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エッセイ172:劉 健 「私が直感するグローバル金融危機」

今は、世界的な規模で百年一度の金融危機にあると言われるが、タイムリーにも渥美財団の評議員で、新生銀行社長の八城政基先生から、何故このような危機が起こったかというお話を伺う機会があった。ご講演を伺って、大変勉強になった。金融に関する知識がまったくない、言語学を研究する北京出身の私が直感できる金融危機は物価の高騰と株式市場の暴落である。

 

 
日本は二度目である。前回は2004年アテネオリンピックの時で、今度は北京オリンピックの最中にまた東京にやってきた。この4年間に北京も東京も物価がかなり高くなったと実感している。もちろん、東京は北京ほど激しくはない。物価の高騰というと、まず「頭に来るのは最近の住宅価格だ」と中国人ならだいたいそう思っているようである。何故かというと、住宅費は食費や交通費などと比べて、生活費のかなりの比重を占めているからであろう。2004年前後に6000元/平方メートルで購入したマンションが、今年になって15000元/平方メートル近くまで高くなっている場合も少なくない。毎月の給料でどれぐらいの面積を買えるのかという、冗談半分悩み半分の話も時々耳に入っている。確かに、今20代30代の若者たちが北京にマンションを買うには、親からの援助なしにはほとんど不可能というのは事実である。近年、政府は市民の交通代などを減らそうといろいろな対策を出していながらも、それは住宅費の高騰に比べて、まさに「杯水車薪」(馬車に載せた薪が燃えているが、その火を消すには一杯の水ぐらいでは何の役にもたたない)である。

 

 
こんな状況の中で、2006年は中国の株式市場は非常に望ましい時期に恵まれていた一年であった。この一年で、株式に何の知識もない爺ちゃん婆ちゃんも少なくとも投資金額の2倍の利益を獲得したと言われている。2007年の春節のお休みの後、ますます多くの人たちが株式市場に投資し始めたが、5月30日に激落した。そして10月17日から今日までずっと続いている株式市場の低迷は、若い投資者にとってすごいショックである。一方、まだまだ株式市場の回復、そして中国の経済発展に自信を持っている投資家も少なくないようである。

 

 
2008年は中国にとって決してオリンピックの開催のようなよいことばかりの年ではなかった。年初の大雪災害、5月の四川大地震、そして9月10月に発生したメラミン事件や他の食品安全に関する一連の事件で、中国政府はより有効な経済・食品安全政策を求められている。

 

八城評議員にご講演いただいた「渥美奨学生の集い」の報告

 

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< 劉 健(りゅう・けん)☆ Liu Jian>
中国の山東省生まれ。山東大学日本語学科学士。北京外国語大学北京日本学研究センター修士。現在北京大学日本語言語文化研究科博士課程に在籍し、交換研究員として早稲田大学日本語教育研究科に留学中。関心・研究分野は日本語漢字熟語サ変動詞の文法的特徴・日本語漢字熟語と中国同形語との対照研究など。
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