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エッセイ768:金希哲「AIとロボット革命」
ここ数年間で人工知能(Artificial Intelligence=AI)とロボット工学は目覚ましい発展を遂げました。特にチャットボットのような対話型AIや画像、動画生成AIは日常生活の中でもその影響力を確実に感じることができます。
過去、AI技術の活用性に様々な疑問が寄せられてきましたが、今ではそのような懐疑の声は聞かなくなりました。この数年、AIは囲碁で人間を打ち負かすなど新技術として評価される一方、実用的なアプリケーションとしては性能の問題があったため、実用化には悲観的な専門家も多くいました。しかし、多くの研究者が様々な分野からの研究を行い、その問題を解決できるようになりました。
この変化の中心には、過去の研究方法論を超える新しいアプローチがあります。これまではそれぞれの小さなタスクに焦点を当てていましたが、最近ではより汎用的に活用しようとする努力がなされています。最近のAIは「Transformer」という単一のニューラルネットワーク構造を基盤に発展しており、以前に提案された「画像生成専用構造」、「対話型AI専用構造」などは全てこのTransformer基盤の構造に統一されています。AI研究におけるこのような統一は、学習に必要なノウハウの公開につながり、結果的に誰でもAIを学習させることができるようになり、AI研究を爆発的に加速させました。この汎用的なデータを学習できるTransformer構造の発見により、あらゆる状況に一般的に適用できる「一般人工知能」(Artificial General Intelligence=AGI)誕生の可能性まで提起されています。
ロボット工学における革命も始まったばかりです。もともとAIとロボットは同じ研究分野の両輪でした。人間に似た創造物を作る目標は、実体的な面(ハードウェア)と精神的な面(ソフトウェア)の融合があってこそ可能になるはずでした。ロボットという実体とAIという人工的な精神は、そもそも互いに分離しては存在できないものです。しかし、その二つを同時に人間のレベルに引き上げる神話のようなことは起きませんでした。ロボットはAIを搭載しないまま、工場などでのごく単純な反復作業で価値を証明してきました。一方、AIはウェブとビッグデータの成長、そしてコンピュータの発展に支えられ、実体を持たずにウェブ上の無限のデータを基盤に成長してきました。それが今ではAIが現実世界を理解できるようになり、AIとロボットが統合されています。これはロボットがAI技術を活用して、より複雑で多様な作業を遂行できるようになったことを意味します。
私が修士・博士課程の間に進めた研究は、精密な操作をする能力にAIを適用することでした。例えばロボットによる「針に糸を通す」、「バナナの皮むき」というテーマも挑戦的でしたが、研究室の優秀で精密なロボットシステムと計算資源を使って、他の研究室では得られない精度の成果を出すことができました。さらに研究室の環境支援のおかげで、一連の面白くて挑戦的な課題を遂行することができたのは非常に貴重な経験であり、今後の研究と開発に大いに役立つと思います。
私は卒業後、Tefa Robotics(本社ソウル)というスタートアップ企業で、現実世界で実際に役立つロボットを制御できるAIを開発することに専念する予定です。近い将来、少子高齢化の影響で日本および韓国社会は労働力不足に直面しますが、私はAIとロボットの結合を通じて、この問題の解決に取り組んでいきます。
<金希哲 KIM Heecheol>
東京大学工学部機械情報工学科卒業、同大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻修士、博士。TEFA Robotics Inc.に在職中。2022年度渥美奨学生。
2024年6月20日配信