SGRAメールマガジン バックナンバー

  • LI Kotetsu “Freedom of Speech and Control, Self-restraint, Sontaku of Media”

    *********************************************** SGRAかわらばん855号(2021年1月28日) *********************************************** SGRAエッセイ#658 ◆李鋼哲「言論の自由とマスコミ統制・自粛・忖度」 最近、新型コロナ禍の中で言論の自由とマスコミ統制問題がクローズアップされている。 共同通信によると、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)は2020年4月21日、2020年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。対象の180カ国・地域のうち、日本は前年から1つ順位を上げ66位となったが、メディアの編集方針が経済的利益に左右されると改めて指摘された、と報道された。新型コロナウイルスの大流行に絡み、オルバン政権が強権的な姿勢を強めるハンガリーは順位を2つ下げ89位。情報統制を敷く中国は177位のままだった。感染者はいないと主張する北朝鮮は179位から再び最下位へ1つ落ちた。1位は4年連続ノルウェーで、フィンランド、デンマークがそれに続く。米国の順位は48位から45位に上がったという。 以上のランキングと関連して言論の自由が各国でどのように保証されているのか、または統制されているのか、筆者の関心はそこにある。 そもそも、現代のほとんどの国家では憲法により「言論の自由」が保証されている。自由度が一番低い共産党の独裁国家である北朝鮮や中国でも憲法では「言論の自由」や「出版の自由」、「集会の自由」などが保証されているはずだが、実態は甚だ「違憲」状態ではないだろうか?しかし、権力が憲法を踏みにじることができる権力構造の国であるため、「違憲状態」をチェックできるはずがない。 だからといって民主主義諸国ではどうであろうか?日本は先進国であり民主主義国とは言え「言論の自由」が保証されているとは言い切れない。筆者はゼミ生に課題を出して日本の「報道の自由度」を調べさせた結果、66番目であることが分かった。ただし、調べる前に何人かの学生からは「先生、ランキングは後ろから数えた方が早いんじゃないですか?」と冗談めいて言ってきたので、ちょっとびっくりした。普段は新聞をあまり読んでいない若い学生でさえそう感じるのだから。 最近、コロナ禍に関する情報に対しても民衆からの疑心暗鬼の声が聞こえる。ある事件をきっかけに筆者はそのような不信感には裏付けがあると確信した。 先月、北陸大学の隣の金沢大学(国立大学)の准教授がコロナ禍で死亡したと、本大学の職員から立ち話で聞いた。「えー、そんなこともあるの?」とびっくりし、すぐインターネットで調べてみたら、このような記事が見つかった。42歳の若い教員で、11月中旬ころに体調を崩し病院でインフルエンザと診断され、薬をもらって自宅療養していた。熱は多少下がったが治らなかったので、保健所に2回電話をしてPCR検査を希望したが、医師の診断なしでは検査を受けられないと、同じ回答を得たという。単身赴任だったので、奥さんがSNSで連絡しても返事がなく、大学の職員に連絡して確認を依頼したところ、死亡していることが見つかった。もともと喘息があったが、死亡後のPCR検査で新型コロナと判定されたという。 このような事件は重要な報道の種になるはずだ。ところが、新聞にもテレビにもほとんど報道されず、事件発生10日後に北陸中日新聞に次のような短い記事が載っただけであった。 ---------- 【2020年12月5日:北陸中日新聞】 インフルエンザとの同時流行に備え、石川県内では先月、新型コロナウイルスと双方の検査に対応できる指定医療機関が180カ所まで拡充されていた。先月26日の死亡確認後に新型コロナ感染が分かった金沢大准教授の高橋広夫さん=享年42=は、整備されたはずの新たな体制の中で、検査を受けられなかった。 ---------- 全国的には同じ系列の東京新聞に掲載されているものの、これだけでは、地元の多くの人にさえ知らされていない。大きく報道されなかったのは大学側の隠蔽なのか、行政側の忖度なのか、その裏のことは知るすべがない。このような事件はマスコミが取り上げ、行政側に対して責任を追及するのが民主主義国家のメディアではなかろうか?同じような隠し事や過小報告が他の地域にもあるのではないか?知り合いの有識者たちの話を聞くと、政府が意図的に隠しているのではないかと疑心暗鬼だ。報道の自由が制限されているのか、あるいはメディア側が自粛や忖度をしているのか、それとも両方なのか?報道の自由度ランキングが66番目の実態が実証できる一つの事例である。 では、報道の自由度が45番目のアメリカはどうだろうか?今度の大統領選挙を通じて、筆者の民主主義に対する信奉は完全に崩れてしまった。筆者は多言語の優位を生かして、今度の選挙戦に深い関心を持ってYouTubeなどに頼り、台湾のメディア、韓国のメディア、アメリカの華人系メディアなどを通じて、一般の主流メディアでは取り上げていない「裏の情報」を毎日のように目の当たりにして、選挙過程の実態が客観的に報道されていないことにがっかりした。 結論的に言うとアメリカの民主主義はもう崩壊している。なぜなら主流メディアは真実の一面しか報道しないからだ。「不正選挙」で「権力がもぎ取られている」ことには目をつむっており、エスタブリッシュメント勢力がアメリカ憲法や民主主義を踏みにじっていることについては、ほとんど報道されていない。SNSやネットメディアは政治的に主張が違う人々のメディアへのアクセスを封殺、ツイッターがトランプ大統領を封殺したのが典型的で、世界最大の民主主義国家の大統領がメディアの自主判断によって発言が封印されるという前代未聞の事態が発生しているのだ。ツイッターだけではない、FACEBOOKなど他の主流ソーシャルメディアは、自分たちの判断基準(ファクトチェック)に則って国民の声を封殺しており、これは国家権力ではないメディアの言語道断であろう。メディアが偏向の報道しかしないとき、国民は政治判断の材料としての真実を手にすることができず、そうなったら民主主義の実行手段である選挙の公正性・公平性はゆがんでしまい、民主主義はもはや崩壊したと言っても過言ではないだろう。 公正、公平に真実を国民に知らせる使命を背負っているはずのメディア(筆者の価値判断基準で)が中立性を失い、政治に介入する時、公正、公平、自由な報道はもはや望めないのではないか?筆者が信奉し追求してきた民主主義の価値観、哲学や理念はもはや心の中で崩れていくような気がしてたまらない。筆者は今後独裁政権を批判する根拠を失いかねない。 独裁政権でメディアが厳しくコントロールされていることは誰もがわかっている事実だ。しかし、民主主義国家では言論統制は「論外」だと思われる民衆が多いのではないか?いずれも国民が真実を知る権利を奪われている点では「五十歩百歩」ではなかろうか?独裁国家の「リーダー」や「知性人」は今度のアメリカ選挙戦を見て、民主主義総本山の米国をあざ笑っている。「ほら、やはり民主主義も偽善ではないか?言論の自由も嘘ではないか?」、「やはり我々の体制が優越だ」と。かれらは新型コロナ禍への対応についても「制度的優越性」を強調する。 だからと言って、言論の自由を無慈悲に弾圧する独裁政権が自分たちを正当化できるとは到底思えない。いつかは国民から見捨てられるに違いない。かの国は主権在民の「人民共和国」であり、封建王朝ではないのだから。かつて「無産階級(プロレタリア)の独裁」を掲げて百姓のために造った政権は、今や「有産階級(ブルジョア)とエリート階級の独裁」に変質したように思われてならない。 どこの国でも、いつの時代でも、国民の民意をくみ取り真に国民のための政治を行わない政権は、安定して長続きすることができないと筆者は考えている。中国の古典にも「水能載舟、亦能覆舟」《荀子哀公》という名言がある。その意味は、為政者は船の如く、民は水の如し;水は船を乗せて安全に航行することもできるが、船を倒して沈没させることもできる。為政者に対する戒めの諺である。 <李鋼哲(り・こうてつ)LI_Kotetsu> 中国延辺朝鮮族自治州生まれの朝鮮族。1985年中央民族大学(中国)哲学科卒業後、中共北京市委党校大学院で共産党研究、その後中華全国総工会傘下の中国労働関係大学で専任講師。91年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団研究員、名古屋大学研究員、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、06年より北陸大学教授。2020年10月、一般社団法人東北亜未来構想研究所を有志たちと創設、所長に就任。日中韓+朝露蒙など東北アジアを檜の舞台に研究・交流活動を行う。SGRA研究員および「構想アジア」チーム代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』(編著、2015年、日本僑報社)、その他論文やコラム多数。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • XIE Zhihai “What We Find from the Delayed Vaccine Development in Japan”

    *********************************************** SGRAかわらばん854号(2021年1月21日) *********************************************** SGRAエッセイ#657 ◆謝志海「遅れる日本のワクチン開発から見えてくるもの」 新型コロナウイルスという世界的大案件を持ち越したまま2021年を迎えてしまった地球。年末年始に「コロナ疲れ」を癒すどころか、日本では特に東京の感染者が急増したことが目立ち、気をつけながらのお正月を過ごした方が多かったことだろう。年末年始の感染者増加に、二度目の緊急事態宣言、コロナ関連においては相変わらず話題に事欠かない。医療従事者は慢性のコロナ疲れであることは間違いない。彼らの精神面はコロナと同様に心配である。最近では、欧州やアメリカで増えつつあるワクチン接種のニュースよりも、日々の感染者数の話が目立つ。 しかし、もし世界に先駆けてコロナワクチンを開発したのが日本の製薬会社だったら、きっともっと話題になっていただろうし、日本人はすでにワクチン接種をしていたかもしれない。なぜこんなことを思ったのかと言うと、昨年12月に米ファイザー製薬が開発したワクチンがロンドンで解禁になり、大きな話題を呼んだ。ドイツの製薬会社もほぼ同時にワクチン開発を発表した。その時私は、日本もすぐに大手製薬会社がワクチンを開発したと発表するのだろうと漠然と思っていた。日本が、米国のワクチンを取り入れるのか、ドイツのワクチンを取り入れるのか、そんなことより、日本は日本ですぐに製品化までするのだろうと思っていた。しかし年が明けてもそのような話は一向に聞かない。 ものづくりの国、技術先進国、おまけに世界に名の知れる大手製薬会社がいくつもある日本、何かがおかしい。どうした日本?そう考えると、最近の日本のプレゼンスが低くなっていることに気がついた。新進気鋭のスタートアップもさほど目立たなければ、世界的に有名な若きカリスマ社長などもいない。(個人的には気になる起業家は何人かいるが)業界問わず、そういうカリスマ的存在というものが、国をも引っ張り、国民の士気も上がるのでは?と思いはじめた。 もちろん日本にも起業し、現在も国際的に活躍する社長はいる。例えばソフトバンク・グループ孫正義、楽天を立ち上げた三木谷浩史など。しかし起業家の国際的知名度がぐっと上がるのは、海外に多い。中国ならアリババを作ったジャック・マー。イギリスならヴァージン・グループのリチャード・ブランソン。アメリカなら故人になってもスティーブ・ジョブスと、彼の遺したアップルは今でも存在感を放つ。同じくアメリカで今、一番目立つ社長といえば、テスラ・モーターズのイーロン・マスクだろう。このテスラで2年近く働いたという元パナソニックの副社長、山田善彦氏は、東洋経済の「テスラvs.トヨタ」特集で日本人にはちょっと耳の痛い指摘をした。「パナソニックに限らず、今の日本の企業はこのテスラのスピード感についていけない。よほどのカリスマ経営者がいるか、創業者が経営に関わっていない限り無理だ」そう、スピード感だ!今の日本に足りないものは。 日本に足りないものについて話す前に、日本の素晴らしいところも伝えておきたい。まずはなにより、マスク・手洗いをちゃんとする国。公共の場所がとても綺麗なところも日本の魅力だ。現に世界に比べたら、日本のコロナ感染者数は騒ぐほど多くはないのではないか。だからなおさら思う。今の日本には全体的にスピード感がないと。コロナで様々なことが停滞するのはわかる。感染者をたくさん出すが、ワクチン開発はものすごいスピードのアメリカとヨーロッパ諸国。中国は徹底した感染対策に加えて、いち早くワクチンを開発した。ここに日本が入れていないのが非常に残念なのだ。 製薬業界に全く詳しくない私が検索で見つけた、日本のワクチン開発が遅れている理由の一つとして「大規模な臨床試験をできない日本の弱点が新型コロナで明らかになった」と日経・FT感染症会議(主催・日本経済新聞社、共催・英フィナンシャル・タイムズ)で医薬品医療機器総合機構理事長の藤原康弘氏が言っている。どうやら制度の問題が大きいようだ。確かに日本の新薬の認証は元来とても慎重で時間がかかるとされている。しかし、コロナは未曾有のパンデミックで、従来どおりの慣習にのっとって開発していたら、間に合わないのは当然だ。コロナに対しては、特例を設け、迅速に優先的に感染者の情報を手に入れたりする方法を見つけたりして、なんとか国内での開発をあきらめたり、スピードを緩めたりはしないでほしい。 日本がポストコロナで輝くために必要なのは、危機管理をしながらの新しいことへの挑戦精神をあきらめないことだろうか。最後に、元駐中国大使、元伊藤忠商事株式会社会長を務めた丹羽宇一郎氏の著書からの言葉を引用したいと思う。「いままでの日本ではあり得なかったことが、これからは当たり前のように起こります。だからこそ、何歳になっても努力を怠ってはいけないのです。」当然至極のことを言っているようだが、これはコロナ前の2019年に出版された「仕事と心の流儀」という本の「「ドングリの背比べ」を続けていたら仕事を奪われる」の項からの一節である。今とても心に沁みる言葉ではないか。世界が混沌としたまま年を越したが、努力の先に明るい未来が待っているかもしれない。 <謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai> 共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • WANG Wenlu “Minority in Time of Emergency”

    *********************************************** SGRAかわらばん853号(2021年1月14日) *********************************************** SGRAエッセイ#656 ◆王ブンロ「有事のマイノリティー」 早いもので、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めて一年が経ち、人々の日常生活を完全に変えた。寒い季節に入って、再び世界中で感染者数が急増している。最近、我々日本在住の外国人の多くが、ある一つのニュースに心を痛めたのではないだろうか。日本政府は、新型コロナウイルスの変異種が確認されたことを受けて、全世界からの外国人の新規入国を停止した。2020年8月中旬以降、外国人の入国が緩和されて、職場では新しい外国人研究者を受け入れてきたので、私も近いうちに、実家に帰ったり、海外調査に出かけたりすることができると期待していたさなかのことであった。 2020年3月初旬に私は研究調査と学会参加のため、アメリカへ渡航した。すでに中国をはじめとするアジア地域(そしてイタリア)で感染が拡大していた頃であったが、アメリカではまだ特に入国禁止措置が取られている状態ではなく、学会も中止されていなかったため、渡航を決行した。アメリカに着いた一週間目は図書館などに問題なくアクセスできたが、3月15日頃から各大学が閉鎖となり、外出自粛の要請も出された。その後、私は毎日、日本の外務省のホームページで入国制限の最新情報を注視しつつ、航空会社に予定より早い便に変更してもらえないか、連絡し続けていた。幸か不幸か、入国制限がかけられるまでには帰れたが、公共交通の利用禁止や14日間の自宅隔離が求められ始めた当日に日本に着いた。帰国前の不安や焦りに満ちた日々をいまだに鮮明に覚えている。日本に自宅があるのに、外国人だから家に帰れない、家族と会えないということが、自分の友人に大きく影響を与えたためである。 「何かある時、日本で一番早く見捨てられるのは外国人だよね」 「それはどこの国でもそうでしょう」 最近のニュースを見て家族に愚痴を言った時に、このように返された。確かに、現代社会は国民国家の枠によって形成されて、その中の一人ひとりは基本的には特定の集団に属して、その所属によって色々と規定されてしまうのだ。もちろん、どの国にも所属しない難民や複数の集団に所属する多国籍者も存在して、実像はさらに複雑だ。多くの人にとっては、自国を離れ他国に行くと、通常は人口的なマイノリティーとならざるを得ない。肌の色や話す言葉などでマジョリティーとの明確な違いがある場合、さらに目立つこととなる。これによって、誤解されたり、差別を受けたりすることがありがちだ。特に、昨今のコロナ禍のような有事の際は、マイノリティーが置かれる厳しい環境がさらに浮き彫りになる。 3月にアメリカにいた際、私は感染拡大していることが分かっていても、外出時にマスクを付けなかった。現地でのトラブルを回避するためだった。その頃、世界中でアジア系の人がマスクを付けていることで、ウイルスだと言われたり、時に暴力を振われたりしたことが、しばしばニュースで報じられた。 カリフォルニアの民間団体や大学関係者が立ち上げた、アジア系アメリカ人や太平洋諸島出身の人々に対する暴力事件を申告するプラットフォームSTOP_AAPI_HATEには、3月中旬のオープンから8週間で1843件ものコロナ関係の差別事件の申告が寄せられた。中には身体的暴力が8.1%を占めている。差別の理由として、17.5%の回答者はマスクまたは服装と述べている。このような世界中のアジア系に対する差別を情報収集、分析、発信しているプラットフォームとして、他に、海外在住の中国系研究者が運営するSinophonia_Trackerやオーストラリアの民間団体が進めるI_Am_Not_a_Virusキャンペーン等々がある。SNS上でもJeNeSuisPasUnVirusのハッシュタグに注目が集まっている。 ◇STOP_AAPI_HATE https://stopaapihate.org/about/ ◇Sinophonia_Tracker https://sites.google.com/view/sinophobia-tracker/home ◇I_Am_Not_a_Virus http://diversityarts.org.au/not-virus-report-story/ これらは全て中国系をはじめとするアジア系の人々の処遇に目を配るものである。一方、同時期に、中国の広東省に居住するアフリカ系移民が大家に強制的に退居され、感染してないのに隔離されたことが報道された。もう少し調べたところ、インドでも例えば北東部出身で肌の色が中国人に近いモンゴロイド系の人、そして社会的に少数派であるムスリムへ差別や暴力が向けられている。いずれも社会のマイノリティーである。しかし、差別は感染症によって作り出されたものではなく、既存の差別問題が感染症によってさらに露呈されたのだ。危機時に自分の集団に所属しないと思われる人々を排除し攻撃することは、歴史的によくあることである。関東大震災後の朝鮮人殺傷事件や、9.11アメリカ同時多発テロ事件後の非イスラム教国での人口的少数であるイスラム教徒に向けられた敵意が想起される。 しかし、マジョリティーやマイノリティーとは、実は非常に流動的で、時間や空間が変わると入れ替わるものだと思う。日本社会に暮らしている自分は外国人として確かにマイノリティーだが、日本在住の外国人のなかでは中国人はマジョリティーである。日本人とは外見のみではほぼ見分けられないため、日本語を上手に話せば、うまくマジョリティーである日本人にカモフラージュすることもできる。もしかすると、日本国籍を持っているハーフの日本人よりも日本人と思われやすく、疎外感を感じにくいかもしれない。そう考えると、国籍や肌色といった一見明確そうなカテゴリー付けも実は非常に恣意的なものだと感じる。 新型コロナが世界中で広がっている中、最近ではあまり特定グループを敵視することが報道されなくなった。しかし程度の差はあれ、どの国や地域でも起こっていた他人化(othering)の現実を簡単に忘れてはならない。世界規模のパンデミックはいずれまた発生するかもしれないし、人類は色々な災害に直面するだろう。その時、今回のコロナの経験を振り返った上で、人々がより寛容でいられるようになればと願う。 <王ブンロ WANG_Wenlu> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。東京大学国際高等研究所東京カレッジ特任研究員。2011年北京外国語大学中国語言文学学科卒業。2014年同大学大学院比較文学専攻修了、修士号取得。2020年3月東京大学人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。専門分野は東アジアとヨーロッパの交渉史、東アジアにおけるキリスト教の布教史。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Invitation to SGRA Webinar “The 5th Dialogue of National Histories” (Final Announcement)

    *********************************************** SGRAかわらばん852号(2021年1月7日) ・-・-・-・-・-・-・-・ あけましておめでとうございます 今年もよろしくお願いいたします ・-・-・-・-・-・-・-・ 【1】SGRAウェビナー「第5回国史たちの対話の可能性『19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応』」へのお誘い(2021年1月9日、オンライン)(最終案内) 【2】催事紹介:東京カレッジ_オンライン討論シリーズ『グローバルヒストリーの対話』 *********************************************** 【1】SGRAウェビナー「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 ◆第65回SGRAフォーラム/第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 テーマ:「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」 日 時:2021年1月9 日(土)午後2時~5時15分(日本時間) 方 法:Zoom_Webinarによる 言 語:日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) ※参加申込(下記リンクより参加登録をお願いします) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_qneDSQLgS4GWpaC1tLzuoQ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)では、2016年以来「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を4回実施してきたが、今回は初めて試みとしてオンラインで半日のプログラムを開催する。今回のフォーラムでは、3カ国の歴史研究者が近代史の中の感染症についての研究を発表し、東アジア地域の交流史としての可能性を議論する。 なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。フォーラム終了後は講演録(SGRAレポート)を発行し、参加者によるエッセイ等をメルマガ等で広く社会に発信する。 ■テーマ「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」 東アジア地域で持続的に続く交流の歴史の中で、感染症の発生と流行が日中韓3国に及ぼした影響と社会的対応の様相を検討する。感染症はただ一国にとどまらず、頻繁に往来した商人たちや使節などに因って拡散され、大きな人的被害を招いた。感染症が流行する中、その被害を減らすために、各国なりに様々な対処方法を模索した。これを通じて感染症に対する治療方法のような医学知識の共有や防疫のための取り締まり規則の制定などが行われた。この問題について各国がどのように認識し、如何に対応策を用意したかを検証し、さらに各国の相互協力とその限界について考える。 ■プログラム 第1セッション(14:00-15:40)座長:村和明(東京大学) 【発  表】 韓国:朴漢珉(東北亜歴史財団)「開港期朝鮮におけるコレラ流行と開港場検疫」 日本:市川智生(沖縄国際大学)「19世紀後半日本における感染症対策と開港場」 中国:余新忠(南開大学)「中国防疫メカニズムの近代的発展と性格」 【指定討論】 韓国:金賢善(明知大学) 日本:塩出浩之(京都大学) 中国:秦方(首都師範大学) 第2セッション(15:45-17:15)座長:南基正(ソウル大学) 【論点整理】劉傑(早稲田大学) 【自由討論】パネリスト(国史対話プロジェクト参加者) 【総  括】宋志勇(南開大学) 【閉会挨拶】三谷博(跡見学園女子大学) ※プログラム・会議資料の詳細は、下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/10/J_Kokushi4_ProjectPlan.pdf ・プロジェクト資料 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/2020/15892/ ・チラシ http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/10/J-Kokushi5-Poster-light.jpg -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員で東京大学東京カレッジ研究員の王Wenluさんよりオンライン討論シリーズのご案内をいただきましたのでご紹介します。 ◆東京カレッジ_オンライン討論シリーズ「グローバルヒストリーの対話」のご案内 2019年東京大学に新しく設立された東京カレッジでは、国内外の卓越した研究者や知識人が分野横断型の共同研究を行い、そこで生まれた独創的・先端的知と学問の魅力を世界に向けて発信しています。5つの研究テーマ――デジタル革命と人類の未来、学際的アプローチによる地球の限界への挑戦、内から見た日本と外から見た日本、2050年の人文学、生・命(いのち)の未来――を掲げ、地球と人類社会の未来を貢献する「知の協創の世界拠点」を目指します。 このたび、東京カレッジは「グローバルヒストリーの対話」と題するオンライン討論のシリーズを企画しました。歴史研究の新しい潮流「グローバルヒストリー」とは何か?その方法、テーマと意義は?研究者の立ち位置と研究成果の関係は?海外研究者と東京カレッジの若手研究者が同分野の歴史・現在・未来を語らいます。What_Is_Global_Historyの著者であるセバスチャン・コンラート教授や、中国の人気ポッドキャスト番組「中国発のグローバルヒストリー」の主宰者である葛兆光教授をはじめとする世界の第一線で活躍するグローバルヒストリーの研究者10名が登壇します。私も東京カレッジ側の対談者として登場します。 13話からなる全シリーズは、1月15日より下記にて順次公開されます。 ・東京カレッジのウェブサイト https://www.tc.u-tokyo.ac.jp ・東京カレッジYouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCGI2NUAxXMyN8-Up3n4piaQ 登壇者や公開日程の詳細は下記よりご確認ください。 https://www.tc.u-tokyo.ac.jp/ai1ec_event/3131/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Important Announcement from the 6th Asia Future Conference

    *********************************************** SGRAかわらばん851号(2020年12月24日) -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 新型コロナウイルスまん延で大変な1年間でしたが、 SGRAかわらばんをお読みいただき、ありがとうございました。 新年は1月7日から始めます。 みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【1】第6回アジア未来会議の開催を1年延期します 【2】国史対話メルマガ#25を配信:李命美「私の高麗-モンゴル関係研究、『民主的市民の養成教育』についての断想」 【3】催事紹介:国際シンポジウム「近代日本の中国学の光と影」(2021年1月11日、オンライン) 【4】SGRAウェビナー「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」へのお誘い(2021年1月9日、オンライン)(再送) *********************************************** 【1】アジア未来会議より重要なお知らせ 新型コロナウイルスの流行により、第6回アジア未来会議(AFC#6)の開催を1年延期します。感染が抑えられている台湾で会議を開催することはできますが、海外からの参加者が入国できるようになることを願って延期を決定しました。 ◆第6回アジア未来会議の新しいスケジュール 日時:2022年8月26日(金)~8月30日(火)(到着・出発日を含む) 会場:中国文化大学(台北市) プログラム:基調講演、シンポジウム、分科会(論文の口頭発表)、見学ツアー、ウェルカムパーティー、クロージングパーティー、優秀論文賞(AFC#6B)授賞式 他 ◇延期に伴い下記の通り前年祭(プレカンファランス)を開催します。 日時:2021年8月26日(木) 会場:中国文化大学(台北市)を拠点にハイブリット式(対面、オンライン併用)で実施 会場におけるプログラム:基調講演、シンポジウム、台湾地区優秀論文の口頭発表 オンラインプログラム:優秀論文賞(AFC#6A)授賞式、優秀論文(AFC#6A)の口頭発表 ◇論文の投稿、奨学金と優秀論文の選考について 2022年の開催までに、論文の発表要旨の審査、および奨学金と優秀論文の選考を2回繰り返して実施します(AFC#6AとAFC#6B)。 2021年に実施予定だった会議に向けて2020年9月20日までに投稿され、審査に合格した論文発表要旨を対象としたAFC#6A奨学金と優秀論文の選考は現在進行中です。選考結果は当初の予定通り発表します。 2020年9月21日から2021年8月31日までに投稿される論文発表要旨は、AFC#6B奨学金と優秀論文の審査対象となります。 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2021/important-announcement/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史対話」メールマガジン第25号を配信 ◆李命美「私の高麗-モンゴル関係研究、『民主的市民の養成教育』についての断想」 COVID-19の世界的な流行が長期化し、私たちの生活や価値観にもたらした、そしてもたらすであろう変化に関する考察が活発に行われている。そうした分析を重く、また興味深く受け止めているが、それと関連して書くことは筆者の知識と力量を超える。このエッセイでは、筆者の専攻ともっと直接的な関連のある、もう一つの「流行」について、簡単に話してみることにしたい。 韓国の教育学界では近年「民主的市民の養成教育」が強調されている。このような動きは韓国だけの問題ではないはずであり、また最近始まったことでもないが、「人文大学」で学位を取った筆者は、最近「師範大学」に所属し教師を夢見る学生たちを教えながらこのような熱風を文字通り体感している。教育部の支援を受け、大学では既存の講義を「民主的市民の養成教育」の趣旨に合わせて改善したり、関連する新しい講義を設け教員に支援金を支給したりしている。 中等教育を受けた学生たちに民主的市民としての資質を備えさせる教育という趣旨には同意するが、具体的に「どうやって?」という問題、特に筆者とこのエッセイを読む研究者たちの専攻領域である歴史教育においてこの問題をどう扱うべきかという問題は、やや複雑である。 続きは下記リンクからお読みください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2020LeeMyungmiEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】催事紹介 SGRA会員で東北大学国際文化研究科の朱琳さんから下記オンライン会議のお知らせをいただきましたのでご案内します。参加ご希望の方は、主催者に直接お申込みください。 ◆国際シンポジウム「近代日本の中国学の光と影」 日時:2021年1月11日(月・祝)13:00~18:00 開催方法:Zoomによるオンライン開催(事前申込制) 参加定員:100名まで ※参加者多数の場合、先着順となります。 申込・お問合せ: お名前、所属、メールアドレスをご記入の上、下記へご連絡ください。 [email protected] 申込締切:2021年1月9日(土)17:00 主催:東北大学大学院国際文化研究科 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://asnet-utokyo.jp/news/external/6703 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【4】SGRAウェビナー「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」へのお誘い(再送) 下記の通り第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 ◆第65回SGRAフォーラム/第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 テーマ:「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」 日 時:2021年1月9 日(土)午後2時~5時15分(日本時間) 方 法:Zoom_Webinarによる 言 語:日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) ※参加申込(下記リンクより参加登録をお願いします) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_qneDSQLgS4GWpaC1tLzuoQ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)では、2016年以来「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を4回実施してきたが、今回は初めて試みとしてオンラインで半日のプログラムを開催する。今回のフォーラムでは、3カ国の歴史研究者が近代史の中の感染症についての研究を発表し、東アジア地域の交流史としての可能性を議論する。 なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。フォーラム終了後は講演録(SGRAレポート)を発行し、参加者によるエッセイ等をメルマガ等で広く社会に発信する。 ■テーマ「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」 東アジア地域で持続的に続く交流の歴史の中で、感染症の発生と流行が日中韓3国に及ぼした影響と社会的対応の様相を検討する。感染症はただ一国にとどまらず、頻繁に往来した商人たちや使節などに因って拡散され、大きな人的被害を招いた。感染症が流行する中、その被害を減らすために、各国なりに様々な対処方法を模索した。これを通じて感染症に対する治療方法のような医学知識の共有や防疫のための取り締まり規則の制定などが行われた。この問題について各国がどのように認識し、如何に対応策を用意したかを検証し、さらに各国の相互協力とその限界について考える。 ■プログラム 第1セッション(14:00-15:40)座長:村和明(東京大学) 【発  表】 韓国:朴漢珉(東国大学)「開港期朝鮮におけるコレラ流行と開港場検疫」 日本:市川智生(沖縄国際大学)「19世紀後半日本における感染症対策と開港場」 中国:余新忠(南開大学)「中国防疫メカニズムの近代的発展と性格」 【指定討論】 韓国:金賢善(明知大学) 日本:塩出浩之(京都大学) 中国:秦方(首都師範大学) 第2セッション(15:45-17:15)座長:南基正(ソウル大学) 【論点整理】劉傑(早稲田大学) 【自由討論】パネリスト(国史対話プロジェクト参加者) 【総  括】宋志勇(南開大学) 【閉会挨拶】三谷博(跡見学園女子大学) ※プログラム・会議資料の詳細は、下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/10/J_Kokushi4_ProjectPlan.pdf ・プロジェクト資料 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/2020/15892/ ・チラシ http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/10/J-Kokushi5-Poster-light.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • XIE Zhihai “Go To School rather than Go To Travel”

    *********************************************** SGRAかわらばん850号(2020年12月17日) 【1】エッセイ:謝志海「GoToトラベルよりもGoToスクール」 【2】寄贈書紹介:田尾陽一『飯舘村からの挑戦―自然との共生をめざして』 【3】「国史たちの対話の可能性」オンライン会議へのお誘い(再送) 「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」(2021年1月9日) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#655 ◆謝志海「GoToトラベルよりもGoToスクール」 少し前のことだが、大学1年生のお子さんを持つ母親が書いたと思われるブログに遭遇した。全く知らない方のある日のつぶやきだが、私の心に重くのしかかり色々と考えることになってしまった。その大学生の娘さんはこの春に入学して、まだ一度もキャンパスの門をくぐったことがないという。そしてそのまま後期が始まり、大学に行かないことが当たり前のように過ごす娘。そんな中、家に届いたのは来年度の学費の振込票だった。お母さんは「GoToトラベルもいいけど、GoToスクールもなんとかしてほしいものだ」と締めくくっていた。 きっとこれが学校に通えないお子さんを持つ親のリアルな叫びなのだろう。私はなんとも言えない苦い気持ちになった。以前「かわらばん」で、「大学はなにがあっても学生に学びの機会を提供できる場でなければいけない」と書いたが、去年の今頃と今を比べて、学生の勉強時間は減っていないかと心配になる。全国の大学教員は、講義を前もって録画してシステムにアップロードするなど、むしろ去年より授業の準備に手間がかかっている方も多いだろう。しかし保護者をはじめとする、学費を払う者と、学ぶ学生にそれが伝わらなければ意味がない。オンライン授業の早期普及は助かるが、それでも限界がある。早稲田大学の田中愛治総長が2020年10月13日の「週刊エコノミスト」で「社会が求めている人材はたくましい知性としなやかな感性を兼ね備えた人物だ。たくましい知性はオンラインで7割ぐらい身につけることができるが、しなやかな感性はオンラインでは無理だ」と語っていた。 登校できないこと、勉強時間の損失は大学生に限ったことではない。義務教育の学生、高校生、そして世界中全ての学生にとって、今年の学習環境と勉強時間は憂慮される。英エコノミスト誌(2020年7月18日)でも、新型コロナウイルスによって子どもたちが学校に通えないことは、世界中の生徒に大きなダメージを生むことを憂いていた。例えば、(家庭で)虐待を被る可能性があること、栄養不良、心の健康の低下などに陥りやすいと警笛を鳴らしている。また学習機会の損失が未来の経済にどのように影響するかも指摘しており、同記事では「世界銀行によると(コロナウイルスの影響で)学校が5ヶ月間閉鎖した場合、生徒たちの生涯収入は現在の額で10兆ドルの減少になるだろう」と予測している。 この世界銀行の試算を聞いて真っ先に思い出されるのが、冒頭のお母さんのブログの最後「GoToトラベルよりもGoToスクール」だ。目先の経済をまかなうより、将来を見越して持続可能な経済政策を打ち立てなければならない。特に日本は少子化が止まらないというのに。今いる子どもたちの将来の年収が減ったら、誰でも容易にいくつもの心配事が浮かぶだろう。今年の春先、「GoToトラベル」なんて存在していなかった。それがいまでは、日本国民でこの言葉を知らない人は皆無に等しい。ならば同じぐらいのスピードで全ての学生の学びの機会が追いつく施策も作れるはずだ。 もちろん、文部科学省が大学生の支援策として学生支援緊急給付金を交付したり、大学が個別に支援金を配布したりしている。例えば東京大学と早稲田大学は、経済的に困窮した学生に対し、前者は1人5万円、後者は10万円を支給し学生の退学を防ごうとしている。経済的な理由で大学を離れるのを防ぐのは大事だが、登校する機会が減り、オンライン授業ばかりになっても、学生たちが退屈することのない授業やプログラムを提供し、このコロナ禍でも自身の大学を選んでよかったと思えれば、「退学」の2文字はよぎらないはずだ。これもまた経済の話になるが、大学卒と高校卒の年収は100万円ぐらい違うという調査もある。そういうことを考慮し、大学生が金銭を理由に退学して大学を去ったとしても、休学システムを寛容化させる、もしくは復学のチャンスを与えてあげる対策も必要であろう。 GoToトラベルと同じぐらいのスピードと熱量で学生の学びを停滞させない政策を作るべきだ。厳しい冬の到来は目の前だが、この冬コロナが増えようが減ろうが、来年度は2019年に戻るか追い越すぐらい、学校に通う全ての子どもたちに学びのチャンスが到来することを願うばかりだ。これからも身を引き締めて、教育現場の活性化に努めたい。 <謝志海(しゃ・しかい)XIE_Zhihai> 共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 残念ながら今年は中止になりましたが、毎年SGRAが開催している「ふくしまスタディツアー」を共催していただいている「ふくしま再生の会」の田尾陽一理事長より、近刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。SGRAかわらばんでご紹介したSGRA会員による報告文も掲載されています。 ◆田尾陽一『飯舘村からの挑戦―自然との共生をめざして』 学生時代に東大大学院で高エネルギー加速器物理学を研究していた著者は、福島第一原発事故に際して「被災地の放射線量はどうなっているのか」と疑問をもち、福島県飯舘村の農民と協働して再生への活動を始めた。ボランティアと研究者を結集して「ふくしま再生の会」を結成し、飯舘村で自然と人間の共生を訴える著者が、震災から十年の節目にこれまでの活動を振り返り、都市から地方への流れが進むポストコロナの時代に不可欠な、自然との共生理念とその実践の道を提示する。 発行:筑摩書房 シリーズ:ちくま新書 定価:本体940円+税 刊行日: 2020/12/07 判型:新書判 ページ数:320 ISBN:978-4-480-07363-1 JANコード:9784480073631 詳細は、下記リンクよりご覧ください。 https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480073631/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】オンライン会議「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」へのお誘い(再送) 下記の通り第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 ◆第65回SGRAフォーラム/第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 テーマ:「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」 日 時:2021年1月9 日(土)午後2時~5時15分(日本時間) 方 法:Zoom_Webinarによる 言 語:日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) ※参加申込(下記リンクより参加登録をお願いします) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_qneDSQLgS4GWpaC1tLzuoQ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)では、2016年以来「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を4回実施してきたが、今回は初めて試みとしてオンラインで半日のプログラムを開催する。今回のフォーラムでは、3カ国の歴史研究者が近代史の中の感染症についての研究を発表し、東アジア地域の交流史としての可能性を議論する。 なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。フォーラム終了後は講演録(SGRAレポート)を作成し、参加者によるエッセイ等をメルマガ等で広く社会に発信する。 ■テーマ「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」 東アジア地域で持続的に続く交流の歴史の中で、感染症の発生と流行が日中韓3国に及ぼした影響と社会的対応の様相を検討する。感染症はただ一国にとどまらず、頻繁に往来した商人たちや使節などに因って拡散され、大きな人的被害を招いた。感染症が流行する中、その被害を減らすために、各国なりに様々な対処方法を模索した。これを通じて感染症に対する治療方法のような医学知識の共有や防疫のための取り締まり規則の制定などが行われた。この問題について各国がどのように認識し、如何に対応策を用意したかを検証し、さらに各国の相互協力とその限界について考える。 ■プログラム 第1セッション(14:00-15:40) 座長:村和明(東京大学) 【歓迎挨拶】今西淳子(渥美国際交流財団) 【開会挨拶】趙珖(韓国国史編纂委員会) 【発  表】 韓国:朴漢珉(東国大学)「開港期朝鮮におけるコレラ流行と開港場検疫」 日本:市川智生(沖縄国際大学)「19世紀後半日本における感染症対策と開港場」 中国:余新忠(南開大学)「中国防疫メカニズムの近代的発展と性格」 【指定討論】 韓国:金賢善(明知大学) 日本:塩出浩之(京都大学) 中国:秦方(首都師範大学) 第2セッション(15:45-17:15) 座長:南基正(ソウル大学) 【論点整理】劉傑(早稲田大学) 【自由討論】パネリスト(国史対話プロジェクト参加者) ・韓国: 李命美(慶尚大学)、金甫桄(嘉泉大学)、許泰玖(カトリック大学)、崔ジョヒ(徳成女子大学)、韓承勲(韓国芸術総合学校)、韓成敏(大田大学)、金キョンテ(全南大学) ・日本: 向正樹(同志社大学)、四日市康博(立教大学)、八百啓介(北九州市立大学)、大川真(中央大学)、大久保健晴(慶応義塾大学)、青山治世(亜細亜大学)、平山昇(神奈川大学) ・中国: 鄭潔西(寧波大学)、孫衛国(南開大学)、孫青(復旦大学)、彭浩(大阪市立大学)、李恩民(桜美林大学) ・ゲスト: 明石康(元国連事務次長)、楊彪(華東師範大学)、王文隆(南開大学)、段瑞聡(慶応義塾大学) ・オブザーバー: 葛兆光(復旦大学)、祁美琴(中国人民大学) 【総  括】宋志勇(南開大学) 【閉会挨拶】三谷博(跡見学園女子大学) ※同時通訳 韓国語⇔日本語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学) 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学) 中国語⇔韓国語:金丹実(フリーランス)、朴賢(京都大学) ※プログラム・会議資料の詳細は、下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/10/J_Kokushi4_ProjectPlan.pdf ・プロジェクト資料 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/2020/15892/ ・チラシ http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/10/J-Kokushi5-Poster-light.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Invitation to SGRA Webinar “The 5th Dialogue of National Histories”

    *********************************************** SGRAかわらばん849号(2020年12月10日) *********************************************** ◆第65回SGRAフォーラム/第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性 オンライン会議「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」へのお誘い 下記の通り第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」 日 時:2021年1月9 日(土)午後2時~5時15分(日本時間) 方 法:Zoom_Webinarによる 言 語:日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) ※参加申込(下記リンクより参加登録をお願いします) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_qneDSQLgS4GWpaC1tLzuoQ お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■概要 渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)では、2016年以来「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を4回実施してきたが、今回は初めて試みとしてオンラインで半日のプログラムを開催する。今回のフォーラムでは、3カ国の歴史研究者が近代史の中の感染症についての研究を発表し、東アジア地域の交流史としての可能性を議論する。 なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。フォーラム終了後は講演録(SGRAレポート)を作成し、参加者によるエッセイ等をメルマガ等で広く社会に発信する。 ■テーマ「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」 東アジア地域で持続的に続く交流の歴史の中で、感染症の発生と流行が日中韓3国に及ぼした影響と社会的対応の様相を検討する。感染症はただ一国にとどまらず、頻繁に往来した商人たちや使節などに因って拡散され、大きな人的被害を招いた。感染症が流行する中、その被害を減らすために、各国なりに様々な対処方法を模索した。これを通じて感染症に対する治療方法のような医学知識の共有や防疫のための取り締まり規則の制定などが行われた。この問題について各国がどのように認識し、如何に対応策を用意したかを検証し、さらに各国の相互協力とその限界について考える。 ■プログラム 第1セッション(14:00-15:40) 座長:村和明(東京大学) 【歓迎挨拶】今西淳子(渥美国際交流財団) 【開会挨拶】趙珖(韓国国史編纂委員会) 【発  表】 韓国:朴漢珉(東国大学)「開港期朝鮮におけるコレラ流行と開港場検疫」 日本:市川智生(沖縄国際大学)「19世紀後半日本における感染症対策と開港場」 中国:余新忠(南開大学)「中国防疫メカニズムの近代的発展と性格」 【指定討論】 韓国:金賢善(明知大学) 日本:塩出浩之(京都大学) 中国:秦方(首都師範大学) 第2セッション(15:45-17:15) 座長:南基正(ソウル大学) 【論点整理】劉傑(早稲田大学) 【自由討論】パネリスト(国史対話プロジェクト参加者) ・韓国: 李命美(慶尚大学)、金甫桄(嘉泉大学)、許泰玖(カトリック大学)、崔ジョヒ(徳成女子大学)、韓承勲(韓国芸術総合学校)、韓成敏(大田大学)、金キョンテ(全南大学) ・日本: 向正樹(同志社大学)、四日市康博(立教大学)、八百啓介(北九州市立大学)、大川真(中央大学)、大久保健晴(慶応義塾大学)、青山治世(亜細亜大学)、平山昇(神奈川大学) ・中国: 鄭潔西(寧波大学)、孫衛国(南開大学)、孫青(復旦大学)、彭浩(大阪市立大学)、李恩民(桜美林大学) ・ゲスト: 明石康(元国連事務次長)、楊彪(華東師範大学)、王文隆(国立政治大学)、段瑞聡(慶応義塾大学) ・オブザーバー: 葛兆光(復旦大学)、祁美琴(中国人民大学) 【総  括】宋志勇(南開大学) 【閉会挨拶】三谷博(跡見学園女子大学) ※同時通訳 韓国語⇔日本語:李ヘリ(韓国外国語大学)、安ヨンヒ(韓国外国語大学) 日本語⇔中国語:丁莉(北京大学)、宋剛(北京外国語大学) 中国語⇔韓国語:金丹実(フリーランス)、朴賢(京都大学) ※プログラム・会議資料の詳細は、下記リンクをご参照ください。 ・プロジェクト概要 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/10/J_Kokushi4_ProjectPlan.pdf ・プロジェクト資料 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/2020/15892/ ・チラシ http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/11/J-Kokushi5-Poster-light.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • SGRA China Forum #14 Report

    *********************************************** SGRAかわらばん848号(2020年12月3日) 【1】チャイナフォーラム「東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考」報告 【2】寄贈本紹介:ナーヘド・アルメリ『金子みすゞの童謡を読む』 *********************************************** 【1】孫建軍「第14回SGRAチャイナフォーラム『東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考』報告」 2020年11月1日午後、第14回SGRAチャイナフォーラム『東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考』がオンラインのウェビナー形式で開催された。北京大学民主楼(燕京大学の教会だった場所)の講堂には大学院生30名近くが集まり、ささやかな会場が設けられていた。 日本時間の午後4時、北京時間の午後3時の定刻より、フォーラムが始まった。今西淳子常務理事に続き、国際交流基金北京日本文化センターの高橋耕一郎所長が開会の挨拶をして、滑り出しは順調だった。 国際日本文化研究センター稲賀繁美教授の講演テーマは「中国古典と西欧絵画との理論的邂合―東西思想の接触圏としての日本近代美術史再考」。近代にさしかかった時代から、時には新型コロナウイルスのように恐れられていた西洋文明が東アジアに影響を及ぼすようになった。絵画の世界においても、日本、中国、ヨーロッパといった3者の往来、交錯が顕著に見られた。稲賀先生は美しい絵を見せながら、「気韻生動」、「感情移入」等の美学の概念、そしてそれらを一身に背負う画家にスポットを当て、解説を行った。ところが、大変残念なことに、機械の音声トラブルが生じ、先生の声が途切れたりした。 講演に続き、清華大学歴史系の劉暁峰先生、東京大学東洋文化研究所の塚本麿充先生、清華大学中文系の王中忱先生(公務のため当日は参加できず、中国社会科学院文学研究所の高華シン先生が代読)、香港城市大学中文及び歴史学科の林少陽先生よりそれぞれの専門的知見に基づいたコメントが述べられた。 その後の質疑応答の時間も音声トラブルで稲賀先生とのやりとりに困難が続いたが、先生ご自身をはじめ、通訳者、渥美財団のスタッフの懸命なご尽力がスクリーンを通して目に焼き付いた。 2020年はコロナへの恐怖から始まったといっても過言ではない。今年のチャイナフォーラムの開催は難しいと半分諦めていたが、8月頃から急ピッチで準備が進められた。形式、日時、テーマ、講演者、コメンテーター、ポスターなど、多くの方々に支えられながら開催に至った。参加者の理解を促すために、講演内容に関連する数々の論文が事前に紹介されたのも印象的だった。300名近い当日の参加者数もチャイナフォーラム開催以来、最大の数字を誇る。深く御礼を申し上げたい。 どんなに素晴らしい美術品にも欠点が存在するように、今回のフォーラムでは音声トラブルにより講演内容を十分堪能できなかったとのご指摘を真摯に受け止めたい。フォーラムの全容は、日本語版と中国語版の合冊レポートにまとめ、2021年春に冊子とPDFで発行する予定である。改めて当日の機械の不具合についてお詫びし、お聞き苦しかった点はレポートで補っていただきたい。 当日の写真 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/12/14thChinaForum_Photos.pdf アンケート集計 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2020/12/14thChinaForum_Survey.pdf <孫建軍(そん・けんぐん)SUN Jianjun> 1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。専攻は近代日中語彙交流史。著書『近代日本語の起源―幕末明治初期につくられた新漢語』(早稲田大学出版部)。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員のナーヘド・アルメリさんよりご著書をご寄贈いただきましたので紹介します。 ◆ナーヘド・アルメリ『金子みすゞの童謡を読む:西條八十と北原白秋の受容と展開』 シリア人の日本文学研究者が、日本語と格闘しながら、独創的な金子みすゞ童謡論を完成させた。 「みんなちがって、みんないい」というフレーズで有名な金子みすゞの童謡のイメージは、〈やさしさ〉が強調されてきた。はたしてみすゞの童謡の本質は〈やさしさ〉だけなのだろうか。本書の著者、シリア人の日本文学研究者は、この〈やさしさ〉という童謡の本質に疑問符を突きつけ、〈やさしさ〉を超えた、みすゞ童謡の実像に迫り、画期的なみすゞ童謡論を生み出した。従来の研究では、みすゞ童謡に影響を与えた存在として西條八十が挙げられ、北原白秋については言及されてこなかった。著者は、八十と白秋の詩や童謡、両者が発表した翻訳詩などの緻密な分析を通して、みすゞが八十と白秋の両者からそれぞれに作品の特長や創作上の方法論を吸収しつつ、一生懸命にオリジナルの作品世界に昇華させたことを解明した。 巻末の「金子みすゞと私」は、日本語を学び、みすゞの魅力を発見した著者が、みすゞ童謡の普遍性について述べる。 発行:港の人 四六判/並製本/本文240頁 2000円(本体価格・税別) 2020年11月6日 ISBN978-4-89629-381-4 詳細は下記リンクご参照ください。 https://www.minatonohito.jp/book/381/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • KIM Sinhye ” Exchange Activities in Social Welfare”

    *********************************************** SGRAかわらばん847号(2020年11月26日) 【1】エッセイ:金信慧「社会福祉における交流活動」 【2】国史対話メルマガ#24を配信:彭浩「ヘルス・パスの誕生」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#654 ◆金信慧「社会福祉における交流活動―山形県高畠町での経験を通して」 私が所属している立教大学コミュニティ福祉学部(コミュニティ福祉学研究科)と山形県高畠町では、2001年4月から地域連携プログラムのひとつである「高畠プロジェクト」を始めた。2010年11月には相互友好協定を結び、さまざまな形での連携交流を続けている。具体的には実習や演習、農業体験や調査研究など、毎年双方からの提案による活動が繰り広げられている。 高畠町は山形県の南東にある人口約2万3千人の町で、ぶどう「デラウエア生産量日本一」など、農業の盛んな町として知られる。この町は「まほろばの里」と呼ばれている。「まほろば」とは、「周囲を山々で囲まれた、実り豊かな土地で美しく住みよいところ」という意味の古語である。山形新幹線高畠駅を降りると、南に飯豊連山、西に朝日連峰、東を蔵王山に囲まれ、米、野菜、果物の豊かな土地を目にすることができる。 立教大学と高畠高校の高大連携交流事業として11年目を迎えた2019年6月19、20日の2日間、私は立教大学の大学院生講師として派遣され、福祉を選択している生徒を対象にした講義とディスカッション形式の特別授業を行った。このプロジェクトは高等教育を受講させることで高校生の知的欲求を開発し、山形県内各市町村の未来の地域コミュニティを担う人材を育てることを目的としている。 1日目の「社会福祉基礎」では、4月から初めて社会福祉を学ぶ2・3年次生徒約50名を対象に社会福祉を学ぶ面白さを中心に、私が社会福祉の道に進んだきっかけや、韓国と日本の社会状況、両国における福祉の今後の課題などについて講義をした。 2日目は、1年間を通して自ら設定した課題を研究する「社会福祉研究」のクラスで、私が大学院で行っている研究の内容について講義をした後、3年生6名が課題研究の発表を行った。生徒がそれぞれ取り組んでいる課題研究のテーマは、孤独死や無理心中、高齢者の介護問題、高畠町の観光案内、地域再生の方法など多様で興味深く、議論を深めることができた。 生徒からは、私が講義の中で取り上げた少子高齢化、人口減少社会、消滅可能性都市の事例について「今までは少子高齢化という問題について深く考えたことがなかったけど、他人事ではなく、私達1人1人がこれらの課題について考えて行かなければならないと思いました。今の世代からできることを少しずつ積み重ねていこうと思います。この問題をより多くの人に知ってもらい、危機感を感じてもらうことが大きな第一歩だと思いました。」などの感想が寄せられ、私が高校生に一番伝えたかったこと―「社会福祉」は単なる高齢者やしょうがい者の介護問題ではなく、われわれの生活と密接に関連した「自分事」として捉えること―をしっかりと受け止めてくれたことに感動した。 また、「金さんは現在韓国と日本をまたにかけて自殺の問題の解決法を研究していて、現在の問題に背を向けないで、まっすぐに向き合って生きている金さんがとてもかっこよく感じました。私も社会問題に背を向けないで、社会のために貢献できる人間になりたいです。」というある生徒の感想文は特に胸に響いた。自分が取り組んでいる研究―韓国と日本の自殺問題と予防対策―の意義を改めて考えるよい機会となった。 高畠高校での特別講義だけでなく、1泊2日の間、高畠高校の評議員(元高畠町役場の職員)の方のお宅にホームステイをして得たこともたくさんある。たとえば、日本の茶道や着物の体験、ぶどう農園の作業など、普段はできない大変貴重な経験が出来た。また、奈良県桜井市の安倍文殊院、京都府宮津市の智恩寺(切戸の文殊)とともに、日本三文殊の一つに数えられる亀岡文殊(大聖寺)をはじめとして、高畠ワイナリー、瓜割石庭公園、安久津八幡神社など、高畠町の観光スポットを案内していただいたこともとても楽しかった。 これからも私の研究領域である「社会福祉」を媒介として、日本と韓国さらには世界における交流活動を続けていきたいと強く思っている。 <金信慧(キム・シンヘ)KIM Sinhye> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科修士課程修了(社会福祉学の学位授与)。立教大学大学院コミュニティ福祉学博士課程修了(単位取得満期退学)。韓国社会福祉士(国家資格取得)。日本社会福祉士(国家資格取得)。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】国史対話」メールマガジン第24号を配信しました。 ◆彭浩「ヘルス・パスの誕生」 コロナの話が毎日、脳神経を刺激し続け、ストレスがたまりやすい状況。現実から目をそらして一休みしたい時もある。人はそれぞれリラックスの方法があるが、昔話を聞くのも癒しになる。歴史にはロマンがあるのだから。最近、人の移動をコントロールするためのパス、いわば通行証に関心を持つようになってきた。その歴史は、現在の問題、つまりウイルスの感染防止と接点があることに気づいた。これをみんなと共有したいと思い筆を執った。みなさんの気分転換の一助になれば幸いである。 人類史上、大規模な疫病の流行は何度もあった。たとえば、14世紀中ごろの数年間、ペストによりヨーロッパの人口の3分の1が失われ、ペストはその後も長きにわたって断続的に発生した。「黒死病」(Black_Death)という名が歴史書に残っていること自体が、当時の人びとにいかに大きな恐怖を与えたか語ってくれる。しかし、疫病対策と公衆衛生の観点から見れば、画期的な新たな制度を生み出した時代でもあった。 今の新型コロナ感染症と同じで、「黒死病」の時代も、パンデミックが起こると、村落や都市は、ウイルスから地域の安全を守るため、さまざまなレベルの移動制限を敷いた。中世ヨーロッパの経済基盤は自給自足の荘園経済であったため、広範囲の移動がなくてもなんとかなる状況だったが、ヒト・モノの行き来に頼る商業の町の状況は異なった。移動制限は商人そして雇用労働者などにとって、生計を直撃する問題である一方、食品の供給難を伴うことで都市の存立危機をもたらした。それらの商業都市では、いちはやく経済の再開に取り組む必要性が生まれ、感染のリスクを最大限に抑える上で、人の移動を認めるための対策づくりに必死だった。 続きは下記リンクからお読みください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2020PengHaoEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ********************************************* ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • SHIN Hyewon “Appropriate Sense of Distance”

    *********************************************** SGRAかわらばん846号(2020年11月19日) 【1】エッセイ:申惠媛「適切な距離感の測り方」 【2】寄贈書紹介:『はじめての論理学:伝わるロジカル・ライティング入門』 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#653 ◆申惠媛「適切な距離感の測り方」 中学生のとき、なにかの宿題だっただろうか、自分のことについて作文を書いたことがある。詳細はまったく思い出せないものの、日本に暮らす韓国人としての自分のことを振り返りながら、「私は私」という、今にして思えば小説等の影響を多分に受けていて、背伸びしてはなかろうか?と勘繰りたくなるような、しかし実に素直な結論で、担任の先生に気に入ってもらえたことが嬉しかった、そんな思い出がある。 今の自分と比べると、当時の私は常にアンテナを張っていて、ちょっとしたことで尖り、自分の考えを晒すことに躊躇しない、こわいもの知らずの十代だった。振り返れば眩しく、空恐ろしくもある。当時の私にとって、自分とはまわりに「日本に住む外国人」を認識してもらうためのこの上ない媒体であったし、日本語の拙さを指摘されなくなってからは、まわりの人々が持つなにかしらの固定観念を見つめ直してもらうために小さな発信を続けていた。社会学者の岸政彦は、著作『同化と他者化』において、マイノリティであることは果てしなく自己に問いかける「アイデンティティの状態」に置かれることであり、マジョリティであることはこのような問いかけから免除されていることであると述べたが、当時の私は(もちろんこのことは知る由もないが)まさにこうした問いかけを自分のみならずまわりに対しても投げ続けることに強く意味を感じていたように思う。 翻って今、日本に暮らす「外国人」をめぐる研究を選び取り、長い時間をかけて進めてきた私は、もう少し慎重で、当時の私からすれば不必要におどおどしているように見えるかもしれない。何かを発言する前に、立ち止まり、深呼吸して、推敲しようとする私は、良くも悪くも少しばかり「大人になった」のかもしれないが、どちらかといえば、当事者としての自分と、(まだまだ若葉マークではあれ)研究者としての自分のちょうど良い距離感を測り続けているからではないか、と感じている。 私は今でも変わらず、日常生活で覚えた小さな違和感をひっそりと拾い集め、積み上げている。入学式を控えたこの季節になると聞こえてくる、「桜をきれいだと感じるのは日本人ならではだよね」「日本に生まれてよかった」といった、なんてことはない言葉に対して、その度に引っかかりを覚える。特段何の悪意もない、「やっぱり韓国人だね」や「もう完全に日本人だよね」のどちらに対しても曖昧に笑ってうなずくことしかできない。淀みなく会話していたはずの相手に、名前を明かした途端にゆっくりとしたスピードになる日本語に、配慮を感じ取るよりももどかしさを覚えることも、依然として多々ある。 それでも、これらの思いは、私が研究を進める上での強烈な動機や基本的なスタンスにこそなれ、実際に議論を展開する際に挟み込まれることはないように、可能な限り注意を払って進めているつもりである。誰にとってもそうかもしれないが、少なくとも私にとって、論文を書くことは、いくつも厳しい批判を想定し、なんとか答えようとする作業の連続のように思える。私が思いつく程度のことはすでにとうの昔に答えられていて、より細かく、より新しい説明が求められる。先人の積み重ねた考察を読み進めるほど、新たな言葉を獲得すると同時に、自分が付け加えられる部分の小ささを思い知り、この圧倒的な営為の前では度々口をつぐむことになる。 それに、当然のことながら当事者としての私は決して誰かの代弁者になれるはずもなく、先行研究に当たることはもちろん、実際にフィールドに出かけて調査を進めていると、このことをより強く実感する。私が日本で暮らすことで見聞きし、感じてきたことは、あくまでもひとつの軌跡に過ぎず、同様に「日本で暮らす外国人」であっても、その経験や感性は千差万別である。そういった瞬間に遭遇する度に、当事者としての私は戸惑い、ときには落ち込み、傷つくこともある。調査は必ずしも「望ましい」答えを与えてくれないし、自己の一般化はただの驕りでしかない。 そうやって振り返れば、長い大学院生活を経て手に入れたのは、先人への敬意と、自分とは異なる他者への気付き、そしてそれゆえの慎重さであるように思われる。いまだに当事者としての自分と研究者としての自分の「ちょうど良い」距離感はうまく測れないことが多く、時に場面にそぐわず慎重すぎたり、感情的になりすぎたりすることもあるものの、おそらく他の多くの研究者もそれぞれの距離の取り方に悩み、試行錯誤しているのだろう、そんなふうに思って自分を奮い立たせる。「私は私」と言ってのけた遠い日の稚い勇気を少しばかり借りるならば、「私らしく」距離感を測り続けることにも意味があると思いながら、これからの研究生活を進めていければと願う。 <申惠媛(シン・ヒェウォン)SHIN_Hyewon> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。東京大学教養学部附属教養教育高度化機構・特任助教。2013年東京大学教養学部卒、2015年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了、2020年同博士課程単位取得満期退学。専門は社会学、移民・エスニシティ研究。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員の文景楠さんより共著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆篠澤和久、松浦明宏、信太光郎、文景楠著 『はじめての論理学:伝わるロジカル・ライティング入門』 いつでも・どこでも・誰にでも思いを伝えるための言葉のマナー、それが論理です。「わかりやすく書くこと」を軸に論理学の基礎を学べる入門テキスト。接続表現の使い方からさまざまな論法の組み立て方、記号を用いて議論の構成を明瞭にする方法まで、豊富な事例で解説。建設的な議論に欠かせない論理学の要点を身につけましょう。 有斐閣ストゥディア 2020年10月発売 A5判並製カバー付、206ページ 定価:1,980円(本体:1,800円) ISBN:978-4-641-15081-2 ※詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641150812 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************