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エッセイ436:奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その4)」

「憂慮すべき現在の中国の大学生(その1)」 「憂慮すべき現在の中国の大学生(その2)」 「憂慮すべき現在の中国の大学生(その3)」

 

4. 政治的には勇ましいが人柄は最悪

 

今のほとんどの大学生たちは、現実のことに無関心(例えば職場の汚職、腐敗した役人、災害救援、慈善活動など)だが、他方、信じられないほどの「愛国心」及び「ナショナリズム」への情熱を持っている。他人の政治的な話を疑うことなしに信用する。所謂“風に沿う”と言う中国の伝統を完璧に伝承している。例えば、無差別に反米であり、日本を憎悪し、インド、ベトナム、フィリピンを非難し、狂信的な(大漢民族)5000 年の輝かしさ、中華大統一などの不思議な思想を単純に信用し、主張する。

 

さらに科学技術のコピー式進歩をオーバーに宣伝する。中国の伝統的な素晴らしい文化を活かすなどの名目を挙げて、臆面もなく詐欺的な文化、習慣を提唱したり、促進したりする。また当局の外交政策などを軍人と同じように無条件で支持する一方、「中国は『ノー』と言うことができる」(アメリカに対するある本の題名)というような過激な作品を大勢で熱心に読み返す。2001年の9•11のアメリカへのテロ攻撃を、テロリストと同じように祝杯をあげた大学生もいた。2012 年に中国本土で連続的に発生した若者たちが日本車を燃やした事件、日本風のレストランなどを攻撃した事件の中には、怒った顔をした大学生もいた。また、一部の大学生は、武力行使で台湾を「解放」しようと純血的な扇動をするが、彼らに軍服を着用させ、戦いに行かせるのは絶対に不可能であろう。彼らが、やらなければならないならば何でもやるということはあり得ないと思われる。はっきり言って、責任感、信頼性は皆無であろう。

 

5. アカデミックスピリットの喪失

 

今日の中国の大学生達の小、中、特に高校時代の勉学は、世界でも稀な猛勉である。長年の強制的な試験指向教育が、彼らに精神的拷問や無慈悲的な心理破壊を与えたと思われる。ある意味では、彼らこそ、中国で最も痛みを感じる社会階層の一つである。高校を卒業するまで歯を食いしばって我慢した彼らが入試を経て大学に入ると、直ちに解放感が生まれ、しかもこの国の国民的英雄のように自らを誇示する。残念ながら多くの親たちも彼らと呼応し、褒め称える。愚かにも、人生は大学に受かることだけのように考え、大学生活を人生の楽しさ、幸せなどを謳歌するものだと思っているようだ。

 

今日の大学生の大半は、授業のための教科書といわゆるベストセラー作品以外は読んだことがなく、特に古典文学のような本は一冊も読んだことがない。なぜならば大学入学の前は、受験勉強の毎日、今はスマートフォン遊び(大半はエロ グロ ナンセンス)の毎日、古典文学を読む暇など全くないようだ!彼らは寝坊、ネット遊び、恋愛、アルバイトに熱心で、9割の学生は学校をサボったことがあるそうだ(出席をとる授業はほとんどない)。講義に携帯電話だけを持ってくる学生も毎日いる。そのため、真面目に勉強している学生の割合はたった1.1%という調査結果があり、これが今の大学生問題の深刻さをはっきり示唆していると言えるだろう。

 

普段真面目に勉強しないので、試験中にカンニングをしなければ、科目の単位は取れない(このカンニング方法は、極めて巧妙でギネスブックに載るほどである)。提出しなければならない科目のレポートやインターンシップ後の卒業論文は、パッチワーク、盗作を中心に、他の論文から文章をかき集めるしか方法はない。従って今日多くの大学生にとって、大学に行く目的は、全てあの卒業証書を貰うためであり、人間社会の全てのルール、学術的道徳、学者の良心などを含めて、必要であれば一切を無視することができるということになっている。

 

人間的成熟度はもちろんのこと、学業の面では今日の大学生を3等級下げて評価した方が適切だと思う。すなわち、博士を学部学生とし、修士を専門学校の学生とし、大学本科の学生をトレニングセンターの学生と考えたほうがより実際に合うと思う。

 

お年寄りの方々がよく、今は信仰(追求)が欠如した時代だと言っている。大学生のモラルの低下、人間性の喪失、信用の危機……など、最終的にこれら全てが、人口過剰の現実と不可分であると私は思う。人間が溢れている社会で生きていくために早くから走り回ることで精一杯であり、人類の文明の根幹であるモラルなどに従うより、いかにして生き残るのかがより大事だと思っているからであろう。

 

誰の責任?

 

今の大学生が上述するようになった主な責任者は言うまでもなく大学生たちの親たちだと思う。この親たちは1950年代以降、つまり社会混乱が激しい時代に生まれた人々であり、中国の伝統文化を維持しつつ、更に今日の実用中心文化の両方に教育された、今日の中国社会の主力階層である。一方、子供の教育の面では、残念ながら人類文明史上、最も下手な人々でもあると思う。彼らは、自分の子供を溺愛し、甘やかして育て、贅沢、怠惰、拝金、浪費、利己主義の人間をどんどん社会に送り、元々綺麗だった大学を堕落させたのだ。他方、大学生の変態的な行為の一部は、社会及び周辺の影響(社会全体の風習にはまだ問題が多い)を受けた為でもあり、さらには自分の親から学んだ(遺伝した)ものなのだ。例えば狡猾的な人柄、信用できない、ルールを守らないことなどである。そして、試験指向の中国の教育システム(小、中、高、大学)はその基本的な責任から逃げられない!いわば中国社会全体がこの責任を持つべきだ!とすら思う。(つづく)

 

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<奇 錦峰(キ・キンホウ) Qi Jinfeng> 内モンゴル出身。2002年東京医科歯科大学より医学博士号を取得。専門は現代薬理学、現在は中国広州中医薬大学の薬理学教授。SGRA会員。

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2014年11月26日配信