SGRAメールマガジン バックナンバー

  • YUN Jaeun “Fog over Victoria Peak”

    *********************************************** SGRAかわらばん865号(2021年4月8日) *********************************************** SGRAエッセイ#666 ◆尹在彦「ヴィクトリアピークの霧」 1990年代までの韓国にとって、香港は文化の輸入が許された唯一のアジアの「先進地域」だった。韓国では長らく日本文化、特に映像コンテンツが禁止されていたため、香港を舞台にした様々な映画は憧れとして受け止められた。香港映画は旧正月やお盆の「引っ張りだこ」で、多くの韓国人を魅了した。イギリスの植民地ということもあってか、映画には多様な人種の人々が登場する。これもまた異国情緒を醸し出す要素だった。90年代を風靡した王家衛(監督)の映画は社会的なブームまで引き起こした。香港は民主化したばかりの韓国社会にとって「自由の象徴」でもあった。 韓国人の目線から見る現在の香港は複雑だ。香港は「帝国主義の被害地域」でありつつも、現在においては権威主義体制の激しい弾圧を受けている。韓国は歴史上、香港と同様の経験(植民地・独裁政権)をしており、そこから何とか抜け出した国である。そのため、私は香港に関して欧米系メディアの一方的な論調に比べれば中立的な話ができると思う。 香港は英国の帝国主義による植民地化で、中国では「百年国恥」の象徴として語られる(しかし、倉田徹・張イクマンによると香港が本土で注目され始めたのは90年代以降のことという(『香港』126頁)。宗主国(である)英国は、統治下の香港人に対しある程度の自由こそ与えたが、民主的な権利、即ち選挙権は80年代まで保障しようとしなかった。 1980年代に入り、英中間の返還交渉が進むにつれ、英国は急遽、新たな選挙制度を取り入れ始める。特に最後の総督、クリス・パッテンは返還日が近づく中で、無理をしてまで制度改革を推し進めた。やはりこれでは、英国の香港の民主主義に対する「本気度」が疑われても仕方ない。しかし、こういった側面は現状の香港問題を取り上げる中であまり注目されていない。特に欧米のメディアではそうである。返還交渉の結果、民主制度を50年間保障するとの取り決めに中国が合意したこと(一国両制)も重要であるが、英国に現状の問題への責任が全くないかといえばそうとは限らない。 1997年に香港が中国に返還されて以降、何度か大規模なデモが行われた。特に世界的に注目を浴びたのは2014年秋の雨傘運動だ。私は2013年と14年に取材のために香港を訪れた。13年には香港政治とは関係のない出張で、正直「暑い」という印象しかなかった。思っていたより英国色が薄いことも記憶には残った。 ところが、14年11月の出張では香港への見方も多少変わっていた。香港の若者問題をより詳しく知りたく、仕事とは直接的関係はなかったが若者の話を聞いてみた。気づかされたのは若者の経済的苦境だった。香港大学には現地人・本土人・留学生の3グループがあり、現地人学生の就職が最も厳しいという。広東語や英語だけではなかなか良い仕事にはありつけず、本土から来た優秀な学生たちが多国籍企業の本土進出の人材としてちやほやされているということだった。香港出身の若者たちにとって憧れの金融業への就職はまさに狭き門で、IT部門への就職は門戸が開かれているが、給料が非常に低かった。2010年代以降の若者を中心とした抵抗が、単純に政治問題でなく、経済問題が絡み合っていることを改めて実感した。 そういった若者たちの不満は解消されずむしろ膨らんでいった。それが2019年の法律改正の問題と相まって、中国政府に矛先が向かうようになったのだろう。これに対し中国政府は最初、トランプ(政権)との関係上、様子見の姿勢をとったが、コロナ禍の中で急速に規制を強めている。民主化運動の象徴とされた学生や起業家は次々と収監され、現在はほぼ芽が摘まれた状態だ。しかも、今年の全国人民代表大会(全人大)では「香港の代表者は愛国者に限る」といった法案が成立した。私は「国への愛し方」には様々なものがあり、人それぞれ違うと考える。そうした中で、香港では民主主義だけでなく、英統治下でもそれなりに守られていた自由が危うくなっている。世界的な支援の手が届かないコロナ時代は弾圧の格好の口実になっている。 韓国でも1980年代まで同様の理由で数多くの人(とりわけ大学生)が弾圧され、一部は国により殺害された。軍事政権は「内政干渉」を理由に、NGO等の介入を拒み続けていた。ただ、現在と構図が逆転している現象もあった。レーガン政権は全斗煥政権を認めていた。これに対し大学生らは米国大使館に対し「内政干渉(=独裁政権の認定)をやめろ」と叫ぶなど、反米運動を展開した。 香港に行くたびになぜか一度も欠かさずに登ったのが、夜景スポットのヴィクトリアピークだ。最後に訪れたのは2019年のことで、大規模デモの直前だった。しかし、霧があまりにもひどくて何も見えなかった。初めてのことで、まさに香港の未来を象徴するような光景だった。香港は中国だけでなく、アジアの民主主義の将来を占うカギを握っている。これからも香港をウォッチしなければならない。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN_Jaeun> 2020年度渥美国際交流財団奨学生、一橋大学特任講師。2010年、ソウルの延世大学社会学部を卒業後、毎日経済新聞(韓国)に入社。社会部(司法・事件・事故担当)、証券部(IT産業)記者を経て2015年、一橋大学公共政策大学院に入学(専門職修士)。専攻は日本の政治・外交・メディア。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Franco SERENA “My Place of Happiness”

    *********************************************** SGRAかわらばん864号(2021年4月1日) 【1】フランコ・セレナ「私の『幸福の場』」 【2】寄贈本紹介:小川忠『自分探しするアジアの国々』 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#665 ◆フランコ・セレナ「私の『幸福の場』」 日本に初めて足を踏み込んでから何年も経ったが、今でもその頃のことを忘れることができない。当時はホームステイしながら生活していた。出発前は楽しみで仕方なかったが、日本に住み着いてからすぐ様々な壁にぶつかって落ち込む日々が始まった。その気持ちの処理方法が分からなくて、ホームステイ先の寝室で眠りにつくと母国にいる夢を見ていたことを今でも鮮明に覚えている。長い年月が経過して、私は今も日本に住んでいる。初めて日本に来た私に会うことができれば、「慣れてくるものさ、なんとかなるよ」と励ましの言葉をかけてあげたい。それだけではない。何よりも一つの助言を与えたい。「これさえあればちょっと幸せだなと思える『幸福の場』を常に心の中に持っていたほうがいいよ」ということである。 日本文化と日本語に触れ始めたのは、小さい時から興味があったのではなく、単に家族に逆らうためだった。小学校の時から高校までは家族の期待に応えるためだけに勉学に励んでいて、学問に関してはこれを知りたいという好奇心がほとんどなく、学校の課題に漫然と取り組んでいた。反抗期というのは誰にでも訪れる。私の場合はそれが大学1年生の時だった。当時は家族の期待を押し切ってでも自分の意思を貫きたいという考えにとらわれていた。日本語と日本文化に関心がなかったにもかかわらず、家族の反対に耳を傾けることなく、大学で日本語と日本文化を勉強しようと決めた。しかし、ついに日本にやって来た時、日本のことを学ぶ動機が家族への反抗に過ぎず、日本の言葉と文化を学んできたのにその学習には心を込めたことがなかったことに気づいた。特に日本文化に対する理解を示そうとしても誤解されることがほとんどで、大学で学んできたことをむなしく感じていた。落胆して帰国することばかり考えていた。 その私を救ってくれたのは日本語の先生だった。先生は日本の伝統芸能の知識が豊富で、特に歌舞伎に精通していた。ある日、落ち込んでいる私を見て、歌舞伎を見てみないかと誘ってくれた。当時の私は何に対してもマイナス思考で、歌舞伎に対しては堅苦しい、分かりづらいという印象しかなく、わざわざ銀座まで歌舞伎を見に行くのは気が重かった。それでも断るのが得意でなかったので、不本位ながらその先生のお誘いを受けることになった。 歌舞伎座へ入った瞬間に、歌舞伎の世界は思っていたのとは別物だということに気づいた。公演の前に顧客が売店を見回ったり、演目の概要を読んだりしながらにぎやかにおしゃべりをしていた。なんか、楽しそうだなと薄々思い始めた。そして、公演が始まった。歌舞伎は動きが少なく、聞きなれていない日本語で延々と演技し続けるものかと思ったら、躍動感のある場面も多かった。動きは少なくてもそれぞれ美しく、少ないからこそ感情であふれている。気が付くと、歌舞伎役者の鍛錬された動きと美しい台詞に魅了されている私がいた。あっという間に5時間がたっていた。 公演が終わった時、ちょっとした幸福感に包まれていた。その時初めて、このように日常生活を忘れることができる「幸福の場」、歌舞伎がある日本をもっと理解したいと「心から」思った。私の日本の見方はがらりと変わった。多くの壁にぶつかって辛い思いをしても、自分だけの「幸福の場」があると何でも乗り越えられると思えるようになった。誤解されることがあっても、それをばねにしてどうやってこの誤解が解けるかに力を注ぐことにした。歌舞伎は私を救ったといっても過言ではない。 この経験から、昔の自分に会えばこんなことを言いたい。何かをやり始めるきっかけは様々な形で巡り合える。その中には、興味が湧いてきてつかんだきっかけもあれば、偶然に現れるきっかけもある。あるきかっけをつかめば人生の新たな道が開かれる。時には自分には合わない道を選ぶこともあるし、その道を必ず歩み続けなければいけないというわけでもない。それでも、「幸福の場」を見つけることができて、この道を歩み続けたいと思っているのであれば、間違った道ではないかもしれない。 <フランコ・セレナ Franco_SERENA> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。イタリア共和国ベネト州出身。2015年度慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程(民事法学専攻)修了、2020年度慶應義塾大学院法学研究科後期博士課程(民事法学専攻)単位取得退学。2020年度より筑波大学社会・国際学群非常勤講師、2021年度より武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部専任講師。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で跡見学園女子大学教授の小川忠様より新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。小川様にはアジア未来会議で開催するアジア文化対話円卓会議でご指導いただいています。 ◆小川忠『自分探しするアジアの国々:揺らぐ国民意識をネット動画から見る』 列強の外圧や植民地支配を通じて「国民」意識を高め、「国民国家」を形成してきた近代のアジア諸国だが、めざましい経済成長や政治変動も相まって各国の国民意識は変容している。動画、ポップ音楽など若者文化を手がかりに「一つではない」アジアのアイデンティティを探るユニークな論考。 発行所:明石書店 ISBN:9784750351742 判型・ページ数:4-6・248ページ 出版年月日:2021/03/20 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.akashi.co.jp/book/b575295.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • LAI Sihyu “Drifting Raccoon”

    *********************************************** SGRAかわらばん863号(2021年3月25日) 【1】頼思妤「漂泊の狸」 【2】国史対話メルマガ#28を配信: 大久保健晴「第5回国史対話における自由コメント」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#664 ◆頼思妤「漂泊の狸」 渥美国際交流財団のロゴの狸は、創始者の故渥美健夫鹿島建設会長が生前によく描いておられたものだそうです。 初めてこの狸のロゴを見た時、私は子供の頃に見たジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」をふと思い出しました。この映画は純粋さや素朴さがある一方不思議な現実味も帯びた作品で、物語の終盤では狸たちの一部が人間に化けて人として都会で生きていこうと努力する様子が描かれます。留学生として日本に来た時、私はちょうどフランスとアメリカへの訪問を終えたところでした。それぞれの国で非母語的な環境に身を置くと、だんだんと生活には慣れてはくるものの、なぜか時折そのままではいられないような気分になりがちです。映画はそんな自分に、「化ける」能力がある狸ですら異文化社会で苦労したのだから、普通の人間である私が短時間で次々と新しい環境に適応するには、頑張る以外に何もないのだという決意を思い出させてくれました。 台湾から日本に来た頃、私の台北の友人は「東京に行けるとは羨ましいよ。東京の人たちは謙虚で礼儀正しいからね」と言いました。それからパリに行く機会があった時、東京の友人は「パリに行けるとはいいね。ロマンチックで詩的なところだから」と言いました。そして、アメリカでは、知り合いの全員が「ボストンに行けるなんていいね。あそこの学生は明るくて自信がある上に、やる気がある」と言いました。皆、私が旅先で出会う新しい知り合いが本当にニュースやネット上で伝えられている通りなのか、興味津々なのです。もちろん彼らは単純にSNSなどで目にした記事を元に気楽に私に尋ねただけだったのかもしれません。 しかし、実際に私の日常生活で起こるのは報道やインターネットから伝わる様子とはまるで別のことばかりでした。友達との実際の会話は、政治などの大事件よりも身近な出来事、自分達の街での出来事、お互いの研究の内容が多く、ゆえにSNSのみを通じて外の世界を知ろうとしたり、知った気分になったりしてしまう現在の潮流に私はしばしば違和感を覚えました。インターネット上に現れる東京は私が知っている東京ではなく、パリやボストンもまた然り。とある地域について、とあるトピックだけに焦点をあてて議論していては、その土地に存在している他の多くの人々が抱える思いや考えをたやすく見逃してしまうのだと、最近特に強く感じます。 私たちは、それぞれがそれぞれの経験によって自我を形成し、その結果、多様な個人として生きています。人それぞれの経験の違いは、国や言語の違いよりも重要だと私は思っており、SNSから吸収した偏見を持っていては、外の世界で真の友情を育むことができないのです。何年にもわたる異国での旅と留学を、私はいくつもの「国」を見て来たというよりは、いくつもの国の「友」と心を通じ合わせてきたと表現したくなります。なぜなら、政策や経済の発展状況よりも、そこで暮らしている人々の思いやりと温もりこそが、最も深く私の記憶に刻まれていて、その数々が今の私を作り上げているからです。たくさんの土地を踏み、多様な文化を学び続けながら私が私でいられたのは、多くの人々に助けられ、恵まれていたからでした。 このような心境を経験したので、渥美財団の狸のロゴを見ると今は心に特別な親近感が湧いてきます。同期の渥美奨学生と交流し、事務局のみなさんが見守ってくださったおかげで、私は無事にこの一年間を自らの心を見つめながら、穏やかに過ごすことが出来ました。またこうした日々の中で、これまでに心に積もった数年分の研究上の知識や人生における知恵を整理することが出来ました。日本での留学を終えた今、いくつもの縁に導かれて東京に来たこと、私が最も落ち込んでいる時、私を信じてくれた人達、出会った全ての人に感謝しています。人生の全ての体験が、良くも悪くも私という小さな苗を成長させてくれました。与えられた栄養を頑張って吸収し、辛い経験は逆「増上縁」と化して、心を強く鍛えてくれました。 長かったり短かったりする別れを次々に経験していくのは留学生の常だと思います。昔はよく切ない気持ちになりましたが、今は、別れというものはその度に誰かが一歩前に進んだことを意味するのだから、喜んで祝福すべきだと思っています。現代社会において、頑張って生きている人(狸)達は、実は皆、自分の孤独な惑星を歩いているようなものです。没頭してひたすら歩いていると、ふとした瞬間に遠くにいる誰かが自分のことを思い出してくれていることに気がつくのです。その時、心に流れ込んでくる暖かさこそが、最も安堵に満ちた寂しさだと私は思います。 <頼思妤(ライ・スーユ)LAI_Sihyu> 東京大学大学院文学博士。現職は台湾の中央研究院博士後研究員。日本学術振興会特別研究員(DC1)の経験あり。フランス高等研究実習院(EPHE)、ハーバード大学等での短期訪問研究の経験あり。朝日新聞、台北経済文化代表処等での勤務経験あり。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史対話」メールマガジン第28号を配信 ◆大久保健晴「第5回国史たちの対話『19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応』自由コメント」 私は、日本とオランダとの関係を機軸とした東洋政治思想史・比較政治思想を専門に研究しています。政治思想史の観点から、質問をさせていただきます。 (1) 主権的権力と公衆衛生について このたびのコロナ禍において、何人かの政治学者が疫病の蔓延との関係で注目した古典に、ホッブズの『リヴァイアサン』があります。カルロ・ギンズブルグらの図像研究が明らかにするように、著者ホッブズの指示のもと版画家アブラハム・ボスが描いた『リヴァイアサン』の有名な扉絵には、疫病・ペストの防疫にあたる二人の医師の姿が小さく描かれています。17世紀、イングランドをはじめ、ヨーロッパはたびたびペストの感染拡大による被害に襲われました。特にホッブズがオックスフォード大学に入学した1603年は、ペストの大流行の年でした。ホッブズの『リヴァイアサン』に示されるように、人々が疫病におびえ、死への恐怖をいだくなかで、主権的権力はその存在感を増し、その存在意義は際だったものとなります。 それは、政府・国家権力が公衆衛生の名のもとに、緊急事態宣言やロックダウンを発令し、人々の行動の自由を制限する現代社会も同様です。 公衆衛生と主権的権力の行使は、密接不可分な関係にあり、疫病の蔓延という状況はまた、主権的権力とは何かを考えるためのきわめて重要な機会でもあります。 とりわけ本日の3名のご報告が、コレラの流行を主題としている19世紀後半はまた、東アジアにおける近代国家形成期でもありました。東アジアにおいても、疫病の蔓延に対応する公衆衛生の確立と、近代国家としての主権的権力の形成は、密接不可分であったと言えます。 続きは下記リンクからお読みください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2021OkuboTakeharuEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • CHEN Zhao “Incomplete Enumeration of 2020”

    *********************************************** SGRAかわらばん862号(2021年3月18日) 【1】陳昭「2020年の不完全的羅列」 【2】第15回SGRA-Vカフェへのお誘い(最終案内) 「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」(3月20日、オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#663 ◆陳昭「2020年の不完全的羅列」 このエッセイは去年(2020年)3月に書くべきものであった。 延滞したのは不測の事態が次々と起こり、その対応に追われ、書く余裕がなかったからだと、自分にはそう言い聞かせていた。しかし本当は「振り返るのが辛くて逃げていたから何も書けなかったのかもしれない」という気持ちも心のどこかにある。 目の前に起こっている予想外の現実には「臨機応変でいなければならない」と理性では分かっているつもりだった。しかし、そこにある現実があまりに予想外なゆえに、たとえ対処するために行動したとしても、リアリティとして受けとめるところまでは心が付いていけなかった。「嘘だろう」と思いつつも、拒絶不可能な実態に振り回されてばっかりだった。 こうした、現状への対応と現実の消化との間に乖離が生じてしまう1年であった。いまだに収束が見えない新コロナウイルス感染症の拡大において、こういう気持ちになるのは、決して私一人ではないだろう。 この1年の出来事を鳥瞰的通時的に記録できるなら、どんなに壮大なフィルムになるだろう。また、異なる国の政治体制と予防対策の関係、人種や社会慣習が持つ影響力など、このフィルムを見るフィルターも様々。しかし、コロナ禍の真ん中に生きる一人として、なにか書こうとすれば、やはり身を以て経験していた虫観的な世界になる。 2020年2月、中国は全面封鎖。予定していた中国への一時帰国の中止を余儀なくされた。3月には住んでいた寮の入居期間が切れ、残りの留学ビザは5月まで。もともとは帰国してしばらく中国で就活でもするつもりだったので、日本ではすぐに新しい住まいを構えなくてもいいと思っていた。そこから慌てて部屋探しを始めた。学校の近く、外国人可の物件に絞って探していたが、2ヶ月しかないビザが問題となった。更新予定と説明しても難色を示す大家さんが多い。 その中、今になっても思い出すと引っかかることがある。築40年も超えた物件だが、間取りはよくて広めだったのでさっそく申し込もうとした。申請して2日目になってから、仲介さんからの電話があって、大家さんは外国人がやはりだめだと断られてしまった。いろいろと聞いているうちに、大家さんはご高齢で、どうもコロナで中国人に貸すのは不安があるらしい。渡航歴がないとはいえ、付き合いも中国人が多いだろうから不安だそうだ。仕方がないと諦めたその夜、寮に帰ったら、事務室の方から武漢差別やコロナ差別について寮生を対象に調査依頼が都から来たと話を聞いた。幸い日本ではヨーロッパほど差別が深刻にならなかった。また、面白いことに「東大生はだめ」と電話で断わられた物件もあった。お爺さんぽい声だった。どうも駒場近辺の高齢の大家さんたちは「コロナ」と「東大生」が苦手だそうだ。 2020月3月、駆け足で引っ越しを終えた。疲労の重なりと季節の変わり目で体調を崩してしまった。風邪症状に半端ない倦怠感が伴った。手先が腫れているような、感覚が鈍くなる感じ。下痢と咳は症状発覚から3日目で出て、軽い症状が続いたが一週間以内には消えていた。38度超える熱は一晩だけで、ほとんど37.0度~37.3度の間であった。当時PCR検査は37.5度以上の熱で3日続くのが条件であったため、検査を受けることができず、自宅で外出を自粛していた。当初日本ではコロナ感染に対してまだ意識が低かったが、渥美財団の方々と相談の上、奨学金を受けた年度末に行われる研究報告会は資料提出のみとなった。発症から10日目ぐらいでほとんどの症状は消えた。倦怠感が繰り返し出てはいたけど、2週間目になるとそれも治った。 2020月4月、自分の体調はよくなったが、日本の感染状況は悪化する一方だ。さらに、浴室で転んでしまった。後頭部を床にぶつけないようにバランスを取ろうとして足を極度に伸ばした際、膝の軟骨を傷つけてしまった。受診したところまず静養だと言われたが、1ヶ月経っても回復せず、足を伸ばすこともできなくなった。外出どころか、トイレへ行くのにも苦労する日々だ。今まで味わったことのない無力感。家族がそばにいない孤独感。「どこにも行けない、ここに閉じ込められているのだ」と、トイレの回数を減らすために水すら飲むのを控えてしまうたびにそう思う。支えになってくれたのは近所に住む研究室の仲間や友人だ。食材の調達やごみ出し、体調不良の時は中国の家族から送ってきた漢方の薬を玄関の前に届けてくれるなど、お世話になってばかりだった。 予定していた就活が頓挫し、「悪年」とでも言いたくなる不運が続き、収入がないのにアルバイト再開の目途も立たないままの日々。引っ越しの出費、オ-バードクターの学費免除が困難、予想外の治療費など、諸々の事情で経済的に非常に困難な状況に陥っていた。その中、渥美財団から届いた新型コロナ緊急支援金の連絡は本当に「雪中送炭(雪中に炭を送る)」だった。生活基盤を整えるのに大変ありがたい支援金だった。そして、大変な時期に温かいメールや電話で見守ってくださった事務局の方々、本当にありがとうございます! 2020年5月、別の病院で膝を再び検査した。静養中は足をぜんぜん伸ばしていないので、筋肉が著しく弱ってしまっていた。MRI検査で膝軟骨の損傷は手術なしの治療方針が決められ、6月からはリハビリが開始。キーボードで「リハビリ」を打つだけで、当時の激痛の記憶が蘇り「痛い」と感じるほど、痛かった。痛くて出た涙は「滴」ではなく、滴が繋がる「線」でもない。「面」なのだ。中国語では「涙流満面(顔じゅう涙まみれ)」と「汗流満面(顔じゅう汗まみれ)」という言葉がそれぞれあるが、リハビリはその合体だ。涙か汗か分からない、顔中が万遍なく塩味のある液体で濡れているから。 夏になると、リハビリもだいぶ楽になり、ようやく研究にも少しずつ復帰できるようになった。2020年1月、フィリピンで開催された第5回アジア未来会議で発表した時に平山昇先生からいただいたコメントに触発され、投稿する論文のアイデアが生まれた。2020年の後半は延滞してきた仕事をこなしながら充実した日々を過ごせた。足も普段歩く分には問題ないまでに回復して、気分転換のためによく散歩をしている。電線や線路、それに坂と低い住宅地。すべてが日本の日常風景を象徴する要素だ。会えない日はもうすこし続くと思うが、せめて身近にあるささやかな美しさを楽しみたい。 最後に、もし去年の経験から何かを教わったかと聞かれれば、それは「泣くは恥だが役に立つ」ということ。今まではどこか強がって何ができるかに拘っていたのかもしれないと気づかされた1年であった。できない事やできない時は当然ある。その「リアリティ」を受けとめるのも大事だと思うようになった。それこそ「リアル」の人生だ。今まであたりまえのように分かっていたつもりだったこの道理は、あたりまえでない個々の経験があるからだと、少し分かるようになったかもしれない。 あっ、言い忘れたことがある。「泣くは恥だが役に立つ」は確かだが、そのときは、柔らかめのティッシュの方がいい。あと、ティッシュは甘いのは知っている?満面の涙を拭いた時にたまたま口に入ったことで知った。個人的な経験だと、保湿ローション入りのタイプが最も甘い。これを読んでティッシュを舐めたくなる方は、どうぞご遠慮なく。 <陳昭(ちん・しょう)CHEN_Zhao> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。東京大学大学院総合文化研究科文化人類学コース博士課程。2014年同コース修士卒業。都市環境デザイン、景観生成、テクノロジーと社会について研究中。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語(簡体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇中国語(繁体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/16/sgra_cafe_15_t/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • LI Kotetsu “Honor Student in the Pandemic (Part 2)”

    *********************************************** SGRAかわらばん861号(2021年3月11日) 【1】李鋼哲「台湾、コロナ禍の中の優等生(その2)」 【2】催事紹介:日中韓三国協力事務局創設10周年記念シンポジウムシリーズ <対談>道上尚史(TCS事務局長)×張濟国(東西大学総長)(3月17日、オンライン) 【3】第15回SGRA-Vカフェへのお誘い(再送) 「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」(3月20日、オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#662 ◆李鋼哲「台湾、新型コロナ禍の中の優等生(その2)」 その台湾は一体どのような「国」なのか?その歴史から見てみよう。 台湾は台湾本島とその周辺諸島により構成され、面積は約3.6万平方キロメートル、日本九州地方の面積(約4.4万平方キロメートル)より小さい島で、人口約2360万人(2019年)。亜熱帯や熱帯地域であるため、年中気温は高く、熱帯植物や果物など物産が豊富な「宝島」である。 そもそも台湾という「国」は歴史的にも現在も存在しない。現在の正式名称は「中華民国」(Republic_of_China=ROC)であり、1912年に中国で発生した辛亥革命により建国、アジア最初の共和国である。1949年に国共内戦で共産党軍に敗れた政府軍の国民党は、台湾に逃げて現政権を続けており、その為、実際に中国は「2つの国」が併存することになった。 歴史的に、中国の『三国志・呉志』、『隋書・流求伝』などに台湾を記録したことがあり、元代(モンゴル帝国時代)に台湾・澎湖諸島に巡検司が設置され福建省泉州府に隷属されたという。その後16世紀にポルトガル航海士が台湾島を発見し、「フォルモサ」(ポルトガル語:Formosa、福爾摩沙「美しい島」)と呼んでいたという。17世紀における大航海時代にはオランダ(1624-62)の植民地となっていたが、中国では東北(旧満州)の満州族が大清国を建国、後ほど明朝を破って政権を取ると、それに抵抗して戦っていた明朝の鄭成功将軍とその軍隊が清朝軍に追われ1661年に台湾に渡り、オランダ軍と戦い追放し、同島初の政治的実体の「東寧王国」を設立、統治していた。 しかし、清は1683年に鄭王国を破り台湾島を併合し、約210年間統治していたが、1895年に日清戦争に勝った日本が清朝との間に「下関条約」を締結、台湾を日本領に編入の上、台湾総督府を設置し50年間統治。清朝統治期間には大陸福建省中心に漢人が大量に流入し、原住民は徐々に漢人と同化し、現在の「台湾人」になったので、中台は同文同種同民族と言ってもいいだろう。 第二次世界大戦が終わる頃、中華民国(総統は蒋介石)は1945年8月に日本の敗戦で同盟国の合意のもと台湾を接収し、台湾省として自国領に編入した(「台湾光復」)。中華民国は戦勝国であったため国連創設時に常任理事国になり、1949年に台湾に移転してもその地位は維持していたが、1971年に大陸中華人民共和国が中華民国に取って代わり国連入りし常任理事国になると、台湾は国連を脱退し、国際社会では台湾を中国の一部として認め国交を断絶し、中国との国交正常化が進めてられてきた。因みに日本は1972年9月に中国と国交を樹立、中華民国との国交を断絶したたが、「財団法人交流協会(現公益財団法人日本台湾交流協会)」を設立して台湾との交流を維持している。2020年10月現在、中華民国と国交を維持している国はわずか15カ国で、いずれも中南米など小国、欧州はバチカンのみ。 1975年に蒋介石総統が死去すると息子蒋経国が政権を引き継ぎ、1987年に戒厳令を解禁(大陸と準戦争状態の終結)したが、1988年に蒋経国が死去すると、李登輝副大統領(本省人)が後を継ぎ大統領に。1990年代に民主化運動のうねりのなか、李総統は民主化を進め、1996年に初めての民主選挙を行い、民選大統領となった。2000年には「民主進歩党(本省人中心)」が初めて国民党を破り政権交代が行われ、その後2008年に国民党が再び選挙に勝ち与党になっていたが、2016年の選挙では民進党の蔡英文氏が初の女性大統領となり、昨年1月には第2期大統領に再選され現在に至っている。 台湾では民主化とともに、民衆のアイデンティティが徐々に「中国人」から「台湾人」に変わりつつある。1992年の国立政治大学の世論調査では、自分は「台湾人」と答えた人は住民の17.6%、「中国人」との答えは25.5%、「台湾人かつ中国人」との答えは46.4%だったが、2020年の同調査では、その答えはそれぞれ67%、2.4%、27.5%に大きく変わった。大陸出身者中心の国民党はその数や影響力が徐々に低下し、本省人の意識や勢力が急上昇している。 民進党は独立志向が強く、「独立」と「統一」問題を巡って、大陸と確執が続いている。国民党政権の時は「ひとつの中国」政策を重視するが、民進党政権の時はそれを認めない政策、または曖昧な政策を取っている。それに対して中国政府は、2005年に「反国家分裂法」を成立させ、台湾が「独立」を宣言したら武力行使を辞さないと、政治的・軍事的脅威を与えており、「独立」を強く牽制している。このような状況の中で、台湾では「現状維持」政策を貫いている。 一方、1990年代に台湾が大陸と交流を再開してから、両岸関係は急速に接近している。2008年12月には中台間の定期直航便が就航し、中国大陸住民の台湾観光や三通が解禁。2010年の中台トップ会談では、「両岸経済協力枠組協議」(ECFA)を締結、実質的にはFTAが結ばれている。いまや台湾の輸出額の約4割が中国大陸向けで、進出台湾企業は約10万社(2020年1-11月までの台湾対外投資の47.6%は大陸)、大陸在住の台湾人は約100万人、年間往来者数は約500万人(2019年)を超え、台湾の国際結婚の配偶者も40万人のうち26万人が大陸妹だという。 台湾経済の過度な大陸依存は「大陸に飲み込まれる」リスクを高めるだけではなく、大陸政府当局により政治的に利用される危険性も高めている。中国は台湾に対する「統一戦線」工作にこのような状況を利用するだけではなく、台湾に対する圧力にも活用している。例えば、2019年7月31日に中国文化観光省は8月から中国国内47都市から台湾への個人旅行を一時的に停止すると発表、台湾側から見れば明らかに圧力である。 また今年2月26日に、中国政府は台湾からのパイナップルの輸入を3月1日から停止すると発表、検疫で有害生物を何度も検出したためと説明。台湾ではメディアで大騒ぎになり、当局は政治的な圧力と反発している。台湾のパイナップル年間生産量の約1割が輸出、大陸向けがその95%のため、実際台湾農家への影響は必ずしも決定的とは言えない。台湾ではパイナップルの国内市場での販売拡大や他の海外市場を模索しているという。しかし台湾では、このように大陸からの圧力がある度に大陸政権への不満と「台湾人意識」の高揚が繰り返され、大陸への遠心力が働くのではなかろうか。台湾にとっては、如何に大陸への過度な経済依存度を低下させるのかが大きな課題である。 近年は米中関係の悪化に伴い、両岸関係は常に緊張状態が続いている。米国は大陸中国が台湾を「飲み込む」ことを許さず、「台湾関係法」をもとに、毎年台湾に大量の武器を提供(販売)しているが、最近では防衛的な武器から攻撃的な武器までも大量に売っているという(2020年度の武器販売は345億ドル)。トランプ政権以来米国は台湾との関係を急速に強化しているが、バイデン民主党政権になってもその政策基調は変わらない。 中国人の大量流入と国民党が中国の文化(大量の文物等)を台湾に持ち込み、中国の正当政府としての統治基盤を造ったため、台湾には中国の伝統文化が根深く浸透し、中国式建築や中華料理、服装などが普及し、「本場の中国伝統文化を体験したかったら台湾に行った方が」とまで言われている。 台湾人は日本に親近感を持つ人が多く、台湾では「哈日族」と言われる。ある台湾出身の学者の話を借りると、その理由は「台湾人からすれば、長い間外部勢力に侵略や支配されてきた経験から、大陸から来た支配者よりは、日本統治時代がましだった」という認識がその根底にあるようだ。近年、台湾から日本への旅行客は大幅増加し、2019年度の訪日客は489万人、中国と韓国に次いで3番目であり、台湾の5人にひとりが毎年日本旅行を楽しんでいることになる。私が住んでいる石川県も親台湾的な雰囲気が強く、小松空港から台北までは毎日直行便が運行しているが、それも不足して毎日2便に増やすという話が出ているほどである。 <李鋼哲(り・こうてつ)LI Kotetsu> 中国延辺朝鮮族自治州生まれの朝鮮族。1985年中央民族大学(中国)哲学科卒業後、中共北京市委党校大学院で共産党研究、その後中華全国総工会傘下の中国労働関係大学で専任講師。1991年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団研究員、名古屋大学研究員、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、2006年より北陸大学教授。2020年10月、一般社団法人東北亜未来構想研究所を有志たちと創設、所長に就任。日中韓+朝露蒙など東北アジアを檜舞台に研究・交流活動を行う。SGRA研究員および「構想アジア」チーム代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』(編著、2015年、日本僑報社)、その他論文やコラム多数。 ※前編(李鋼哲「台湾、コロナ禍の中の優等生(その1)」)は下記リンクよりお読みいただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/2021/16381/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介: SGRA会員の道上尚史様からオンラインイベントのご案内をいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は下記より直接お申込みください。 ◆日中韓三国協力事務局創設10周年記念シンポジウムシリーズ <対談>道上尚史(TCS事務局長)×張濟国(東西大学総長) 日中韓3国の協力促進を目的として、2011年に3か国の政府により設立された日中韓三国協力事務局(TCS)は本年で設立10周年を迎えました。この節目の年を記念して、TCS創設10周年記念シンポジウムシリーズを実施する運びとなりました。その第一弾として、道上尚史TCS事務局長と張濟国(チャン・ジェグク)韓国・東西大学総長との対談イベントをオンラインにて実施いたします。本対談では「CAMPUS_Asia(注)」「コロナと学生」「日中韓三国協力事務局(TCS)10周年」にフォーカスを当て、コロナの状況下における学生と大学側の苦労、TCSの10年間の足跡等について紹介します。中国の学生も現地から参加し、日韓の学生との交流や、学んだ点を共有します。 今年1年間展開される各種記念行事の本格的なスタートとなるイベントです。どうぞふるってご参加ください。 【日時】3月17日(水)14:00―15:30(日本時間) 【形式】オンライン(Zoom使用) 【言語】日中韓の同時通訳あり 【参加費】無料 【出席者】 道上尚史 日中韓三国協力事務局(TCS)事務局長 張濟国 韓国・東西大学総長 【事前登録】https://bit.ly/3br9fW0 事前登録していただいたメールアドレスに後日Zoom参加リンクをお送りします。 事前登録の際に頂いた発表者への質問はQ&A セッションにて優先的に取り上げられます。 (注)「CAMPUS_Asia」は政府間合意にもとづき、日中韓の大学間で2011年から実施している大規模留学プログラム。3国17組の大学コンソーシアムが組まれ、数千人もの学生が3国でのキャンパスライフを経験している。東西大学は参加大学のひとつ。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い(再送) 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語(簡体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇中国語(繁体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/16/sgra_cafe_15_t/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • LI Kotetsu “Honor Student in the Pandemic (Part 1)”

    *********************************************** SGRAかわらばん860号(2021年3月4日) 【1】李鋼哲「台湾、コロナ禍の中の優等生(その1)」 【2】第15回SGRA-Vカフェへのお誘い(再送) 「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」(3月20日オンライン) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#661 ◆李鋼哲「台湾、コロナ禍の中の優等生(その1)」 新型コロナ禍のため、今年8月に開催を予定していたアジア未来会議(AFC)は次年度に延期せざるをえなくなった。ところで、台湾の新型コロナ感染の状況はどうなのか?台湾は一体どんなところなのか?知りたい方が大勢いると思って、このエッセイを執筆することにした。 筆者は台湾に2回訪れたことがある。1回目は2000年8月、東アジア総合研究所が主催する国際シンポジウムを台北で開催。筆者はアルバイトで事務局長を務めていた。当時は中国籍だったので、台湾に行くには厳しい制限があり、1ヶ月前に申請したビザが下りるか下りないのか全く見当がつかずに待っていたが、幸い出発3日前に下りた。国際会議は無事に終了、翌日は新竹工業都市に見学に行ったが、強い台風にあってほとんど見学できずに戻ってきた。3日目は日本からの参加者(故金森久雄・日本経済研究センター顧問をはじめ著名な先生ら)一行約30名は李登輝元総統のオフィスを訪れ、2時間くらい歓談したのが一番印象に残る。 その後、2016年3月に、高雄市にある文藻外語大学に招待されてワンアジア財団の講義を行った。この時は日本国籍になっていたので、ビザも要らず、小松空港から台北の桃園国際空港までの直行便を利用。家族同伴の5日間の日程で、高雄と台北をゆっくり見学できた。高雄港を見学した時「高雄」という地名の由来を教えてもらった。日本統治時代には「打狗」(タコウ、犬を打つ)という町だったが、その読み方が日本人には「たかお」と聞こえたので、「高雄」に変更したという。台北では国父記念館を訪れ、「中華民国」の歴史と国父孫文についていろいろ勉強になった。 話を本題に戻して、台湾のコロナ禍事情はどうなんだろう?コロナ禍対策で世界一番優等生だということはニュースなどでも知られているが、その実態はどうなのか? 台湾の感染者は累計でわずか909人、死者は8人だという。 1月30日の日本経済新聞によると、台湾の衛生福利部(厚生省に相当)中央感染症指揮センターは、30日の発表で新型コロナウイルスに感染して80代の女性が29日に死亡したことを明らかにしたが、死者が出るのは2020年5月以来、約8カ月ぶりという。 台湾は、新型コロナの感染拡大を長く抑えていたが、2021年1月に入って台湾北部の桃園市の病院で院内感染によるクラスター(感染者集団)が発生した。新型コロナの治療を担当した医師や看護師、その家族が次々と感染し、これまでに19人の感染が確認されている。死亡した80代の女性もこのうちのひとりだった。台湾では、2月10日から16日まで春節の大型連休で帰省など人の往来が増える時期と重なっていたため当局の警戒感は一段と強まった。 台湾では如何にしてコロナ禍に対応したのかについては、エッセイの字数の制限で紹介できないので、台湾の方に続編をお願いしたい。 ところで、コロナ禍の中で台湾経済はどうなっているのか? 最近筆者はYouTubeを通じて、台湾の諸事情および台湾から見た国際関係、とりわけ米中両大国に挟まれた台湾の対外関係について猛勉強した。もちろん、「東アジア経済論」講義でも台湾と中国大陸との関係について講義するために資料をたくさん調べている。 まず、台湾経済はコロナ禍の中で世界での優等生ということを特筆すべき。日本のメディアでは、世界のほとんどの国でマイナス成長というコロナ禍の中、中国の2020年の経済成長率は前年比2.3%(この数字は本当なのか?と疑うが)であると大々的に報道されてはいるが、その他の国に関する報道は少ない。 実は、台湾のGDP成長率は2.98%であり、台湾では30年ぶりに大陸の成長率を上回ったという。ちなみにベトナムのGDP成長率は2.91%で2位、「4匹の小龍」と言われるシンガポール、韓国、香港などがマイナス成長の中で独り勝ちである。株価は急上昇し歴史的な記録を更新、台湾ドルも急上昇し、経済は30年ぶりの活気を取り戻したという。 その要因は、米中貿易摩擦により多くの台湾企業が大陸から戻ってきて、米国や東南アジアに投資が大幅に増えたこと、華為技術(ファーウェイ)に対する経済制裁のなかで、台湾の電子機器や部品への世界からの注文が増えていること、海外旅行していた台湾人が国内旅行に切り替えたので、海外に流れていたお金が台湾内部で流通したこと、などがある。 台湾からの海外旅行者(アウト・バンド)は2019年に1,800万人、人口わずか2,360万人の8割に達し、世界で最高のレベルだろう。そして従来約8,000億台湾ドル(約2.5兆日本円)に上った年間外貨流出が、昨年は国内旅行者延べ約2.1億人の資金が国内で回り、経済成長に貢献したという。2021年の経済成長が今の勢いで伸びれば、1人当たりGDPは初めて3万ドル台(2011年に2万ドル台突破?)に乗るだろうと予測され、先進国に並ぶ。 台湾は新型コロナ禍の対応により世界で立派な「優等生」になり、経済成長でも模範を示している。本来ならば世界保健機関(WHO)などでその経験を世界に活用すべきであると思うが、複雑で不条理な国際政治に振り回され、国連や国際社会から十分注目されないのは誠に残念なことである。(続く) <李鋼哲(り・こうてつ)LI Kotetsu> 中国延辺朝鮮族自治州生まれの朝鮮族。1985年中央民族大学(中国)哲学科卒業後、中共北京市委党校大学院で共産党研究、その後中華全国総工会傘下の中国労働関係大学で専任講師。91年来日、立教大学大学院経済学研究科博士課程単位修得済み中退後、2001年より東京財団研究員、名古屋大学研究員、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、06年より北陸大学教授。2020年10月、一般社団法人東北亜未来構想研究所を有志たちと創設、所長に就任。日中韓+朝露蒙など東北アジアを檜の舞台に研究・交流活動を行う。SGRA研究員および「構想アジア」チーム代表。近著に『アジア共同体の創成プロセス』(編著、2015年、日本僑報社)、その他論文やコラム多数。 ※本エッセイは、東アジア共同体評議会のe-論壇_百家争鳴に投稿されたものを、著者の許可を得て再掲します。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い(再送) 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語(簡体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇中国語(繁体字)ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/16/sgra_cafe_15_t/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • KIM Kyongtae “Report of the Fifth Dialogue of National Histories”

    *********************************************** SGRAかわらばん859号(2021年2月19日) 【1】金キョンテ「感染症時代に感染症の歴史を振り返る―第5回国史たちの対話報告」 【2】第15回SGRA-Vカフェへのお誘い(再送) 「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」(3月20日オンライン) *********************************************** 【1】金キョンテ「感染症時代に感染症の歴史を振り返る―第5回国史たちの対話報告」 2021年1月9日、「第5回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」が開催された。今回のテーマは「19世紀東アジアにおける感染症の流行と社会的対応」だった。前年2020年1月にフィリピンで開かれた「第4回国史たちの対話」の際に、いやCOVID-19の感染が広がってからでも、この危機が今年まで続くとは予想できなかった。第4回の対話で三谷先生が、19世紀の東アジアの感染症に関するテーマに言及されたが、先見の明を示されたと思う。この時代にふさわしい議論のテーマだった。 対話はオンラインで行われた。技術の発展によって私たちは今のような危機の中でも対話できる方法を見出したのだ。しかし、この便利さの裏には、新しい方法を皆が円滑に使えるように準備した事務局方々がいたことを忘れてはならないだろう。事前に数多くのリハーサルがあり、当日も午前から準備が行われていた。 これまでは、多くの発表者と討論者を招待して、2日から3日間の会議の形で対話を実施してきた。しかし今回は、各国から招く発表者と討論者を1人ずつにすることで、効率的に参加者が集中できる環境を作り出すことができた。時間により変化したが、参加者は発表者・討論者(パネリスト)が38名、一般参加者が93名、同時通訳を含むサポートが20名で計151名だった。 対話は2つのセッションに分けて行われた。第1セッションでは村和明先生の司会で3つの発表と指定討論があり、第2セッションでは南基正先生の司会で自由討論が行われた。すべてのセッションの後に、発表者やパネリストが自由に会話できる懇親会も行われた。 第1セッションでは今西淳子渥美財団常務理事の歓迎挨拶と、趙珖韓国国史編纂委員会委員長の開会挨拶があった。趙珖委員長は、19世紀的なパンデミックに関する問題の研究は21世紀の今日、Post-COVID19で展開されている新しい「インターナショナル」な問題解決の一つの規範を与えるとして、国史たちの対話の意義が継続されることを望むと述べた。 最初の発表は朴漢珉先生(東北亜歴史財団)の「開港期朝鮮におけるコレラ流行と開港場検疫」だった。朝鮮初期の開港地である釜山、仁川、元山では典型的な感染症であるコレラの流行で検疫問題に悩まされた。3ヵ所の港では、いずれも各国の自国民保護と経済的な利害関係が相反する様相を見せた。朝鮮政府は経験を蓄積し、1887年に朝鮮政府検疫章を制定し、それは1893年まで続いた。 2番目の市川智生先生(沖縄国際大学)の発表は「19世紀後半日本における感染症対策と開港場」だった。市川先生は、朴先生の発表と似た主題および問題意識を持って研究を進めていたことに驚いたと述べ、互いに研究に役立てることに期待を表明した。今回の発表では、日本の開港場である横浜、長崎、神戸を対象とし、日本人社会と外国人社会の関係に注目した。混乱した時代を経て、1890年代以降日本政府の感染症対策の一元化が行われていった。 3番目は余新忠先生(南開大学)の「中国衛生防疫メカニズムの近代的発展と性格」だった。前二者と異なり、中国で衛生が持つ意味と実態、そして近代以降の変化を巨視的な眼目から見た研究だった。また、現在の状況との比較を通じて、国や地域、個人の役割についても共に考えるテーマを提示した。 続いて、3つの発表に対する指定討論が行われた。指定討論者も3国の研究者で構成された。(金賢善先生:明知大学、塩出浩之先生:京都大学、秦方先生:首都師範大学)。指定討論では討論の対象となる発表を「指定」せず、全テーマを対象にする討論を要請、より幅広い議論が展開された。伝統的な衛生防疫の意味、近代以降の国家が防疫を主導するようになる過程、感染症がもたらした近代化に伴って出現した「区分」の無形化とともに、衛生と防疫をどの国家が主導するかをめぐる競争もあったことが指摘された。一方、植民地での衛生や防疫問題、国家より下位の単位、国家と底辺をつなぐ共同体への関心も必要だという提言もあった。 第2セッションは自由討論だった。自由討論に先立ち、劉傑先生(早稲田大学)による論点整理があった。発表の内容とともに、事前に提出されたパネリストからの質問で共通に提起された問題についても整理をした。国境を越える人々によって広がる感染症に対応するための優先的な方法は国家の国境封鎖であり、これは主権の問題であったこと、しかし、情報の共有と国境を越えた対応が重要な課題として浮上したこと、予防と治療には国家-地域-個人ネットワーク、コミュニティの役割が重要であること、それに内包される共存性と対立性をどのように理解するかについて、アプローチする余地があるだろうなどと指摘された。 続いてパネリストによるコメントと質問。直接発言だけでなく、チャット機能を利用して質問してくださった方もいた。感染症は昔から権力者に対する不信感を呼び起こし、したがって近代以降も感染症は国民の政治意識およびその変化と密接な関連を持つようになったこと、主権と感染症の間の力関係、各国の民衆意識および民族主義の高揚との関係、感染症流行時の3国の情報共有と共同対応の様相などについての質問が寄せられた。これに対しては、発表者から丁寧な回答があり、指定討論者とパネリストの補足コメントが相次ぎ、時間が足りないほどであった。 自由討論の名残惜しさを残し、宋志勇先生(南開大学)の総括、明石康先生のコメントが続いた。歴史の1ページに残すに値する時期に適切なテーマの「対話」であり、グローバル化の中での各国の社会的責任、発信すべき社会的メッセージを考えさせる時間であった。各国がより自由に互いに学ぶ立場でグローバルな解決策を模索することができるので、互いの視点を比較して分析することがこの集まりの問題意識であるということは、未来的かつ地球的に重要だと思う、という言葉を残した。 三谷博先生(跡見学園女子大学)は閉会挨拶で、(1)パンデミックという事態によって再び分断が生じたり拡大したりしてはいけないという事実が明らかになった(2)この会議が国家-民衆-学者間の協力関係を開いていく重要な契機になると期待する(3)「国史たちの対話」の趣旨は国家間の葛藤をどのように克服するかにあり、オンラインの限界にかかわらず、重要なことを成し遂げた(4)歴史学が持つ限界を乗り越えるのに今回の対話が出発点になれば嬉しい、と語った。最後に翻訳と同時通訳をしてくれた方々、そして渥美財団の元奨学生たちに感謝の言葉を述べた。また、今日集まった方々が個人的にもこれからもずっと交流してほしいという希望を述べた。 会議が終了してから、非公式の、自由な「対話」が懇親会という形で行われた。フィリピンで開催された「第4回国史たちの対話」で会った方々は、1年ぶりの「再会」で和気あいあいと会話を交わした。「第5回対話」に初めて参加した方々もすぐに親しくなった。たまに硬くない共通テーマで、飲み物とおつまみを用意してこんな風にオンラインで会うのも良いのではないかと思う。紙幅の制限により参加された方々の発言内容を十分に紹介できなかったことを残念に思う。 当日の写真 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J-Kokushi5_photos.pdf アンケート結果 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/Kokushi5-Questuinaire-Report.pdf ■ 金キョンテ KIM_Kyongtae 韓国浦項市生まれ。韓国史専攻。高麗大学韓国史学科博士課程中の2010年~2011年、東京大学大学院日本文化研究専攻(日本史学)外国人研究生。2014年高麗大学韓国史学科で博士号取得。韓国学中央研究院研究員、高麗大学人文力量強化事業団研究教授を経て、全南大学歴史敎育科助教授。戦争の破壊的な本性と戦争が荒らした土地にも必ず生まれ育つ平和の歴史に関心を持っている。主な著作:壬辰戦争期講和交渉研究(博士論文) ※本エッセイは「国史たちの対話の可能性」メールマガジン第27号で配信したものを、より多くの方に読んでいただくために再送します。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い(再送) 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Invitation to SGRA Virtual Cafe #15

    *********************************************** SGRAかわらばん858号(2021年2月18日) *********************************************** ◆第15回SGRA-Vカフェ「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」へのお誘い 下記の通り第15回SGRA-Vカフェをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。今回は日本語⇒中国語、日本語⇒韓国語への同時通訳がありますので、中国語、韓国語話者の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 テーマ:「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 日 時:2021年3月20 日(土)午後3時~4時30分(日本時間) 方 法: Zoomウェビナーによる 言 語: 日中韓3言語同時通訳付き 主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 申 込:下記リンクよりお申し込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_zvTNvUl4T1CsaZmXgj6CSA お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■ 趣旨 昨年の長編アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の大ヒットは、日本の現代文化におけるアニメの強さをあらためて印象づけた。一方でアニメは大衆文化の中でも日陰の存在だった時期は長く、決して順調に発展してきたわけではない。そんなアニメが現在に至る歴史、世界的視野からみた独自性の確立、これまでにヒット・注目された作品の特徴、そしてアニメがこれからも発展し、日本を代表する大衆文化としての力を持続するための課題、展望について解説する。 ■ プログラム 司会:陳えん(京都精華大学マンガ学部専任講師) 【第1部】 講演「『鬼滅の刃』からみた日本アニメの文化力」 津堅信之(アニメーション研究家、日本大学藝術学部映画学科講師) 【第2部】 対談/インタビュー:津堅信之×陳えん 【第3部】 質疑応答(会場+オンライン) ■登壇者略歴 講演者:津堅信之(Tsugata_Nobuyuki) アニメーション研究家/日本大学藝術学部映画学科講師。1968年生まれ。近畿大学農学部卒業。専門はアニメーション史だが、近年は映画史、大衆文化など、アニメーションを広い領域で研究する。 主な著書: 『日本アニメーションの力』(NTT出版/中国・韓国語でも出版) 『日本のアニメは何がすごいのか』(祥伝社新書/韓国語でも出版) 『ディズニーを目指した男 大川博』(日本評論社) 『新版アニメーション学入門』『京アニ事件』(ともに平凡社新書)など 司会者:陳えん(Chen_Yan/ちん・えん) 京都精華大学マンガ学部専任講師/2017年度渥美奨学生。北京大学学士、東京大学大学院総合文化研究科修士・博士課程単位取得満期退学。 研究領域:アニメーション史/日中アニメ・マンガ交流史/「動漫」「IP」の概念史など。研究以外、マルチクリエイター・プロデューサーとして日中コンテンツ業界にて活躍中。 ◇プログラムの詳細は下記リンクをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/02/J_SGRA-VCafe15_Program.pdf ◇中国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/chinese/2021/02/12/sgra_cafe_15/ ◇韓国語ウェブページ http://www.aisf.or.jp/sgra/korean/2021/02/11/sgra_cafe_15/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • TANG Rui “My Job Hunting Experience”

    *********************************************** SGRAかわらばん857号(2021年2月11日) 【1】エッセイ:唐睿「私の就職活動」 【2】催事紹介(参加者募集):シンポジウム「女性は世界を変える」(2月20日、オンライン) 【3】催事紹介(論文募集):「ガバナンスと開発」国際会議(論文募集締切2月26日) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#660 ◆唐睿「私の就職活動」 2019年4月、私は博士課程の最後の1年を迎えました。博士論文の審査に向けて準備を始めるとともに、卒業後のことも考えなければならなくなりました。それまではまじめに勉強と研究をすれば良かったのですが、今後のことについて考えたことが少なく、明確な目標も持っていなかったため、迷っていました。博士を取得した学生にとっては卒業後大学で「ポスドク」をやって、数年後助教か講師になって、一生懸命研究成果を上げて教授への昇進に向けて頑張るというシナリオが一番有り得そうな道です。20年間頑張れば、私もいつか教授になれるかもしれません。 しかし、現実問題として、今の中国も日本も大学教員採用の競争は非常に激しくなっています。特に中国の大学で理工学系の教員職に応募する場合『Nature』『Science』系の論文を持っていないと、良い大学で助教以上の職に採用されるのはとても難しいです。研究は非常に面白いことですが、科研費が足りないことと、テニュア(終身雇用)取得まで定期的に論文を出さないと首になることを常に心配しながら研究するのは好きではないため、民間企業に就職することを決めました。 しかし、どの国で就職するか、どのような企業に応募するかについて新たな悩みが出てきました。国に関して特にこだわりはありませんが、どの国の企業に応募してもそれぞれの問題があります。日本では、私の研究テーマ「光集積回路」に関連する業務がある企業は非常に少ないです。そして、多くの日本企業はエントリーの締め切りが3月中で、2019年3月末に米国留学を終えて日本に帰ってきた私は、すでに日本での就職活動のタイミングを逃していました。残る選択肢は博士課程の学生を通年採用しているわずか一部の企業だけでした。 米国では研究テーマと関連性の高い企業が多いですが、私は米国の大学の学位を持っていないため、卒業後すぐには米国で勤務できません。就労ビザを取れない可能性も高いし、取れたとしても勤務が始まるまで時間がかかるため、面接のチャンスももらえない可能性が高いです。 中国に帰る選択肢もありますが、正直近年の中国の通信とIT企業にはあまり就職したくないです。中国の通信とIT業界にはブラック企業が非常に多く、社会問題になっているからです。2019年に中国のIT企業の社員から「996,ICU」という有名な言葉が作られました。朝9時から夜9時まで週6日の労働を続けていくと、いつか病院の集中治療室(ICU)に運ばれるという意味です。ほとんどの中国IT企業では、こういった996労働が暗黙のルールになっています。明らかに中国の労働法に違反するものですが、政府が積極的に企業の違法行為を取り締まる気配は見られません。その理由は、中国の経済成長はITと通信企業に大きく依存し、残業を制限すると中国の経済成長に大きく影響するからだと思っています。 さまざまな問題があると言っても行動しなければならないので、とりあえず米国と中国、日本の企業にたくさん応募しました。最初に応募したのはたまたま見つけたAIチップを開発している日本のベンチャー企業です。やっていることが面白く、持っている技術も凄そうなので、ホームページに新卒の募集が出されていないにも関わらず、むりやりに応募して数回の面接を受けてから内定をもらいました。中国の企業には5社応募し、3社から内定をもらいました。一番驚いたのは、博士過程の研究と関連性の高い米国企業に10社以上応募しましたが、ほとんど電話面接の機会も与えてくれなかったことです。唯一面接のチャンスと内定をくれたのは、米国留学時にお世話になった先生がコンサルタントとして勤めているベンチャー企業でした。米国の学位を持っていない人にとって、就職活動をする際にコネクションがどれほど大事かを実感しました。 内定の中には、大手企業とベンチャー企業が両方ありました。大手企業に入れば安定した生活が過ごせるかもしれませんが、私は安定した生活よりも仕事のやりがいと面白さを重視しています。給料なども総合的に考えた結果、やはり量子コンピュータを開発している米国のベンチャー企業が一番魅力的だと思い、その企業の内定を受諾しました。 私の就職活動は終わりましたが、人生についていろいろ考えさせられました。もちろん不安はありますが、今後は新しい目標を立てて頑張っていきたいと思います。 追記: 残念ながら米国就労ビザの抽選に落ちました。2020年に米国に行くのは無理なので、とりあえず中国に帰って就職しました。深せんにあるディスプレイメーカーです。6月末に中国に帰る予定でしたが、コロナウイルス感染症の防疫のため予約した便が2回キャンセルされて、8月9日にやっと帰国できました。専用ホテルで2週間の隔離と帰省を経て、9月から深せんで仕事を始めました。ちょうど今「996」の部署で研修しているので、その大変さを痛感しています。サステナブルな働き方ではないので、この部署は毎年仕事を辞める人がたくさんいます。中国でも働き方改革がいつか必須となると考えています。 <唐睿(たん・るい)TANG Rui> 渥美国際交流財団2019年度奨学生。中国安徽省出身。2013年南京航空航天大学情報工学専攻学士課程卒業、2015年(日本)東北大学通信工学専攻修士課程修了、2020年東京大学電気系工学専攻博士課程修了。現在中国深せん市の企業でディスプレイの開発に携わる。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介(参加者募集):第4回シンポジウム「女性は世界を変える」 SGRA会員で昭和女子大学准教授のシム・チュンキャットさんから、非常にタイムリーなシンポジウムの案内をいただきましたのでご紹介します。シムさんが司会を務めるそうです。参加ご希望の方は直接お申込みください。 第4回シンポジウム「女性は世界を変える」 ◆テーマ:「女性の高等教育と女子大学の将来」 開催日時:2月20日(土)16:00~17:30 開催方法:オンライン 言語:英語 共催:昭和女子大学:女性文化研究所、国際交流センター、現代ビジネス研究所 申込:https://forms.gle/hbmNSvxPzaarMeqM9 プログラム: ・ファシリテーター 昭和女子大学 坂東眞理子理事長・総長 ・パネリスト ケンブリッジ大学ニューナムカレッジ アリソン・ローズ学長 誠信女子大学校 楊普景総長 駐日ラトビア大使館 ダツェ・トレイヤ=マスィ特命全権大使 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://univ.swu.ac.jp/news/プレスリリース/2021/02/08/41780/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】催事紹介(論文募集):第2回「ガバナンスと開発」国際会議 SGRA会員でフィリピン大学ロスバニョス校准教授のフェルディナンド・マキトさんより、シンポジウムの論文・パネル提案の募集のお知らせがありましたのでご紹介します。ご興味のある方は直接応募してください。 第2回「ガバナンスと開発」国際会議 ◆テーマ:「パンデミック後の共同社会におけるガバナンスと開発」 開催日時:2021年3月23日(火)~25日(木) 開催方法:オンライン 言語:英語 主催:フィリピン大学ロスバニョス校公共政策・開発大学院 ※論文・パネルの提案を募集中。締め切りは2月26日(金)です。 https://www.facebook.com/uplb.cpaf/posts/3119307274962900 国際会議の詳細は下記リンクをご覧ください。 http://bit.ly/icgd2poster ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • JIN Hongyuan “From Academia to Industry”

    *********************************************** SGRAかわらばん856号(2021年2月4日) 【1】エッセイ:金弘渊「アカデミアからインダストリーへ」 【2】国史対話メルマガ#26を配信:塩出浩之「国籍はいかに人の国際移動を左右するか」 *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#659 ◆金弘渊「アカデミアからインダストリーへ」 私は博士課程で基礎生物学の研究をしていた。主にチョウの色素の合成と紋様形成のメカニズムについて、研究生から修士、さらに博士まで6年間研究してきた。博士2年生の頃、将来の進路を真剣に考えはじめた。単純に研究室の先輩たちの進路を参考にしてみると、自分の業績で大学に残れるものであるかを懸念し始めた。研究室で1日を過ごして疲れてようやく家についてから、もし、自分がこのまま社会に出て仕事に就くと、何かできるだろうかと自分に聞いてみた。 答えはすぐには出てこなかった。そもそも社会経験が少ない院生の自分に対し、社会はどのような人材を求めているかがわからなかった。製造販売業のような自分の日常生活に近い業界は、実際に商品を使用したり、売買をしたりするので、製品を設計、製造、販売する人が必要であることをイメージしやすいが、モノを作らない業界(例えばIT、保険、コンサルティングなど)についてはよく知らなかった。 自己勉強のつもりもあるので、「業界地図」などの就職ガイドを購読し、ネットで新卒向けの業界説明サイトから、まず各業界に関わる基礎知識と特徴及び規模などを調査した。その結果、自分の専門にぴったり合う業界はないけれど、逆に色々試すことができると考えた。 2ヶ月後、当時の考えは甘かったと振り返った。その2ヶ月間、新卒で就職する学部生たちと一緒にリクルートスーツを着て、企業の説明会に参加するために東京に行って、履歴書の提出とウェブテストを受けて面接まで行った。一般的な企業においては、博士の学生は必要とされていないと感じた。自分が考えた理由として、その1つは新卒の博士は年齢的に30歳に近く、かつ現場の実務経験がないから、実務的に働けるまでトレーニングに必要なコストが高いということ。 例えば、商品の研究開発職に応募した同じ30代の候補者が3人いたとして、Aさんは大卒で8年の業界経験と現場での開発経験があり、課長代理と同等の管理能力が認められる;Bさんは修士卒で社会人歴6年、その内4年は日本の本社で勤務した後、2年間ドイツの支社に出向し、ビジネスレベルの英語力がある;Cさんは博士の新卒で、在学期間の成績が優秀で、良い論文も数本発表した。もし自分が人事担当だったら、短期間で商品の研究開発をするため、候補者が会社に入ってから、会社に価値が提供できるようになるまでの時間を計算し、又その期間内に生じる全ての人件費(給料、トレーニング費)を合算し、即戦力があるAかBのどちらかを選ぶと思う。社会に出たら、仕事の経験が学歴より重要だと認識した。 もちろん大卒の学生と一緒に入社し同じ仕事をすることは、自分にとっても会社にとってももったいないと考えて、新卒博士向けの職務にもたくさん応募した。そもそも博士向けのポジションは少なかったから、自分の研究から離れる業界にも応募してみた。企業は応募者の過去の研究業績より研究分野を重視すると感じた。特に自分の研究は生物の基礎研究で、医学的若しくは薬学的な研究ではなく、会社にとって最優先の人選ではないと言われた。 自分では、生物研究と医学的な基礎研究は、研究対象の違いに過ぎないと認識しており、数ヶ月の勉強さえあれば、同様の仕事ができない訳がないと考えていた。でもそれは違うらしくて、面接がうまくいったにもかかわらず、最終面接に落ちたケースは少なくなかった。その理由はいまだにわかってない。就活は面接が終わった時点で会社との連絡が不可能になり、フィードバックなどがほとんどもらえない状態だ。自分が後から考えた理由の1つは、日本の企業は、例えば海外の市場の進出のためというような特別な戦略上の必要がなければ、外国人の社員は特に必要ないということだ。それ以外は多分、「ご縁」しか考えられない。 1年間で2回も就職活動を経験し疲れた。最後の結論としては、特に国全体の経済が厳しい時には、求職者が受動的に会社側の要望に応じることが多いということだった。去年の年末(編者注:2019年末)に新しい仕事に就くことできた。それはコロナ禍で就職が大変になる前の不幸中の幸いだった。 <金弘渊(きん・こうえん)JIN_Hongyuan> 渥美国際財団2019年度奨学生。中国杭州出身。2019年東京大学大学院新領域創成科学研究科で先端生命科学を専攻し博士号(生命科学)を取得。専門は進化発生学、遺伝学。現在大阪で医薬品の臨床開発に携わる。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】「国史対話」メールマガジン第26号を配信 ◆塩出 浩之「国籍はいかに人の国際移動を左右するか」 私は学生時代から最近まで、近代のアジア太平洋地域における日本人移民の歴史について研究してきた。その私にとって、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが人の国際移動に全世界的な遮断をもたらしたことは、虚を衝かれたような衝撃であった。 確かに第二次世界大戦直後のように、人の国際移動が極度に制限された時期はある。日本の敗北に伴い、旧植民地にいた日本人は日本に強制送還され、日本からの出国は主権回復まで不可能となった。しかし、そのように人の移動が制限される事態は、このグローバル化の時代には起こらないと思い込んでいたのである。 私は時間が経つにつれて、今日の事態は、第二次世界大戦後の状況と同じように、近代世界におけるグローバルな人の移動の歴史の一部として説明されるべきだと考えるようになった。しかし、人の国際移動こそがコロナ・パンデミックをもたらした要因であり、それゆえに全世界で遮断されたことについては、いまさら論ずる必要はない。 ここで考えたいのは、人の国際移動において国籍がもつ意味である。コロナ・パンデミックのもと、世界各国は国境管理を著しく厳格化したが、共通して顕著にみられたのは、自国民と外国人との処遇の違いであった。自国民に関しては帰国を原則的に認めた上で、帰国後の防疫策が課題となった一方、外国人に関しては逆に入国の禁止・制限が基本とされ、事情に応じて入国を許可するという方針が採られたのである。 続きは下記リンクからお読みください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2021ShiodeHiroyukiEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************