SGRAメールマガジン バックナンバー

Magdalena Kolodziej “A Day I Visited Auschwitz”

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SGRAかわらばん724号(2018年5月17日)

【1】エッセイ:コウオジェイ「アウシュビッツ強制収容所博物館を訪ねた1日」

【2】第8回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(5月25日~26日、台北)
「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」(再送)
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【1】SGRAエッセイ#568

◆マグダレナ・コウオジェイ「アウシュビッツ強制収容所博物館を訪ねた1日」

去年の9月に3週間ポーランドに帰った。親孝行と言うか、毎年必ず1回は実家に帰るようにしている。そして、去年はちょっと特別で1人の日本人の友達を連れて帰った。そうすると、ポーランドの観光でもしようという話になるのは当然であろう。ポーランドに来る多くの外国人がアウシュビッツ強制収容所博物館を訪ねる。私の実家は、そこから車で約1時間の距離なので近い。私自身は既に4回見学している。中学の時に1回、大学生の時に3回で、毎回外国人の友達を連れて行く。英語にはダーク・ツーリズム(dark_tourism)という言い方があって、まさに「暗い観光」といえるのかもしれない。人間は残酷で暗いものに引かれるということであろう。

晴れの日も、吹雪の日も、年中無休で開いているアウシュビッツ強制収容所博物館。昼間は混雑しているので自由に見学することができず、グループごとに行動しなければならない。そしてグループごとに博物館の社員であるガイドがつく。今回は日本人の友達と一緒だから、初めて日本語のガイドがついて見学することになった。中谷剛さん。ポーランド滞在30年近く、ガイドの仕事も20年以上のベテランである。

5回目の見学だからどういう話が出てくるのかだいたいわかる私が、あの有名な「労働は人間を自由にする(Arbei_macht_frei)」という入り口の門を通ると、泣きたくてたまらなくなる。どうして人間が他の人間にあんな残酷なことをさせたのか、そういう単純な気持ちで悲しかった。しかし、戦争も暴力も体験していない私が見学したと言っても、本当の残酷さはいくらも想像できないことで、センチメンタルな気持ちに過ぎなかったのかもしれない。

中谷さんは、早口でどんどん話が進む。グループは12-13人ぐらいで、私以外はみんな日本人であろうという人たち。強制収容所の歴史、組織、囚人の生活、監視人のことなどを聞き取ろうとしている。表面上、強制収容所はとても近代的な性格を持っていた。レンガの建物が並び、幼稚園もあり、囚人は給料ももらっていた(実際は、一切お金は使えない状態だったが)。ガス室での死、収容所での飢餓。囚人を使った医学的な実験。囚人が反対運動を起こさないために、囚人の間で階層制度を作り、囚人同士お互いに連帯や同情を持たせないように、囚人が囚人を監視するシステムなど。ヨーロッパの20世紀の歴史、反ユダヤ主義の歴史、ドイツと日本帝国のつながり、長崎に住んだことがありアウシュビッツで殺され、聖人になった神父マキシミリアン・コルベの話。

そして、中谷さんの話が知らないうちに現在にまで広がる。私たちにまで広がる。あの医学実験は、私たちのためになったのでは?当時のドイツ企業が強制労働を使い、それが今の経済成長に繋がっているのでは?もちろん仮定に過ぎない話だが、自分にとってのアウシュビッツの存在が、少しずつ大きく、リアルに見えてくる。また、当時の人たちは、ユダヤ人に対してある固定観念を持っていたから、強制収容所にユダヤ人を入れやすかったと言えるが、現在生きる私たちは誰に対してどういう固定観念を持っているのだろう?ヨーロッパでの難民の話、日本での部落民や少数民族の話。ドイツと日本でのヘイトスピーチに関わる法律とそれに関わる問題。

参加者はみんな少しずつうなずきを控え、さらなる沈黙に陥る。他人の歴史が自分のもののように見え、居心地が悪い。被害者、加害者という単純な枠があるにも関わらず、自分がどこに所属しているのか、自分は「いい人」と思っていたのが本当なのか、あの強制収容所を作った固定観念だって今も生きているのではないか、などと考えさせられる。

中谷さんは、「Aが正しいBがだめだ」と言うような単純な答えは出さない。日本人だからこそ、そういう話がしやすいのかもしれない。アウシュビッツ博物館を訪ねるユダヤ人とポーランド人(ロマ(中東欧に居住する移動型民族)や同性愛者も含む)は、そんなニュアンスがあって複雑なストーリーを聞きたくないかもしれない。加害者は加害者、被害者は被害者だろう。

2時間が経って、アウシュビッツを出て、近くにあるビルケナウという支部の強制収容所に向かう。その時に、中谷さんと初めて雑談し挨拶をする。中谷さんがびっくりして「あら、僕は今日初めてポーランド人にガイドをした、申し訳ない」というようなことを言う。謙遜の言葉かもしれない。あるいは、相手によって語れる歴史ってだいぶ違ってくるということであろう。考えさせられることばかり。次の世代にどうやって歴史を伝えるかと真剣に考えている中谷さん。

今回のポーランド旅行で1番刺激になった1日は歴史と現在を繋ぐ中谷さんの話を聞いた日だった。天気は晴れ、ビルケナウの芝生はまだ青かった。

<マグダレナ・コウオジェイ Kolodziej, Magdalena>
2017年度渥美奨学生。2018年デューク大学Art,_Art_History_Visual_Studies博士号取得。8月からデューク大学でポスドク非常勤講師として1年間日本美術史を教える。専門は、東アジアの近代美術史。

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【2】第8回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送)

下記の通り第8回日台アジア未来フォーラム 並びに 東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウムを台北市で開催します。参加ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。

◆テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性:コミュニケーションツールとして共有・共感する映像文化論から学際的なメディアコンテンツ学の構築に向けて」

開催日:2018年5月25日(金)午後3時~26日(土)終日
会場:東呉大学外双渓キャンパス第一教学研究棟普仁堂(大講堂)

●日本語申込み:https://goo.gl/k54cMY
※日本:SGRA事務局 sgra-office@aisf.or.jp
※台湾:東呉大学日文系 hua666@scu.edu.tw

●プログラム

詳細は下記リンクをご参照ください。

第8回日台アジア未来フォーラム・東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウム「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」へのお誘い

◇2018年5月25日(金)第一部(15:00~受付開始)

【特別講演】15:30~17:20
弘兼憲史先生(漫画家、『島耕作』シリーズ作者)
テーマ:「漫画から学んできたこと」

◇2018年5月26日(土)第二部(8:00~受付開始)

【招請講演1】8:40~9:25
表智之 (日本北九州市漫画ミュージアム専門研究員)
テーマ:「研究者のネットワーク化とマンガ研究の進展-学会・地域・ミュージアム-」

【招請講演2】9:25~10:10
宣政佑 (韓国 Comicpop_Entertainment_President)
テーマ:「韓国ではアジア漫画をどう見てきたか 」

【招請講演3】10:10~10:55
秦 剛 (北京外国語大学北京日本学研究センター教授)
テーマ:「戦後日本最初の長編アニメーション『白蛇伝』における「中国」表象と「東洋」幻想」

【パネルディスカッション】11:10~12:10
テーマ:「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」

【招請講演4】 A会場 13:20-14:05
梁世佑(台湾U-ACG/旭傳媒科技(股)創弁人)
テーマ:「台湾のオタクにみる日本アニメの受容と変化:作品の鑑賞、収集と行動」

【招請講演5】 B会場 13:20-14:05
黄瀛洲(台灣動漫畫評論團體「?呼?同盟」召集人)
テーマ:「未来を見据えた台湾アニメの発展」

【論文発表】 14:10~17:10 各会場にて3本ずつ計18本論文発表を予定
第1セクション 14:10~15:30  A1/B1/C1 会場にて論文発表
第2セクション 15:50~17:10  A2/B2/C2 会場にて論文発表

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★☆★SGRAカレンダー
◇第7回SGRAふくしまスタディツアー(2018年5月25日~27日、飯舘村)
「『ふるさと』に帰る…」<募集終了>

第7回ふくしまスタディツアーへのお誘い


◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月25日~26日、台北市)
「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新た可能性」<参加者募集中>

第8回日台アジア未来フォーラム・東呉大学マンガ・アニメ文化国際シンポジウム「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新たな可能性」へのお誘い


◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」
(2018年8月24日~8月28日、ソウル市)
論文募集は終了しました。<オブザーバー参加者募集中>
http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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