SGRAメールマガジン バックナンバー

  • [SGRA_Kawaraban] GaYoung Choi “Twenty Years since A

    ******************************************************** SGRAかわらばん524号(2014年6月25日) 【1】エッセイ: 崔 佳英「『小さな留学生』から20年」 【2】新刊紹介:和井田清司、張建、他「東アジアの学校教育」 ******************************************************** 【1】SGRAエッセイ#414 ■崔 佳英「『小さな留学生』から20年」 「小さな留学生」を覚えているだろうか。2000年に放映された、中国から父親の転勤 で、日本の学校に通うことになった9歳の少女の2年間を追ったドキュメンタリーであ る。今年、2007年から7年目を迎える私の日本での留学生活は、3度目の長期日本滞在 である。1回目は、小学校の時に父の仕事のために家族4人で初来日。2回目は、その 約10年後、2003年の1年間の交換留学、それから5年後、現在の大学院留学のための来 日である。 初来日時は、もう20年以上も遡る1992年の春だった。まったく日本語がわからない状 態で日本に行くことが決まり、渡日1週間前に韓国の学校に届けを出し、ひらがなの 勉強を始めた。自己紹介の言葉を日本語の発音をそのままハングルで書いてもらい、 一生懸命練習した記憶がある。こんにちは、はじめまして、以外には日本語が全くわ からず、まさに、ドキュメンタリーの「小さな留学生」と同じだった。 偶然にも、私の小学校の時の経験は、「日本の学校のニューカマー受け入れ」の展開 と軌を一にする。1990年の入管法の改正とともに、ニューカマーの外国人が急増し、 これに連動して外国人の子どもの教育問題が注目され始めたのである。1991年には、 文部省が初めて「日本語指導が必要な外国人児童生徒」の数の調査に着手し、1993年 の『我が国の文教政策』で「外国人児童生徒に対する日本語教育等」に初めて言及し た。日本でニューカマーの子どもの教育問題が浮上し、その取り組みが始まってから 20年も経つ。韓国では、2000年代から「多文化」問題が社会問題の重要なトピックと なり、アジアの国で先に移民問題に対面した日本の取り組みについての研究に、注目 が集まっていた。私が日本に留学してから参加したボランティア団体では、外国につ ながりを持つ子ども(ニューカマーの子ども)への学習支援の活動をしており、その はじまりは「在日韓国・朝鮮人」の子どもの高校進学支援からで、長い蓄積をもつ。 しかし、おもしろいことに、私が最近出会う外国人子女教育問題の研究者や支援者か らよく耳にすることは、「韓国は進んでいますね、韓国の話が聞きたいです」という 言葉である。確かに、この10年間に韓国では、外国人統合政策である「在韓外国人処 遇基本法」、「多文化家族支援法」を制定、二重国籍の許容、外国人参政権の付与な ど法制度における様々な動きがあり、学校教育においては2007年から政府主導で「多 文化教育」を実施している。社会化の課程に「切断」を経験する移民の子どもにとっ ては、社会参加や階層移動の機会などの意味から、制度化された学校教育がもつイン パクトは強い。 さて、ここで、20年も前の話をしてみようと思う。 私が初めて来日した当時の札幌には、「外国人の子ども」の存在は珍しいもので、区 役所から地図をもらい、家族4人だけでいくつかの学校を実際に回り、編入する学校 を決めた。私が通うことになった学校にとっても、外国人はもちろん初めてのことで あった。正規のクラスに入るのか、どの学年に編入するかも教育委員会の方針が定 まっていなかった時期で、その分、一つ一つのことを学校と保護者、そして私の意志 を反映し相談していったことを覚えている。 担任の先生と私の父は、交換日記的な一冊のノートに私の1日について書いて連絡を 取り合っていた。日本の学校で1年程が経った頃に、私の日本語の先生がやってき た。まだ20代の若い先生で、先生になる前の「先生」と聞いた。国語の時間には、職 員室で「みんなのにほんご」という本で、はじめから日本語を勉強した。日本語の先 生との勉強が1年を過ぎた頃には「アンクルトム」を全部読み切ったことを今でも覚 えている。のちに、数学以外の授業も少しずつ耳に入るようになり、テストも受けら れるようになった。それでも、社会や理科などのテスト問題を解くには困難があっ た。担任の先生は、私の答案用紙の全ての項目に×をつけることはなかった。100点 が満点ではなく私の日本語力に合わせた採点をしてくださった。40点/44点と。 そこに込められた教員の教育理念とは、「日本人の子ども」のみを対象とする教育、 日本語を基準とした評価ではなく、日本語の問題と生徒の学習力の問題を切り離し、 一斉共同主義に基づかない、学生個々の「学びの権利」を保障するコア的なものであ ると思える。これは、多くの「大人の」留学生が抱く問題の一つでもある。議論を中 心とする大学院での授業で日本語力の不足のために委縮してしまったり、または、そ の発言に耳を傾けてもらえなかったり、教員や同僚とのスムーズな意見交換の困難、 正確にはコミュニケーションの文化的差異から生じうる誤解などをどのように捉える かは、大学の「国際化」を謳うアジアの多くの大学の課題となりえるだろう。 ---------------------------------- <崔 佳英(ちぇ・かよん)Choi, GaYoung> 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻にて修士号2010年取得。現在、同研 究科で博士後期課程在学中。2013年度渥美奨学生。専門分野は、日本と韓国における 外国人子女教育。 ---------------------------------- 【2】新刊紹介 SGRA会員の張建さんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ■「東アジアの学校教育: 共通理解と相互交流のために」 本書は、東アジアの日本・中国・韓国・台湾という各国地域の学校教育について、第 二次大戦後の経過をふまえた現状を紹介するものである。同時に、当面する諸課題の 中から、いくつかの論点をとりあげて、その分野の専門家による論究をも収めてい る。教育学研究や学校と教師の実践において、相互の交流と参照のため、共通理解の 基盤となるような基礎資料を提供したい。 編著者:和井田清司、張 建、牛志奎、申智媛、林明煌 A5判 400頁  価格 3,780 円 (本体3,500円・税280円) 2014年05月18日発行   ISBN9784864872430 http://www.sankeisha.com/shop/index.php ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【2】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【3】第2回アジア未来会議<オブザーバー参加者募集中> 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ 【4】第8回SGRAチャイナフォーラム 「近代日本美術史と近代中国」<ご予定ください> (2014年11月22日北京) ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Virag Viktor “From a Decreasing-Population Japan to a Multi-Ethnic Japan?”

    ********************************************* SGRAかわらばん523号(2014年6月18日) ********************************************* SGRAエッセイ#413 ■ ヴィラーグ ヴィクトル「人口減少ニッポンから多民族ニッポンへ?」 〜大規模移民受け入れ前に不可欠な統合政策:労働力移入ではなく、人間移住である ことを忘れないために〜 日本の新聞を読むと、移民受け入れの可能性について徐々に取り上げられるように なっています。もちろん、移民受け入れの可否を巡る議論は新しいものではありませ ん。バブル期の労働力需要に対する人材不足が問題になり、また人類の歴史上まれに みる少子高齢化に日本が直面することが予想されるようになって以来、しばしば持ち 出される課題です。日本社会は実際に人口が減少しており、アベノミクス、東日本大 震災後の復興、東京五輪の準備などが相まって、建設業をはじめとした労働力不足が 顕著になっている現在、少子化対策の専門家や経済界が改めて移民受け入れについて 本格的な議論を進めようとしているのは当然でしょう。一方、一般国民、政治家や官 僚はもちろん安易には踏み出せず、政策自体が進んでいないのが実状です。何せ、来 日するのはロボットでも、単なる「労働力」でもなく、24時間日本で生活することに なる移民及びその家族、即ち様々な社会サービスまで必要とする「生身の人間」なの です。 私は日本の参政権を持たない身であり、また人口学及び労働経済学は専門領域ではな いので、移民受け入れの可否について構築的な意見を述べるのは相応しくないかもし れません。しかしながら、私の出身地である欧州を始め、他国の歴史的な経験を基に 考えれば、人口減少国として安定した経済をいかに維持していくのかという議論どこ ろか、経済縮小をどう避けるのかすら想像しようとしない日本の状況に無関心ではい られません。勿論、移民を受け入れず、人口問題と向き合うことが選択肢の一つとし てないわけではありません。全国民的な議論の結果、それが民意の結論であれば、経 済小国化の覚悟を決めることも充分にあり得ます。しかし、経済成長を諦めることを 選択しないのであれば、グローバルな時代における経済的な競争力の低下を防ぐため には、移民受け入れ以外の方法は考えにくいのではないでしょうか。 ここでは、日本が最終的に後者の移民受け入れの選択をした場合に、注意してほしい 幾つかの点をまとめることにします。その中で、私が、既に日本に住んでいる文化的 なマイノリティを対象としたソーシャルワークの研究者であると同時に、実際に一人 の当事者であるという立場も重視したいと思います。日本に定住している文化的なマ イノリティが抱える様々な問題に関する経験を基に論点を整理してみます。 結論からいえば、最も大きな課題は中央行政レベルの総合的な統合政策の不在です。 実際には国際結婚や家族統合のための来日といった、いわゆる管理できない移住も増 えているにも関わらず、入口をコントロールする入国管理政策は国際的にみても非常 に厳格な形で整備されています。その半面、本来なら日本に定住する移民の適応に向 けた支援、すなわち言語に代表される日本人と異なる特別な文化的ニーズ等に対応す る教育、医療、福祉などの各種社会サービスなどの移民統合政策は、ほぼ皆無の状態 です。そのため、既に日本にいる移民を取り巻く多くの社会問題が起きているので、 このまま更に大規模な受け入れ拡大を進めることは極めて危険と言えるでしょう。 もちろん例外もたくさんありますが、一般的にみれば、日本では文化的なマイノリ ティの周縁化が深刻な問題です。例えば、生活保護受給率、低所得者の割合などが全 国平均を上回っていることから、移民の貧困を読み取ることができます。これは、新 しく移住してきた第一世代なら、よく見られる現象ですが、日本に特徴的な驚くべき 実態は、場合によって全国平均の半分にも満たない高校及び大学進学率の低さです。 つまり、第二世代以降も著しい貧困の再生産などの負の世代間連鎖が懸念されていま す。実は、これは、世界の移民研究において、きわめて珍しい現象です。また、この ような状態はもちろん社会的な摩擦と不安に繋がりやすく、そのため更なる社会的な 排除と結びつく悪循環を生むリスクも高いのです。 移民などの文化的なマイノリティの存在によって生じる、上記のような社会的な負担 を軽減するための統合政策が欠如する理由の一つは、単一民族の神話です。具体的に は、「日本人」と「外国人」という二分法で日本社会を捉えようとする建前です。こ のような考え方は琉球民族やアイヌの人々、そして在日コリアンに代表される旧植民 地出身者及びその子孫のようなマイノリティの歴史を無視しています。また、現代の 法治国家の枠組みでみた場合、「文化」や「民族」による分類ではなく、「日本国籍 者」と「外国籍者」という法的な二分法に繋がり、日本社会の中に実際に潜んでいる 多様性への適切な対応、真の取り組みを妨げています。第一に、国家レベルの統計で は、帰化者や国際結婚において生まれた人々のように日本国籍をもつ文化的なマイノ リティが不可視化されているため、多様性の本当の規模が見えていません。第二に、 本来は文化的多様性による問題を、国籍による問題、つまり「外国人」の問題、更に いえば「(日本に関係のない)外の国(の人)」の問題として再構成する傾向も強く なります。このような捉え方は、一時的なデカセギによる臨時滞在を超えた定住化に よるニーズに応えることができません。また、予算編成の上でも、いくら納税者とは いえ、非国籍者のための統合政策を公的財源で実施することも難しくなります。 最後に、好ましい統合政策の内容についても述べたいところですが、本稿の性質上、 基本理念ともいえる対等性と、当事者参加の原理の説明に止めます。先述の「国籍」 による二分法の問題にも関連しますが、様々な社会的な場面における対等な扱い方が 保障されないと、移民などの文化的なマイノリティは不利益を被りやすく、社会的に 弱い立場から抜け出せないのです。このような社会的な不利益は、底辺化・周縁化、 更なる社会的な排除、即ち上述の悪循環現象の引き金となる可能性が高くなります。 対等な扱い方は、社会サービス等に関する法の下での平等も含みますが、それよりも 日本人と全く同じ扱いは必ずしも公平ではなく、真の平等(機会あるいは結果の平 等)にならないということを意識しなければなりません。なぜなら、置かれている状 況とニーズが異なるからです。要するに、一見平等に見える「みんな同じ」扱い方 は、むしろ不平等を生みだし、あるいは既存の不平等を再生産、固定化してしまうだ けだからです。例えば、馴染めない人に対して窓口における日本語や日本的な価値観 などの文化規範の強要は、車椅子を利用している人に階段を上ることを求めるのと大 して変わらないことで、真のバリアフリーにはなりません。結果的に、必要なサービ スへのアクセスを妨げ、社会的な排除に繋がり、不平等を改善できません。 底辺化を防ぐために、公共の場を超えた社会全体、とりわけ重要な領域は、労働市場 における不当な扱い方からの保護も欠かせません。このために、行政が区別化を強 調・助長・強化しないと共に、民間部門における差別を明白に防止することが求めら れます。具体的には、国際条約の批准にも関わらず、日本において未だに欠如してい る差別禁止法、あるいは移民人権法の制定が望まれます。これは、国際的な批判を浴 びながらも無理やり維持されてきた、そして現在拡大が検討されている、いわゆる 「外国人研修・技能実習制度」と正反対の流れにあります。 このような法的な手段による、対等な扱い方の原理の最終的な徹底は、当事者参加の 原理を前提としています。つまり、この場合は移民に関する統合政策、即ち、当事者 である彼ら・彼女らの人生を大きく左右する、ありとあらゆる施策を策定する際に、 計画から実施まで、なるべく全ての段階において当事者の声を反映させるということ です。なぜならば、当事者のニーズを最もよくわかるのは、当事者自身であるからで す。これは、米国における障がい者の権利運動から生まれた「私達を参加させないま ま、私達のことを決めないで」という理念と同じです。この考え方はもちろん倫理的 な意義も大きいのですが、企画段階からの参画は当事者の意欲向上と動機づけにもな ります。この場合は、先述したホスト社会の移民への対応と並行して、統合政策のも う一本の大黒柱ともいえる、移民によるホスト社会への適応に向けた努力について想 像すると良いでしょう。もちろん、対等性と当事者参加の原理について考える上で、 政治的な平等の獲得と、自分たちを巡る政策に対する意見表明の機会の確保という意 味で、参政権に関する議論も避けて通れない課題ですが、詳しい説明は本稿の範囲を 超えているため、割愛します。 本稿では、日本に既に住んでいる文化的なマイノリティとしての経験を基に、今後進 むかもしれないより本格的な移民受け入れに向けた主要な課題について整理しまし た。民主主義国である日本では、移民受け入れ自体も、またそれに伴う統合政策も民 意を基に実施されることが理想の形です。民意を形成するために、国民的な議論を展 開する必要があります。このような議論の中では、現状と可能性について国民に対す る適切な情報提供が求められ、国家行政の担当者の他に、政治家も、また専門職や研 究者などの専門家も事実に基づいた啓発活動に専念する責任をもっています。本稿が このような議論と啓発に役立つ一材料となれば幸いです。 -------------------------- ハンガリー出身。2003年文部科学省学部留学生として来日。東京外国語大学にて日本 語学習を経て、2008年東京大学(文科三類)卒業、文学学士(社会学)。2010年日本 社会事業大学大学院社会福祉学研究科博士前期課程卒業(社会福祉学修士)、博士後 期課程進学。在学中に、日本社会事業大学社会事業研究所研究員、東京外国語大学多 言語・多文化教育研究センター・フェローを経験。2011/12年度日本学術振興会特別 研究員。2013年度渥美奨学生。専門分野は現代日本社会における文化等の多様性に対 応したソーシャルワーク実践のための理論及びその教育。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中> http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc ★無事終了!たくさんのご参加・ご支援をありがとうございました★ 【2】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【4】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Womanomics: Japanese Women Will Usher in the Future of Japan (Part 2)”

    ************************************************************* SGRAかわらばん522号(2014年6月11日) 【1】エッセイ:謝 志海「ウーマノミクス(その2)」 【2】SGRAレポート第67号紹介   「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」 【3】SGRAレポート第68号紹介   「ボランティア・志願者論」(日中英合冊版) 【4】ワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い(再送) ************************************************************* 【1】SGRAエッセイ#412 ■ 謝 志海「ウーマノミクス:日本の女性が日本の未来を導く(その2)」 前回のエッセイでは日本の女性が継続して働き続け、就労人口の底上げを期待されて いることについて書いたが、同時に少子化問題も日本の切実な悩みであり、こちらに も女性への期待がかかっている。 5月19日、今後の少子化対策について話し合った内閣府の有識者会議「少子化危機突 破タスクフォース」が提言をまとめた。そこには目標出生率の具体的数値は無かっ た。「国が女性に出産を押し付けると誤解されかねない」との意見が多かったそう だ。一人っ子政策をしている中国から来た私が言うのもなんであるが、具体的な目標 出生率を(今は)定めない、という慎重な提言を出したことは画期的であり、女性にプ レッシャーを与えたくないという気づかいのあらわれと前向きに捉えたい。というの も、働き手が減るから、年金が足りなくなるから、もっと子供を産もうというので は、日本の女性にとって子供を産むことが魅力的に感じられるのだろうかと、以前か ら感じていたからだ。 一方で、将来を予測して具体的な数値を出し対策をとることはとても大事だ。日本の 女性が生涯に産む子供の数が、2.07人に増えて、かつ働き続けたとしても、50年後に は働く人が1000万人以上減ってしまうと予測されている( 内閣府の将来予測)。2人以 上子供を産んでも将来の就労人口は足りないと試算されているのだ。このとどまると ころを知らない少子化を食い止めようと、森雅子少子化対策担当大臣は、少子化対策 の3本の矢という、子育て支援、働き方改革、結婚妊娠出産支援を打ち立てている。 子育て支援というと、保育所の新設、政府がよく言う「待機児童ゼロ」。働き方改革 は前回取り上げた、時短勤務など取り入れ、育児と仕事の両立支援。この二つは官民 が策を練り改善が進んでいるように見える。最後の矢、結婚妊娠出産支援、中でも結 婚に関しては具体的に政府がどうからんでいくのか、前出の二つと比べると見えにく い。まず結婚して、妊娠して、出産してやっと子育て支援と働き方改革の恩恵を受け られる立場になるのに、結婚する人が増えない。初婚年齢が高くなるだけでなく、生 涯未婚率は増加している。日本の若者にとって、結婚して家族を持つことが素晴らし いと写らないのだろうか?婚姻率の上昇が出生率上昇の要ではないか? 先日、自民党が配偶者控除の見直しの提言案をまとめた。これも女性の社会進出を促 すのを狙っている。夫婦単位の控除にすることで、共働きと、夫婦どちらかが働く世 帯との間で所得税額の差を出にくくし、専業主婦に与えられる優遇措置と長く言われ てきた制度の見直しだ。不思議なのが、ここに少子化の事は全く懸念されていない事 である。もちろん、女性の社会進出を促すと言っている手前、子育て世代の女性を支 援するため、ベビーシッターを雇った費用などを所得税額から差し引ける「家事支援 税制」の導入も盛り込んだ(朝日新聞より)とあるが、では例えば、配偶者控除を廃止 したとして、出生率が上がる、もしくは出生率には何も影響は出ないであろうという 未来予測はできているのだろうか?結婚し子育てするメリットが減ってしまわない か?子供を2人以上持てる家庭は増えるか?そしてベビーシッターを雇った費用は所 得税額から差し引けるというが、安心して子供を預けられるベビーシッターの数は、 それを求める人々の数と合っているのだろうか? 日本のメディアでは日々、働くお母さんが保育園やベビーシッター探しに奔走してい る様子や、仕事と育児をいかに両立させるかが取り上げられている。仕事をしなが ら、子供を手元に置き自分で育てていることの大変さは私の想像を越えるだろう。中 国では、保育園や託児所等の施設が充実していないので、子供が小さいうちは実家に 預けっぱなしの親も多い。日々の生活で少しでも子供と過ごす時間を捻出しようとい う姿勢は、日本の家庭と比べるとはるかに低い。 日本には少子化問題に特化した対策担当大臣もいて、子育て、女性の活用、待機児童 ゼロ、様々な問題を議題に挙げているのだから、個別に対処していくのではなく、総 合的に解決していくことが、女性の社会での活躍と子どもの未来、そして将来の日本 の活性化につながるのではないかと思う。 ● 前回のエッセイは下記リンクよりお読みいただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_496.php --------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 --------------------------- 【2】SGRAレポート紹介(1) SGRAレポートを発行いたしましたのでご紹介します。PDF版は下記リンクよりご覧い ただけます。SGRA賛助会員と特別会員のみなさまには冊子をお届けします。冊子の送 付をご希望の方は事務局へご連絡ください。 ■ SGRAレポート第67号「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」 http://www.aisf.or.jp/sgra/member/KoreaForum/SGRAreport67.pdf 第12回日韓アジア未来フォーラムin キャンベラ 「アジア太平洋時代における東アジア新秩序の模索」講演録 2014年2月25日発行 <もくじ> 【発表1】構造転換の世界経済と東アジア地域統合の課題 平川 均(名古屋大学大学院経済学部教授) 【発表2】中国の海洋戦略と日中関係:新指導部の対外政策の決定構造 加茂具樹(慶応義塾大学総合政策学部准教授) 【発表3】アジア貿易ネットワークの結束と競合:ネットワーク分析技法を用いて 金 雄熙(仁荷大学国際通商学部教授) 【発表4】日韓関係の構造変容、その過渡期としての現状、そして解法の模索 木宮正史(東京大学大学院情報学環(流動)教授) 【発表5】米中両強構図における韓日関係の将来 李 元徳(国民大学国際学部教授) 【発表6】東アジア新秩序と市民社会:脱北者の脱南化現象を中心に 金 敬黙(中京大学国際教養学部教授) --------------------------------------------------------------- 【3】SGRAレポート紹介(2) SGRAレポートを発行いたしましたのでご紹介します。PDF版は下記リンクよりご覧い ただけます。SGRA賛助会員と特別会員のみなさまには冊子をお届けします。冊子の送 付をご希望の方は事務局へご連絡ください。 ■ SGRAレポート第68号「ボランティア・志願者論」 http://www.aisf.or.jp/sgra/member/ChinaForum/SGRAreport68.pdf 宮崎幸雄(日本YMCA同盟名誉主事) 「ボランティア・志願者論」講演録 2014年5月15 日発行 ○日本語の講演録、中国語訳、英語訳を一冊に纏めてあります。 <講演要旨> 1)私のボランティア原体験 <ベトナム戦争とボランティア> ・自分で手を挙げて(挫折からの逃走)  ・こちらのNeeds (体育) とあちらのInterests(養豚)  ・信頼なくして “いのち” なし(地雷原の村)  ・解放農民の学校(自立・自助)  ・プロ・ボランティアとして国際社会へ  2)ボランティア元年といわれて    --神戸・淡路大震災によって広まるボランティア(観) 3)ボランティア活動の社会的効果(地域への愛着・仲間・達成感・充実感・希望) 4)大災害被災地のボランティア活動と援助漬け被災者   中国人が見た東日本大震災救援活動と日本人が見た四川大震災救援活動 5)3 ・11若者の自意識と価値観の変化   国際社会の支援と同情・共感・一体感と死生観・共生観と人と人との絆 --------------------------------------------------------------- 【4】第3回SGRAワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い(再送) SGRAでは会員を対象としたワークショップを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。 テーマ: 「人を幸せにする科学とは」 日 時: 2014年7月5日(土)午前9時 〜 6日(日)午後1時 集 合: 現地集合(東京商工会議所 蓼科フォーラムにて受付)      http://www.tokyo-cci.or.jp/tateshina/access/ 参加費: 5000円(食費、宿泊費(相部屋)を含む) 募集人数: 先着20名(渥美奨学生を含む全参加者数は約40名になります) 募集締め切り:2014年6月20日(ただし定員になり次第募集を締め切ります) 申し込み・問い合わせ:SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp) ○ワークショップの趣旨: SGRAでは、福島原発事故を契機にして飯舘村スタディーツアーやSGRAワークショッ プ、そして5月31日にはSGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」を開催してきまし た。そこから浮かび上がってきたのが「現代の科学技術は、ひとを幸せにしているの か?」という問いかけでした。今回のSGRAワークショップin蓼科では「ひとを幸せに する科学技術」をテーマとして、科学技術の発展と人の幸せについて、ひとりひとり が自分のこととして考える機会をもちたいと思います。プログラムではモンテ・カセ ム先生の講演に続き、グループゲームなどを行いながら「楽しく、しかし深く」語り 合いたいと思います。 ○プログラム 7月5 日(土)(於:東商蓼科フォーラム) 9:30〜12:00 講演+グループ分け ・講演 「次世代のダ・ヴィンチを目指せ」  −地球規模の諸問題を克服するための科学技術イノベーションに向けてー  モンテ・カセム先生(立命館大学名誉教授/立命館国際平和ミュージアム館長) 12:00〜13:30 昼食 13:30〜15:00 ビデオ+小グループディスカッション 15:00〜15:30 休憩 15:30〜17:00 小グループディスカッション 7月6日(日) 9:30〜12:00 発表・まとめとふりかえり 《講師紹介》 モンテ・カセム先生(環境科学、イノベーション論) スリランカ出身、東京大学工学研究科博士課程修了(建築学/都市計画)、国連地域 開発センター等を経て、立命館大学教授、立命館アジア太平洋大学学長、立命館副総 長(国際担当)等を歴任 皆様のご参加をお待ちしています。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中> http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc 【2】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【4】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Womanomics: Japanese Women Will Usher in the Future of Japan (Part 1)”

    ********************************************************* SGRAかわらばん521号(2014年6月4日) 【1】エッセイ:謝 志海「ウーマノミクス(その1)」 【2】ワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い   (7月5日〜6日、蓼科) ********************************************************* 【1】SGRAエッセイ#411 ■ 謝 志海「ウーマノミクス:日本の女性が日本の未来を導く(その1)」 安倍政権になってから、日本の女性はこれまでにないほど、沢山の期待を背負わされ ているのではないだろうか?今回は特に安倍首相が掲げる成長戦略のうちの一つ、女 性の活用 「ウーマノミクス」を取り上げたいと思う。 ウーマノミクスとは、女性が社会で活躍することにより、経済活性化を目指すという ものだ。日本は人口減少の一途をたどっており、それによる将来の働き手不足を懸念 している。内閣府による予測では、およそ50年後には労働力人口が今より2割ほど 減ってしまうとされている。人口の減少、すなわち少子化問題も早期解決の目処は今 のところなさそうだ。外国人労働者の受け入れは、他国と比べて日本は非常に弱腰で ある。ではどうやって働き手を確保するかというと、女性だ。 最近のウーマノミクス関連のニュース記事でよく目にする言葉に「M字カーブ」があ る。日本人女性の働く人の割合を示す就業率年齢分布はM字カーブを描く。左右の高 い部分は20代と40代後半、くぼみの一番深い年齢が30〜40代で、出産を機に仕事から 離れるからだ。このくぼんでいる部分の人に、労働市場に戻ってもらえば、GDPも上 がるであろうと思われている。30〜40代の女性に働き続けてもらうには、出産後も働 きやすい環境を整える事が大事であり、産休の充実、復帰後の時短(短時間勤務)の適 用、保育園、幼稚園を増やす等は、すでに様々な制定がなされており、大手企業に とってそれらの制度は最近導入したことではない。なのになぜ未だに日本女性の就業 率はM字を描いているのか? 経済協力開発機構(OECD)が2013年に発表した「雇用アウトルック2013」によると、日 本の25-54歳の女性の就業率は69%で加盟国中、24位だった。(上位はノルウェーなど の北欧諸国で80%を超えている。) 約6割の女性が第一子出産を機に退職するからだと OECDは指摘する。これらの6割の女性は喜んで退職しているのか?日本政府が増税と インフレ2%に執心のさなか、そうは思えない。勤務先は時短制度が無い、復帰後に働 きやすい環境が待っていないなどで、やむを得なく去っていくケースも多いのではな かろうか?日経新聞によると、女性の活用に関しては、企業の対応はまだ手探りの段 階。そこで、横浜市が中小企業女性活用推進事業を始める。女性の就労継続を支援す るために中小企業にコンサルティングをしたり、かかる費用の一部を助成する計画を 打ち出した。市町村が、働き続けたい女性が求めること、また女性社員に残ってもら いたいが、そのシステム作りに悩む企業の声に耳を傾け、手助けすることは素晴らし い事だと思う。 同じ日経新聞の記事内に「出産女性の就業継続は夫が子育てを分担することも不可 欠」とあった。私は「これだ!これが答えだ!」と思った。中国では、夫は当たり前 に家事をする。子供がいてもいなくてもだ。家事は女性がするという概念が無い。ど うしてかと聞かれると、うまい答が見つからない。自分の家も、周りも親は共働き で、家事を普通にこなす父親を見て育っているので、そういうものだと思っていると しか言い様がない。一方、日本の男性にとって、掃除、育児は女性がするものという 固定観念が根強くある、年齢が高ければ高い人ほどそういう傾向だ。これでは女性に ばかりしわ寄せが多く、育児と仕事のバランスがうまく取れず、就労継続することが 困難な状態になる、それがM字カーブを描いてしまうのであろう。 家庭と仕事の両立支援制度の話に戻ると、男性にも育児休業を設けている会社が多 い。育児をする男性=イクメンという言葉まで定着しているのに、問題はそれを活用 する人が少ないこと。厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、2012年度の男性 の育児休業取得率は1.89%である。日本の男性は残業もいとわず日々真剣に働いてい るので、育児休業=一線から外れてしまう、また取得後の人事評価などを懸念して、 育児休業を取ることに臆病になっているのであろう。彼らの上司(40代後半から50代) の育児休業についての理解が低いことも、取得率を下げる大きな一因だと思う。上司 の時代にはイクメンが存在しなかったのだから。中国には男性の育児休業なんてもの は存在しないので、私にとっては制度があって、使う権利があるのに行使しないこと をもったいないと感じる。 日本の企業は時代に合わせて社員が働きやすい環境を整えていて素晴らしいと思う。 しかし、それらを社員が活用できているかまで、会社はしっかりとモニタリングして いるのだろうか?社員に活用するよう推奨しているのか?上司や同僚の目が気になっ て、育児休業の取得を切り出せないようでは、制度を作った意味がなくなる。男性達 も、一度思い切って育児休業を取ってしまえば、自分の子と過ごせる時間を与えてく れた会社に感謝し、勤務時間中はより業務に集中し、貢献度が上がるかもしれない。 こうして小さな子を持つ父親たちが、当たり前のように育児休業を利用したり、積極 的に家事へ参加し、周りもそれを当然の事として受け止めることが、女性の就労継続 につながり、実は一番のウーマノミクス成功への近道なのではないか。ウーマノミク ス、と女性をあおる前に男性の家事と育児に対しての意識改革が必要だ。女性の労働 人口が上がり、経済的に元気な日本になることを期待する。 ----------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 ----------------------------- 【2】第3回SGRAワークショップ「人を幸せにする科学とは」へのお誘い SGRAでは会員を対象としたワークショップを下記の通り行います。 参加ご希望の方は、SGRA事務局へご連絡ください。 テーマ: 「人を幸せにする科学とは」 日 時: 2014年7月5日(土)午前9時 〜 6日(日)午後1時 集 合: 現地集合(東京商工会議所 蓼科フォーラムにて受付)      http://www.tokyo-cci.or.jp/tateshina/access/ 参加費: 5000円(食費、宿泊費(相部屋)を含む) 募集人数: 先着20名(渥美奨学生を含む全参加者数は約40名になります) 募集締め切り:2014年6月20日(ただし定員になり次第募集を締め切ります) 申し込み・問い合わせ:SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp) ○ワークショップの趣旨: SGRAでは、福島原発事故を契機にして飯舘村スタディーツアーやSGRAワークショッ プ、そして5月31日にはSGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」を開催してきまし た。そこから浮かび上がってきたのが「現代の科学技術は、ひとを幸せにしているの か?」という問いかけでした。今回のSGRAワークショップin蓼科では「ひとを幸せに する科学技術」をテーマとして、科学技術の発展と人の幸せについて、ひとりひとり が自分のこととして考える機会をもちたいと思います。プログラムではモンテ・カセ ム先生の講演に続き、グループゲームなどを行いながら「楽しく、しかし深く」語り 合いたいと思います。 ○プログラム: 7月5 日(土)(於:東商蓼科フォーラム) 9:30〜12:00 講演+グループ分け ・講演 「次世代のダ・ヴィンチを目指せ」  −地球規模の諸問題を克服するための科学技術イノベーションに向けてー  モンテ・カセム先生(立命館大学名誉教授/立命館国際平和ミュージアム館長) 12:00〜13:30 昼食 13:30〜15:00 ビデオ+小グループディスカッション 15:00〜15:30 休憩 15:30〜17:00 小グループディスカッション 7月6日(日) 9:30〜12:00 発表・まとめとふりかえり 《講師紹介》 モンテ・カセム先生(環境科学、イノベーション論) スリランカ出身、東京大学工学研究科博士課程修了(建築学/都市計画)、国連地域 開発センター等を経て、立命館大学教授、立命館アジア太平洋大学学長、立命館副総 長(国際担当)等を歴任 皆様のご参加をお待ちしています。 ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中> http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc 【2】第3回SGRAワークショップ(2014年7月5日蓼科) 「人を幸せにする科学とは」<会員対象:参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/3sgra.php 【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【4】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Invitation to SGRA Forums

    ********************************************************************** SGRAかわらばん520号(2014年5月28日) 【1】フォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い     (5/31東京)<参加者募集中!当日飛び込み参加も受け付けます> 【2】フォーラム「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流」     (6/13台北)<参加者募集中!> 【3】シンポジウム「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」へのお誘い      (8/9〜10ウランバートル)<論文・参加者募集中!> *********************************************************************** 【1】第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い(最終案内)    ★☆★当日飛び込み参加も受け付けます★☆★ 3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」が 語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教授− 宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセンター 教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科学技術と 倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科学だけでは 答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを行います。参 加ご希望の方は、SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご記入の上、お申 し込みください。 ■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」 ■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分 ■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室      https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円 参加申込み・お問い合わせ: SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ) ◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program(revised).pdf ------------------------------------------------ 【2】第4回日台アジア未来フォーラム<参加者募集> 下記の通り第4回日台アジア未来フォーラムを台北にて開催します。参加ご希望の方 は、下記リンクよりお申込みください。 ■テーマ「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝播・交流—文学・思想・ 言語—」 ■概要 第4回日台アジア未来フォーラム「東アジアにおけるトランスナショナルな文化の伝 播・交流−文学・思想・言語−」は、2日にわたって開催する。1日目は台湾大学に て「文学とメディア」「言語とメディア」「思想とメディア」3分野の基調講演、ま た19本の研究発表を行う。2日目は元智大学にて川瀬健一氏が戦後台湾で上映された 映画について講演する。 ■日時・会場  日時:2014年6月13 日(金) 午前9時〜午後5時  会場:台湾大学文学院講演ホール(台?市大安区羅斯福路四段1号)  日時:2014年6月14日(土) 午前10時〜11時30分  会場:元智大学彦公庁(桃園縣中?市遠東路135號) ■プログラムの詳細・参加申込みは下記リンクをご覧ください。 http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc ■プログラム ◇第1部:6月13日(金)台湾大学にて 〈基調講演〉9:00〜12:00 【講演1】延広真治(東京大学名誉教授) 「「男はつらいよ」を江戸から見れば—第五作「望郷篇」の創作技法—」 日本人にとっての国民的映画といえば、山田洋次監督「男はつらいよ」。連作四十八 に及ぶ喜劇で、ギネスブックにも登録されました。その死によって連作に終止符をう たざるを得なかった渥美清(あつみきよし)扮する、車寅次郎(くるまとらじろう) は、今日も日本のどこかをさまよっていることでしょう。四十八作中、監督自ら客が よく笑うと思われたのが第五作。この「望郷篇」の創作技法を、曲亭馬琴「南総里見 八犬伝」や講談「田宮坊太郎」など、江戸時代とかかわりの深い作品を中心に探って みたいのです。 【講演2】横山詔一(国立国語研究所教授) 「電子メディアの漢字と東アジアの文字生活」 漢字のコンピュータ化に関する言語政策の歴史を簡単にふりかえる。東アジアで共通 して観察される「空書行動」の研究成果を解説する。台湾日本語学習者の異体字選好 データを紹介する。日本の文化庁による「漢字に対する世論調査」の結果にふれて、 東アジアの文字生活が今後どのように変化していくのかを参加者のみなさんと一緒に 考えていく手がかりを提供する。   【講演3】佐藤卓己(京都大学准教授) 「輿論と世論の複眼的思考—東アジアの理性的対話にむけて」 戦前の日本では輿論public opinionと世論popular sentimentsが区別されていたが、 今日では「世論と書いてヨロンと読む」習慣が定着している。「輿論の世論化」は 1920年代の大衆政治化、マスメディア普及とともに始まり、戦時下の国民精神総動員 で加速化した。ポスト総力戦体制からの「復員」は、輿論と世論を区別することから 始めるべきである。 13:00〜17:40 19件(6セッション)の研究発表。(研究発表者は、台、日、中、韓各国より公募) 【テーマ】 1. 古典書籍としてのメディア 2. 文学作品としてのメディア 3. メディアによる女性の表象 4. メディアによる文化の伝播 5. メディアと言語学習 6. メディアとイメージの形成 ◇第2部:6月14日(土)元智大学にて 〈講演〉10:00〜11:30  講演者:川瀨健一 東洋思想研究所 題目:「戦後台湾で上映された映画1945(民国34)年−1949(民国38)年」 ------------------------------------------------ 【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム ■「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集> 下記の通りモンゴル国ウランバートル市にてシンポジウムを開催いたしますので、論 文、参加者を募集いたします。 【開催趣旨】 謎に満ちたハルハ河・ノモンハン戦争は歴史上あまり知られない局地戦であったにも かかわらず、20世紀における歴史的意義を帯びており、太平洋戦争の序曲であったと 評価されています。この戦争の真の国際的シンポジウムは、1989年、ウランバートル でモンゴル、ソ連に加えて日本から研究者をむかえた3者での協同研究から始まりま した。そして、1991年、東京におけるシンポジウムによって研究は飛躍的に進み、 2009年のウランバートル・シンポジウムではさらに画期的な展開をみせました。しか し、国際的なコンテキストの視点からみると、これまでの研究は、伝統的な公式見解 のくりかえしになることが多く、解明されていない問題が未だ多く残されています。 立場や視点が異なるとしても、お互いの間を隔てている壁を乗りこえて、共有しうる 史料に基づいて歴史の真相を検証・討論することは、われわれに課せられた使命で す。 ハルハ河・ノモンハン戦争後75年を迎え、新しい局面を拓くべく、われわれは、関係 諸国の最新の研究成果と動向、および発掘された史料を総括し、国際学術会議ならで はのシンポジウム「総合研究——ハルハ河・ノモンハン事件戦争」を開催することに いたしました。 本シンポジウムは、北東アジア地域史という枠組みのなかで、同地域をめぐる諸国の 力関係、軍事秩序、地政学的特徴、ハルハ河・ノモンハン戦争の遠因、開戦および停 戦にいたるまでのプロセス、その後の関係諸国の戦略などに焦点をあて、ミクロ的に 慎重な検討をおこないながら、総合的な透視と把握をすることを目的としています。 このシンポジウムを通して、お互いに学ぶことができ、ハルハ河・ノモンハン戦争の 一層の究明をすすめたいと願っています。 【日程・会場】 2014 年8月9(土)〜10日(日) 参加登録:8月9日(土)9:00〜9:30 モンゴル・日本人材開発センター 開会式・基調報告:8月9日(土)9:30〜12:00 モンゴル・日本人材開発センター 会議:8月9日(土)13:30〜18:00 モンゴル・日本人材開発センター 会議:8月10日(日)9:00〜12:00 モンゴル防衛大学会議室 視察:8月10日(木)13:00〜10:00 日本人抑留死亡者(ノモンハン戦死者含む) 慰霊碑、ジューコフ記念館見学、草原への旅行 ■ 詳細は下記リンクをご覧ください。 案内状(日本語) http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/MongoliaSymposium7InvitationJapanese.pdf 案内状(英語) http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/MongoliaSymposium7InvitationEnglish.pdf     ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program(revised).pdf 【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中> http://www.sgra2014jtaff.com/#!home-jp/c1ncc 【3】第7回ウランバートル国際シンポジウム 「総合研究——ハルハ河・ノモンハン戦争」<論文・参加者募集中> http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/mongol/7_1.php 【4】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Liang Zhang “My Study in Japan”

    ********************************************************* SGRAかわらばん519号(2014年5月21日) 【1】エッセイ:張 亮「私の日本留学」 【2】フォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い(5/31東京) 【3】新刊紹介:方美麗「表現教授法 実践的な会話力を育てる」 【4】新刊紹介:小林良彰他「代議制民主主義の比較研究」 ********************************************************** 【1】SGRAエッセイ#410 ■ 張 亮「私の日本留学」 私は大学の時、中国リハビリ研究センターでの臨床実習をきっかけに、リハビリテー ション医学に接した。リハビリテーション医学は、病気を狙った臨床治療医学ではな く、患者が病気、事故などにより失った機能をできる限り再生し、患者の残された能 力を生かすための医学分野である。脳卒中などの後遺障害が起こる病気でも、歩けな い患者さんが、だんだん自分で歩けるようになったり、手を使えない患者さんが、だ んだん自分で服を着たり、トイレも使えるようになるときは、患者さんだけではな く、家族と周りの人々にとっても幸せである。ある意味で、病気で失った機能を再生 し、患者さんの生活の質を向上させることが、患者の治り難い病気を完治するより、 もっと大事だと考えている。この新しい医学体系といわれるリハビリテーション医学 は、私にとって大変魅力的だった。 学生の時から、リハビリ医師になる道を目指した。卒業してから、リハビリセンター の整形外科に入局し研修医として勤務した。3年間のリハビリセンターでの実習を合 わせた勉強により、リハビリの重要性は私の心に深く入り込んだ。しかし、現在中国 ではリハビリというものはまだ人々に理解されていないと実感した。たとえば、多く の脳卒中の患者は、神経内科の治療が終わってから、家に戻らせてそのまま寝たきり の状態で、ハリ、マッサージなどの治療を続けるケースが多い。リハビリを行ってい る病院はとても限られているのが中国のリハビリの現状である。せっかくリハビリ医 師になる道を選んだので、この領域のもっと先進的なものを知りたいと思ったが、周 りの環境も整っていないので海外に留学することにした。中国のリハビリ研究セン ターは、もともとJICAの計画により、日本の技術支援を受けて建てられたもので、中 国のリハビリのシンボルといわれている。したがって、日本のリハビリ医学は進んで いると考え、日本に留学することにした。 日本へ来て、訪問研究員として大学に入って、臨床のリハビリを勉強した。日本の大 学病院では、見たことも聞いたこともないものがたくさんあり、日本のリハビリ医学 は中国より遥かに進んでいると実感した。早く日本の医療技術を身に着けようと思っ たが、目の前には、全くわからないことが想像以上に多く、なかなか覚えられなかっ た。しかし運が良いことに、日本の先生方はとても親切で、丁寧に教えてくださっ た。特に筋電図は、リハビリ分野の医師にとって、とても重要な技術だとよく言われ ているので、それを中心に勉強した。1年間の臨床での勉強で、中国ではほとんど勉 強できないものをたくさん学んだ。 さらに難病のメカニズムの解明と治療法の開発のために、私は博士課程に進学した。 臨床から基礎研究に移ることは私にとって新しい経験だった。基礎研究は臨床とは全 然違い、研究の手法をはじめ、考え方もなかなか慣れることができなかった。ラボの 先生方が丁寧に教えてくださったので、研究の基本的な技術を身に付け、研究に徐々 に慣れてきた。私のラボは脊髄損傷を研究している。脊髄損傷は難治性の疾患で、い まだ治療法がないのが実状である。脊髄損傷した人は、重い後遺症になり、生涯に 渡って障害が残る。リハビリはこのような患者さんにとってとても重要な手段と考え ているが、特に完全脊髄損傷の運動機能回復に有効とされているリハビリ方法はなか なかない。博士課程の私の研究で、ラット脊髄完全損傷モデルのリハビリ治療法を開 発し、明らかな機能回復効果を示した。さらに、脊髄損傷患者の臨床治療に向けて、 軸索を再生させる新しい薬との併用治療の研究に従事し、その効果を明らかにし、メ カニズムも検討できて、海外学術雑誌に論文を載せることができた。 日本へ来てからの数年間は、研究面だけではなく、生活面でも良い経験をした。博士 課程の間は日本の民間財団から奨学金をいただき、研究に専念でき、いい成果を挙げ ることができたことを感謝している。これから私は、まず日本で今の研究を終わら せ、その後アメリカへ留学し、リハビリ医学をさらに勉強したい。リハビリ医学は、 世界にとっても新しい分野なので、まだわからないところがたくさんある。この分野 の発展に自分の力を尽くしたいと考えている。 2005年中国首都医科大学医学部臨床医学専攻を卒業。中国リハビリテーション研究セ ンターと中国北京軍区総病院勤務医として働き、その後退職。2006年来日、慶應義塾 大学リハビリテーション医学科で訪問研究員を経て、博士課程に入学し、脊髄損傷の 基礎研究に従事、2015年博士課程修了見込み。現在、慶應義塾大学整形外科学教室研 究員として、脊髄損傷の再生医学の研究に従事。 【2】第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い 3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」が 語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教授− 宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセンター 教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科学技術と 倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科学だけでは 答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを行います。参 加ご希望の方は、SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご記入の上、お申 し込みください。 ■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」 ■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分 ■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室      https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円 参加申込み・お問い合わせ: SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ) ◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program(revised).pdf 【3】新刊紹介 SGRA会員の方美麗さんより、新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ■書名:表現教授法 実践的な会話力を育てる ■著者:方 美麗 ▼「表現教授法」は、第二言語教育教授法と「第二言語習得研究」のような、実践と 理論が分離されたままの研究とは違って、実践的な経験をベースに、理論的に開発し たものである。その点で、実践と理論の両面が揃った外国語教授法と言える。その効 果は、本文でも紹介したように、短期間で外国語が上手に話せるようになる外国語速 習法である。この本が今後の外国語教育に関わる教師・学習者に役立てば幸いであ る。(あとがきより) 発行所:(株)好文出版 ISBN:978-4-87220-174-1 体裁:A5版 並製 カバー付 初版年月日:2014/03/31 本体価格:4000円 http://www.kohbun.co.jp/ 【4】新刊紹介 SGRA会員の金兌希さんより、共著書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ■書名:代議制民主主義の比較研究     日米韓3ケ国における民主主義の実証分析 ■著者:小林良彰、岡田陽介、鷲田任邦、金兌希 ▼いま民主主義の「質」を問う どのような民主主義が望ましいのか? 民主主義の「擬制」が機能しているかどうか を実証的に明らかにしながら、従来の外形的な民主主義指標にかわり、その「機能」 という点から新たな指標を構築する。選挙公約、政治意識、議会を融合して分析し、 日米韓の政治過程の比較政治研究を行う珠玉の研究! 発行所:慶応義塾大学出版会(株) A5判/上製/336頁 初版年月日:2014/03/31 ISBN:978-4-7664-2127-9(4-7664-2127-2) Cコード:C3031 定価 3,888円(本体 3,600円) http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766421279/ ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf 【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」<参加者募集中> http://www.sgra2014jtaff.com/ 【3】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Han-Hsiu Hsu ”Becoming a Scientist in Japan”

    ************************************************* SGRAかわらばん518号(2014年5月14日) 【1】エッセイ:許 漢修「日本で科学者になること」 【2】フォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い ************************************************* 【1】SGRAエッセイ#409 ■ 許 漢修「日本で科学者になること」 科学を学んで14年目の私は、今年初めて社会人として自分が習得した技術を活用で き、しかも、アジアの中の科学強国の日本で就職することができた。しかし、今、 日本では小保方捏造疑惑が報道され、日本における科学者への信頼が揺らいでい る。このような状況の中で日本の科学者の一員になった私は、いかなる態度をとる べきかを考えなければならない。 科学者は「真実」を実証し、社会に伝える義務を持ち、国民の税金や企業の予算で 新しい技術を開発し、社会的に応用することにより、キャリアを形成する。このよ うな科学者の育成は技術と基本知識以外に、観察力と社会への関心を育てなければ ならず、非常に難しい。 私は日本と台湾で、生物科学者としてのトレーニングを受け、その違いを感じた。 2014年度の日本の科学研究予算は、台湾の12倍である。このため、台湾の生物科学 者には短期で実用的な研究が多く、日本では基礎理論と実用両方の総合的な研究が 進んでいる。台湾での生物研究は即時実用化の目的で食品、漢方、医療機器、美容 整形などに応用され、日本では基礎研究の幹細胞、再生医療、組織培養や生物素材 など、相当時間と研究費がかかる領域の開発が行われている。日本人は職人の文化 を持ち、近年素晴らしい研究、論文が生まれている。一方、台湾人は模倣が得意 で、商業化に敏感であり、新たな技術を実用化し、収益を上げた。以前はオリジナ ル性が注目される社会だったが、今の世界では、理論と実用の両方が大事であるこ とを、私は博士課程の4年間で理解できた。 その中で、私は基礎理論の研究を選んで来日し、筑波大学の博士課程で腎臓の発生 期におけるV型コラーゲン線維の役割について研究した。コラーゲンの様々な特 性、理論を習得、現在は産業技術総合研究所で、コラーゲン線維素材でiPS細胞の 培養法を改善する研究を行っている。 iPS細胞はノーベル賞を受賞したのに、なぜ改善研究が続いているかというと、 「死の谷」を乗り越えなければならないからである。死の谷とは、1998年に米国連 邦議会下院科学委員会副委員長であったバーノン・エーラーズが命名したもので、 全ての科学研究にある、発見/発明から商品化/市場化までの、必ず乗越えなければ ならない谷間の期間である。科学の発見から商品化までは非常にたくさんの時間、 金、労力がかかるわけであり、iPSも例外ではない。風邪薬、内視鏡、X線などの歴 史は、最初から人々に注目されたわけではなく、一生懸命研究や改善に努め、最後 に市場化されることにより「夢が叶う」ことを示している。iPSは今ちょうど死の 谷に入ったばかり、臓器再生の夢まではまだ何十年もかかるわけである。実は、私 は大学2年生の時(2002年)、台湾の陽明大学で山中伸弥先生の幹細胞の講演を聞い たことがある。あの時から10年の努力で2012年にノーベル賞を受賞した研究である が、その実用化には、これから何十年、何億円かかるか分からない。このように考 えると、私は、こんな大時代に研究ができることにわくわくする。 来日から5年、一人での海外生活の寂しさはあるものの、まだまだ頑張らないとい けないと考えている。SGRAが開催しているフォーラムやアジア未来会議などの会合 は、世界中の様々な人に非常に良い交流の機会を提供している。仲間が見つけられ ることは何より幸せなことである。今の世界はグループ行動の社会で、様々な領域 の人材が集まると、今まで見られなかった風景を一緒に見ることができる。私はあ と数年は日本に滞在する予定なので、このチャンスを活用したい。 尚、日本だけではなく、世界のどこにあっても、科学者は自分の力を信じることが 重要であると考えている。たとえ他人から疑われることがあっても、自分の力を信 じることができれば充分である。自信を持ち、能力を高め、社会からいただいた力 (財団の支援、大学と国の研究環境など)を使って、十倍、百倍の恩返しをした い。 ----------------------------------------- 1996年イギリスオックスフォード大学英文課程修了。2008年台湾中原大学生物科技 専攻修士号取得、2010年中華民国陸軍關渡指揮部本部退役。2010年来日、2014年筑 波大学生命環境科学研究科生命産業科学専攻博士後期課程修了。現在、産業技術総 合研究所ナノシステム研究部門特別研究員。iPS幹細胞、人間間葉系幹細胞の骨と 軟骨誘導について研究中。専門分野:組織工学、再生医療、遺伝子工学、細胞外マ トリックス(コラーゲン)、泌尿器発生。 ----------------------------------------- 【2】第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い 下記の通りフォーラムを開催しますので、奮ってご参加ください。 ■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫 理」 ■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分 ■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室      https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円 お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご記 入の上、参加申し込みをしてください。よろしければ下記の申込み欄をご利用くだ さい。 SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ) ◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf ■フォーラムの概要: 3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」 が語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教 授−宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセ ンター教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科 学技術と倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科 学だけでは答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを 行います。 1)理工系科学者のみならず社会系科学者、人文系科学者の役割と倫理 2)科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性 〔トピック〕 ・福島第一原発事故から考える「科学技術の限界」、「専門家への信頼の危機」 ・巨大科学、先端科学が生み出す「リスク社会」の様相 ・「科学技術と倫理」の課題及び社会系科学者、人文系科学者の役割 ・科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性 ■プログラム: 1)問題提起:(5〜10分) チェ・スンウォン(韓国)理化学研究所研究員/生物学 2)対談:(約40分) ◇島薗進先生「人間が科学技術を統御するために」   上智大学神学部教授(宗教学/応用倫理) ◇平川秀幸先生「科学の「外」の問いをいかに問うか」   大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授(科学技術社会論) モデレータ:エリック・シッケタンツ(ドイツ)   東京大学大学院人文社会系研究科特別研究員/宗教史 3)オープンディスカッション:(約90分) ファシリテータ:デール・ソンヤ(ノルウェー)   上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科特別研究員/グローバル社会 -------参加申込み用-------- 送信先:sgra-office@aisf.or.jp 第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」に参加します。 懇親会は(  )参加(   )不参加 お名前: ご所属: 連絡先: ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf 【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php 【3】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会 員のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご 購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録し ていただくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡 ください。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事 務局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いた だけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Han-Hsiu Hsu ”Becoming a Scientist in Japan”

    ************************************************* SGRAかわらばん518号(2014年5月14日) 【1】エッセイ:許 漢修「日本で科学者になること」 【2】フォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い ************************************************* 【1】SGRAエッセイ#409 ■ 許 漢修「日本で科学者になること」 科学を学んで14年目の私は、今年初めて社会人として自分が習得した技術を活用で き、しかも、アジアの中の科学強国の日本で就職することができた。しかし、今、 日本では小保方捏造疑惑が報道され、日本における科学者への信頼が揺らいでい る。このような状況の中で日本の科学者の一員になった私は、いかなる態度をとる べきかを考えなければならない。 科学者は「真実」を実証し、社会に伝える義務を持ち、国民の税金や企業の予算で 新しい技術を開発し、社会的に応用することにより、キャリアを形成する。このよ うな科学者の育成は技術と基本知識以外に、観察力と社会への関心を育てなければ ならず、非常に難しい。 私は日本と台湾で、生物科学者としてのトレーニングを受け、その違いを感じた。 2014年度の日本の科学研究予算は、台湾の12倍である。このため、台湾の生物科学 者には短期で実用的な研究が多く、日本では基礎理論と実用両方の総合的な研究が 進んでいる。台湾での生物研究は即時実用化の目的で食品、漢方、医療機器、美容 整形などに応用され、日本では基礎研究の幹細胞、再生医療、組織培養や生物素材 など、相当時間と研究費がかかる領域の開発が行われている。日本人は職人の文化 を持ち、近年素晴らしい研究、論文が生まれている。一方、台湾人は模倣が得意 で、商業化に敏感であり、新たな技術を実用化し、収益を上げた。以前はオリジナ ル性が注目される社会だったが、今の世界では、理論と実用の両方が大事であるこ とを、私は博士課程の4年間で理解できた。 その中で、私は基礎理論の研究を選んで来日し、筑波大学の博士課程で腎臓の発生 期におけるV型コラーゲン線維の役割について研究した。コラーゲンの様々な特 性、理論を習得、現在は産業技術総合研究所で、コラーゲン線維素材でiPS細胞の 培養法を改善する研究を行っている。 iPS細胞はノーベル賞を受賞したのに、なぜ改善研究が続いているかというと、 「死の谷」を乗り越えなければならないからである。死の谷とは、1998年に米国連 邦議会下院科学委員会副委員長であったバーノン・エーラーズが命名したもので、 全ての科学研究にある、発見/発明から商品化/市場化までの、必ず乗越えなければ ならない谷間の期間である。科学の発見から商品化までは非常にたくさんの時間、 金、労力がかかるわけであり、iPSも例外ではない。風邪薬、内視鏡、X線などの歴 史は、最初から人々に注目されたわけではなく、一生懸命研究や改善に努め、最後 に市場化されることにより「夢が叶う」ことを示している。iPSは今ちょうど死の 谷に入ったばかり、臓器再生の夢まではまだ何十年もかかるわけである。実は、私 は大学2年生の時(2002年)、台湾の陽明大学で山中伸弥先生の幹細胞の講演を聞い たことがある。あの時から10年の努力で2012年にノーベル賞を受賞した研究である が、その実用化には、これから何十年、何億円かかるか分からない。このように考 えると、私は、こんな大時代に研究ができることにわくわくする。 来日から5年、一人での海外生活の寂しさはあるものの、まだまだ頑張らないとい けないと考えている。SGRAが開催しているフォーラムやアジア未来会議などの会合 は、世界中の様々な人に非常に良い交流の機会を提供している。仲間が見つけられ ることは何より幸せなことである。今の世界はグループ行動の社会で、様々な領域 の人材が集まると、今まで見られなかった風景を一緒に見ることができる。私はあ と数年は日本に滞在する予定なので、このチャンスを活用したい。 尚、日本だけではなく、世界のどこにあっても、科学者は自分の力を信じることが 重要であると考えている。たとえ他人から疑われることがあっても、自分の力を信 じることができれば充分である。自信を持ち、能力を高め、社会からいただいた力 (財団の支援、大学と国の研究環境など)を使って、十倍、百倍の恩返しをした い。 ----------------------------------------- 1996年イギリスオックスフォード大学英文課程修了。2008年台湾中原大学生物科技 専攻修士号取得、2010年中華民国陸軍關渡指揮部本部退役。2010年来日、2014年筑 波大学生命環境科学研究科生命産業科学専攻博士後期課程修了。現在、産業技術総 合研究所ナノシステム研究部門特別研究員。iPS幹細胞、人間間葉系幹細胞の骨と 軟骨誘導について研究中。専門分野:組織工学、再生医療、遺伝子工学、細胞外マ トリックス(コラーゲン)、泌尿器発生。 ----------------------------------------- 【2】第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い 下記の通りフォーラムを開催しますので、奮ってご参加ください。 ■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫 理」 ■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分 ■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室      https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円 お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご記 入の上、参加申し込みをしてください。よろしければ下記の申込み欄をご利用くだ さい。 SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ) ◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf ■フォーラムの概要: 3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」 が語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教 授−宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセ ンター教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科 学技術と倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科 学だけでは答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを 行います。 1)理工系科学者のみならず社会系科学者、人文系科学者の役割と倫理 2)科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性 〔トピック〕 ・福島第一原発事故から考える「科学技術の限界」、「専門家への信頼の危機」 ・巨大科学、先端科学が生み出す「リスク社会」の様相 ・「科学技術と倫理」の課題及び社会系科学者、人文系科学者の役割 ・科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性 ■プログラム: 1)問題提起:(5〜10分) チェ・スンウォン(韓国)理化学研究所研究員/生物学 2)対談:(約40分) ◇島薗進先生「人間が科学技術を統御するために」   上智大学神学部教授(宗教学/応用倫理) ◇平川秀幸先生「科学の「外」の問いをいかに問うか」   大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授(科学技術社会論) モデレータ:エリック・シッケタンツ(ドイツ)   東京大学大学院人文社会系研究科特別研究員/宗教史 3)オープンディスカッション:(約90分) ファシリテータ:デール・ソンヤ(ノルウェー)   上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科特別研究員/グローバル社会 -------参加申込み用-------- 送信先:sgra-office@aisf.or.jp 第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」に参加します。 懇親会は(  )参加(   )不参加 お名前: ご所属: 連絡先: ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf 【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php 【3】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会 員のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご 購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録し ていただくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡 ください。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事 務局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いた だけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Invitation to SGRA Forum #47 “Science and Technology in a Risk Society”

    ******************************************** SGRAかわらばん517号(2014年5月7日) ******************************************** ☆★☆第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」へのお誘い☆★☆ 下記の通りフォーラムを開催しますので、奮ってご参加ください。 ■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」 ■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分 ■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室      https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円 お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご記入 の上、参加申し込みをしてください。よろしければ下記の申込み欄をご利用くださ い。 SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ) ◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf ■フォーラムの概要: 3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」が 語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教授− 宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセンター 教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科学技術と 倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科学だけでは 答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを行います。 1)理工系科学者のみならず社会系科学者、人文系科学者の役割と倫理 2)科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性 〔トピック〕 ・福島第一原発事故から考える「科学技術の限界」、「専門家への信頼の危機」 ・巨大科学、先端科学が生み出す「リスク社会」の様相 ・「科学技術と倫理」の課題及び社会系科学者、人文系科学者の役割 ・科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性 ■プログラム: 1)問題提起:(5〜10分) チェ・スンウォン(韓国)理化学研究所研究員/生物学 2)対談:(約40分) ◇島薗進先生「人間が科学技術を統御するために」   上智大学神学部教授(宗教学/応用倫理) 科学技術によって人間はこれまでにない力を獲得し、より幸福な生活を実現できると いう観念は、現代社会の諸制度や現代社会に生きる私たちの考え方にしっかり根づい ている。そもそも小学校から大学に至るまでの学校教育は、科学の知識と科学的な思 考能力を身に着けることを主軸に組み立てられている。だが、いつしか社会は、科学 技術が福利とともに害悪をもたらすことを当然の前提とする時代に入っている。リス ク社会とはそのような社会だろう。そこでは、さまざまな科学技術がもたらす福利も 害悪も含めて、それが将来もたらすであろうものについて予測し、評価し、判断する ことがつねに求められなくてはならない。そこでは将来世代にも十分に配慮し、長期 的な見通しをもって科学技術を制御していくための知識と合意形成のシステムが必要 となる。ところが、リスク社会においても、政治・経済の主導権を握る人々が科学技 術を制御するシステムを組み立て働かせることに積極的に取り組むとは限らない。科 学技術は政治・経済の目先の利害関心に引きずられたり、熟慮と叡智と合意による判 断よりも競争に打ち勝つことを目指して進んだりする傾向を強めている。科学技術と リスク社会のこうした好ましからざる関係のあり方をどうすれば改めていけるのか。 もちろんそうした問題意識をもつ科学者や自分・社会系の学者、思想家はこれまでも 警鐘を鳴らしてきたが、社会体制は無視、ないし軽視してきた。福島原発事故はこう した現代社会の状況をよく表す事態として見ることもできるだろう。 ◇平川秀幸先生「科学の「外」の問いをいかに問うか」   大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授(科学技術社会論) 福島原発事故は、リスク社会としての現代社会の様々な問題を露わにしてきた。その 一つが、リスクに関わる諸問題を「科学的」に処理可能な範囲に切りつめ、科学外的 (extra-scientific)な問題をないがしろにしてしまう傾向である。たとえば福島原 発周辺からの避難者への政府の対応では、元来、避難からの帰還や移住の選択は、放 射線による健康被害リスク以外にも、生活再建全般に関わる多様な考慮事項があるに もかかわらず、あたかも放射線リスクの程度(被爆の線量レベル)のみで白黒つけら れるかのような扱いが為されてきた。帰還するか否かの問題が、科学的問題を扱う原 子力規制委員会に委ねられたのは、これを象徴している。子ども・被災者支援法でも 規定された当事者の自己決定を尊重する民主的な意思決定プロセスもないがしろにさ れがちであり、いわば「デモクラシーを割愛して科学に逃げる」という構図も様々な 場面で繰り返されている。背後には「リスクは科学的問題だ」「科学的に正しい答え を出せばみんな納得して帰還する」という思い込みだけでなく、事故被害の矮小化、 賠償規模の縮小など、原子力をめぐる政治・経済的な利害が働いているのだろうが、 「科学的」という表象がそれを不可視化している。「科学」では語りきれない問題、 「科学」で置き換えたり覆い隠したりしてはならない人間や社会の問題にいかに定位 するか。原発事故に限らず、現代のリスク社会における科学技術の「倫理」を考える うえで、共通する課題であろう。 モデレータ:エリック・シッケタンツ(ドイツ)   東京大学大学院人文社会系研究科特別研究員/宗教史 3)オープンディスカッション:(約90分) ファシリテータ:デール・ソンヤ(ノルウェー)   上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科特別研究員/グローバル社会 -------参加申込み用-------- 送信先:sgra-office@aisf.or.jp 第47回SGRAフォーラム「科学技術とリスク社会」に参加します。 懇親会は(  )参加(   )不参加 お名前: ご所属: 連絡先: ************************************************** ● SGRAカレンダー 【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf 【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php 【3】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中(4月30日まで参加費早期割引)★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Thinking About The Borderless Earth on Earth Day”

    ********************************************************************** SGRAかわらばん516号(2014年5月1日) 【1】エッセイ:謝 志海「アース・デイ(地球の日)に考えるボーダレスな地球」 【2】第47回SGRAフォーラムへのお誘い〜参加者募集中〜(5月31日東京)  「科学技術とリスク社会〜福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」 ********************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#408 ■ 謝 志海「アース・デイ(地球の日)に考えるボーダレスな地球」 4月22日は「アース・デイ(Earth Day)」地球の日だ。1970年にアメリカで、地球環境 について考える日として提案された記念日である。今では192ヶ国以上がこの日を祝 うと言われている。私の母国、中国では環境保護の意識がまだ薄く、アース・デイの 存在すら知らない人もたくさんいるであろう。日本でも各地でアース・デイのイベン トが開催されているが、アメリカほど知名度はないのではないか。 だが日本人は普段から環境に関しての意識が高く、環境保全の活動は今や生活の一部 になっているようだ。アース・デイのようにわざわざ記念日を設けなくとも、環境保 全を啓蒙するイベントは年間を通じて日本の各地で行われている。私が日本でホーム ステイ生活を始めてびっくりしたことの一つは、ゴミの分別がとても細かいことだっ た。ペットボトルや紙(新聞、段ボール)はともかく、肉、魚のトレイ、牛乳パッ ク、卵のプラスチックケースまで!中国ではこんなことは有り得ない。2008年の北京 オリンピックの前まではゴミの分別は一切無かったが、オリンピックを機にやっと 「回収可能」と「回収不可能」の二種類に分けられた。しかし、何が回収可能で、何 が回収不可能か、はっきりと分けるルールがなく、国民は困惑しているようだ。そん な国から来た私が日本に来て更に驚いたのは、日本人はゴミの分別を自然にやっての ける上に、どの曜日がどのゴミの回収日ということも把握していて、きっちり指定さ れた日にゴミを出す。これは賞賛に値する。その後私はホームステイを終え、一人暮 らしを始めたが、ゴミの分別までは自宅で出来ても、それぞれをいつ出すかの習慣ま ではなかなか定着しなかった。指定日に出しそびれることもしばしばで、正直、家が ゴミ捨て場のようになってしまったこともある。 日本人の友人は米国留学時に、自宅アパートの巨大なゴミ用コンテナに生ゴミ、衣 類、家電、はたまた家具やベッドのマットレスまでが一緒に捨てられていて、大変 ショックを受けたそうだ。アメリカ大陸に比べ、国土の狭い島国の日本はゴミの行き 場が無いので、ゴミをなるべく少なくしたり、再生したりする必要があるのだろう、 と感じたらしい。学校教育でも、小学校から環境についてしっかり教えている。環境 問題をテーマにポスターを描くことは、義務教育を受ける者なら誰もが通る道であ る。それだけでなく、例えば、世田谷区の公立小学校では、学校がリサイクル可能な ゴミを受け入れて分別している。そのゴミを業者が集めにきて回収し再生するという システムを作っている。学校の生徒だけでなく、学校周辺の人もゴミをリサイクルに 持ち込むことが出来る。これはPTAの活動であるが、リサイクルに出したゴミの収益 金は子どもの教育活動に還元されている。ゴミの分別、回収、再生、そして自分たち に返ってくるといった流れを幼いうちから知ることはとても大事だと思う。 こういった教育が、日本人を「環境保全を意識する国民にする」のだと痛感するばか りだ。中国では環境教育は一応道徳教育の枠組みに入っているが、あまり重視されて いないようだ。全体的に、国民の環境に対する意識がかなり低い。近年よく報道され るのは、大型連休(10月の国慶節)の時、公の場で大勢の観光客が去った後、いつも 山のようなゴミが散らかっている光景だ。国民の環境保全意識をあげるため、日本の ように、子どもの段階から学校教育でしっかりこの課題について取り組む必要がある のだ。2009年から国際連合環境計画の協力によって、ようやく「中国子ども環境教 育」というプログラムが発足した。 昨今のアジアを悩ます環境問題といえば、中国が排出するPM2.5であろう。 環境省のホームページによると、PM2.5は大気中に浮遊している2.5マイクロメートル (1マイクロメートルは1ミリメートルの千分の1)以下の小さな粒子のことで、非常 に小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、呼吸器や循環器系への影響が心配されて いる。日本で取り上げられるニュースはもっぱら、見通しの悪い北京や上海の光景 と、日本に飛来してくるPM2.5の量である。しかし、よみうりテレビの最近のニュー スによれば、日本で検出されるPM2.5は必ずしも中国飛来のものだけでなく、日本国 内で発生しているものもあるとのこと。環境科学研究センターの成分分析によると、 中国発生のPM2.5は石炭を燃やした際の化学物質や、工場から排出される煙が主な原 因であり、日本(群馬県)で検出されたPM2.5は自動車や工場などから排出したもの であることがわかった。日本国内ではそのどちらも検出されているのだ。 PM2.5の測定は、日々日本の各地で行われており、随時インターネットや、テレビ ニュースで知ることが出来るが、対応策に関してはなかなか進まないようである。中 国でももちろんPM2.5はマスコミでよく取り上げられている。国民も強く懸念してお り、ネット上では文句が絶えない。政府としても十分危機感を抱いてはいる。今年3 月に李克強総理は「政府工作報告」の中で、大気汚染と戦う強い意志を表明し、今年 度だけですでに350億ドルの財政資金を確保し大気汚染抑制を図る。そのほか、石炭 の利用の減少、古いバスや車等の処分、新エネルギーの開発等、いろいろ対策を講じ てはいる。日本も中国も早急に解決しなければならない問題は同じなのである。 皮肉にもPM2.5は人為的に引いた国境線が何の意味も無いことを教えてくれる。 日本の子どもと中国の子どもを思うと胸が締めつけられる思いだ。日本の小学生は毎 日の学校生活を通じて、環境について学び配慮していても、空から降り掛かってくる PM2.5には抗えないではないか。また中国の子どもたちも外で元気に走り回れない理 由を知り、自分たちで改善するチャンスが欲しいはずだ。アース・デイには国境をひ とまず取っ払い、地球規模で環境について考え、未来に何を残したいかについて熟考 したいものだ。後世に残したいのは、明確な国境線なのか、空気がきれいで緑豊かな 地球なのか。 --------------------------- 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載された。 --------------------------- 【2】第47回SGRAフォーラムへのお誘い〜参加者募集中〜(再送) 下記の通りフォーラムを開催しますので、奮ってご参加ください。 ■テーマ:「科学技術とリスク社会:福島第一原発事故から考える科学技術と倫理」 ■日 時:2014年5月31日(土)午後1時30分〜4時30分 その後懇親会 ■会 場:東京国際フォーラム ガラス棟 G610会議室      https://www.t-i-forum.co.jp/general/access/ 参加費:フォーラム/無料 懇親会/正会員1000円、メール会員・一般2000円 お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先、懇親会 への出欠をご記入の上、参加申し込みをしてください。 SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612 ) ◇プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf ■フォーラムの概要: 3・11/福島原発事故以降、「科学技術の限界」あるいは「専門家への信頼の危機」が 語られてきました。今回のSGRAフォーラムでは、島薗進先生(上智大学神学部教授− 宗教学/応用倫理)、平川秀幸先生(大阪大学コミュニケーションデザインセンター 教授−科学技術社会論)をお招きして、福島第一原発事故を事例として「科学技術と 倫理」、「科学技術とリスク社会」、「科学なしでは答えられないが、科学だけでは 答えられない問題群」などをテーマとしてオープンディスカッションを行います。 1)理工系科学者のみならず社会系科学者、人文系科学者の役割と倫理 2)科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性 〔トピック〕 ・福島第一原発事故から考える「科学技術の限界」、「専門家への信頼の危機」 ・巨大科学、先端科学が生み出す「リスク社会」の様相 ・「科学技術と倫理」の課題及び社会系科学者、人文系科学者の役割 ・科学者と市民を結ぶ科学技術コミュニケーションの可能性 ■プログラム: 1)問題提起:(5〜10分) チェ・スンウォン(韓国)理化学研究所/生物学 2)対談:(約40分) 島薗進先生    上智大学神学部教授(宗教学/応用倫理) 平川秀幸先生    大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授(科学技術社会論) モデレータ:エリック・シッケタンツ(ドイツ)   東京大学大学院人文社会系研究科特別研究員/宗教史 3)オープンディスカッション:(約90分) ファシリテータ:デール・ソンヤ(ノルウェー)   上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科特別研究員/グローバル社会 ************************************************** ☆★☆エッセイ募集中! 日中韓の政治状況、最近は社会状況まで、とても厳しく、時には暴力的でさえありま す。ここで語り合う<場>を作るのが、良き地球市民の実現をめざすSGRAの役割りで あると考え、SGRAかわらばんでは読者の皆様のエッセイを募集します。皆様の自由闊 達なご意見をお待ちしております。 ・2000字程度(短くてもかまいません) ・匿名希望の方はその旨お書きください。 ・送付先:sgra-office@aisf.or.jp ● SGRAカレンダー 【1】第47回SGRAフォーラム(2014年5月31日東京)<参加者募集中> 「科学技術とリスク社会:福島原発事故から考える科学技術と倫理」 http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/SGRAForum47Program.pdf 【2】第4回日台アジア未来フォーラム(2014年6月13日台北) 「トランスナショナルな文化の伝播・交流:思想・文学・言語」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/4_1.php 【3】第2回アジア未来会議 「多様性と調和」(2014年8月22日インドネシアバリ島) http://www.aisf.or.jp/AFC/2014/ ★オブザーバー参加者募集中★ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2013/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: sgra-office@aisf.or.jp Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************