SGRAメールマガジン バックナンバー

  • Husel “Exploring the Bastion of the Mongol Invasion”

    ********************************************* SGRAかわらばん914号(2022年3月24日) ********************************************* SGRAエッセイ#700 ◆ボルジギン・フスレ「元寇防塁探訪」 私は元寇防塁の調査のため、2021年12月24日から29日にかけて福岡に行ってきた。 モンゴル帝国の第5代ハーン、大元ウルス第1代皇帝フビライ・ハーンが高麗を征服後、日本に「通好」を求めて5回にわたって使者を派遣したが、鎌倉幕府に拒否された。そのため、高麗軍なども含むモンゴル帝国の軍隊が1274(文永11)年と1281(弘安4)年に2度も日本に侵攻した。鎌倉幕府はモンゴル帝国の軍隊の侵攻に備えて、九州各地の御家人に命じ、西の今津から東の香椎まで博多湾の海岸沿い約20キロにわたる石塁を築かせた。遺跡の一部は今もこれらの地域に残されており、いわば「元寇防塁」である。 福岡に着いた翌12月25日、私はまず早良区西新の元寇防塁を調査しに行った。12月25日といえばクリスマス。福岡の街のどこでもクリスマスの雰囲気に包まれている。西新駅を出た際、元寇防塁の場所を確認するため駅員に尋ねた。駅員は元寇防塁についてあまり知らなかったが、非常に熱心な方で、「“ゲンコウボウルイ”って建物ですか、遺跡ですか」と私に聞いた。「遺跡ですよ。“蒙古襲来”の時に造ったもの」。 元寇防塁が分からなかったら、蒙古襲来は分かると思い、日本の教科書に取り上げられている「蒙古襲来」という表現を使った。「あー、そうか」とその方は改札口の駅員室に入って、ほかの2名の駅員にも確認した後、地図を持ってきて「1番出口を出て、サザエさん通りに沿って最初の十字路を左に曲がって…」と行き方を詳しく説明してくれた。どうやら、元寇防塁はあまり知られていないが、「サザエさん通り」といったら誰もが知っているようだ。実は、1番出口の案内板には「西新3、6、7丁目元寇防塁跡」「サザエさん発案の地記念碑(サザエさん通り)」とも書かれている。 西新6、7丁目の元寇防塁の一つは西南学院大学1号館の館内にある。しかし、私がその1号館に着いた時、館内の元寇防塁の見学は月曜日から金曜日までの9:00~17:00に限られていることをはじめて知った。看板に書かれている。この日は土曜日であり、しかも大学は冬休みに入っていたのか、1号館の前でどうにか中に入ろうと数分間ウロウロしても、一人も見かけなかった。1号館を後にして、大学体育館南側の元寇防塁を訪れた。 まず目に入ったのは元寇神社であった。隣に建てられた記念標柱には「史蹟 元寇防塁 昭和6年10月建設」と刻まれている。その横に発掘された防塁が展示されている。南側にはさらに3本の木が植えられ、それぞれに「良子女王殿下御手植公孫樹」、「久邇宮殿下御手植樟」、「開院宮春仁王殿下 梨本宮守正王宮殿下奉臨記念樹」と刻まれている。後で資料を調べて知ったのだが、この元寇神社では毎年10月20日の祭典が慣例行事になっているそうである。 元寇防塁は1931(昭和6)年に日本政府に国の遺跡として指定された。この昭和初期の元寇防塁に対する発掘・復元の運動と次に述べる明治時代の元寇記念碑建設運動は、その時代の日本の大陸進出という政策と密接な関係があったのはまちがいない。 その後、西区にある生の松原(いきのまつばら)の元寇防塁を訪ねた。下山門駅を降りて、駅員に元寇防塁の場所について確認した。駅員は同地域の元寇防塁のことをよく知っており、地図で行き方を詳しく説明してくれた。道中、「生の松原元寇防塁」と書かれている看板(福岡市教育委員会が建てたものも含む)が複数あったので助かった。生の松原の森のなかには、元寇防塁の記念標柱が建てられており、「史蹟 元寇防塁 文部大臣指定 史蹟名勝天然記念物保存法ニ依リ 昭和6年3月建設」と刻まれている。また、海岸沿いには高さ2メートルほどの防塁が積みあげられ、その真ん中の位置、防塁から数メートルほど離れたところには「蒙古襲来絵詞」の一部が複刻された展示板が建てられている。防塁は復元されたものではあるが、迫力があって思いを馳せると興味は尽きない。 12月26日、私は元寇史料館に行った。東公園の一角の2階建ての建物である。1階はラーメン屋と焼鳥屋などになっており、史料館なるものは実際2階のみ。同史料館には専任の職員がおらず、隣の売店の方が兼務されているそうである。史料館を見学するのには、事前に電話で予約しなければならない。実際、私は1カ月前(11月)から何度も電話をかけたが、なかなか繋がらず、2週間前のある日、やっと連絡が取れた。史料館に着いた時、入り口は施錠されており「予約の方は売店へお知らせください」という手書きの紙が貼られている。私は売店に行って説明した。その方が予約者の名簿らしいものを確認して、名前が確かに書かれていると言い、鍵を持って史料館のドアを開けてくれた。「撮影は禁止、見学時間は30分以内」という説明を受けて入館料を支払い、見学した。 元寇史料館の奥の展示室には、モンゴル軍の鎧兜、鐙、壺、弓のほかに、「蒙古襲来絵詞」の一部も展示されている。2階に入ったところの「広い」(奥の展示室よりは広い)フロアも展示室になっている。しかし、ここはなんと日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、日蓮宗史などのコーナーで構成されている。史料館で購入した本によると、同館は1904(明治37)年に元寇記念館として設立、のちに東公園内の日蓮聖人銅像護持教会の敷地に移築され、1986(昭和61)年に元寇史料館として再オープンしたそうである。 史料館の隣に高さ10.55メートル、重さ74.25トンの日蓮聖人銅像が聳え立っている。1888(明治21)年、日本では元寇記念碑建設運動が起こった。1887(明治20)年に作成された元寇記念碑建立を呼び掛けるポスターによると、当初は、北条時宗の騎馬像をモチーフにした像の建立が計画されていたそうである。結局、17年間かけて1904年に完成したのはこの日蓮聖人銅像である。1904年といえば日露戦争に突入した年である。長い歳月を経て、人びとは百年余り前に日本全国で盛り上げられた元寇記念碑建設運動にはほとんど関心を持っていない。元寇史料館といっても、2階に展示されたものはわずかではあるが非常に貴重な「元寇」の史料と、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦のものが混じったもので、1階はラーメン屋と焼鳥屋などになっており、いわばどっちつかずのものになっている。なんと皮肉だろう。 福岡にいる間、私は長垂海浜公園、中央区地行の元寇防塁などをも調査した。しかし、鷹島などの史蹟は調査できなかった。次回、鷹島と松浦市の史蹟を調査することを楽しみにしている。 調査した史跡の写真は下記をご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/03/Husel_essay_Mar2022light3.pdf <ボルジギン・フスレ BORJIGIN_Husel> 昭和女子大学国際学部教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員、ケンブリッジ大学モンゴル・内陸アジア研究所招聘研究者、昭和女子大学人間文化学部准教授、教授などをへて、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945~49年)――民族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、『モンゴル・ロシア・中国の新史料から読み解くハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社、2020年)、編著『国際的視野のなかのハルハ河・ノモンハン戦争』(三元社、2016年)、『日本人のモンゴル抑留とその背景』(三元社、2017年)、『ユーラシア草原を生きるモンゴル英雄叙事詩』(三元社、2019年)、『国際的視野のなかの溥儀とその時代』(風響社、2021年)、『21世紀のグローバリズムからみたチンギス・ハーン』(風響社、2022年)他。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • SGRA Forum#68 “Dreams, Hopes and Lies” Report

    ********************************************* SGRAかわらばん913号(2022年3月17日) 【1】SGRAフォーラム「夢・希望・嘘―メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る―」報告 【2】SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い(3月21日20時、オンライン)(最終案内) ********************************************* 【1】デール・ソンヤ「第68回SGRAフォーラム『夢・希望・嘘―メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る―』報告」 2022年2月20日(日)14時~17時、第68回SGRAフォーラムを開催しました。Zoomウェビナーを利用した完全オンライン形式です。コロナ禍の影響で、なかなか実際に会うことができませんが、このような形で皆さんとイベントができることはありがたいです。テーマはデジタルや新メディアの時代にふさわしい「夢・希望・嘘―メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る」です。東アジアを中心に、日本、中国、韓国の事情についての発表とディスカッションがあり113名が登録、参加してくださいました。発表者はハンブルトン・アレクサンドラ先生と元渥美奨学生3名―バラニャク平田ズザンナ先生(2019年度)、于寧先生(2020年度)、洪ユン伸先生(2008年度)。Q&A担当は郭立夫さん(2021年度)、モデレーターはデール・ソンヤ(2012年度)です。開会挨拶は、SGRA代表の今西淳子さんがしてくださいました。このイベントに多くの渥美奨学生に関わってもらい、またジェンダー・セクシュアリティを専門とするメンバーが増えていることに、感謝と喜びを感じています。 基調講演は津田塾大学のハンブルトン・アレクサンドラ先生。「今の時代、白馬に乗った王子様って必要?リアリティテレビの『バチェラージャパン』と『バチェロレッテジャパン』から見たジェンダー表象」というタイトルで、最近流行っている恋愛リアリティ番組から見える社会現象についてです。最初に現代日本の結婚および少子高齢化社会をめぐる言説と婚活事業を紹介してくださいました。結婚や出産に関して政府の視野が狭く、日本に住んでいる人々の現実を十分把握できていないとの指摘です。経済的に苦労している人が多く、与えられた性別によってサバイバルの対策が異なります。日本の「バチェラージャパン」でみられるように、男性と結婚することで経済的な安定を求める女性が多くいます。しかし、同時にこのような恋愛リアリティ番組も固定概念に基づいているラブ・ストーリーしか描こうとしていません。多様性が反映されていないことが問題です。ハンブルトン先生の結論として、白馬に乗った王子様は今の時代に必要です。しかし、その王子様はお金持ちの男性ではありません。必要となっているのは社会福祉の改善と全ての人のための暮らしやすい社会作りです。 講演の後は3名の元渥美奨学生による各20分の発表でした。バラニャク平田ズザンナ先生(お茶の水女子大学)は「日本の宝塚歌劇団とファン文化」、于寧先生(国際基督教大学)は「中国本土のクィア運動とメディア利用」、洪ユン伸先生(一橋大学)は「韓国のフェミニズムと嫌フェミニズム運動」についてです。 バラニャク平田先生は事情によりリアルタイムで参加できず、事前に録画していただいたものを流しました。「夢を売り、夢を描く:ジェンダー視点からみる宝塚歌劇団の経営戦略と関西圏のファン文化」という発表で、宝塚歌劇団の歴史的・社会的な背景を紹介した上でファンからの聞き取り調査から得た情報を共有していただきました。宝塚歌劇団は「夢の世界」として売られているもので、その「夢の世界」を家父長的な経営戦略および都市空間という二つの側面から分析し、女性ファンのエンパワーメントを考察しました。 次は于寧先生による「中国本土のクィア運動におけるメディア利用―北京紀安徳咨詢センターによるメディア・アクティビズムを中心に」という発表です。歴史的な視点から、時代に合わせて活動家が使っているメディア媒体の変化や直面する社会問題などを紹介していただき、中国本土のクィア活動について知る重要な機会となりました。発表で紹介された北京紀安徳咨詢センターの活動は終了したとのことで、マイノリティ団体が活動を長く続けることの難しさを改めて実感しました。しかし、団体そのものがなくなっても成果を残せば、従来から続いている運動に活用できるので、過去にとっても将来にとっても貴重な社会貢献だといえます。 最後の発表は洪ユン伸先生による「MeTooからデンジャンニョ(味噌女)まで:韓国のメディアにおける「フェミ/嫌フェミ」をめぐって」という発表でした。近年、韓国のフェミニズム運動が可視化された一方、フェミニズムバッシングも増えたとのことです。その背景及び現象を紹介し、韓国のMeToo運動が直面する課題などを説明してくださいました。学校などの公的な場所でのMeToo運動がある一方で、バッシングを受ける恐れから実名で自分が受けた経験について語ることができない現状があるそうです。韓国においてフェミニズムはまだ物議を醸す話題です。韓国のMeToo運動に対して、シスジェンダーとヘテロセクシャル、いわばマジョリティの立場にいる女性と男性から視野を広げる必要もあり、これからの課題としてLGBTや障がい者を取り組むことも必要とのことでした。 最後は4名の発表者とのディスカッション・質疑応答です。韓国、中国と日本のメディアとジェンダー・セクシュアリティや社会問題などについて話し合い、時間が足りないほど幅広く様々な話題にふれました。議論された課題の中には検閲の問題、政府の政策と出産・結婚やメディアの関係性、メディアにおける多様性、フェミニズム運動におけるトランスジェンダー女性の位置付けなどがありました。 ジェンダーとセクシュアリティの話になると、現状を把握した結果、絶望的になりやすいですが、最後に皆さんがそれぞれの分野で今期待していることについて話しました。様々な社会問題が残っており、男女平等もまだ果たしていない東アジア(台湾以外)に同性結婚やトランスジェンダーの権利がまだできていないのが現状ですが、少しずつ変化も感じられます。また、皆さまと対談ができることも、とても嬉しいことです。これからも、このような対談が増えていくことを期待しています! 当日の写真は下記リンクからご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/03/Forum68Photos.pdf アンケートの集計は下記リンクからご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/03/Forum68Survey.pdf <デール・ソンヤ DALE_Sonja> ウォリック大学哲学部学士、オーフス大学ヨーロッパ・スタディーズ修士を経て上智大学グローバル・スタディーズ研究科にて博士号取得。これまで一橋大学専任講師、上智大学・東海大学等非常勤講師を担当。現在、インディペンデントリサーチャー。ジェンダー・セクシュアリティ、クィア理論、社会的なマイノリティおよび社会的な排除のプロセスなどについて研究。2012年度渥美国際交流財団奨学生。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第17回SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い(最終案内) 下記の通り第17回SGRA-Vカフェを開催いたします。参加ご希望の方は、下記より参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。SGRAカフェはどなたにも参加していただけますので、関心のある方にご宣伝ください。 ◇テーマ:「国境を超えたウクライナ人」 ◇講 師:オリガ・ホメンコ(キエフ・モヒーラビジネススクール助教授) 日 時:2022年3 月21日(月・休)午後8時~9時30分 方 法:Zoomウェビナーによる 会 費:無料 言 語:日本語 参加申込:下記リンクよりお申込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_tM3lxWHMSTGZZrYwBKl6yg お問い合わせ:SGRA事務局 ([email protected] 03-3943-7612) ◇講師略歴: オリガ・ホメンコ Olga Khomenko キエフ生まれ。キエフ・モヒーラビジネススクール助教授。東京大学大学院の地域文化研究科で博士号取得。フリーのジャーナリスト・作家・通訳として活動中。2004年度渥美奨学生。 著書:藤井悦子と共訳『現代ウクライナ短編集』(2005)、単著『ウクライナから愛をこめて』(2014)、『国境を超えたウクライナ人』(2022)を群像社から刊行。 ◇講師からのメッセージ: 『国境を超えたウクライナ人』・・・今更このタイトルは皮肉に聞こえるかもしれません。ウクライナ史、国境に対するウクライナ人の思いを書きました。歴史的な観点から西と東の国境の存在について、また国境に対するウクライナ人の想いについて、海に囲まれた島国の日本の皆さんに理解を深めていただきたいです。それにしても本の題名がそのまま現実になるとは思いませんでした。正に悪夢です。私は侵略の2日前に今滞在する欧州の都市に着きましたが、私の家族は、空爆が始まった次の日に、苦労の末にキエフを離れることができ、30時間以上ドライブして国境を越えました。まだキエフに居る親戚、友達、教え子、同僚の無事を祈らずにはいられません。 詳細は下記リンクをご覧ください http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2022/17373/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Invitation to SGRA Cafe#17 “Ukrainians Across the Border”

    ********************************************* SGRAかわらばん912号(2022年3月10日) 【1】第17回SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い 【2】寄贈書紹介:謝惠貞『横山利一と台湾:東アジアにおける新感覚派(モダニズム)の誕生』 【3】寄贈書紹介:趙秀一『金石範の文学:死者と生者の声を紡ぐ』 ********************************************* 【1】第17回SGRA-Vカフェ「国境を超えたウクライナ人」へのお誘い 下記の通り第17回SGRA-Vカフェを開催いたします。参加ご希望の方は、下記より参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。SGRAカフェはどなたにも参加していただけますので、関心のある方にご宣伝ください。 ◇テーマ:「国境を超えたウクライナ人」 ◇講 師:オリガ・ホメンコ(キエフ・モヒーラビジネススクール助教授) 日 時:2022年3 月21日(月・休)午後8時~9時30分 方 法:Zoomウェビナーによる 会 費:無料 言 語:日本語 参加申込:下記リンクよりお申込みください https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_tM3lxWHMSTGZZrYwBKl6yg お問い合わせ:SGRA事務局 ([email protected] 03-3943-7612) ◇講師略歴: オリガ・ホメンコ Olga Khomenko キエフ生まれ。キエフ・モヒーラビジネススクール助教授。東京大学大学院の地域文化研究科で博士号取得。フリーのジャーナリスト・作家・通訳として活動中。2004年度渥美奨学生。 著書:藤井悦子と共訳『現代ウクライナ短編集』(2005)、単著『ウクライナから愛をこめて』(2014)、『国境を超えたウクライナ人』(2022)を群像社から刊行。 ◇講師からのメッセージ: 『国境を超えたウクライナ人』・・・今更このタイトルは皮肉に聞こえるかもしれません。ウクライナ史、国境に対するウクライナ人の思いを書きました。歴史的な観点から西と東の国境の存在について、また国境に対するウクライナ人の想いについて、海に囲まれた島国の日本の皆さんに理解を深めていただきたいです。それにしても本の題名がそのまま現実になるとは思いませんでした。正に悪夢です。私は侵略の2日前に今滞在する欧州の都市に着きましたが、私の家族は、空爆が始まった次の日に、苦労の末にキエフを離れることができ、30時間以上ドライブして国境を越えました。まだキエフに居る親戚、友達、教え子、同僚の無事を祈らずにはいられません。 詳細は下記リンクをご覧ください http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2022/17373/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員で文藻外語大学日本語学科准教授の謝惠貞さんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆謝惠貞著『横山利一と台湾:東アジアにおける新感覚派(モダニズム)の誕生』 日本統治期台湾の文学において、横光利一の「純粋小説論」や作品が与えた影響は大きく、また、その影響は中国や韓国など東アジアに広がる。本書は、日本統治期において台湾人作家がいかに横光を受容したかを解明し、台湾文学史の中にこれまで看過されてきた「台湾新感覚派」の誕生を文学史に正しく位置づける。更に、韓国の李箱や中国に渡った劉吶鴎の横光受容や、新発見された横光の随筆「台湾の記憶」を通して台湾の表象を論じる。 発行所:ひつじ書房(ひつじ研究叢書(文学編)14) 刊行日:2021年12月24日 体裁:A5判上製カバー装 424頁 ISBN:978-4-8234-1109-0 定価:6200円+税 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1109-0.htm -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】寄贈書紹介 SGRA会員で東国大学校日本学研究所専任研究員の趙秀一さんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆趙秀一『金石範の文学:死者と生者の声を紡ぐ』 「四・三事件」の当事者たちに語り継がれた死者と生者の記憶を、文学的想像力を通して書き続ける在日朝鮮人作家、金石範。気鋭の韓国人研究者が『火山島』に至るテクストを読み解き、越境し交差するその文学世界を捉え直す。「日本語」や「日本文学」を揺さぶり続ける金石範文学の独創性を「世界文学」として位置づける渾身の力作。 発行所:岩波書店 ジャンル:書籍 > 単行本 > 日本文学総記 刊行日:2022/03/08 ISBN:9784000615198 Cコード 3091 体裁:A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 426頁 定価:9,900円 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.iwanami.co.jp/book/b600949.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • YUN Jae-un “Six Years of Training and a Second Commitment as a Member of Society”

    ********************************************* SGRAかわらばん911号(2022年3月3日) 【1】エッセイ:尹在彦「修業の6年間、社会人としての2度目の決意」 【2】オリガさんからのメッセージ紹介 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#699 ◆尹在彦「修業の6年間、社会人としての2度目の決意」 私は博士課程の研究において、人と会うことを最小限にするテーマと手法を選んだ。日本に来る前の5年間の仕事で、人と会うことの大変さを実感していたからだ。韓国内外の様々な人からもらった名刺を数えてみたら、平均して1日に一人は会っていた。意味のあった時間もあれば、どんな人だったか思い浮かばない名刺もある。会うまではどんな時間になるか、予想のつかないこともあった。しかも、インタビューの話を検証すること自体が仕事になることもあった。そのため、人の話に基づいた研究はなるべく避けたかった。このような経験を踏まえ、博士課程では文献を中心とした日本研究を行うことに決めた。 その結果なのか、何とか博士論文を書き上げることができた。コロナ禍の中での論文執筆はまさに「自分との闘い」で、悪戦苦闘の連続ではあったが、それでも「必ず提出する」という執念の方が勝ったと思う。2月の口頭試問の際には面接官の先生から散々厳しい指摘をいただいた。認めざるを得ない指摘がほとんどで、現在は博論の修正を考えている。ただし、博論はあくまで出発点であり、完成品ではない。本当の研究生活はこれからだ。 合計6年間、日本で大学院生として過ごした時間は良かったのか、悪かったのか。私は基本的に物事を批判的に捉える人間なので、正直「生の日本を見てしまった」と言わざるを得ない。近年は日韓関係が悪化の一途をたどる中で居心地の悪さも感じ、特にこの1年はコロナ対応における日本社会の強い同調圧力も実感した。コロナ禍により普段は潜んでいる日本社会の様々な側面がさらけ出されたと思う。日本研究者としては課題が一つ増えたような気がする。 韓国社会においては「マジョリティー」でかつそれなりの「メインストリーム」の道を歩んできた私にとって、6年間の「マイノリティー」としての経験は非常に良かった。韓国でも常にマイノリティーの問題に関心を持っていたつもりではあるが、やはり自分が同様の立場に置かれない限り限界がある。特に様々な財団にお世話になったため、同じ立場の外国人同士の交流ができたことはマイノリティーとして色々と考えさせられる契機となった。 「日本とは何か」「日本をどう見るべきか」というのは、私の研究人生を貫く問いである。答えが見えてくるかと思えば、また遠ざかる。この繰り返しではあるが、少なくとも6年前と比べ知識の量だけは増えた気もする。研究生活の中では専ら「学問をやる」ことを意識し、なるべく「ジャーナリズム」的な発信は抑えてきた。これからは「学問とジャーナリストの両立」を真剣に考えていくつもりである。正直、大学院生という身分は息苦しい面が少なからずあり、社会人大学生が少数の日本では特にそう感じた。早く抜け出したいという気持ちは常に強かった。 最後に仕事で痛感したことを一つ言わせてもらいたい。人とはどこで、どのような形でまた会うかわからないということである。当然のことのように聞こえるが、以前会った人に偶然再び会い、それが様々な縁につながったという経験を何度もした。「人に対して悪いことをしてはならない」という教訓でもあるだろうが、刹那の人間関係だとしても、どこかでまた何かの繋がりがあるかもしれない。めぐり合わせというべきだろうか。コロナ禍中の1年間、渥美財団の奨学生の中で一度も対面していない人も少なからずいるが、縁があれば近いうちにどこかで会えると思う。6年間の修行が終わり、再び社会人へ戻ろうとしている今、肝に銘じたいことである。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN Jae-un> 一橋大学法学研究科特任講師。2020年度渥美国際交流財団奨学生。2021年、同大学院博士後期課程修了(法学博士)。延世大学卒業後、新聞記者(韓国、毎日経済新聞社)を経て2015年以後、一橋大学院へ正規留学。専門は東アジアの政治外交及びメディア・ジャーナリズム。現在、韓国のファクトチェック専門メディア、NEWSTOFの客員ファクトチェッカーとして定期的に解説記事(主に日本について)を投稿中。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】メッセージ紹介 前号で新刊書をご紹介したSGRA会員でキエフ経済大学助教授のオリガ・ホメンコさんからのメッセージをお届けします。 --------------------- 『国境を超えたウクライナ人』・・・今更このタイトルは皮肉的に聞こえるかもしれません。ウクライナ史、国境に対するウクライナ人の思いを書きました。ウクライナ出身の画家、技師、音楽家、作家、歴史家、哲学者などなどの9人、今よりずっと大変な時代を生き抜いて世界文化を豊にした人の物語です。 歴史的な観点から西と東の国境の存在について、また国境に対するウクライナ人の想いについて詳しく書いたこの本の最終章を是非、海に囲まれた島国の日本の皆さんに今読んで理解を深めていただきたいです。 2月27日に被害を受けたロバノフキー通り6Aの建物は、私がキエフで通っていた学校の隣にあります。ソ連時代にそこは軍事基地だったのですが、その後取り壊され、高層マンションがたくさん建てられました。どうして?ロシア軍は古い地図を使っているの?信じられない。ロバノフキー通りはサッカーで有名です。例えば、有名なサッカー選手でコーチのOleg_Blokhinは私の学校を卒業した有名人の一人です。そう、とてもスポーツの盛んな学校です。マンションの住民は大変な目にあいました。一般市民も被害を受けています。ウクライナの人はブラックジョークで、ウクライナがNATOに加盟するのではなく、NATOがウクライナに加盟するべきと言っています。確かに!ただし、させてもらえるかどうか別問題ですけど。 それにしても出版した本の題名がそのまま現実化するとは悪夢にも思いませんでした。空爆が始まった次の日に、私の家族は苦労してキエフを離れることができました。昨日30時間以上ドライブして国境を越えました。難民。信じられない。辛い。でも命が助かって良かったです。キエフの親戚、友達、教え子、同僚のことを祈っています。 --------------------- ※興味のある方はオリガさんのTwitter(@olga_khomenko)をお読みください。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Victor SHISHKIN “What I learned from My Doctoral Program”

    ********************************************* SGRAかわらばん910号(2022年2月24日) 【1】エッセイ:ヴィクター・シーシキン「博士課程から学んだこと」 【2】寄贈書紹介:オリガ・ホメンコ『国境を超えたウクライナ人』 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#698 ◆ヴィクター・シーシキン「博士課程から学んだこと」 私は製品に関する何百ものアイデアとそれらを実現するための大きな情熱、そして「どのアイデアに焦点を当てる価値があるのか?」という問いを持って日本に来ました。博士課程に進学したことで、私は進みたい方向を自由に選択できるし、それが斬新であったり挑戦的であったりすれば、興味のあることを何でも選択できるようになりました。自由は多くの可能な方向性をもたらし、同時に大きな不確実性を与えます。これからの3年間をどのような方向性で過ごせばいいのかと考えました。 博士課程のテーマを見つける最も簡単な方法は、これまでやってきた研究と「新しい研究室」を組み合わせることです。博士課程のテーマが挑戦的で斬新なものになる可能性が最も大きくなるはずです。そこで、最初の1年半はその方向に進みました。 しかし、多くの博士課程の学生が経験する問いに直面しました。それは「これを本当に必要としている人はいるのか?」、「誰のためにやっているのか?」との自問です。結局、自問自答から得た答えは私を満足させませんでした。この技術を知っている人や会社はほとんどなく、実際にその製品を使用したいと思う人は更に少ないことも知っていました。数年前は業界で働いていたのでお客様のニーズに応える仕事に慣れていたため、ニーズがないかもしれない技術開発の仕事を続けることが難しくなりました。 自分がやっていることに疑問を持っていることに気づいたのは、前期学位審査と博士論文が始まるまであと1年半という一番大変な時期でした。自分の研究が役に立つことを本気で信じられないまま残りの時間を送れば、つらい思いをしたり、やる気がなくなったりすることは分かっています。もうこれ以上自分をだますことができませんでした。「自分でさえ自信がないことについて、どうやって博士論文を書くことができるのか。その時にはきっと自分自身にも答えられない質問を審査員や他の人から受けるだろう」と考えました。 長い博士課程を続けていくためにも、困難な時や挫折を乗り越える力を身につけるためにも、自分がやっていることを心から信じていかねばならないと思います。そのため「何=誰のためにこれをやっているのか?本当に役に立つのか?」の問いに対して自分自身に正直な答えを出さねばなりません。 その答えを探し始めているうちに新たな課題に気づきました。ロシアの会社に勤めていたときに聞いた顧客の不満を思い出したのです。東京の工業展示会を訪れ、私の技術の潜在的なユーザーと話をして、彼らの問題を確認することができました。そして、この問題点を明らかにするために、私の研究分野にある会社の最高経営責任者(CEO)と話をしました。その後、ビッグデータ分析ツールを使って自分の研究分野の技術開発動向を把握しました。また、国際会議に参加し、最大の学会のトップや技術スカウトたちと話をして、その技術の未来を理解しました。さらに日本政府がどのような研究分野を支援しているのかを知るため政治的意思決定を研究したり、政策研究大学院大学(GRIPS)で政府のデータを分析したりしました。 そこで得た結論は、お客様にとって一番の問題は製品の価格であるということです。多くのお客様がセンサーの性能ではなく、価格に不満を持っていることが分かりました。このセンシング技術を気に入っているものの、買う余裕がないという潜在的顧客がたくさんいます。そこで、この技術を手頃な価格にすることに力を入れて、特にセンサーシステムにある最も高価な部分をフォトニックチップ上に作るというアイデアを思いつきました。 今、私は光ファイバーセンシング技術をまだ手に入れることができないお客様のために働いているのだと自分を納得させることができます。製品を安くすれば、彼らはそれを手に入れて使ってくれると確信しています。 新しい方向に向いて取り組んだ1年目は失敗ばかりでした。何もうまくいきませんでしたし、チップのデザイン、製造プロセス、テストのセットアップ、どこが間違っているのかも分からなかったのです。しかし、私は落ち込んだことは一度もありませんでした。失敗するたびに次はうまくいくと思っていました。自分の研究が役に立つと心から信じられることは多くのインスピレーションや、やる気とあらゆる失敗に耐える力を与えてくれました。 博士課程から学んだことは長期的なプロジェクトを進めていくために、自分がやっていることを心から信じることが大切だということです。論理的に理解するだけではなく、感情的なつながりも必要です。そうすると元気になったり、励まされたり、人を励ましたりすることに役に立ちます。 この原則は日常生活の多くの状況にも当てはまります。 1)新しい言語を学ぶ時、自分にとっては必要なものだと信じる必要があります。私が英語を話せるようになったのは、ロシア語を理解する人がいない米国に6カ月も滞在していたからです。 2)太ることが怖いという理由で、何年も毎日運動を続けてきました。 3)早起きは効率が良いことは誰でも知っていますが、それを知っているだけでは十分ではありません。やりたい気持ちを心から信じる必要があります。自分の場合は日の出を見るのが好きだということに気づいてから、早起きを始めました。 これからも自分のやっていることに対して「なぜ?」という問いに対する正直な答えを探し続けていくことが、大きな力を与えてくれると思います。 <シーシキン・ヴィクター Victor SHISHKIN> 東京大学大学院新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻特任研究員。2020年度渥美国際交流財団奨学生。2021年東京大学大学院博士後期課程修了。卒業後も洞察力のあるデータ生成のためのセンシングシステムの開発に取り組んでいます。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈書紹介 SGRA会員でキエフ経済大学助教授のオリガ・ホメンコさんから近刊書をご寄贈いただきましたので紹介いたします。 ◆オリガ・ホメンコ『国境を超えたウクライナ人』 18世紀から20世紀にかけてのウクライナに生まれ、波乱の時代に負けることなく、美術、航空技術、医学、外交などの分野で異郷の地で活躍し大きな実績を残した9人とウクライナ人に同化してソ連政権に殺されたハプスブルグ家出身のひとりを合わせた10人の人生。東西から国境を侵されてきた歴史をもつウクライナ人ならではの柔軟性、コミュニケーション力、他者の文化に対する許容力を発揮した人びとの物語。 発行所:群像社 ISBN:978-4-910100-22-7 C0098 出版年:2022年2月5日 判型:B6 頁数:144ページ 定価:1500円 ウクライナで生まれて国外で活躍した人には作曲家のセルゲイ・プロコフィエフなどたくさんいる。日本では新宿の中村屋と深い関わりがあった詩人のワシーリ・エロシェンコが有名だし、五十代以上ならおそらく知らない人がいない昭和の大横綱、「巨人、大鵬、卵焼き」と並べて愛された大鵬幸喜はカラフトに渡ったウクライナ人を父に持つ。いまはその孫が関取になっている。だがこの本で紹介するのは日本ではそれほど有名ではないかもしれないが、国境を超えたウクライナ人として、どうしても私が日本に伝えたい人たちである。(本書まえがき) 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://gunzosha.com/books/ISBN4-910100-22-7.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • LEE Sujin “Challenges as a Researcher and Educator”

    ********************************************* SGRAかわらばん909号(2022年2月17日) 【1】エッセイ:李受眞「研究者と教育者としての課題」 【2】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(2月20日、オンライン)(最終案内) 「夢・希望・嘘-メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#697 ◆李受眞「研究者と教育者としての課題」 博士課程に在籍していた3年間は、学会活動と論文投稿に力を入れながら「研究者と教育者としての課題」について考えさせられた。特別支援教育に関する領域では研究者としてのみ活躍されている方は少なく、大学教員でありながら研究者として活躍することが多い。その中で、将来教員になることを目指している大学生を対象とした「特別支援教育」に関する科目を非常勤講師として教えることになった。 これまで一度も人に教えたいと思ったことがなく、このような気持ちで臨んでいいのかと葛藤しながら授業を引き受けた。しかし、受講生からの「より良い教員になるためにこの科目を受講する」「様々なニーズのある児童に対応するためにこの科目を受講したい」というコメントなどを読み、新しい知識を得て将来の教育現場においても生かそうとする学生らの姿を見るうちに、「この人たちが現場の先生になってから困らないよう特別支援教育に関する知識を教えたい」という気持ちが芽生えてきた。教育者の立場になってみることで、今後の教育者としてのあり方について探求することができた。これからは教育者として試行錯誤しながらも学生を指導していきたい。 ところで、研究者であり教育者であるという立場は実際に大学の一教員として勤めてみると、どちらかに偏りやすい。教員としての仕事は授業や大学業務に専念しながら、その合間に論文執筆や学会発表などの研究活動もやらなければならない。今は授業準備や会議等に追われる毎日で一体いつ頃研究活動ができるかの目処もつかないため、いつまでもこの状況が続くのではないかふと不安になったりもする。めまぐるしい毎日を過ごす中で、自分が教育者として、そして研究者としての初心を失わないように教育活動も研究活動もしていきたいと思う。 加えて研究者としての課題はフィールドが教育現場となるため、現場で活躍している先生とのコミュニケーションの取り方である。その中で、研究者と教育者としての課題に関するテーマのワークショップを受ける機会があった。ここでは研究者であるのか教育者であるのか、自分の立場について改めて考えさせられる機会が設けられた。参加者には小学校や特別支援学校など様々な教育現場で活躍されている先生方や大学院の学生らがいた。現場にいる教育者の立場では、単なる研究成果を求めるのではなく、現場における子どものニーズと将来を見据えた課題も含めて進んでほしいと望まれていることが分かった。私は知的障害特別支援学校におけるキャリア教育について研究を行いながらも、教育現場と研究者の現況と課題についてはあまり意識していなかったため、話をうかがうことができたのは大きな収穫だった。 教育者としての自分には、将来教員になることを目指している学生にとっての研究者と教育者とのコミュニケーションのギャップを減らすことができるのではないかとも考えた。話を聞いている中で研究する立場においても教育する立場においても、それぞれが児童生徒のことを考えて行動しているということに変わりはないことが伝わってきた。しかし研究者の中には児童生徒をデータとして見てしまう人もいる。倫理教育の重要性について実感した。 特に臨床心理学は人を対象とした研究であるため、人権が何よりも尊重される。常に責任のある研究活動(RCR)教育についての意識があるか自分に問いかけながら、責任のある研究活動のためにできること、良い研究のための到達点を考え直している。現在行っている研究の対象者は軽度知的障害者であり、インフォームド・コンセプトに偏っていた既存の研究倫理に加え、「Well-being(よく生きる)」を意識した研究活動を行う必要性を感じている。その中でも、特に強調されている「Meaningful_life(他者への貢献)」を肝に銘じ、知的障害者とその支援者や保護者がより豊かな生活を送るために貢献できる研究を行いたいと思っている。 <李受眞(イ・スジン)LEE_Sujin> 浜松学院大学現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科助教。2020年度渥美国際交流財団奨学生。2021年東京学芸大学大学院博士後期課程修了(教育学博士)。東京学芸大学において非常勤講師、特別支援教育現職研修システムの開発プロジェクトの専門研究員、特別支援教育・教育臨床サポートセンターの特命講師を経て、2021年4月より現職。日本学校心理士・公認心理師。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(最終案内) 下記の通りSGRAフォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 日時:2022年2月20日(日)午後2時~5時 方法:Zoom Webinarによる ※参加申込(下記URLより登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KSs7_UZmR_aDZ3P5lgTUOw お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性はいかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか?など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆきたい。 詳細はプログラムをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68ProjectPlan.pdf ポスターは下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68Poster.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • YUN Jae-un “Zero COVID Policy is No Longer Sustainable”

    ********************************************* SGRAかわらばん908号(2022年2月10日) 【1】エッセイ:尹在彦「有効期限切れの『ゼロ・コロナ』政策」 【2】催事紹介:INAF研究会「東アジアをめぐる国際情勢:台湾問題、アメリカの東アジア戦略」 【3】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(2月20日、オンライン)(再送) 「夢・希望・嘘-メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 ********************************************* 【1】SGRAエッセイ#696 ◆尹在彦「有効期限切れの『ゼロ・コロナ』政策」 コロナ禍の本格的な始まりから2年が経とうとしている。ちょうど2年前のこの時期、筆者は旧正月を迎え、タイと韓国で過ごしていた。タイで中国発のニュース(未確認の感染症が拡散中)に触れつつも、他人事にしか見られなかった。しかし、タイから韓国へ入国してからは潮目がやや変わっていた。武漢から入国した韓国人の感染者が次々と判明される一方で、政府は現地に輸送機を送り込んだ。「おそらくもうすぐ落ち着くだろう」と見て、筆者は同時期に仁川空港から日本へ発った。これが2年も続くとは夢にも思わなかった。 その間、世界は「コロナ前」には戻れずにいる。何年か先と考えられていた技術的かつ文化的な変化は早く訪れた。そこから見えてきた教訓も少なくない。特に国ごとに異なっているコロナ対策は、その国々の特徴を表していると同時に、これからの方向性も示してくれる。こういった状況を踏まえ、本稿ではオミクロン株の流行を受け、「ゼロ・コロナ政策はもはや有効ではない」ということを述べたい。 この2年間、全人類は世界各地で多岐にわたるコロナ対策を目の当たりにしてきた。ロックダウンという移動制限・隔離を中心とした国々もあれば、強制措置よりも市民の自発性に頼った国もある。制限を最小限にしつつもIT技術・個人情報を積極的に活用した国もあった。そうした中で、社会科学においてはコロナ対策をめぐり「民主主義VS権威主義」という図式が議論の対象になった。要するに、「感染症拡大を抑え込めるのは権威主義体制の方」という議論だ。実際に少なからぬ欧米諸国では移動制限という一種の人権侵害が相次ぎ、マスクやワクチンが過度に政治化している。一部では強制接種やマスク義務化のような措置さえ取られている。民主主義の後退ともとられる事象である。 「武漢封鎖」で世界に衝撃を与えた中国がそれ以降、地域的封鎖と大量検査のいわゆる「中国モデル(中国以外では不可能に近いためモデルにはなり得ていないが)」で「普通の生活」に戻ったことも大きい。米中関係の悪化の中であらわになった米国内のコロナ対応の問題点も影響した。米製薬会社(ファイザー社、モデルナ社)が新たな手法でワクチンを開発したとはいえ、国内的には依然として接種率が伸び悩んでいる(2回目が60%台、1月末現在)。米政府の途上国支援もなかなか進んでいない。感染者や死者の数からみると、明らかに欧米諸国は「敗者」に近いだろう。 しかし、こういった状況はオミクロン株の拡散により変わりつつある。これまでの「内向きの閉鎖的な政策」がもはや意味をなさなくなっているのだ。それは、オミクロン株の感染力が類例ないほど高いことと重症化率が低いことに起因している。そのため、オミクロン株の感染拡大を先んじて経験している欧米諸国では生活基盤を支える「エッセンシャルワーカー」に対し最小限の隔離を求め始めている。厳しい水際政策が批判されている日本ですら隔離機関が「7日間」に短縮された(ちなみに、日本ではなぜか感染拡大期なのに今でも入国者に対する施設隔離が続いている。これも日本特有の方向転換の遅さの一面だろう)。コロナを封じ込めることを既に諦めていた韓国でも2月以降、同様に短縮される予定だ。もはや「ゼロ・コロナではオミクロン株に太刀打ちできない」という世界的なコンセンサスが形成されつつある。 全般的に入院患者が増えたとはいえ以前のピーク時のレベルではないという事実も、慎重な中での方針転換の理由とされる。イギリス政府がその先頭に立っており、ワクチン2回接種者に対しては入国時検査を求めないことを始め、感染者・濃厚接触者に対する隔離措置も緩めていく方針だ。新しい変異の可能性も懸念されてはいるが、恐らく方向性としては大方の国がこのようにせざるを得ないだろう。 こうした中で、再び注目されるのが春節(旧正月)と冬季五輪を迎えた中国の対応だ。米有名調査会社、ユーラシア・グループ(Eurasia_Group)は1月、「2022年の世界10大リスク(Top_Risks_2022)」というタイトルのレポートを発表した。同レポートには興味深い内容が含まれている。中国の「ゼロ・コロナ政策」が持続可能でない点(「No_Zero_Corona」)が強調されているのだ。これがグローバル経済に対して最も大きなリスクとして挙げられている。 同社は多くの国でファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」が普及しており、それがオミクロン株の危険性を引き下げていると指摘する。一方で、中国では同種のワクチンが使用されておらずゼロ・コロナ政策が続いてきたため、免疫力が低い可能性が高い(ただし、この点に関してはまだ科学的根拠は不十分のようにも考えられる)。 ところが、オミクロン株は、これまでの政策では封じ込めることがほぼ不可能に見える。その結果、同社は中国政府が政策転換を強いられるだろうと見込む。要するに、これまで信じられないほど成功を収めてきた中国だが、オミクロン株が政策の抜け穴をつき、逆説的にも中国現地人の低い免疫力が裏目に出るということだ。また、今後の政治日程を勘案すると、これまでの成功体験が政治指導者の方向転換を阻む足かせになり、ロックダウンの繰り返しにつながる可能性もあるとされる。 こういった状況下では、中国が一翼を担っているグローバル・サプライチェーンの乱れにより生じる悪影響も懸念される。その「前触れ」は実際に中国各地で既に目撃されている。西安では武漢以来最も長い33日間も封鎖が続き、食料品流通や医療体制にも問題が起きた。サムスン電子や米マイクロンの半導体工場も操業中止に追い込まれた。天津でも同様の措置でトヨタ工場が打撃を受けている。北京冬季五輪の開催地である北京市豊台区では感染者が次々と確認されている。オミクロン株を完全に抑え込んでいないにもかかわらず、春節(旧正月)を機に中国内では移動が活発になっている。一部の地方政府からは再び移動自粛が再び求められている状況だ。感染力がより高い「ステルス・オミクロン(PCR検査で他の変異と区別が困難な特徴を持つとされる)」も確認されており、ゼロ・コロナ政策は正念場を迎えている。 コロナ禍以降、様々な「政策モデル」の可能性が試されてきたが、次々と失敗(敗北)してきている。韓国しかり、日本しかり、オーストラリアしかり(ただしこの国々が他国に比べ死者が少ないのは事実である)で、次は中国がそれを経験する可能性が高まっている。結局は「どの形でコロナと共存するか」が課題であり、コロナそのものを封じ込めることは極めて困難になっている。これは人間が依然として自然を前にしては謙虚にならざるを得ないという、「当然の教訓」なのかもしれない。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN_Jae-un> 一橋大学法学研究科特任講師。2020年度渥美国際交流財団奨学生。2021年、同大学院博士後期課程修了(法学博士)。延世大学卒業後、新聞記者(韓国、毎日経済新聞社)を経て2015年以後、一橋大学院へ正規留学。専門は東アジアの政治外交及びメディア・ジャーナリズム。現在、韓国のファクトチェック専門メディア、NEWSTOFの客員ファクトチェッカーとして定期的に解説記事(主に日本について)を投稿中。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員で北陸大学教授の李鋼哲さんより、自ら創設された(一社)東北亜未来構想研究所(INAF)の研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は下記より直接お申し込みください。 ◆INAF第4回研究会 「東アジアをめぐる国際情勢:台湾問題、アメリカの東アジア戦略」 日時:2月18日(金)18:00~21:00 方法:オンライン(ZOOM) 第1報告 岡田充・共同通信客員論説委員 テーマ:「台湾有事」は作られた危機 第2報告 羽場久美子・INAF副理事長・青山学院大学名誉教授 テーマ:アメリカの東アジア戦略:バイデンはなぜ日中の協力関係にくさびを打ち込むのか プログラムの詳細・参加登録は下記リンクをご覧ください。 http://inaf.or.jp/symposium-semina/inaf第4回研究会のご案内/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(再送) 下記の通りSGRAフォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 日時:2022年2月20日(日)午後2時~5時 方法:Zoom Webinarによる ※参加申込(下記URLより登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KSs7_UZmR_aDZ3P5lgTUOw お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性はいかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか?など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆきたい。 詳細はプログラムをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68ProjectPlan.pdf ポスターは下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68Poster.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • XIE Zhihai “Breaking the Cycle of Disparity”

    ********************************************* SGRAかわらばん907号(2022年2月3日) 【1】エッセイ:謝志海「格差の連鎖を断ち切る」 【2】寄贈本紹介:イザベル・ファスベンダー『Active_Pursuit_of_Pregnancy(妊活)』 【3】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(2月20日、オンライン)(再送) 「夢・希望・嘘-メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 ********************************************* 【1】 SGRAエッセイ#695 ◆謝志海「格差の連鎖を断ち切る」 今、世界でまん延する格差。とにかくバラエティに富んだ格差がある。所得格差、教育格差、地域格差、そしてワクチン格差なるものまで。どの格差も一見して、今すぐその差を縮めるべきだ!と目を覆いたくなるが、さらに悪いことにこれらの格差は連鎖すると言われている。 特にひどい格差の連鎖は、所得と教育ではないだろうか。所得に格差があると塾などで教育を受ける機会が減少し、受験に不利な立場に追いやられ、レベルの高い大学へ進学できる可能性が低くなる。ひいては給料の高い安定した企業に就職できなかったり、社会人のスタートから正規雇用がかなわなかったりして、次の世代へも高度な教育機会を与えられないという負の連鎖のことだ。この負の連鎖が何世代も続いてしまったらと考えると恐ろしい。しかし、これは日本に限らず中国や韓国でも問題視されている。教育格差における日中韓の共通点は塾をはじめとする受験産業が盛んなことと、大学入学にあたっての入学試験を避けられないという2点だ。 ただし、大学入学試験の部分だけを切り取ると、日本の受験生のプレッシャーはまだマシな方で、中国では全員が「高考(ガオカオ)」というたった一つの試験を受け、その結果だけで進学先が決まってしまう。韓国はみんながトップ中のトップの名門大学に入りたがる。しかし、その数はたった数校。それら数校の卒業生しか給料の良い財閥系の企業には就職できないことをみんな知っているからだ。そう、誰もが格差の下の方には位置したくないのに競争は年々激化し、格差は広がるばかりである。 従って教育格差を受けている者、すなわち今の若い世代の格差疲れは察するに余りある。2021年に初めてNetflixで配信された韓国ドラマ「イカゲーム」はまさに格差社会がテーマで、韓国のみならず日本やアメリカでも大人気となっている。受験戦争がテーマではないが、まさに韓国の格差社会の底辺にいる人たちが主役で、賞金目当てに命がけで子どものゲームに挑戦し、そのゲームの脱落者は死を意味する。このドラマの人気の背景は過酷なゲームシーンだけでなく、ゲーム挑戦者である主要キャラクターそれぞれが抱える闇、階級の低い立場になってしまった過程をじっくり時間をかけて描写したことが視聴者の心をつかんだのだろうと言われている。 このような格差社会への共感に激しく問いかけるストーリー作りについて韓国は得意なようで、「イカゲーム」より前、まだ記憶に新しい映画「パラサイト半地下の家族」(2019)は裕福な家族と生活に困窮した家族のみで繰り広げられる物語で、中間層が一切出てこないことにより、ぞっとするぐらいストレートに韓国の格差社会を浮き彫りにした。この先も手法を変えつつ格差社会をテーマとした作品は生み出され、ヒットしてしまうのかもしれない。 話を中国に移そう。中国では、最近「寝そべり族」という言葉がはやっている。この流行語の背景にも激しい格差社会が横たわっている。競争に疲れた若者を中心に、どうせいくら頑張っても格差が縮まらず、上に行けないのなら、いっそ頑張らないことにする、というのが寝そべり族だ。政府は格差社会を根本からただすため「共同富裕」というスローガンを掲げ、過熱する受験産業にとうとうメスを入れた。 2021年7月に中国政府はなんと「学習塾禁止令」を発表、小中学生の学習負担を減らし、学習塾は営利企業としての営業を認めない政策を打ち出した。学習塾は一般家庭の家計を圧迫し、少子化の深刻化にもつながる問題だからだ。例えば北京や上海等の大都市では1カ月の塾代だけで日本円で10万円もかかるケースも少なくない。大げさではなく本当だ。塾に通えない学生は、当然名門大学に入れるチャンスは少ない。さらに北京大学等の名門大学に合格できる学生は、農村部出身の学生の割合が年々低くなっていることも問題であり、受験産業はやはり大きな都市で盛んなことが浮き彫りとなっている。また、農村部と都市部の地域格差はもとより、都市部内でも所得格差が広がっていることも深刻で、学習塾禁止令だけで教育格差が縮まるかどうかは分からない。 日中韓、どれを見ても所得と教育の格差の連鎖は断ち切ることだ。インフレも進む中、所得の格差はそう簡単に収まりそうにない。ならば教育の方から正していくしかない。まずは学校教育以外にも塾などに多大なお金を積まなければならない受験戦争の緩和と、どの大学に入っても社会の上を目指せる機会を作ることだと思う。特に中国と韓国は大学入試でその先の人生が決まってしまうようなシステムから変えていくべきだ。日本は大学の数が多いことと、大学それぞれが特徴ある学部やカリキュラム作りで個性を出し始めていて、ランキング(偏差値)に偏重し過ぎていないところは中国と韓国が見習う点だと思う。 では日本の格差の是正はどうすれば良いかというと、高校生に対しても民間奨学金の種類を増やし、また奨学金を得る情報を分かりやすくすることだろう。このエッセイ執筆中に偶然お店で見かけたポスターは、ある大手企業の財団の支給型奨学金制度だった。なんと中学生から奨学金を支給している。金額的にも塾の月謝はまかなえる額だ。「うちは奨学金なんて無理」と諦めずに探せば、何かしらのチャンスに出会えるかもしれない。また貧困率が高い傾向にあるひとり親家庭の補償を厚くすることは民間企業だけに頼らず、政府や市町村の助けがますます必要となってくる。これは生活困窮家庭にお金をたくさん配れと言いたいのではなく、街なかの空きスペースを市町村が借り上げ、自習室として無料開放するだけでも十分助けになると思う。全ての高校生に教育機会を増やし、受験機会を平等に近づけていくことが格差の底上げにつながると思うのだ。 <謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai> 共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で同志社女子大学助教のイザベル・サスベンダーさんより、新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。同志社女子大学国際教養学科では2月14日にオンライン書評会を行います。ご興味ある方はSGRA事務局にお問合せください。 ◆イザベル・ファスベンダー『妊活:現代日本における新自由主義、ポストフェミニズムと生殖の政治学』 Isabel_Fassbender “Active_Pursuit_of_Pregnancy -Neoliberalism,_Postfeminism,_And_The_Politics_of_Reproduction_In_Contemporary_Japan” ※妊活とは、「妊娠活動」の略語。妊娠についての知識を身に付けたり、家族などとの話し合い、妊娠にあたって自身の身体の現状の把握、医療による不妊治療などといった一連の活動を指す。(ウィキペディア) 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://brill.com/view/title/60373?language=en -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(再送) 下記の通りSGRAフォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 日時:2022年2月20日(日)午後2時~5時 方法:Zoom Webinarによる ※参加申込(下記URLより登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KSs7_UZmR_aDZ3P5lgTUOw お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性はいかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか?など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆきたい。 詳細はプログラムをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68ProjectPlan.pdf ポスターは下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68Poster.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • LEE Chung-sun “The United Nations Cemetery, a Place of Memory, Leaves a Legacy”

    ********************************************* SGRAかわらばん906号(2022年1月27日) 【1】エッセイ:李貞善「記憶の地、国連墓地が遺すもの」 【2】催事紹介:INAF研究会「新国際気候秩序論―パリ協定枠組みを越えて」 【3】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(2月20日、オンライン)(再送) 「夢・希望・嘘-メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 ********************************************* 【1】 SGRAエッセイ#694 ◆李貞善「記憶の地、国連墓地が遺すもの」 こんにちは、先生。 私は韓国放送公社(KBS)プロデューサーのMと申します。当放送局では国連記念公園建設70周年を迎え、国連記念公園の意味に光を当てて、朝鮮戦争に参戦した国連軍兵士を振り返る特集ドキュメンタリーを制作しています。最近、国連記念公園が世界遺産に登録される可能性についての先生の論文を拝見してご連絡いたしました。(中略) 可能であれば、国連記念公園の変遷と意味、評価についてインタビューをお願いできますでしょうか?国連記念公園のY局長のお話では、先生は論文の最終作業中とのこと。お忙しいところ誠に恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 2021年夏、博士論文の執筆と将来の計画で頭がいっぱいになっていたある日、私に一通のEメールが届いた。得体の知れない力に引かれ、私はすんなりとメールの依頼を承諾した。これを以て、約4カ月にわたる短いながら運命的な道のりが始まった。私が学術顧問(監修)として参加したKBS釜山の特集ドキュメンタリー「記憶の地、国連墓地」との出会いだった。 後で分かったことだが、このドキュメンタリーは別のタイトルを持っていた。最初のタイトルは「忘れられた戦争、その後」。一見平凡に聞こえるこのドキュメンタリーの方向性を転じさせ、番組を貫く基本概念として「記憶」を提示したのは、私のささやかな貢献の一つである。執筆中の博論のタイトルが「記憶の場としての国連記念公園:戦争墓地の文化遺産化」であることを勘案すれば、タイトル間の密接な関連性がうかがえる。 学術顧問に委嘱された私は、8月から9月にかけてZOOMを用いて本格的なアドバイスを行った。担当のプロデューサーが国連記念公園に関する拙論を読んだ後、質問や気になる点をまとめて事前に送ってくる。ZOOMミーティングを通してそれに答えるとともに、必要に応じて補足資料となる歴史文書や写真を提供した。私が提供した1950年代の映像をKBSが原作者に問い合わせて使用許諾を得ただけでなく、著作権を購入したこともあった。 ドキュメンタリーは、朝鮮戦争が勃発して以来71年が経った今日も行われている戦没者遺骸の発掘と、韓国政府国防部遺骸鑑識団による個人識別の話から始まる。主人公の国連墓地に眠っている奉安者(国連軍兵士)のみならず、その奉安者を取り巻く多様な人物が登場して物語を紡いでいく。 戦争のさなかであった1951年、戦場に残された戦友(戦没者)たちの遺体を収集して国連墓地に埋葬した元国連軍兵士(James_Grundy氏、90歳)、国際追悼式「ターン・トゥワード・プサン(釜山の方を向け)」の提案者であるカナダの元国連軍兵士(Vincent_Courtenay氏、87歳)、英国の元国連軍兵士(Brian_Hough氏、88歳)、20歳の若さで戦没したこの公園の奉安者(Michael_Hockridge氏)、彼の生前の友達、朝鮮戦争での武功でヴィクトリア十字章(Victoria_Cross、英国および英連邦の軍人に授与される最高の戦功章)を授与されたWilliam_Speakman氏の遺族、等々。同時に、未だ名前を取り戻すことのできなかった無名勇士や数多い行方不明者など、戦争という巨大な暴力の装置に巻き込まれた名しらずの存在にも光を当てる。 ZOOMを通してアドバイスをしていた時、プロデューサーが私に「物語が(それを伝える)人を訪ねていくでしょう」と語ったことがあった。 この言葉が意味するのは、結局「必ず巡り合うものなら、この世の中で会える運命」ということなのだろう。博士課程を始める時に、博論テーマの探索でずいぶん頭を抱え込んでいた時期がふと頭をよぎった。「記憶の地、国連墓地」に宿っている数々の物語が、それを伝える語り部として自分を訪ねてきた今の状況と絶妙に重なるように思われた。その意味で、名前を取り戻して国連記念公園に眠っている奉安者たちや、まだ名前を取り戻すことのできなかった人たち、このドキュメンタリーのプロデューサー、そして渥美国際交流財団の奨学生たちは、もしかすると私がこの人生で会う運命であったかもしれない。 国連墓地が伝える話は、決して今・こことかけ離れた過去の戦争に限定されない。むしろ私たちは記憶の地であり、忘却の地でもある国連墓地という死者の居場所をめぐって、生と死、戦争と平和といった二項対立的な諸境界を行き来しつつ行われてきた戦没者及び存命の元兵士の身体と向き合う。これを以て、過去のイデオロギー対立がもたらした死の居所・戦争の痕跡は、21世紀地球社会を生きる私たちが目指すべき姿を提示してくれる。このような省察こそがドキュメンタリー「記憶の地、国連墓地」が生きた遺産として戦後世代に遺すレガシーなのではないか。 関連する写真を下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/01/SGRAEssay694.pdf YouTube「記憶の地、国連墓地」(予告編)を下記リンクよりご覧ください。 https://www.youtube.com/watch?v=kf3PSIpaRAQ <李貞善(イ・ジョンソン)LEE_Chung-sun> 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程に在学中。2021年度渥美奨学生。高麗大学卒業後、韓国電力公社在職中に労使協力増進優秀社員の社長賞1等級を受賞。2015年来日以来、2017年国際建築家連合等、様々な論文コンクールで受賞。大韓民国国防部・軍史編纂研究所が発刊する『軍史』を始め、UNESCO関連の国際学術会議で研究成果を発表。2018年日本の世界遺産検定で最高レベルであるマイスターを取得。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】催事紹介 SGRA会員で北陸大学教授の李鋼哲さんより、自ら創設された(一社)東北亜未来構想研究所(INAF)の研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は下記より直接お申し込みください。 INAF第3回研究会 「新国際気候秩序論―パリ協定枠組みを越えて」 日時:1 月 28 日(金) 20:00~22:00 方法:オンライン(ZOOM) 司会:平川均・INAF理事長 講師:金泳鎬教授・韓国壇国(タングク)大学碩座教授 プログラムの詳細・参加登録は下記リンクをご覧ください。 http://inaf.or.jp/symposium-semina/inaf第3回研究会のご案内/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【3】第68回SGRAフォーラムへのお誘い(再送) 下記の通りSGRAフォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 日時:2022年2月20日(日)午後2時~5時 方法:Zoom Webinarによる ※参加申込(下記URLより登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KSs7_UZmR_aDZ3P5lgTUOw お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性はいかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか?など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆきたい。 詳細はプログラムをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68ProjectPlan.pdf ポスターは下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68Poster.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************
  • Invitation to the 68th SGRA Forum “Dreams, Hopes and Lies”

      ********************************************* SGRAかわらばん905号(2022年1月20日) ********************************************* 第68回SGRAフォーラムへのお誘い 下記の通りSGRAフォーラムをオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。 テーマ:「夢・希望・嘘 -メディアとジェンダー・セクシュアリティの関係性を探る-」 日時:2022年2月20日(日)午後2時~5時 方法:Zoom Webinarによる ※参加申込(下記URLより登録してください) https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_KSs7_UZmR_aDZ3P5lgTUOw お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) ■フォーラムの趣旨 現代社会に生きる者がメディアの影響からのがれることは難しい。服から食べ物まで、私たちの日常的なあらゆるものの選択はメディアに左右されている。同様に、子供のころからジェンダーやセクシュアリティに関わる情報にさらされ、女性は、男性はいかに行動すべきなのか、どのようなジェンダーやセクシュアリティが存在するのか、恋愛とは何なのかというイメージもメディアにより作られている。メディアは意見を作るための貴重なツールであるだけでなく、意見を変えるためのツールでもある。 本フォーラムではメディアはどのように恋愛、ジェンダーやセクシュアリティの理解に影響を与えているのか?視聴者やファンはどのようにメディアと接触しているのか?社会的な変化のために、メディアをどのように利用することができるのか?など、現代におけるメディアとジェンダーおよびセクシュアリティの関係性のさまざまな様相を皆さんと共に掘り下げ、探ってゆきたい。 ■プログラム 【基調講演】 ハンブルトン・アレクサンドラ(津田塾大学) 「今の時代、白馬に乗った王子様って必要? リアリティーテレビの「バチェラージャパン」と「バチェロレッテジャパン」から見たジェンダー表象」 【発表1】 バラニャク平田ズザンナ(お茶の水女子大学) 「夢を売り、夢を描く:ジェンダー視点からみる宝塚歌劇団の経営戦略と関西圏のファン文化-」 【発表2】 于寧(国際基督教大学) 「中国本土のクィア運動におけるメディア利用 -北京紀安徳咨詢センターによるメディア・アクティビズムを中心に-」 【発表3】 洪ユン伸(一橋大学) 「Me_tooからデンジャンニョ(味噌女)まで:韓国のメディアにおける「フェミ/嫌フェミ」をめぐって」 司会/モデレーター:デール・ソンヤ(インディペンデントリサーチャー) 詳細はプログラムをご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68ProjectPlan.pdf ポスターは下記よりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2022/02/SGRAForum68Poster.pdf ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。 https://kokushinewsletter.tumblr.com/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************