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マキト「グローバル化、デジタル・ディバイド、オープソース」

昨年12月10日~13日にベトナムのハノイで開催された「ヤング・リーダーズ・ワークショップ」で発表したマキト研究員の報告です。

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「グローバル化、デジタル・ディバイド、オープソース」
F. マキト(SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チーフ)

大学の仕事の合間に、「良き地球市民」を目指す日本のNGO「関口グローバル研究会」(SGRA)の活動に参加している。昨年末、ハノイで開催されたヤング・リーダーズ・ワークショップに派遣された。シンガポール以外のアセアン9カ国の若者が参加した。ワークショップでは、若きリーダー達が、情報技術(IT)の推進するグローバル化とどう上手く付き合うべきか、ということがひとつの議論の中心となった。私は次のような意見を発表した。
ITによるグローバル化においては、デジタル・ディバイドとオープン・ソースという二つの現象が取り上げられる。前者については、ITにアクセスがある者(先進国)と不自由な者(発展途上国)の格差がどんどん広がっており、グローバル化の脅威となっている。後者は、リナックスのように、プログラムを殆ど無料で一般公開する動きを指し、ITによって与えられる機会(チャンス)である。
伝統的な市場主義経済学からすると、デジタル・ディバイドは当然起こり得る現象である。所得がある(ない)ものは良い(良くない)教育を受け、ITを容易に利用できる(できない)。一方、市場からの報奨がなくソフトを一般公開するプログラマーの行動は、伝統的な経済学者にとっては不思議な現象だとされている。
このように考えていくと、アセアン諸国で情報技術革新を進めていく上で、次のような戦略が考えられる。まず、市場を補完する社会メカニズムを構築することと、そして、ローカルな情報をオープンにしてグローバルに分かち合い、利用し合うようにすること。
具体的な案が2つある。まず、ベトナムはアセアンの若き加入国として、ITにおいては先入国より遅れているが、日本の「成果を共有される成長」をいかに導入するか、体系的な調査としては先駆的であろう。一橋大学の石川滋名誉教授が担当者として、海外援助が広い範囲でその効果を発揮させる現地の調査を実施したからである。このような経験を、他のアセアン諸国と分かち合うために、オンラインの情報バンクを構築すると良いであろう。このような事業は国境を越えるNGOによって推進することができるだろう。もう一つは、アメリカ型市場主義とは違う日本の経済システムの体系的分析を、オンライン授業で、将来のリーダーになるアセアン諸国の大学生達に紹介する試みである。実は、SGRAは、来年度、フィリピンと日本を結ぶプロジェクトを企画中である。

さらに詳しくは、下記をご覧ください。

http://www.aisf.or.jp/sgra/member/jstudies/index.shtml