SGRAメールマガジン バックナンバー

  • Mitani Hiroshi “Resumption of Dialogue on History in East Asia”

    ****************************************************************************** SGRAかわらばん691号(2017年9月21日) 【1】三谷博「東アジアにおける歴史対話の再開-北九州での『蒙古襲来』会議」 【2】第8回日台アジア未来フォーラム論文募集(再送) 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 ※発表申込の締切が10月10日に延長されました ****************************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#547 ◆三谷博「東アジアにおける歴史対話の再開-北九州での『蒙古襲来』会議」 「国史たちの対話」が始まった。第2回目だが、昨年は準備会だったので実質的には第1回である。東アジアには、国ごとに「国史」があり、その間には一見越えがたいほどの溝がある。これを架橋し、さらには何かを共有できるまで持って行けないか。これが「国史たちの対話」の意味である。渥美財団の元締め、今西淳子さんが命名してくださった。 今年から4回、東アジアの国際関係をめぐる歴史的事件を取り上げて、関係国の歴史家たちを招き、議論してゆく。今年のテーマはいわゆる元冦で、ここから次第に時代を下ってゆく計画である。 東アジアの各国すべてに関係する事件を取り上げるので、集まるのは主に国際関係の専門家である。しかし、我々はここに国内史の専門家も日本と韓国から招いた。普段は国際関係史やその背後の政治的意味に無関心な人々が、このワークショップの中でどう反応するか。こうした会議に意味を認めてくれるか否か。今回の「国史たちの対話」では、こうした点も大事な課題として設定した。そのためもあって、同時通訳を日-中、日-韓、さらに中-韓の間で用意した。遠い過去に関する専門用語が飛び交う通訳は大変だったはずであるが、概ねよく分かる通訳をしてくださった。深く感謝したい。 「蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」というテーマは、東アジアの諸国民をとにかく対話のテーブルに着かせるために設定された。今世紀の初頭には数々の歴史共同研究が試みられたが、当時のように近代の問題を取り上げると、日本人が自動的に被告席に着くことになる。対等な対話が不可能になるだけでなく、領土問題が先鋭化している現在、テーブルに着こうとする日本人はほとんどいなくなっている。 これに対し、蒙古襲来という遠い過去は現在から心理的な距離をとりやすい。とくに東アジア3国の国民は、いま流行の表現をすればみな被害者である。高麗は厳しい統治下に置かれ、中国にはモンゴル王朝が生れ、日本は征服を免れたものの、防御にかなりの犠牲を払った。被害者同士だから対等な立場で冷静に議論ができる。ただし、この会議にはモンゴル人の歴史家を3人お招きした。しかし、彼らは加害者の子孫として扱われたわけではない。日本人はモンゴル人の横綱を当然のように受け入れていて、彼らと元冦を結びつけることはないし、今回の会議では韓国の研究者も何ら非難がましい言葉を語らなかった。 だからといって、この歴史対話が政治的磁場の外にあったわけではない。元朝は果たして大モンゴル・ウルスの一つなのか、中国王朝の一つなのか。モンゴル人民共和国と中国の内蒙古自治区から来たモンゴル民族、および漢民族、3つの出自を持つ歴史家たちの間で議論が行われたようである。筆者は十分に聞き取れなかったが、葛兆光さんは中国の専門家の中には二つの解釈が同時に成立すると考える人がいると指摘した。世界の歴史学界では、現在の国家的枠組みをそのまま過去に持ち込むアナクロニズム(時代の取違え)は厳しく批判されるが、東アジアの政府や世論は当然のようにそう行動することが多い。世界からの嘲りを自ら誘うのは賢明なことだろうか。 発表と議論の中には筆者にとって特に印象的なものが二三あった。一つは四日市康博さんの指摘で、クビライが日本に3度目の侵攻を準備しており、彼の死がその実行を妨げたこと、およびベトナムやジャワ(そんなに遠くまで!)が防戦に成功した後、直ちに元朝に朝貢を始めた事実である。モンゴルを撃退した後の日本は、交易は再開したが、外交的な配慮はしなかった。国際関係への不慣れとその背後にある日本の孤立性が思われたことであった。 他方、モンゴルに服属させられた後の高麗の姿も印象的であった。仮に日本も攻略されたとして、何が起きただろうか。天皇家が断絶した可能性もあるが、その一部が元朝に従属し、李命美さんが高麗について紹介したように、元朝の王女を妃に迎えるということもありえたかもしれない。この思考実験は日本史上の難問の一つである天皇制の理解にかなり寄与してくれるのではないかと感じた。 高麗については、趙阮さんの取上げた食文化の変化も興味深かった。高麗王朝の奉じていた仏教は肉食を禁じていたが、モンゴルの支配下でそれが定着したという。政治的支配が終っても、一旦変化した生活文化は持続する。歴史を長期的に見る場合、政治史以上に生活文化史は重要となると感じた。家族の構造や男女間の関係も社会構造の柱の一つであるが、これも征服を通じて変わることがあるのだろうか。朝鮮王朝の場合、19世紀初頭に至るまで子供は母の家で育てられた。では、モンゴルからの公女が産んだ子はどこで育てられたのだろうか。宮中か、外か、そもそもモンゴルでは夫と妻のどちらの家で子供を育てたのだろうか。こんな問いが次々に浮んできたことであった。 このように、この会議の諸発表は、東アジア全体の動きに注目すると、国際関係だけでなく、個別の国と社会をより深く理解する手掛りも示してくれた。会場に招いた日本と韓国の国内史の専門家はどう感じ取っただろうか。注意深く耳を傾けてくださったのは間違いないが、さらに進み、機を見て遠慮なく質問をしてくれたら、会議はもっとエクサイティングになったのではないかと思う。筆者は総括討論の最後になって、「国際会議に出て質問せえへんかったら、罰金やでー」というある先生の言葉を引用し、発言を促した。会議冒頭の挨拶の中で用意していたのだが、うっかり言及を忘れてしまったのが悔やまれてならない。招待者は、一旦口を開くとみな的確で興味深い指摘をした。次回からは、ぜひ最初から発言してほしいものである。 会議は全体で三日。二日目は朝から夕方までびっしりと発表が続き、筆者は総括討論の朝はかなりへばっていた。しかし、司会の劉傑さんは見事な交通整理の枠組を提示し、とりわけ韓国側の責任者趙珖先生は発表の一つ一つについて簡潔かつ的確にまとめ、討論の出発点を提供してくださった。お忙しい公務の時間を割いて駆けつけてくださってのことである。次回のソウルでの会議は、きっともっと楽しく、有意義なものになるに違いない。そう確信した。 <三谷博(みたに・ひろし)MITANI_Hiroshi> 1978年東京大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程を単位取得退学。東京大学文学部助手、学習院女子短期大学専任講師・助教授を経て、1988年東京大学教養学部助教授、その後東京大学大学院総合文化研究科教授などを歴任。現在、跡見学園女子大学教授、東京大学名誉教授。文学博士(東京大学)。専門分野は19世紀日本の政治外交史、東アジア地域史、ナショナリズム・民主化・革命の比較史、歴史学方法論。主な著作:『明治維新とナショナリズム-幕末の外交と政治変動』(山川出版社、1997年)、『明治維新を考える』(岩波書店、2012年)、『愛国・革命・民主』(筑摩書房、2013年)など。共著に『国境を越える歴史認識-日中対話の試み』(東京大学出版会、2006年)(劉傑・楊大慶と)など多数。 ※第2回国史たちの対話の可能性「蒙古襲来と13世紀のモンゴル帝国のグローバル化」会議の報告は、下記リンクよりお読みいただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/news/2017/9480/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・- 【2】第8回日台アジア未来フォーラム論文募集(再送) ※発表申込の締切が10月10日に延長されました。 SGRAでは、来年5月26日に台北市の東呉大学で共催するシンポジウムで発表する論文を下記の通り募集します。皆さん奮って応募ください。また興味のある方にお知らせください。 第8回日台アジア未来フォーラム並びに台湾東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウム ◆「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 ―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて― 主 催:日本公益財団法人渥美国際交流財団、台湾東呉大学日本語学科、東呉大学図書館 共 催:東呉大学英文学科、東呉大学教養教育センター 開催日:2018年5月26日(土) 会 場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂) ◇シンポジウムの趣旨: 第8回日台アジア未来フォーラムでは、世界な規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論します。各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されています。 本シンポジウムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。これにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられます。 ◇研究発表関連分野・ジャンル・課題 A)マンガの収集・保存と利用(公共・大学図書館におけるマンガの所蔵状況、学術的マンガ研究、マンガと読書、マンガ読書の効果等) B)マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、プロ翻訳者の養成と外国語教育、翻訳技術の開発等 C)マンガ(テキストとしてのマンガの本文)を読み解く技法の理論と実践、マンガ読解力/マンガ・リテラシーの形成等 D)マンガ・アニメと物語論(ナラトロジー、記号論、言語学、ディスクール、表現論、文化的要素、視点の分析等) E)マンガ・アニメと視覚文化論、映像論、視覚芸術論、映像美学、表象等 F)マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マルチメディア展開(創意工夫、映像デザイン、クリエイティブスキル、映像制作実務と関連技術の応用等) G)マンガ・アニメと文化的経済学(マンガ・アニメフェアビジネス、マンガ・アニメの市場経済と商品化、コンテンツ産業の現状と課題、今後の発展の方向性等) H)マンガ・アニメ文化と社会学(政治、歴史、人類学、ジェンダ学、心理学、科学、哲学、生態学、表象等) ◇発表形式: ・使用言語:日本語、中国語、英語、その他 ・発表時間:発表20分・質疑応答10分 ◇申込方法: 2017年10月10日(火)までに「研究論文発表申込書」(発表要旨【中国語+外国語(日or英)】要提出)をメール添付で送って下さい。 詳細は下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ****************************************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<無事終了しました> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第24回日比持続可能共有型成長セミナ<参加者募集中>(9月23日シドニー市) 「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」 ◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市) 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 <発表申込の締切が10月10日に延長されました> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ◇第58回SGRAフォーラム「アジアを結ぶ?『一帯一路』の地政学」 (11月18日、東京)<ご予定ください> ◇第11回SGRAチャイナフォーラム「東アジアからみた中国美術史学」 (11月25日、北京)<ご予定ください> ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」 (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) <論文募集中(締切:2018年2月28日)> http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • Kim Kyongtae “SGRA Forum #57: Dialogue of National Histories Report”

    ********************************************************************** SGRAかわらばん690号(2017年9月14日) 【1】金キョンテ「第2回国史たちの対話の可能性円卓会議報告」 『蒙古襲来と13世紀のモンゴル帝国のグローバル化』 【2】SGRAレポート紹介:「国史たちの対話の可能性(1)」中国語版、韓国語版 【3】新刊紹介:橋本明子「日本の長い戦後」山岡由美訳 ********************************************************************** 【1】金キョンテ「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性『蒙古襲来と13世紀のモンゴル帝国のグローバル化』円卓会議報告」 第57回SGRAフォーラムは「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀のモンゴル帝国のグローバル化」というテーマで開催された。昨年秋に開催された第1回会議がプロローグとしてこれからの対話の可能性を開く場だったとしたら、第2回は学界で最も活発に活動している若手中堅の研究者が集まって、本格的な「対話」をしようとする場であった。 2017年8月7日から3日間、北九州国際会議場で予定されていた会議には開催危機の瞬間があった。観測史上2番目に進度の遅い台風10号が、当日九州の北部を通るという予報だったからである。幸いなことに、開催地である北九州の航空と列車運行には大きな影響はなかった。ただし、航空会社が事前に着陸時間を調整したために、韓国からの参加者の一部は(筆者本人を含め)開始時間に少し遅れて到着した。 初日には開会式と基調講演が行われた。今西淳子SGRA代表の開会挨拶に続き、三谷博先生(跡見学園女子大学)から趣旨説明があった。これまでの東アジアの歴史を背景に行われた様々な歴史に関する議論は、主に20世紀前半の日本の侵略をどのように捉えるかにあったこと、ある面では成功したが、いくつかの面では失敗したこと、また明らかなことは、国家が介入すると失敗したということ、そして、個人が構成する会議としてお互いを理解する努力があれば成功させることができると指摘した。また、全5回シリーズとして予定されるこの会議は、前近代と近代以後のすべての時代を網羅的に論ずるという趣旨で、1?3回を前近代に配置したこと、最も重要なのは、お互いの発表をよく聞いてレスポンスをする作業であることを強調した。 葛兆光先生(復旦大学)は、基調講演「ポストモンゴル時代?-14~15世紀の東アジア史を見直す」で、モンゴル帝国の衰退後、新しい王朝が成立し、お互いに(朝貢システムに限らない)多様な関係を結びはじめた14世紀末?15世紀初めに至る時期を、東アジアのその後の関係を示唆するものとして参考にすることができると提案した。関連する歴史研究者としても重要な指摘を含む提案だったと思う。 8月8日は、本格的な論文発表であった。4つのセッションに分けて11篇の論文が発表された。最初のセッションは、四日市康博先生(昭和女子大学)、チョグト先生(内蒙古大学)、橋本雄先生(北海道大学)の発表で、「モンゴルインパクト」の歴史的意味と各国の立場から、さらに世界史の視点からどのように見るべきかを提案した。2番目のセッションは、エルデニバートル先生(内蒙古大学)、向正樹先生(同志社大学)、孫衛国先生(南開大学)の発表で、モンゴル侵略による文化的・技術的影響に様々な史料を通じてアプローチした発表であった。3番目のセッションは金甫桄先生(嘉泉大学)、李命美先生(ソウル大学)、ツェレンドルジ先生(モンゴル国科学院)の発表で、モンゴルの主要侵略対象とされ、長い間抵抗した国である高麗を例に挙げ、モンゴルの支配実像の多角的な分析を示した。最後のセッションは趙阮先生(漢陽大学)、張佳先生(復旦大学)の発表で、食事と帽子という物質的、文化的要素にみられる長期的かつ系列的なモンゴルの影響を調べた。各セッションの発表者は、他のセッションの討論者として参加した。 8月9日の午前中は、昨日の各研究報告を踏まえての全体討論の時間だった。日本での一般的な学術大会とは少し異なる構成であったが、一日熟成した質問やコメントはそれぞれ本会議の趣旨に沿ったものであり、大変効果があったと思う。この日は、趙珖先生(韓国国史編纂委員会)の論点整理が先行した。「モンゴル襲来」と「グローバル化」をキーワードにして、集中的な発表と討論が行われたこと、モンゴルは最初にグローバル化に成功した「帝国」であり、その中で、韓国・日本・中国がそれぞれどのような歴史を展開したのかを検討することによって、グローバル化を明確に理解することができること、グローバリゼーションは、単純なグローバル化だけではなく、グローカリゼーションとの相互関係を見なければならないと指摘した。また、4つのセッションの全ての発表によって政治と統治様式、文化交流が幅広く調べられており、各国の国史を扱いながら一国の視点からのみではなく東アジア全体から見ると、どのように幅が広がるかを示した良い実例だったと結んだ。 総合討論の司会を務めた劉傑先生(早稲田大学)は5つの議論主題を提案した。まず、モンゴル帝国の影響をどのように評価するのか。第2に、冊封体制と朝貢について。第3に、モンゴル帝国はモンゴル史か中国史なのか、そしてどのように対話したら良いのか。第4に、高麗から朝鮮につながる韓国の歴史における中国の立場は何だったのか。そして最後に、史料批判の問題であった。続いて自由討論が行われた。上記テーマのうち、冊封体制、モンゴル史、史料批判の問題について、参加者全員が発言する活発な議論が繰り広げられた。 最後に三谷博先生の全体総括があった。非常に充実した3日間の会議であり、実行委員の一人として感謝すること、さらにもっと深いレベルの「グローバル化」の分析があったらよかったという所感を述べた。そして今後も対話を続けて欲しいという総評だった。 午後は見学会であった。モンゴルが襲来した九州北部の重要な場所を踏査した。元寇記念館と筥崎宮は歴史をどのように記憶して使用するかの問題を提起する史料館で、また史跡として印象が深かった。雨の中を訪ねた生の松原元寇防塁跡では、約800年前にこの海から上陸を試みていたモンゴル連合軍と、これを眺めていた日本の鎌倉武士たちはどんな気持ちだったのだろうという考えに浸った。 期間中、各国の研究者が自分の最新の研究成果や研究の過程での悩みを提示し、議論やアドバイスが行き来した。当時存在していた国ないし王朝の勢力範囲は、そのまま現在の国境や国家概念と必ずしも合致しない。そのような面で、モンゴルの研究者の参加は大事であった。国際会議での最大の難関は、言語の問題である。交差通訳をする場合、時間がかかる。したがって質問や反論があっても飛ばす場合が多い。今回は3日にわたって同時通訳が提供されて、各国の研究者は率直に話をすることができた。渥美財団と同時通訳者の労苦に感謝する。 今回の大会においての感想は皆違うと思うが、多くの成果と課題を残したという点は同意するだろう。東アジアという空間、時間における朝貢関係の具体性、固定化された各国史の視座をどのように超えるのか等、基本的な問題提起を介して得られたことが多いと思う。連続した「国史の対話」は、5回まで予定されている。これまでの成果さえ失ってしまい、後戻りしてはいけない。成果を踏まえて、次のステップに進まなければならない。来年夏に開催する第3回会議は、近世に東アジアを揺さぶった戦乱と平和の世紀への移行を扱う予定である。多くの方々に関心を持って参加していただき、発展的な新しい歴史学の時代が来ることを期待している。 会議の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/photo-gallery/2017/9468/ 報告書は2018年春にSGRAレポートとして発行予定ですが、関連資料は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/research/kokushi/2017/8049/ <金キョンテ☆Kim_Kyongtae> 韓国浦項市生まれ。韓国史専攻。高麗大学校韓国史学科博士課程中の2010年~2011年、東京大学大学院日本文化研究専攻(日本史学)外国人研究生。2014年高麗大学校韓国史学科で博士号取得。韓国学中央研究院研究員を経て現在は高麗大学校人文力量強化事業団研究教授。戦争の破壊的な本性と戦争が導いた荒地で絶えず成長する平和の間に存在した歴史に関心を持っている。主な著作:壬辰戦争期講和交渉研究(博士論文) -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【2】SGRAレポート紹介:「国史たちの対話の可能性(1)」中国語版、韓国語版 SGRAレポート第79号「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性(1)」の中国語版と韓国語版をデジタル(PDF)で発行しました。 下記URLよりダウンロードしていただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/report/2017/8730/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【3】新刊紹介 SGRA特別会員でボートランド州立大学客員教授の橋本明子さんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご照会します。 ◆橋本明子著、山岡由美訳「日本の長い戦後:敗戦の記憶・トラウマはどう語り継がれているか」 憲法改正、領土問題、歴史認識問題はなぜ、こんなにも軋轢を招くのか。アメリカで教える気鋭の社会学者が比較文化の視点から、日本の「敗戦の文化」を考察する。 私たちが家族、学校、メディアをとおして触れる戦時の物語は多様だ――戦場で英雄だった祖父、加害の体験を話さずに逝った父、トラウマを解消できない被害者たち。それらの記憶は、史実に照らして見直されることなく共存し、家族内では、調和が最優先される語りが主観的に選び取られる。 高校の歴史教科書・歴史漫画の分析からは、なぜ若い世代が自国に自信をもてないか、その理由が見えてくる。 そしてメディアは、記憶に政治色をつけながら、それぞれ違う物語を映し出す。 戦後70年を過ぎた今、不透明な過去に光を当て、問題の核心に迫る。 みすず書房 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/272頁 定価 3,888円(本体3,600円) ISBN 978-4-622-08621-5 C0036 2017年7月18日発行 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.msz.co.jp/book/detail/08621.html ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者決定しました> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第24回日比持続可能共有型成長セミナ<参加者募集中>(9月23日シドニー市) 「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」 ◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市) 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 <論文募集中(締め切りは10月10日に延長されました)> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ◇第58回SGRAフォーラム「アジアを結ぶ?『一帯一路』の地政学」 (11月18日、東京)<ご予定ください> ◇第11回SGRAチャイナフォーラム「東アジアからみた中国美術史学」 (11月25日、北京)<ご予定ください> ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」 (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) <論文募集中(締め切り:2018年2月28日)> http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • Isabel Fassbender “SGRA Cafe #10 Report”

    ********************************************************************** SGRAかわらばん689号(2017年9月7日) 【1】イザベル・ファスベンダー:第10回SGRAカフェ報告 「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?」 【2】インタビュー記事紹介:「『日韓断交』経済学者が語る巨大なデメリット」 【3】第4回アジア未来会議:たくさんの投稿をありがとうございます! ********************************************************************** 【1】 イザベル・ファスベンダー:第10回SGRAカフェ報告 ◆「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」 去る7月29日(土)「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?「妊活」と「終活」の流行があらわすもの」というテーマで第10回SGRAカフェが開催されました。年齢、性別、肩書を越えて、幅広く、60名を超える方々にお越し頂き、プレゼンターの一人としてとても嬉しかったです。「妊活」と「終活」についての30分ずつの発表の後、参加者全員を巻き込んでのディスカッションとグループワークがありました。とても活発な議論となり、大事な意見を一杯いただくことができました。参加者の皆さま、積極的に議論に貢献してくださいまして本当にありがとうございました。そして、今回のイベントに向けて様々な形で支えていただいた渥美財団の皆さま、心より感謝申し上げます。とりわけ太田美行さんからは企画当初から運営の柱として大きなご助力を賜り、ここに特別に感謝の気持ちをお伝えさせていただきたく存じます。 今回のテーマは、講師を務めた私たち2人(ライプチッヒ大学東アジア研究所日本学科のドロテア・ムラデノヴァさんと私)の研究と直接の関連をもつものでした。私たちはこれまで会う度に議論し、意見交換をしてきましたが、その内容を広く、この社会に生きる人々とシェアし、話し合いたいという想いを強く持ち続けてきました。それを今回SGRAカフェにて実現させていただけて、共々本当に嬉しく思っております。「妊活」という生に関わる活動、「終活」という死に関わる活動、その扱うところのものは正反対であるにもかかわらず、私たちの思考・分析方法は驚くほど重なっています。ただそれは偶然ではなく、必然的なもののように思われます。人生を国家や社会が管理・活性化しようとするメカニズムにおいて、「妊活」と「終活」は鏡合わせのようなものです。 私たちは、人生の節目において追い立ててくるこれらの「活動」に関わる言説を、人の生を社会的なある思惑へ従わせるための「運営」手段として批判的に考察することを試みています。今や生涯(とそれ以前・以後)のあらゆる「節目」にこうした「活」が浸透し、その都度人生を活発にデザインするように呼び掛けられています。こうした「活」が「自分なりに生きられる人生のあり方」、「自己決定する権利」や「ある問題を抱えている人へのエンパワーメント」を唱導するものとして捉えることも不可能ではなく、このような言説の潜在的な力を否定できないかもしれないのです。一方でそれは、人生の選択肢を上手く扱えずに失敗した場合、個人の責任であるという「自己責任論」につながりやすい考え方であるということも大いにあります。ある社会の中で活動している限り、自分の人生を自らの意志に沿って挑戦的に生きることなどそもそも可能なのだろうか、という根本的な問いにもつながります。 今回の私たちの報告、そしてその後の各議論において、中心的な問いになったのは、「社会から要請された『がんばれ』を、各個人がどのように受け止め、いかに人生における選択を主体的なものとするか?」でした。「頑張れ、頑張れと社会に言われるのが腹立つ」という方もいれば、逆に「私も終活のこと考えた方がいいね」、「今日の話を聞いて、私も妊活の準備をした方がいいと思った」という意見を会後にいただくこともありました。勿論、[正しい]答えはありませんし、実際、参加した皆さんからは本当に多様なお考えを聴かせていただきました。私たちのいつもの考え方とは別な価値観に基づいてお話しくださった方もいらっしゃいまして、視野が広がり新たな社会の側面を覗き込むことができた思いでした。 ある社会において盛んに流通する言葉の背景に何があるのか、そこにどういったアクターが関わっているのか、それが誰のどういった利益につながっているのか。こうしたことを考えることによって、自分をある種の社会的なプレッシャーから開放する手がかりを探ることが今回の企画の目的でした。ドロテアさんの「終活」のお話を伺い、「自分らしさ」というキーワードが、私たちの研究において、共通して頻繁に出て来ることを発見しました。「自分らしく生きる」という言葉は、多くの方にとって、理想的な生を思わせる響きをもつことと思います。しかし、その「自分らしさ」がどこまで本当に自分に属するものなのか、批判的に問い直されなければならないでしょう。 「妊活」も「終活」も、その目的とやり方は大方社会によって決められていますし、政治的にも利用されます(例えば「妊活」の場合、少子化対策の文脈で)。その上、莫大な利益が生まれるビジネス領域であり、日々発展するテクノロジーによる社会変化とも大いに関係があります。自分らしさというのは真に自発的なものではなく、社会的なものです。誰かにとって都合のいい枠組みのうちにつくられた「自分らしさ」に過ぎないかもしれないということに、注意を払う必要があると思います。「自分らしさ」は時に、社会的に「都合の悪い」とされている生き方を選ぶ・選ばざるをえないということに基づいています。そうした時の「自分らしさ」は認められるのか?認められないなら、それは差別や不平等の対象になってはしまわないか(例えば、子どもを産まないことを選択すること等において)?「自分らしさ」をこのような問いから捉え直すことはとても大切です。 ある社会の中で、そこで生産され流通する言説から「逃げる」ことは大変に難しいです。流布する[言葉]の背景にある権力関係、利益、関係者のつながりを明らかにし、自らの立場を相対化して考えた上で、主体的な選択をいかにとりうるのか逡巡すること、その重要性を今回の議論を通じて改めて強く感じることとなりました。私自身の「妊活」をめぐる研究においては、フェミニズムの視点が中心にあります。「早く産みなさい、産む前にこうしなさい、産んでからはこうしなさい、子育てはこうしなさい」という社会からの命令が、主に男性中心主義的な立場から為されることがとても根強いと、研究の場面でも、日本におけるプライベートな生活領域でも、思わされることが非常に多いです。 私も子育てをしながら研究している立場にあり、日常的な女性に対するプレッシャーと不平等を身近なところで感じています。完璧なお母さんとして全てを子どもに捧げることが社会的に求められており、しかも同時に、格好いい女性(=仕事を頑張っている、自立している)であることも求められている時代状況にあって、その葛藤に引き裂かれる辛く深刻な状況は多くの母親に共有されていることと思います。今回のディスカッションに参加された若い女性の方々のコメントにおいて、同様の葛藤で悩んでいる方が多いことも確認されました。 カフェの最後に、コメンテーターのシム・チュンキャットさんが投げかけてくださった言葉が、状況に対するひとつの態度表明として、決然として喚起的であり、大いに参照されるべきものと思いますので、この報告文の最後に引用します。すなわち「無活に生活をする」こと。私の勝手な解釈ですが、「妊活」や「終活」においてみられるような、社会的に生産される[自分らしさ]を消費するのではなく、そうした言説の網の目から自らを外してやることを、このスローガンは意図しているのではないでしょうか。私たちが住み、共有していると思い込んでいるひとつの言説空間としての社会は、ある部分、つくられた幻想でしかなく、その外部もしっかりと存在していることを知った上で、その社会とは異なるところに「自分」を見つけ直すこと。こうした態度はとても大事だと思います。ただそれを求めることは決して易しいものではなく、一生の課題ともいえる闘いになると思いますが、それでも大事だと思います。 当日の写真は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/photo-gallery/2017/9300/ <イザベル・ファスベンダー☆Fassbender,Isabel> 渥美国際交流財団2017年度奨学生。ランツフート(ドイツ)出身。2011年チューリッヒ大学(スイス)日本研究科卒業。2014年東京外国語大学大学院総合国際学研究科地域国際専攻にて修士号取得。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程国際社会専攻に在籍、博士論文を執筆中。専門は家族社会学、ジェンダー論。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【2】 インタビュー記事紹介 渥美財団理事で国士館大学21世紀アジア学部教授の平川均氏へのインタビュー記事をご紹介します。「一般論として、ネット右翼は常識外れの過激な主張をするので、それに対する反論として出されたもの」ということです。 ◆岡田光雄「『日韓断交』経済学者が語る巨大なデメリット」 (ダイヤモンド・オンラインより) 今や日本人の間では“嫌韓”を語ること自体が珍しいことではなくなりつつあり、インターネット上には、「韓国と国交を断絶するべき」「韓国人を入国させるな」など“日韓断交”論を賛美するコメントが目につくようになっている。だが、こうした主張に対して「合理性がまったく見当たらない」と警鐘を鳴らすのは国士舘大学21世紀アジア学部教授で経済学者の平川均氏だ。 続きは下記リンクよりお読みください。 https://goo.gl/NGTXvW -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【3】 第4回アジア未来会議(2018年8月24日~28日、ソウル市) 「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」 たくさんの投稿をありがとうございます! 奨学金と優秀論文賞の対象となる論文の発表要旨の募集は、2017年8月31日をもちまして締め切りました。 【総投稿数】685 【発表言語】英語 655、日本語 30、韓国語 0 【発表形態】フルペーパー643、小論文38、ポスターと展示4 【セッション】一般セッション460、グループセッション87、学生セッション126、ポスターと展示4、論文提出のみ8 【居住国】インドネシア563、フィリピン54、日本23、台湾19、オーストラリア6、中国3、ドイツ2、イタリア2、韓国2、ベトナム2、タイ2、香港1、インド1、オランダ1、スイス1、英国1、米国1 発表要旨の選考結果は、2017年10月31日までに投稿者にお知らせします。合格通知には、AFC奨学金の申込み案内が含まれていますのでご注意ください。一般論文の発表要旨の投稿は、2018年2月28日まで受け付けます。皆様のご参加をお待ちしています。 ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心のある人が集い、アジアの未来について語り合う<場>を提供します。 http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者決定しました> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第24回日比持続可能共有型成長セミナ<参加者募集中>(9月23日シドニー市) 「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/network/2017/9137 ◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市) 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 <論文募集中(締め切りは9月4日)> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」 (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) <論文募集中(締め切りは2018年2月28日)> http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語り合う<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • NOH_Jooeun “Earthquake Disaster and Information”

    ************************************************** SGRAかわらばん688号(2017年8月31日) ************************************************** SGRAエッセイ#546 ◆盧ジュウン「震災と情報」 2011年3月の東日本大震災と2016年4月の熊本地震を直接的あるいは間接的に経験した人々の中には、震災による被害のみならず、震災時に飛び交った流言飛語について少しでも聞いたことがあると思う。特に、2011年の大震災は「風評被害」の例としてもよく知られている。福島原発事故に関する正確な情報が得られなかったことにその原因があった。また、そのときに多くの在日外国人が帰国し、それらの外国人を指す「フライ人」という新造語が出現したこともある。 「フライ人」とは、逃げるという否定的イメージが含まれ、都合の悪い時には友達になれない人という日本人からの視線が反映された当時の新造語である(※1)。彼らの出国には本国からの国外避難勧告、家族の心配などの様々な理由があったが、彼らの判断・行動に大きな影響を与えたのは震災にかかわる情報であり、当時、日本にいた外国人はそれぞれの様々な情報源があったと思われる。 震災時の流言が注目されるのは、流言には、人々を動かす、行動させる力があるからであろう。もっと正確にいうと、「流言の力」よりは「情報の力」として捉えた方がいい。当時は情報として人々に受け入れられたものが、事後の真相調査や判断によって流言として判明されるからである。震災に対する恐怖に襲われている上に、それを刺激する情報まで加えると、人々の行動は統制できなくなる。その代表的な例が1923年の関東大震災時における朝鮮人虐殺である。「朝鮮人が暴動を起こした」「朝鮮人が放火した」などの流言飛語が広まり、自警団、軍隊、警察が6,000名以上の在日朝鮮人を虐殺した事件である。 当時、日本政府を含め、多くの日本民衆が朝鮮人に関して流された情報を信じた一方で、それらの情報に対抗した人々もいた。一つの例としては、鹿島家の人がいる。1840年に鹿島岩吉が創業し、1880年に鹿島組が創立され鹿島岩蔵が初代組長になったが、1923年当時、鹿島組の組長は1912年に就任した鹿島精一であった(1947年に社名を鹿島建設株式会社に改称)。この鹿島精一の義弟である鹿島龍蔵がその存在である。 鹿島龍蔵は鹿島家では「文化人」として文学界の人々と親しく付き合った人物として記憶されているようである。関東大震災を経験した彼は1923年9月1日より9月10日までの震災記録「天災日記」を書き残した。「天災日記」は1927年に『第二涸泉集』(鹿島組編輯部)に収録され、2008年に出版された武村雅之の『天災日記―鹿島龍蔵と関東大震災』(鹿島出版会)にもその原文が載せられている(「天災日記」が最初に掲載されたのは『鹿島組月報』1924年3月号だったという―武村雅之編著『天災日記―鹿島龍蔵と関東大震災』99頁)。 関東大震災当時、木挽町9丁目(現・銀座7丁目)にあった鹿島組本店と、深川区島田町9番地(現・江東区木場2丁目)にあった、渥美財団理事長の母親である鹿島卯女が住んでいた深川鹿島邸は被害を受けた。特に深川鹿島邸は火災の被害が大きかったという(※2)。一方、鹿島龍蔵の田端鹿島邸は震災の被害がなかったため、200名の避難民を家に受け入れたという。ところが9月2日の夜、朝鮮人に関する情報が田端鹿島邸にも入ってきて200名の避難民は騒ぎ出し始めた。この状況は危ないと判断した鹿島龍蔵は、避難民に向けて「即ち昨夜の火の様子と比較して、今夜のは話にならぬ程小且つ弱なる事、地震のゆりかえしは心配無い事、不逞鮮人(ママ)の暴挙等は歯牙にかくるに足らざる事」を大声で話した(『天災日記―鹿島龍蔵と関東大震災』35頁)。その結果、田端鹿島邸の避難民は落ち着くようになり、無事に夜を過ごしたという。狂気のように一方的に流された情報に対抗した情報の力として理解できるだろう。 鹿島龍蔵の「天災日記」は、内閣府の「災害教訓の継承に関する専門調査会」が2008年に出した報告書『1923関東大震災 第2編』に紹介されている。内閣府の中央防災会議においては、「災害教訓を計画的・体系的に整理のうえ、概ね10年程度にわたって整理し、教訓テキストを整備すること」を目的とする「災害教訓の継承に関する専門調査会」を2003年に設置し、その専門調査会は2009年まで『1923関東大震災 第1・2・3編』(※3)を出した。『1923関東大震災 第2編』の第4章第2節「殺傷事件の発生」には朝鮮人虐殺についてまとめており、政府の報告書として朝鮮人虐殺を取り上げた稀な資料である。しかし、内閣府防災情報ホームページで閲覧できたこれらの報告書が、最近ホームページから削除され問題となったことがある。 朝日新聞の2017年4月19日付記事は、最近「災害教訓の継承に関する専門調査会」が作った報告書『1923関東大震災 第1~3編』がホームページから削除されたことを伝えながら、この報告書の一部が朝鮮人虐殺を扱っているため、「内容的に批判の声が多く、掲載から7年も経つので載せない決定をした」と担当者が説明したと報道した。だが、この掲載削除に対する非難があったからか、その翌日の報道をもって内閣府は「閲覧できない理由を『HPの刷新に伴うもの』とし、意図的な削除ではない」と説明した(『朝日新聞』2017年4月20日付)。その後、報告書が削除された理由を「技術的問題」のためとして説明した内閣府は(『朝日新聞』2017年4月20日付)、4月20日に報告書を再び掲載した(『朝日新聞』2017年4月21日付)。 私が確認した結果、この報告書が閲覧できた以前のURLは現在使えなくなった。報告書は新しいURLを以て公開されることとなったが、新たに閲覧できるようになったURLを以前のURLと比べてみると、変更は「1923-kantoDAISHINSAI」の部分が「1923_kanto_daishinsai」になったことだけであった。「技術的問題」には素人である私としては、ホームページの刷新やURLの変更という作業が数日の時間がかかることかはわからない。また、掲載削除に関する担当者の説明(4月19日付報道)は事実かどうかについても知られていないが、これらの新聞報道や内閣府の反応から、朝鮮人虐殺の歴史はまだ日本社会においては敏感なテーマであることがわかるだろう。震災と情報という観点からの教訓が得られる歴史として、落ち着いた雰囲気の中で一般的に朝鮮人虐殺について話し合える日が来るのを期待している。 ※1:“Flyjins are those foreigners who have fled Japan during the last week and who some Japanese people now view as merely fair-weather friends.” https://schott.blogs.nytimes.com/2011/03/24/flyjin/ ※2:震災前の深川鹿島邸の写真が見られる鹿島卯女著の『深川の家』(鹿島出版会、1976)は渥美財団や日本国立国会図書館に所蔵されている。また、関東大震災と鹿島については下記に詳しい説明がある。 http://www.kajima.co.jp/gallery/kiseki/kiseki21/index-j.html ※3:http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/index.htmlを参照。 <盧ジュウン(ノ・ジュウン)NOH_Jooeun> 渥美国際交流財団2016年度奨学生。韓国の延世大学大学院で歴史(東洋史)を専攻。2017年、東京大学大学院学際情報学府博士課程を満期退学。専門は関東大震災研究。現在、東京大学大学院学際情報学府大学院研究生。 ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者決定しました> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第24回日比持続可能共有型成長セミナ<参加者募集中>(9月23日シドニー市) 「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」 ◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市) 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 <論文募集中(締め切りは9月4日)> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」 (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) <論文募集中(締め切り:奨学金応募者は8月31日、その他は2018年2月28日)> http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • HONG Sungmin “Study in Japan and Identity of an International Student”

    *************************************************************************** SGRAかわらばん687号(2017年8月24日) 【1】エッセイ:洪性珉「日本留学と留学生のアイデンティティ」 【2】第4回日比持続可能共有型成長セミナーへのお誘い 「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」 【3】第8回日台アジア未来フォーラム論文募集(再送) 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 *************************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#545 ◆洪性珉「日本留学と留学生のアイデンティティ」 人生には、予期せぬ経験をすることがある。私は、博士学位の取得を目指して日本に留学したが、留学生活で最初は予想していなかったことを経験した。それは、留学生としての自分のアイデンティティに関する問題である。この話は、留学生のアイデンティティに関する1つの事例として、本人の5年間に亘る日本留学の経験をまとめたものである。 まず、日本留学の環境について整理しておく。僕は、韓国から東洋史を研究するために日本の早稲田大学に留学し、5年余りの時間を過ごした。ところで、専門分野が「東洋史」であるためか、留学期間中、僕が所属している早稲田大学東洋史学専攻に韓国人留学生は僕以外に1人もいなかった。留学生は、中国から来た留学生が4、5人だけであった。一言でいえば、日本の人間関係の中で「韓国」という要素は皆無といっても過言ではなかった。 周りに「韓国」的要素がない環境は、ある意味で緊張感が生まれた。つまり、最初に周りの人たちと良い関係を築けたら留学生活は何の問題もなく過ごせるが、もし築けなかったら人間関係それ自体で苦労してしまう、という心配が出てくる。従って、最初の2年間は日本人学生たちに馴染むように、外国人の訛りのない日本語を話そうとし、日本人学生たちの流行を理解するために努力した。 もちろん、中国人留学生たちとも仲良くしようとした。彼らは自分と国籍が異なったものの、日本人学生と違って「留学生」という共通点を持っているので、すぐ仲良くなった。しかし、彼らは中国人の留学生同士で人間関係を築くことができるので、自分の立場とはやや異なっていると考えられる。 それで日本人学生とも、中国人留学生とも仲良くなり、日本での人間関係は一応安定した。その結果、日本人の学生と交流しながら次第にその社会に馴染み、彼らの冗談や駄洒落、言い回しも問題なく理解出来る水準に達した。そのうち、いつの間にか言葉使いが変わっていた。その変化とは、独り言をしゃべっても日本語が出たり、夢を見ても日本語で見たり、何かを考える時も韓国語より日本語が先に出てくることである。これは、留学3年目の時であった。逆に言えば日本にたった3年しかいなかったのに、そんなに変わっている自分に気づいて驚いた。 一方、同じ時期に日本人学生からはこのような話も聞いた。「韓国語をしゃべっている洪さんには、ちょっと違和感を感じます」とか、「洪さんは留学生だけど、日本人の間では日本人の枠として見ているんだよ」とか。この話をしてくれた日本人学生たちは、決して悪い意味で言ったのではない。むしろ、それは僕が日本人学生のコミュニティの一員となった証しだろう。その話を聞いて安心する一方で、1つ疑問が生じた。「おや、僕は韓国人なのにそれを全く意識していないね。何でだろう。」 この2つの経験が少し時差を置いて起きたら、自分の反応もそれほど激しくはなかっただろう。内面で「韓国」という要素が次第に薄れていくように感じた前者の経験と、周りの日本人が自分の韓国的要素を全く感じ取ってくれない後者の経験が同時に起きたことにより、本人のアイデンティティをものすごく揺さぶる結果をもたらした。私の心の中には「僕は韓国人なのに、何で日本語が先に出てくるの?」とか、「僕は韓国人なのに、何で周りの人々はそれを感じ取ってくれないの?」などのような疑問が浮かびあがった。これは、心の中でまるで絶叫のように響いたのである。 その問題は、学問の領域にも現れる。私が所属していたゼミでは、日本人、中国人、アメリカ人研究者の学説を引用しながら議論が行われる。その中で、本人はハングルが読めて韓国における東洋史研究を把握している点で、他の日本人学生や中国人留学生とは異なる。しかし、議論の際に私が韓国人の東洋史研究者の学説を引用しながら参加すると、ゼミの雰囲気は微妙に変わる。ゼミ生たちはそれに関して興味のない顔をしたり、「何でその学説を紹介するの?」という反応を見せる。甚だしくは「韓国で東洋史の研究はありますか」という発言をする学生もいる。これに対して、私は「(お前、)ハングルを読めないのは分かるけど、和文で紹介されている韓国東洋史の研究史整理の論文を一行も読んでいないのに、よくそんなこと言うな」と思った。 しかし、この経験は「私は韓国人であるのに、何で中国史を研究しなければならないのか」という問いかけをする契機となった。そして、真剣にその答えを求めることになった。それは、自分の学問分野においても予想していなかったできごとである。その解決方法として、韓国の伝統時代、主に朝鮮王朝時代における中国史研究を整理した。その結果、当時の朝鮮王朝では「外国史」としての中国史研究が高いレベルにまで達していたことが分かった。この作業によって、当時の研究で、ある傾向が読み取れたので、1本の論文として纏めることができた。 その後、自分の立場を「朝鮮王朝の中国史研究を継承するために東洋史を研究し、それを発展的に継承するために日本などの東洋史の研究成果を受け入れる」と再定義することができた。恐らく今後は、博士後期課程の在学中に経験したことを繰り返して経験しても、自分のアイデンティティが揺れることはないと固く信じている。その一方で、今までとは違う全く新しい経験をすると、再び自分のアイデンティティは変化すると予想される。それがどう変わるかは分からないが、楽しみにしている。 <洪性珉(ホン・ソンミン)HONG_Sungmin> 渥美国際交流財団2016年度奨学生。韓国の東国大学校大学院碩士課程で歴史(東洋史)を専攻。2012年度より早稲田大学文学研究科博士後期課程に進学。専門は、10~12世紀東アジア国際関係史、史学史。現在、早稲田大学文学学術院総合人文科学研究センターの助手。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【2】第24回日比持続可能共有型成長セミナーへのお誘い 下記の通り第24回日比持続可能共有型成長セミナーをオーストラリアのシドニー市で開催します。参加ご希望の方は、SGRAフィリピンに事前に申し込んでください。 第24回日比持続可能な共有型成長セミナー ◆「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」 “Progress_Without_Propety_of_People_and_Nature:_The_Role_of_Land_Value_Taxation_and_Economic_Rents" 日時:2017年9月23日(月)9:00~17:00 会場:Sydney_Mechanics_School_of_Arts(オーストラリア、シドニー市) 言語:英語 共催:Association_for_Good_Government(良き政府協会:AGG) 申込み・問合せ:SGRAフィリピン([email protected] ) ◇セミナーの趣旨 SGRAフィリピンが開催する24回目の持続可能な共有型成長セミナー。 持続可能な共有型成長セミナーは目標が効率・公平・環境ということで、KKKセミナーとも呼ばれている。現在まで、年2回というペースで開催されているが、フィリピン大学ロスバニョス校と協力し、より頻繁に開催される予定である。今回の24回目のセミナーは初めてフィリピンの外で行われることになる。オーストラリアに本部を置く、良き政府協会研究員のジョッフレ・バルセ氏(Joffre_Balce)との議論により、第20回持続可能な共有型成長セミナーで発表された「地価税」がKKKの発表候補者リストに入れられた。バルセ氏は良き政府協会の総書記であり、この協会は19世紀米国の政治経済学者のヘンリー・ジョージ(Henry_George)の政治経済政策を提唱している。そのなかの重要な議論の一つが地価税である。今回のセミナーの開催地及び日時は、特別の意味がある。9月は1901年に設立された良き政府協会の設立月にあたり、開催地は地価税が課税される国である。 ◇プログラム 08:00~09:00 登録 09:00~09:15 開会挨拶 09:15~10:00 発表1「ヘンリー・ジョージの社会哲学」リチャード・ガイルス(Richard_Giles)AGG会長 10:00~10:30 発表2「地価税:理論・証拠・実施に関する調査」マックス・マキト(Max_Maquito)フィリピン大学ロスバニョス校・SGRA 10:30~11:00 休憩 11:00~11:30 発表3「地価税の便益:マニラ都内の複数市の事例」グレイス・サプアイ(Grace_Sapuay)SGRAフィリピン運営委員 11:30~12:00 発表4「反貧困が少数派であり続ける理由:フィリピンに対するヘンリー・ジョージ流の改革の関連性」ジョッフレ・バルセ(Joffre_Balce)良き政府協会総書記 12:00~13:00 昼食 13:00~13:30 発表5「土地への平等アクセスやグローバルな移住の問題」フランクリン・オべング・オドーム(Franklin_Obeng-Odoom)シドニー技術大学 13:30~14:00 発表6「先住民の土地所有権に対するジョージ主義の含意の検討」ヨギスワラム・スブラマニアン(Yogeeswaram_Subramanian)マレーシア大学 14:00~14:30 発表7「貧困や金の番人」ロン・ジョンソン(Ron_Johnson)「The_Good_Government」編集長 14:30~15:00 休憩 15:00~17:00 SGRAのビジョン、近況報告+円卓会議(モデレーター:マックス・マキト) セミナー終了後 シドニー市内見学 ◇英文プログラム http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2017/08/Nippi-Seminar24F.pdf -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【3】第8回日台アジア未来フォーラム論文募集(再送) SGRAでは、来年5月26日に台北市の東呉大学で共催するシンポジウムで発表する論文を下記の通り募集します。皆さん奮って応募ください。また興味のある方にお知らせください。 第8回日台アジア未来フォーラム並びに台湾東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウム ◆「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 ―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて― 主 催:日本公益財団法人渥美国際交流財団、台湾東呉大学日本語学科、東呉大学図書館 共 催:東呉大学英文学科、東呉大学教養教育センター 会 場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂) 開催日:2018年5月26日(土) ◇シンポジウムの趣旨: 第8回日台アジア未来フォーラムでは、世界な規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論します。各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されています。 本シンポジウムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。これにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられます。 ◇研究発表関連分野・ジャンル・課題 A)マンガの収集・保存と利用(公共・大学図書館におけるマンガの所蔵状況、学術的マンガ研究、マンガと読書、マンガ読書の効果等) B)マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、プロ翻訳者の養成と外国語教育、翻訳技術の開発等 C)マンガ(テキストとしてのマンガの本文)を読み解く技法の理論と実践、マンガ読解力/マンガ・リテラシーの形成等 D)マンガ・アニメと物語論(ナラトロジー、記号論、言語学、ディスクール、表現論、文化的要素、視点の分析等) E)マンガ・アニメと視覚文化論、映像論、視覚芸術論、映像美学、表象等 F)マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マルチメディア展開(創意工夫、映像デザイン、クリエイティブスキル、映像制作実務と関連技術の応用等) G)マンガ・アニメと文化的経済学(マンガ・アニメフェアビジネス、マンガ・アニメの市場経済と商品化、コンテンツ産業の現状と課題、今後の発展の方向性等) H)マンガ・アニメ文化と社会学(政治、歴史、人類学、ジェンダ学、心理学、科学、哲学、生態学、表象等) ◇発表形式: ・使用言語:日本語、中国語、英語、その他 ・発表時間:発表20分・質疑応答10分 ◇申込方法: 2017年9月4日(月)までに「研究論文発表申込書」(発表要旨【中国語+外国語(日or英)】要提出)をメール添付で送って下さい。 ◇詳細は下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第24回日比持続可能共有型成長セミナ<参加者募集中>(9月23日、シドニー市) 「人や自然界を貧しくさせない進歩:地価税や経済地代の役割」<参加者募集中> ◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市) 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 <論文募集中(締め切りは9月4日)> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」 (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) <論文募集中(締め切り:奨学金応募者は8月31日、その他は2018年2月28日)> http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • Call for Papers: Nittai Asia Mirai Forum #8 “Dynamism and Potentiality of Global Manga/Animation Studies”

    *************************************************************************** SGRAかわらばん686号(2017年8月17日) 【1】エッセイ:張桂娥「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 【2】第8回日台アジア未来フォーラム論文募集 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 *************************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#544 ◆張桂娥「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 日本では誰もが知っている漫画の神様・手塚治虫は、「絵を文字にするのが小説。絵を絵にするのがイラスト。文字を絵にするのが漫画。文字を文字にするのが評論」だと述べ、「漫画は映像文化と文字文化の間のもの、いわば第三の文化である」と考えていたという。 一方、芸術作品の独創性に独特の美意識、鋭敏な鑑識眼を光らせて来たフランスでは、漫画は「9番目の芸術」と位置づけられ、近年では評論や研究の対象となっている上、世界最高峰の美術の殿堂「ルーヴル美術館」が21世紀、視覚芸術の映像美、言語表現の様式美を兼ねそろえた漫画に、ついにその扉を開いたというほど、熱い注目を浴びている。 かつて俗悪な読み物、低俗な娯楽、ビジネス先行のサブカル産業として貶められてきたマンガは、創造性と革新性を追求したクリエイティブな作家たちの努力によって、深層文化を表象する芸術の宝庫や、社会思想や世界と人生に関する深い哲理ないし世界観を広く発信する文化的産物として、全世界の人類に共有されつつある現状である。そのため、近年日本、フランスをはじめとする世界各国では、図書館・ミュージアムにおけるマンガコレクションを充実させるブームが巻き起こされたわけである。 また、デジタル映像の生成・加工技術の飛躍的進化により、マンガのアニメ化とともに実写映画化も劇的に進み、あっという間に世界を席巻する爆発的な流行文化に発展した。グローバル化したマンガ・アニメ文化は、視覚芸術を極めた魅惑的なコスモスのような不思議なワールドを築き、世界中の若者を虜にした。非日常な世界に誘われ、魅了された視聴者にとって、マンガ・アニメは、まさに自己と他者ないし世界を理解するための媒介である。 紙媒体のコミック・コミックスをはじめ、アニメ、キャラクター周辺グッズ、コスプレなど、サブカルチャーだったマンガ・アニメ文化は、世界市場規模のコンテンツ産業を誕生させ、一国の経済成長に大きな影響を与えるメインカルチャーに転換していき、我々現代人の消費行為(価値観)、ライフスタイルをダイナミックに変えるソフトパワーの源でもある。 2001年に「日本マンガ学会」が設立され、アカデミック的な見地から、奥深いマンガの世界に学際的・国際的アプローチの可能性が広がった。また、マンガを教育研究する日本初の大学マンガ学部が創設された2006年には、世界初の「博物館的機能と図書館的機能を併せ持った、新しい文化施設」京都国際マンガミュージアムも同時期に設立され、生涯に一度必ず訪れるという熱狂的なマンガファンが世界中から殺到し、コンテンツツーリズムの観光聖地として世界から注目されている。 一方、台湾の大学でも近年、マンガを通して各国の文化・社会への理解を深める教養講座が相次いで開設されている。2014年コミックス蔵書を充実させた東呉大学図書館は、マンガコレクションを楽しむ「マンガ読書エリア」を開設し、日本語学科と協力した上、マンガ・アニメ文化の可能性を探究する学術シンポジウムを開催している。他大学に先駆けて、グローバル的に浸透し定着していくマンガ・アニメ文化研究の最前線に立って、アカデミックな研究の未来を見据え、その可能性をさらに切り拓こうとしている。 2018年5月に台北市で、日本公益財団法人渥美国際交流財団と台湾東呉大学が共同主催で行う予定の、第8回日台アジア未来フォーラム※では、全世界規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論する。つまり、文化を発信するコミュニケーションツールとして共感・同調・共有されてきたマンガ・アニメが、いかに次世代の地球市民の手によって共創するコンテンツ産業へ進化していくかのプロセスや、それを実現させるあらゆる創発の原理を創造的に思考する場を設けたいと考えている。 各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されている。 本フォーラムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。これにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられる。 ※「日台アジア未来フォーラム」とは、日本公益財団法人渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の主催のもとで、台湾在住の元奨学生(台湾ラクーンメンバー)を中心とした実行委員会によって企画提案・実施運営される国際会議である。SGRAは日台の学術交流を促進し、日本研究の深化を目的とすると同時にアジアの未来を考えることをその設立の趣旨としている。思想信条の自由や言論の自由などを尊重するリベラルな台湾を発信基地として展開する本フォーラムでは、主にアジアにおける言語、文化、文学、教育、法律、歴史、社会、地域交流などの議題を幅広く取り上げている。8回目の開催となる2018年は、東呉大学日本語学科と図書館との共同主催のもとで、マンガ・アニメ文化国際シンポジウムを行う予定である。 <張 桂娥(ちょう・けいが)Chang_Kuei-E> 台湾花蓮出身、台北在住。2008年に東京学芸大学連合学校教育学研究科より博士号(教育学)取得。専門分野は児童文学、日本語教育、翻訳論。現在、東呉大学日本語学科副教授。授業と研究の傍ら日本児童文学作品の翻訳出版にも取り組んでいる。SGRA会員。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【2】第8回日台アジア未来フォーラム論文募集 SGRAでは、来年5月26日に台北市の東呉大学で共催するシンポジウムで発表する論文を下記の通り募集します。皆さん奮って応募ください。また興味のある方にお知らせください。 第8回日台アジア未来フォーラム並びに台湾東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウム ◆「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 ―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて― 主 催:日本公益財団法人渥美国際交流財団、台湾東呉大学日本語学科、東呉大学図書館 共 催:東呉大学英文学科、東呉大学教養教育センター 会 場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂) 開催日:2018年5月26日(土) ◇シンポジウムの趣旨: 第8回日台アジア未来フォーラムでは、世界な規模に広がったマンガ・アニメ文化の魅力に着目し、「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性―コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて―」について議論します。各セッションで取り上げるテーマとして、マンガの収集・保存と利用、マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、マンガ・リテラシー形成の理論と実践、マンガ・アニメと物語論、視覚芸術論、映像論、マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マンガ・アニメの文化的経済学、マンガ・アニメ文化と社会学などが予定されています。 本シンポジウムでは、グローバル化したマンガ・アニメ研究のダイナミズムを、研究者・参加者たちの多様な立場と学際的なアプローチによって読み解いた上、新たな可能性を見いだすことを目指している。これにより、日台関係・日台交流、また東アジア地域内の相互交流のさらなる深まりへの理解促進に貢献するものと考えられます。 ◇研究発表関連分野・ジャンル・課題 A)マンガの収集・保存と利用(公共・大学図書館におけるマンガの所蔵状況、学術的マンガ研究、マンガと読書、マンガ読書の効果等) B)マンガ・アニメの翻訳と異文化コミュニケーション、プロ翻訳者の養成と外国語教育、翻訳技術の開発等 C)マンガ(テキストとしてのマンガの本文)を読み解く技法の理論と実践、マンガ読解力/マンガ・リテラシーの形成等 D)マンガ・アニメと物語論(ナラトロジー、記号論、言語学、ディスクール、表現論、文化的要素、視点の分析等) E)マンガ・アニメと視覚文化論、映像論、視覚芸術論、映像美学、表象等 F)マンガ・アニメのメディアミックス化・マルチユース化、マルチメディア展開(創意工夫、映像デザイン、クリエイティブスキル、映像制作実務と関連技術の応用等) G)マンガ・アニメと文化的経済学(マンガ・アニメフェアビジネス、マンガ・アニメの市場経済と商品化、コンテンツ産業の現状と課題、今後の発展の方向性等) H)マンガ・アニメ文化と社会学(政治、歴史、人類学、ジェンダ学、心理学、科学、哲学、生態学、表象等) ◇発表形式: ・使用言語:日本語、中国語、英語、その他 ・発表時間:発表20分・質疑応答10分 ◇申込方法: 2017年9月04日(月)までに「研究論文発表申込書」(発表要旨【中国語+外国語(日or英)】要提出)をメール添付で送って下さい。 詳細は下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第57回SGRAフォーラムへのお誘い(8月7日~9日)北九州)<参加者募集中> 「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8793/ ※おかげさまで盛会裡に修了しました。後日SGRAかわらばんでご報告します。 ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市) 「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」 <論文募集中(締め切りは9月4日)> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2017/9108/ ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」 (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) <論文募集中(締め切り:奨学金応募者は8月31日、その他は2018年2月28日)> http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • Jeon Sangryul “Looking Back My One-Year Scholarship Period”

    **************************************************************** SGRAかわらばん685号(2017年8月10日) 【1】エッセイ:全相律「1年間の奨学期間をふりかえって」 【2】第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」 **************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#543(私の日本留学シリーズ#11) ◆全相律「1年間の奨学期間をふりかえって――考えさせられたこと、感じたこと、学んだこと――」 [自分が忘れていた自分に気づかされたとき] 大学で電子工学を専攻していた私は教養科目として受講した日本語の魅力に魅かれ、「言語学」という新しい道を歩むことになった。大学卒業後は、韓国外国語大学大学院日語日文学科の修士課程、(国費留学生として来日した後は)東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻の研究生・修士課程・博士後期課程で勉学を続けた。その間の私は「自分が数学や科学に興味があったこと」も、「理系学部生として勉強していたこと」も忘れ、文系院生としての自分だけに集中して生きてきた。 そんな私に渥美財団奨学生の面接審査で(当たり前のように)聞かれた「機械翻訳(Machine_Translation)や自然言語処理(NLP_[Natural_Language_Processing])」に関する質問は、ある意味私にとって衝撃的なものだった。不思議なことに私自身は「過去の自分と今の自分を結び付けよう」と考えたことがなかったからである。今は自分の専門分野である「日韓対照研究(文法論)」の他に、NLPなどの分野で、どのように自分の長所を生かせるかを模索している。「渥美財団との出会い」は私にとって忘れていた「過去の自分との再会」でもあったのだ。 [福島で見たこと、感じたこと] 2016年5月に、「SGRAふくしまスタディツアー」のメンバーとして訪れた福島は、私にとってまさに「見て、知って、考える」の旅だった。2011年3月に起きた「東日本大震災」から5年、私の中では忘れかけていた地震や原発のことが蘇る瞬間だった。被災地で出会った支援者の方からの言葉-「自分が見て体験した被災地のことを忘れず、今自分にできることを考えながら、(段々その関心が薄れていく)福島のことをなるべく大勢の人に伝えていきたい」-は今でも私の記憶に鮮明に残っている。今後リピーター(ラクーンメンバー※)として福島を訪ねる際は、以前の「不安や恐怖」が「希望や笑顔」に変わっていることを期待している。 [SGRAのワークショップやフォーラムなどで学んだこと] 蓼科でのワークショップやフォーラム(特に、「人を幸せにするロボット」)では、「普段自分が考えたことのない社会・国際問題」や「自分の研究分野からは離れた研究」などに触れることができた。研究分野や方法論は違っても研究に対する熱意や信念は変わらないという当たり前のことが実感でき、私の研究における愛情や心掛けを再確認するいい機会となった。 何と言っても渥美財団の奨学生として過ごした1年間で最も幸せだったのは、財団のプログラムを通じて知り合ったラクーンメンバー達との出会いである。私は2017年4月からいくつかの大学で非常勤講師として韓国語を教えながら博士論文を仕上げるつもりであるが、今後も財団の行事にはなるべく参加し、今まで以上にラクーンメンバーとの交流を深めていきたいと思っている。 ※渥美奨学生の同窓会は、創設者渥美健夫氏が狸の絵を描いていたことに因んでラクーン会と名付けられた。 <全相律(ジョン・サンリュル)Jeon_Sangryul> 渥美国際交流財団2016年度奨学生。韓国外国語大学大学院で日本語学を専攻。2009年4月文部科学省研究留学生として来日。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻修士課程を経て博士後期課程単位取得満期退学。専門は言語の普遍性と多様性に基づく日本語学・日韓対照言語学の研究。現在、神奈川大学、神田外語大学、帝京大学などで非常勤講師として勤務。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【2】第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送) 関口グローバル研究会(SGRA)では昨年に引き続き、福島県飯舘(いいたて)村スタディツアーを下記の通り行います。参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。 SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツアーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。今年も第6回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。ぜひ、ご参加ください。 テーマ:「『帰還』-新しい村づくりが始まる」 日 程:2017年9月15日(金)、16日(土)、17日(日) 人 数:10人程度 宿 泊:「ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター」 参加費:一般参加者は新幹線往復費用+12000円     (ラクーン会会員には補助が出ます) 申込み締め切り:8月31日(木) 申込み・問合せ:SGRA事務局角田 E-mail:[email protected] Tel:03-3943-7612 プログラム・詳細 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2017/07/Fukushima2017Program.pdf ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第57回SGRAフォーラムへのお誘い(8月7日~9日)北九州)<参加者募集中> 「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8793/ ※おかげさまで盛会裡に修了しました。後日SGRAかわらばんでご報告します。 ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」<論文募集中> (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ 論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿を受け付けています。 ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • Jiang Jianwei “Time” (resend)

    ※目次に間違いがありましたので再送いたします。大変失礼しました。 **************************************************************** SGRAかわらばん684号(2017年8月3日) 【1】エッセイ:蒋建偉「時」 【2】第57回SGRAフォーラムへのお誘い(8月7日~9日北九州)<最終案内> 「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 **************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#542(私の日本留学シリーズ#10) ◆蒋建偉「時」 本棚の最上段を見上げると、「ほぼ日手帳」が何冊か並んでいる。そこに私の日本留学の日々が書かれている。 私が東京に来たのは、2012年の春、6年前のことである。東日本大震災が起きた時は北京で留学申請の最中だった。母校北京外国語大学の自習室で、同級生たちとネットで流れている津波の映像を見て、皆唖然とした。CCTV(中国中央テレビ)はNHKの放送をほぼ同時に中継し、外国語大学の先生たちは同時通訳として夜遅くまでテレビ局で働いていた。学校の留学生棟の前にはいつの間にか長い列が出来、募金活動をしている日本人留学生は、貧乏学生の気前の良さに驚いた。こうした中で、周囲は心配し、私の日本留学を諦めるよう言ってきた。行くか行かないかで躊躇しなかったわけではないが、心のどこかで諦めきれなかった。 留学の最初の半年間は新生活に慣れつつ、心頭の憂いを払えなかった。留学の数ヶ月前に、父は交通事故で重傷を負い、母一人で看病していた。このことを契機に、私の心の中で、「守る」と「守られる」立場が逆転した。自分は急に大人になったと感じた。東京での生活に漸く慣れた頃、父もほぼ快復できた。夏のある日の午後、電話で久々に父の笑い声を聞いた。私は窓を開けてベランダで長い間日差しを眺めながら、時というものは妙な存在だなあと思った。あの事故は一秒遅くても起こらなかったし、一秒早くても起こらなかったはず。時の流れについては、聖人でも神様でも止めたり、逆戻りさせたりすることが出来ない。その一方で、時が経つにつれ、身体の傷も治るし、心の傷もすこしずつ忘れられる。勿論、新しい皮膚が出来ても、皮膚表層の下にその時の跡が残っているかもしれない。それでも、あの日の午後、私は庭に差し込んでいた日差しに安定感を感じ、生の喜びを味わった。 半年が過ぎ、忙しい日々が始まった。入試準備で、漢文訓読・崩し字・候文など、古典研究の基本を懸命に学んだ。入学するや否や、指導教官に学会発表を命じられた。本番の前に、3回ほどゼミで予行発表を行い、先生の指導を受けた。ゼミが終わってから、ゼミ生一同はサイゼリヤに転じて、検討会を行ってくれた。そこで先輩達にボロボロに批判された。何事も初めが難しい。あれほど指導や批判を受けたからこそ、私は初めての学会発表を無事に終え、それ以後の学会をも畏れなくなった。 普段、ゼミや読書会で中国・日本の古典を読み、夏休みや春休みに論文を書いたり、学会発表を準備したりするのが、私の基本的な生活スタイルであった。博士課程の最初の3年間は東京大学のゼミにも出席し、江戸時代の思想家の文献をひたすら読んだ。東京という文化都市にいる以上、時間を作って、能や歌舞伎を見に行ったり、コンサートを聴きに行ったり、博物館・美術館を訪れたりした。だが、基本的に研究三昧の日々であった。専門の本を読んで、疲れたら、文学や絵画など違うジャンルのものを読んだり、家事をしたり、散歩したりする。研究者は一人の時間が多い職種である。留学の間、時間との付き合い方を模索し続けた。 留学の後半に結婚した。相手(以下、W氏と称す)も研究者で、新居を探す時に、巻き尺で家々の各部屋の壁面積を測った。私はともかく、W氏は本が多く、本棚を置くスペースがほしかった。こんなに本が多くなかったら、同じ家賃でもっと優雅に暮らせる家があった。自分自身の引越より、本の引越なのだ。その時に、初めて覚悟ができた。引越してから、私はやや広くて日差しの多い部屋を書斎にし、W氏はやや狭くて緑の多い部屋を書斎とした。それぞれ中国思想と日本思想を研究しているが、儒学、特に朱子学などが二人にとって基礎教養であるため、蔵書のかなりの部分が共用できた。新居での生活が半年間過ぎ、W氏が仕事で北京に赴任した。 私は相変わらず西武新宿線の急行で通学する日々である。その頃から、博士論文に本格的に取組まなければと思った。ストレスが溜まった時、普段飲まない炭酸飲料を飲んだり、小説を読んだりして発散した。電車で本を読むのが、東京に来てから始まった習慣である。 昔から中島敦の作品が好きだったが、この時になってその明晰で、無駄が無く、味わいがある文体に一層惹かれ、書簡を含む全集を片っ端から読んだ。『弟子』に表われている師への視線、『斗南先生』における自己への洞察は、この時期の私とある程度問題意識が重なっていた。『わが西遊記』を読んで、彼の哲学的思考の幅に嘆服し、刺激を受けた。中島敦はパラオに単身赴任した時、家族に大量の書簡を送った。彼は病弱な身体に深い無力感を覚えながら、ほぼ毎日、南洋での見聞――花・食べ物・海・土着民――を文字にして、妻に手紙を寄せた。『山月記』や『李陵』などの小説における感情の発し方には美学がある。一方、妻への手紙における、心が激しく揺れたり、崩れたり、コンプレックスを抱いたりする飾り気なしの彼の感性も魅力的である。こうした中島敦の文学に触れ、知らず知らずに私は焦燥感がすこしずつ消え去り、自らの世界に安んじた。 暫くしたらこの町を離れるかもしれないが、今も庭前の桜吹雪を心静かに待っている。(2017年3月記) <蒋建偉(ショウ・ケンイ)Jiang_Jianwei> 2016年度渥美奨学生。2013年4月に早稲田大学文学研究科東洋哲学コースに入学、現在は博士論文を提出し就職活動中。専門は日本近世思想史、特に水戸学を中心に研究している。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【2】第57回SGRAフォーラムへのお誘い(最終案内) 下記の通りSGRAフォーラムを北九州市で開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。 ◆テーマ:「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 〇会 期:2017 年8月7日(月)~9日(水) 8月7日(月)16:00~17:00 基調講演 8月8日(火)9:00~12:40 14:00~18:00 論文発表 8月9日(水)9:00~12:00  全体討議・総括 〇会 場: 北九州国際会議場国際会議室 http://convention-a.jp/kokusai-kaigi/ 主催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 助成:(公財)鹿島学術振興財団 協賛:北九州市/(公財)北九州観光コンベンション協会 参加費:無料(一般参加者の食事と宿泊は自己手配) 使用言語:日・中・韓同時通訳付き お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局([email protected], Tel:03-3943-7612) ◇フォーラムの趣旨 東アジアにおいては「歴史和解」の問題は依然大きな課題として残されている。講和条約や共同声明によって国家間の和解が法的に成立しても、国民レベルの和解が進まないため、真の国家間の和解は覚束ない。歴史家は歴史和解にどのような貢献ができるのだろうか。 渥美国際交流財団は2015年7月に第49回SGRA(関口グローバル研究会)フォーラムを開催し、「東アジアの公共財」及び「東アジア市民社会」の可能性について議論した。そのなかで、先ず東アジアに「知の共有空間」あるいは「知のプラットフォーム」を構築し、そこから和解につながる智恵を東アジアに供給することの意義を確認した。このプラットフォームに「国史たちの対話」のコーナーを設置したのは2016年9月のアジア未来会議の機会に開催された第1回「国史たちの対話」であった。いままで3カ国の研究者の間ではさまざまな対話が行われてきたが、各国の歴史認識を左右する「国史研究者」同士の対話はまだ深められていない、という意識から、先ず東アジアにおける歴史対話を可能にする条件を探った。具体的には、三谷博先生(東京大学名誉教授)、葛兆光先生(復旦大学教授)、趙珖先生(高麗大学名誉教授)の講演により、3カ国のそれぞれの「国史」の中でアジアの出来事がどのように扱われているかを検討した。 第2回対話は自国史と他国史との関係をより構造的に理解するために、「蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」というテーマを設定した。13世紀前半の「蒙古襲来」を各国の「国史」の中で議論する場合、日本では日本文化の独立の視点が強調され、中国では蒙古(元朝)を「自国史」と見なしながら、蒙古襲来は、蒙古と日本と高麗という中国の外部で起こった出来事として扱われる。しかし、東アジア全体の視野で見れば、蒙元の高麗・日本の侵略は、文化的には各国の自我意識を喚起し、政治的には中国中心の華夷秩序の変調を象徴する出来事であった。「国史」と東アジア国際関係史の接点に今まで意識されてこなかった新たな歴史像があるのではないかと期待される。 もちろん、本会議は立場によってさまざまな歴史があることを確認することが目的であり、「対話」によって何等かの合意を得ることが目的ではない。なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。円卓会議の講演録は、SGRAレポートして3カ国語で発行する。 ◇詳細は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8793/ ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第10回SGRAカフェへのお誘い(7月29日東京)<参加者募集中> 「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8478/ ※おかげさまで65名の参加者を得て盛会裡に修了しました。後日SGRAかわらばんでご報告します。 ◇第57回SGRAフォーラムへのお誘い(8月7日~9日)北九州)<参加者募集中> 「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8793/ ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」<論文募集中> (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ 論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿を受け付けています。 ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • Lee Ji-Hyeong “Imagination and its Direction”

    **************************************************************** SGRAかわらばん683号(2017年7月27日) 【1】エッセイ:李志炯「想像力とその方向性」 【2】SGRAカフェへのお誘い(7月29日東京)<最終案内> 「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?:『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」 【3】第57回SGRAフォーラムへのお誘い(8月7日~9日北九州)<再送> 「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 **************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#541 ◆李志炯「想像力とその方向性」 「対象をその現前がなくても直観の中で表象する能力」 「多様を一つの形象(Bild)へ持って来る能力」 哲学者イマヌエル・カントは想像力について上記のように語った。この想像力は感性と知性の中間的能力であり、感性と知性の概念を少しずつ含んでいる。感性と知性は知覚から始まる能力であるため、想像力も知覚から始まる能力と考えられている。 私達は日常生活の中でさまざまなものや環境を感性と知性を用いて知覚し、対象を理解している。そして、そこから得られた情報と想像力を用いていろいろなことを思考している。人類は、同様のプロセスによって現在の社会システムを知覚し、想像力を用いて未来の社会システムを予測し、社会システムを発展させてきた。つまり、想像力は社会システムの発展において欠かせない要素である。 一方、想像力は映画やアニメなどの芸術とよく結合する。映画やアニメは制作された当時の時代状況に想像力を加えて人間の未来像を描く。そのため、映画やアニメの仮想現実で描かれた社会システムが後で現実の社会システムに実現される場合もある。例えば、『ブレードランナー』(1982年作)、『ターミネーター』(1984年作)、『攻殼機動隊』(1995年作)、『ガタカ』(1998年作)などで見られた科学技術およびそれが適用された社会システムは、20~30年経った今の社会を構成している。 このように私達は想像力を基盤に生きて、想像力を基盤に社会システムを構築していく。想像力はとても大切な能力であり、人間の存在意義に影響を与える重要な要素であると言えるだろう。 一方、人間に大切な能力である想像力の向上のために努力することは大切であるが、想像力の方向性も重要である。上記で挙げた映画やアニメでは科学技術は進歩しているが、人間性は低下している傾向がみられる。また、人間に対する信頼が低下し、個人個人が孤独に生きているように見える。どうして私達の未来はこのように描かれるのだろう。科学技術の進歩は人間に利便性を与えるが、その代わりに人間性を奪うのか。 私はそうではないと思う。時代の変化によって人間性の概念は変容すると考えられるかもしれないが、人間性の根本的な概念は変わらないはずだ。また、科学技術の進歩は時代の変化によって変容した人間性の概念を、人間が身につけやすくするように助ける役割を担うと思う。このように私が持っている人間の未来像は、映画やアニメーションで描かれている人間の未来像と異なる。その理由は上記で述べた想像力の方向性にあると考えられる。 人間の明るい未来像を期待するためには、まず自分が持っている想像力の方向性を見直す必要がある。しかし、スマートフォンのゲームアプリケーションや仮想現実の実現などに想像力の方向を合わせている今の社会を見ると、人間の明るい未来像を期待することが可能かという懸念が生じる。もちろん、このような科学技術の発達によって人間は幸せを感じると思うが、そのほとんどは表面的な刺激による一時的な幸せではないのか。スマートフォンのゲームアプリケーションや仮想現実などはSociety5.0(超スマート社会)の主力産業であるIoT・ビッグデータ・人工知能・ロボットに符合する分野であり、その技術を発展させる必要がある。 しかし、ここ数年間の社会の変動や人間性の変化を見る限り、方向性についてもう一度考えてみる必要があると思う。私達は明るい未来像を期待して、科学技術を進歩させている。そのため、科学技術の進歩にかかわる人々の想像力の方向性を検討すべきであると思う。 <李 志炯(イ・ジヒョン)Lee Ji-Hyeong> 2007年啓明大学(韓国)産業デザイン科卒業。2007年6月来日、千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻修士課程終了。2011年~2013年、千葉大学発ベンチャー企業BBStoneデザイン心理学研究所で研究員として勤め、現在は千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻博士課程在学。韓国室内建築技士・日本ユニバーサルデザイン検定の資格を保有。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【2】第10回SGRAカフェへのお誘い<最終案内> SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺う<場>として、SGRAカフェを開催しています。参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局へお名前、ご所属、連絡先をご連絡ください。 第10回SGRAカフェ ◆「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」 〇日時:2017年7月29日(土)13:30~16:00 〇会場:渥美国際交流財団/鹿島新館ホール http://www.aisf.or.jp/jp/map.php 〇会費:無料 〇申込み・問合せ:SGRA事務局 ([email protected]) 〇プログラム: 13:30~14:30:発表 14:30~14:45:ティータイム(休憩) 14:45~16:00:質問応答・ディスカッション 〇講師: ムラデノヴァ、ドロテア (ライプチッヒ大学大学院東アジア研究所日本学科博士後期課程) ファスベンダー、イザベル (東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程) 司会:金律里 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8478/ -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【3】第57回SGRAフォーラムへのお誘い<再送> 下記の通りSGRAフォーラムを北九州市で開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。 ◆テーマ:「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 〇会 期:2017 年8月7日(月)~9日(水) 8月7日(月)16:00~17:00 基調講演 8月8日(火)9:00~12:40 14:00~18:00 論文発表 8月9日(水)9:00~12:00  全体討議・総括 〇会 場: 北九州国際会議場国際会議室 http://convention-a.jp/kokusai-kaigi/ 主催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 助成:(公財)鹿島学術振興財団 協賛:北九州市/(公財)北九州観光コンベンション協会 参加費:無料(一般参加者の食事と宿泊は自己手配) 使用言語:日・中・韓同時通訳付き お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局([email protected], Tel:03-3943-7612) ◇フォーラムの趣旨 東アジアにおいては「歴史和解」の問題は依然大きな課題として残されている。講和条約や共同声明によって国家間の和解が法的に成立しても、国民レベルの和解が進まないため、真の国家間の和解は覚束ない。歴史家は歴史和解にどのような貢献ができるのだろうか。 渥美国際交流財団は2015年7月に第49回SGRA(関口グローバル研究会)フォーラムを開催し、「東アジアの公共財」及び「東アジア市民社会」の可能性について議論した。そのなかで、先ず東アジアに「知の共有空間」あるいは「知のプラットフォーム」を構築し、そこから和解につながる智恵を東アジアに供給することの意義を確認した。このプラットフォームに「国史たちの対話」のコーナーを設置したのは2016年9月のアジア未来会議の機会に開催された第1回「国史たちの対話」であった。いままで3カ国の研究者の間ではさまざまな対話が行われてきたが、各国の歴史認識を左右する「国史研究者」同士の対話はまだ深められていない、という意識から、先ず東アジアにおける歴史対話を可能にする条件を探った。具体的には、三谷博先生(東京大学名誉教授)、葛兆光先生(復旦大学教授)、趙珖先生(高麗大学名誉教授)の講演により、3カ国のそれぞれの「国史」の中でアジアの出来事がどのように扱われているかを検討した。 第2回対話は自国史と他国史との関係をより構造的に理解するために、「蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」というテーマを設定した。13世紀前半の「蒙古襲来」を各国の「国史」の中で議論する場合、日本では日本文化の独立の視点が強調され、中国では蒙古(元朝)を「自国史」と見なしながら、蒙古襲来は、蒙古と日本と高麗という中国の外部で起こった出来事として扱われる。しかし、東アジア全体の視野で見れば、蒙元の高麗・日本の侵略は、文化的には各国の自我意識を喚起し、政治的には中国中心の華夷秩序の変調を象徴する出来事であった。「国史」と東アジア国際関係史の接点に今まで意識されてこなかった新たな歴史像があるのではないかと期待される。 もちろん、本会議は立場によってさまざまな歴史があることを確認することが目的であり、「対話」によって何等かの合意を得ることが目的ではない。 なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。円卓会議の講演録は、SGRAレポートして3カ国語で発行する。 ◇詳細は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8793/ ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第10回SGRAカフェへのお誘い(7月29日東京)<参加者募集中> 「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8478/ ◇第57回SGRAフォーラムへのお誘い(8月7日~9日)北九州)<参加者募集中> 「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8793/ ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」<論文募集中> (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ 論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿を受け付けています。 ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • Invitation to SGRA Fukushima Study Tour #6

    ************************************************ SGRAかわらばん682号(2017年7月20日) 【1】SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」 【2】エッセイ:ジャクファル・イドルス 「飯舘村からインドネシアの原発問題を考える」 【3】SGRAカフェへのお誘い(7月29日東京)(再送) 「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?:『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」 ************************************************ 【1】第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い 関口グローバル研究会(SGRA)では昨年に引き続き、福島県飯舘(いいたて)村スタディツアーを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。 SGRAでは2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘村でのスタディツアーを行ってきました。そのスタディツアーでの体験や考察をもとにしてSGRAワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。今年も第6回目の「SGRAふくしまスタディツアー」を行います。ぜひ、ご参加ください。 テーマ:「『帰還』-新しい村づくりが始まる」 日 程:2017年9月15日(金)、16日(土)、17日(日) 人 数:10人程度 宿 泊:「ふくしま再生の会-霊山(りょうぜん)センター」 参加費:一般参加者は新幹線往復費用+12000円 (ラクーン会会員には補助が出ます) 申込み締切:8月31日(木) 申込み・問合せ:SGRA事務局角田 E-mail:[email protected] Tel:03-3943-7612 プログラム・詳細 http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2017/07/Fukushima2017Program.pdf -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【2】SGRAエッセイ#540  ◆ジャクファル・イドルス「飯舘村からインドネシアの原発問題を考える:2015年秋のSGRAスタディツアーに参加して」 私はジャワ島中部の北部海岸に面したジュパラという小さな港町で、高校まで平穏に育った。しかし、2000年に入った頃、政府が突然ジュパラ近郊にインドネシアで最初の原子力発電所の建設計画を発表したため、この静かな町はその賛否を巡って住民の間で激しい対立が生じることとなった。私も自然な流れで原発問題に関心を抱くようになっていた。その結果、私の日本留学の当初の目的は、原発が立地された地域住民の意識について調査を行うことにあった。 私が来日を果して間もなく、新潟中越沖地震が発生し、柏崎刈羽原子力発電所にかなり大きな被害がもたらされたと聞いた。私は自らの貧乏な生活を無視して妻を説得し、柏崎刈羽原発とその周辺地域の現地調査に向かった。 現地調査で出した私の結論は大きくまとめると次の2点であった。 第1に、さすが日本の原子力発電所は、世界一といわれる高い技術と安全性に守られて、これだけ大きな地震が起きてもその危険性は制御でき、深刻な被害には至らなかったということである。説明役の技術者は全く原発についての知識がないインドネシア人留学生に解り易い日本語で、驚く程親切な対応をしてくれた。そのため、今迄以上に「さすが日本だ」と日本の科学技術への信頼が高まったのである。 第2は、柏崎という小さな町の風景に驚かされたことである。柏崎は小さな地方の町にもかかわらず、あちらこちらに立派な学校、病院、市民会館、ホテル等が立ち並び、道路等インフラも整っていた。立派なスーパーマーケットに陳列された商品の値段が、当時私が住んでいた東京の町田よりもかなり安いのに驚かされた。これは、「電源三法交付金」という原発の立地に伴う仕組みによって実現したものである。ジュパラ住民がこの現実を知れば、私の故郷での原発を巡る激しい対立は一挙に解決するように私には思えた。もちろん、交付金のかなりの額は賄賂となって消えていくのであるが。 2011年3月11日、東北地方に発生した大地震により、福島第1原子力発電所で発生したメルトダウンによる原発事故が発生した。この事故から4年が経って、ようやく私に計画避難区域に指定された飯舘村の状況を視察する機会が訪れた。この村は福島原発から30キロメートル離れたところに位置しており、避難区域とされた20キロメートルの圏外にあった。この村の人口は約6000人で、日本でもっとも美しい100村のひとつであった。しかし、現在(注)、この村は「帰宅は許されるが、宿泊は禁止される」という村全体が絶滅状態に置かれている。 (注)2015年当時。飯舘村に対する「避難指示」は、2017年3月31日に解除され、4月から村民の帰還が始まっている。) 私自身、飯舘村の現状を直接眼で見て大きなショックを受けた。原発事故の恐ろしさを実感させられた。一体この問題の解決に今後何十年必要とするのか。誰もその見通しをつけることができない。先祖伝来の土地を奪われ、家族は離れ離れになり、村の人々にどんな新しい人生が待っているのだろうか。それは決して補償金で償えるものではない。原発に対する私の甘い考えは飯舘村の見学によって根底から吹き飛んだのである。 実は、原発ではないが、インドネシアでも似たような悲惨な出来事があった。 それはジャワ島最東部東ジャワ州にある第二の大都会スラバヤ市から南に25キロメートル離れているシドアルジョ県で起きた泥火山による熱泥などの噴出事故、いわゆるシドアルジョ泥噴出事故である。この事故の発端は、2006年5月29日、東ジャワ州シドアルジョ県ポロン郡レノクノゴ村でラピンド社が運営するブランタス鉱区のバンジャル・パンジ天然ガス田の掘削の失敗によって水蒸気噴出が起きたことだった。当初は、バンジャル・パンジ田近くの沼地から水蒸気が吹き出ただけだったが、突然、水蒸気とともに摂氏50度にも及ぶ熱い泥が噴出し、巨大な噴水のような泥は高さ8メートルにまで達した。その後噴出した泥の量は増え続け、毎日およそ1億2,600万平方メートルに上り、あっという間に広い範囲の地域に拡大していった。 発生から9年たった2015年現在、泥噴出は止まる気配さえない。具体的な被害状況は、3つの郡にまたがる12の村が壊滅的状態にある。この事故によりシドアルジョ県ポロン郡にあった10,426戸の住宅が全壊し、住居を失い、失業し、避難生活を続けている住民は 6万人に達している。 このような状況の下、インドネシア政府の避難住民に対する対応政策が何も行われないことに対して、故郷を奪われた村民たちは「自分たちは見捨てられた」と感じている。そして政府に対して強い批判と反発を生んでいるが補償は今なお困難である。 このような現状があったにもかかわらず、近年インドネシアでは原子力発電所の建設に関わる動きが再び活発になってきた。しかし、原子力に関する知識の不足、公共施設に対する管理能力の無さ、国家責任に対する無自覚などなど、インドネシアでは技術的な視点だけでなく、社会的・政治的な視点からも原子力発電所を建設するための環境条件は全く整っていない。万一事故が起こったら、政府は「国民を守れる」と自信を持って言えるのか、これらの問に答えを出せる者はインドネシアには誰もいない。 高度な安全性で、優秀な原子力の専門家や技術者が多い日本においてでさえ、福島原発事故を終わらせる道が未だ見えていない。「インドネシアの国民の発展のため」と考えるなら、原子力発電建設の計画は見直すべきところか、むしろ原子力発電所は不要であり、建設すべきではないといえる。 <M.ジャクファル・イドルス M. Jakfar Idrus> 2014年度渥美奨学生。インドネシア出身。ガジャマダ大学文学部日本語学科卒業。国士舘大学大学院政治学研究科に在籍し「国民国家形成における博覧会とその役割:西欧、日本、およびインドネシアを中心として」をテーマに博士論文執筆中。同大学21世紀アジア学部非常勤講師、アジア・日本研究センター客員研究員。研究領域はインドネシアを中心にアジア地域の政治と文化。 -・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・ 【3】第10回SGRAカフェへのお誘い(再送) SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺う<場>として、SGRAカフェを開催しています。参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局へお名前、ご所属、連絡先をご連絡ください。 第10回SGRAカフェ ◆「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」 〇日時:2017年7月29日(土)13:30~16:00 〇会場:渥美国際交流財団/鹿島新館ホール http://www.aisf.or.jp/jp/map.php 〇会費:無料 〇申込み・問合せ:SGRA事務局 ([email protected]) 〇プログラム: 13:30~14:30:発表 14:30~14:45:ティータイム(休憩) 14:45~16:00:質問応答・ディスカッション 〇講師: ムラデノヴァ、ドロテア (ライプチッヒ大学大学院東アジア研究所日本学科博士後期課程) ファスベンダー、イザベル (東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程) 司会:金律里 〇メッセージ: 婚活や就活といえば馴染みのある表現ですが、最近「妊活」や「終活」といった言葉も流行してきています。婚活と就活は「生きている間」のことですが、妊活と終活は「人生が始まる前」と「終わった後」の「節目」を管理しようというものです。今や生涯(とそれ以前・以後)のあらゆる「節目」にこうした「活」が浸透し、その都度人生を活発にデザインするように呼び掛けられています。「活」という概念は、自分の力で情報を集め、あらゆる選択肢を考慮に入れた上で、自分(と自分の身内)にとって最適な選択をしなければならないという意味を強く含んでいます。もちろん、そこには自分の人生に関わるものを自分で決めることができ、自分なりに生きられるという自己決定のメリットはあります。 しかし一方でそれは、人生の選択肢を上手く扱えず失敗した場合は、個人の責任であるという「自己責任論」につながりやすい考え方でもあります。時に生きることの選択に失敗した場合、それを自分の責任として背負い込まねばならないとすれば、人は果たして人生を、自分の意志に沿って挑戦的に生きることができるでしょうか? まずは「人生をうまくやるために、どうしてこんなにも頑張らなければいけないのか」という問いから始めようと思っています。それも生まれる前から死んだ後にまで。個人を「活」動させずにはおかないような社会的仕組みはいつ生まれてきたのでしょうか?この社会において「自由であること」とはどういうことでしょうか?国家はそこにどのように関わってくるのでしょうか?これらの問いを考える道具として、「自己管理する主体(entrepreneurial_self)」という言葉を手がかりにしながら、皆さんで、今日の日本社会で生きることの自由と責任について、ひろくディスカッションしていきたいと思っています。 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8478/ ************************************************** ★☆★SGRAカレンダー ◇第10回SGRAカフェへのお誘い(7月29日東京)<参加者募集中> 「産まれる前から死んだ後まで頑張らないと?『妊活』と『終活』の流行があらわすもの」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8478/ ◇第57回SGRAフォーラムへのお誘い(8月7日~9日)北九州)<参加者募集中> 「第2回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性:蒙古襲来と13世紀モンゴル帝国のグローバル化」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/8793/ ◇第6回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(9月15~17日福島飯舘村) 「『帰還』-新しい村づくりが始まる」<参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2017/9009/ ◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」<論文募集中> (2018年8月24日~8月28日、ソウル市) http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/ 論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿を受け付けています。 ☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。 ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ●SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/date/2017/?cat=11 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************