SGRAかわらばん2014

エッセイ432:奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その2)」


奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その1)」


1. 生活贅沢、寄生的依存

今日の大学生の最大の特徴は贅沢浪費である。入学前の準備から卒業時の片付けまで、至るところで彼らの金使いのあらい姿(贅沢)が見える。中国のどの大学でも周辺に商店がずらっと軒を並べる。“金持ち”の大学生軍から利益を得やすいことを店主は熟知している。レストラン、飲食店、美容室、ITボックス、時間で支払うホテル(日本のラブホテルに当たる)などがこれにあたる。大学周辺のこのようなホットな商業は中国では“大学圏経済”と呼ばれ、就業率を上げるなど良い面もあるが、大学生にとって絶対に良いことではない、さらに大学生の親にとっては、もう完全に災難だと言わざるを得ない。

1.1 入校時の標準装備

スマートフォン、ラップトップコンピュータ、一眼レフカメラ(最近では、スマートフォンが高画質のカメラとなり、カメラを買わない大学生が多くなった)などが全国の大学新入生の“必需品”になっていることは、よく知られている。マスコミの報道によると20年前には数100元(1元=約19円)で大学に入学できたが、今は平均20,000元となり、20年間で100倍を超えた。一方で、この20年間の中国人の収入増加率は約11倍である。なぜこのように、大学入学時の費用のみが、こんなに速く増加したのか? その理由は、明らかに非合理的な理由、つまり競争心によるものとしか考えられない。調査によれば、多くの家庭にはそんな経済的力はなく、明らかに無理をしたわけである。中国には「すべては子供のため」、「いくら貧しくても子どもは貧しくさせない」という伝統的な考え方があり、親たちは、キャンパス内の高い消費環境の中で生活している自分の子供に不当な扱いを受けさせたくないと考え、親が耐える道を選んだからだと思われる。しかもこのような入学期の消費の波は、毎年高まりつつある。

1.2 大学在籍期間の贅沢

代表的な都市を中心にした政府或いはマスコミによるいくつかの調査報告によると、今の大学生の平均生活コストは、毎月1000元ほどである。しかし、「中国統計年鑑2013」によれば、中国農村の年間一人当たりの純収入は6000元未満である。つまり、大学生がいる農村部の家庭の経済状況は悲惨ということになる。ある新聞の調査では、今の大学生の消費レベルは、半数が両親より高く、割合は都市出身者の44%、農村出身者の58%を占めている。 

中国4都市の大学生の生活費用の調査の結果は平均1000元/月である。如何なる贅沢をしているのだろうか、実際に中国全土では、その半分程で普通の生活ができると思う。 極端に金使いのあらい大学生を除いて、一般の大学生の状況を見てみよう。

1) 一部の大学生はいつもブランド品を追い求めている。大半は何でも新品が好きで、少しでも古くなればすぐ捨ててしまう。大学生活4年間で、頻繁に使用するものを何回も取り替える人は数えきれない。例えば携帯電話を交換しない人は殆どいない。また近年、オンラインショッピングが急に流行しており、必要以上にショッピングする現象は普通のことになっている。

2) 毎日の食事においても、買いすぎて大量のご飯を廃棄物として捨てている。中国の食品廃棄物は、毎年2.5~3億の人口を養うことができるという報告があるが少なくともその1/3を、大学生が貢献していると推測されている。

3) 大義、名目を作り、パーティーや集会を頻繁に行う。誕生会の支払いは相当な額になる。クラス100名全員が行ったことを想像してみてほしい。同級生の一人が試験でいい成績を取った時、クラスの幹部に選ばれた時、奨学金を獲得した時、スポーツの試合で勝った時、などなど。武漢大学の統計では、様々な“人情づかい”の費用は年間600元以上が6割で、3割は1000元を超えていると報告している。

4) 調査によるとデートにかかる費用は、年間10,000元といわれている、詳細は大半がレストランで消費、次が高級なプレゼント(誕生日、主な祭日ごとに)、そして、映画鑑賞などのエンターテインメントである。一部の大学生の恋愛費用は、日常の食事代を上回っているようだ。しかしながら、恋愛し、同居して最後の結婚まで愛を全う出来ない人が大半だ。つまり卒業したら別れることが多いようで、その理由は離れていると恋愛感情を維持できないということにあるようだ。

5) 大学の寮は小さな家庭のようで、普通は、5~8人で共同生活をする。宿舎内の整理整頓は、当然と思われるが、今の大学生は怠け者が多い。寝具の片付け、洗濯、部屋の掃除などもできない人がいる。寮がゴミ捨て場と化しているのが、多く見られる。片付けや掃除をする人をパートタイムで頼んだり、叔母さんを呼んできてやってもらう(ついでに洗濯も)こともあるようだ。

6)2008年以前には、学生の約40%がコンピュータを持っていたが、その人たちの多くの成績が悪く、退学させられた学生もかなりいた。しかし今は、すっかり普及してしまい学校の方がもう諦めた。親には「勉強のためにはどうしても必要」「無くてはならない学習ツール」と言って購入しただろうが、コンピュータは勉強のためではなくゲームのためなのだ。特に大学入学後最初の2年間に、勉強に使用(特に理科系)することはほとんどない。大学生がゲームに夢中になり、一部の大学生は学業を断念せざるを得ない状況になり、毎年相当数の大学生が大学から除名されているという報告もある。いま、コンピュータゲーム(ほとんどがエロ・グロ・ナンセンス)を触らない大学生は、皆無である。2年生までは、一生懸命に遊びに励む学生は、少なくとも1/3 を占める。今の精神的に空虚な大学生たちは、恋愛(ホモ・レズビアンも)をしなければ、コンピュータ・ゲームをするしか楽しいことがない。

自分の所得が実質的にない大学生が、高消費を維持するためには親に依存するしか方法がない。大半の大学生はお金があれば消費してしまい、なくなったらまた親に請求する。親の苦悩と苦労を完全に無視し、平然としてお金を費やしている。
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<奇 錦峰(キ・キンホウ) Qi Jinfeng>
内モンゴル出身。2002年東京医科歯科大学より医学博士号を取得。専門は現代薬理学、現在は中国広州中医薬大学の薬理学教授。SGRA会員。
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2014年11月12日配信