモ」といったタイトルで「自粛中にも関わらずデモを行っていることへの申し訳なさ」を表現するミャンマー人の様子を伝えている。韓国でも在韓ミャンマー人のデモが展開されているが、同様のタイトルは見たことがない。日本ではコロナを理由にデモを禁じていない(韓国では人数制限がかかっている)。なのに、ラジオ番組に出演したミャンマー人留学生はネットニュースのコメント欄に数多くの非難(「デモをやるべきではない」など)が寄せられたことに衝撃を受けたという。 ヨーロッパのような国際人権機構はアジアに存在しない。さらに、アジアで民主主義国とされる国は少数にとどまっている。域内の人権問題に対し、アジアの民主主義国が一丸となり声を上げることは容易ではない。中国や北朝鮮の事例からも見られるように、安保や国益などが複雑に絡み合っている。よく知られている通り、天安門事件以降、中国への経済制裁を最初に解除した先進国は日本であり、経済や歴史問題への考慮があったと言われている。しかし、経済的側面を優先する民主化支援はそれほど効果的ではない。1990年代以降、日本が積極的に支援しているカンボジアでは、フン・セン首相が独裁政権を築いており、民主主義とは程遠い状況が続いている。ミャンマー問題においても「日本は軍部とのつながりがあり自制を求めている」などの報道は見かけるものの、実質的な措置はほとんどとられていない。 如何なる民主化支援もある程度は「内政干渉」を伴う。権威主義体制下ではコロナ禍を機に市民の動きを制限する動きも増えている。日本と韓国のような民主主義国家の役割は何だろうか、どんな役割を果たして協力できるか、非常に重要な課題だ。もちろん、現状では懐疑的にならざるを得ないが、アジアの悲惨な状況からするとそれなりに協力はできる分野だと思う。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN_Jaeun> 2020年度渥美国際交流財団奨学生、一橋大学特任講師。2010年、ソウルの延世大学社会学部を卒業後、毎日経済新聞(韓国)に入社。社会部(司法・事件・事故担当)、証券部(IT産業)記者を経て2015年、一橋大学公共政策大学院に入学(専門職修士)。専攻は日本の政治・外交・メディア。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で昭和女子大学教授のボルジギン・フスレ様より新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆ボルジギン・フスレ編著『国際的視野のなかの溥儀とその時代』 2020年12月に開催された昭和女子大学100周年記念国際シンポジウムの論文集。このシンポジウムは、近年の研究の歩みをふりかえり、関係諸国に所蔵されている膨大な多言語の史料を統合し、歴史、社会、政治、文化などの諸分野の最新の研究成果を概観し、国際的視野のなかで溥儀とその時代を再評価しながら、創造的な議論を展開することを目的とした。 溥儀は清朝、中華民国、満洲国、シベリア抑留、中華人民共和国といった時代を経験した重要な人物である。にもかかわらず、関係諸国それぞれの溥儀、満洲国に対する認識はことなる。各国の研究者により、「溥儀とその時代」から、北東アジア史を再構成することをとおして、新たな成果がうまれるはずだと信ずる。 発行所:風響社 シリーズ:アジア研究報告シリーズ 出版年月日:2021/03/25 ISBN:9784894898097 判型・ページ数:A5・152ページ 定価:本体2,000円+税 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.fukyo.co.jp/book/b572971.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************