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エッセイ764:モハッメド アキル シェッダーディ「外国人住民の参政権について」

7年以上日本に住んでいる外国人として、私はこの国でいつも歓迎され、尊重されてきました。大学院で研究するために来日、その後大学で講師として働くようになりました。大人の人生の半分以上を日本で過ごし、日本国民と同じように税金や年金保険料、健康保険料を支払い、さまざまな形で社会に貢献しています。日本とその文化が大好きで、日本を第二の故郷と考えています。

 

しかし、一つだけ気になることがあります。それは、どの選挙にも投票する権利がないことです。自分の生活や地域に影響を与える政策や決定について、何の発言権も持っていないということです。コロナ禍で日本が半年間、外国人居住者を含めて国境を閉鎖したとき、外国人は政策決定において考慮されなかったと実感しました。日本国民と同じ程度に社会に貢献しているにもかかわらず、まだ二等市民と見なされているのだと感じました。投票権がないということは、自分のような外国人居住者にとって重要な問題を解決することができないし、私の利益を代表する指導者を選ぶことができないということです。

 

これは不公平であり、民主的ではないと思います。外国人住民は単なる訪問者や客ではありません、永続的または長期的にここに住む社会の一員です。外国人住民は権利と責任を持ち、コミュニティーにおいても代表となり、未来を形づくる政治プロセスに参加することができるべきです。

 

この意見は私だけのものではありません。多くの外国人住民が同じように投票権を求めています。多くの日本国民もこの考えを支持しており、多様性と包摂のメリットを認識しています。一部の地方自治体は外国人住民に地方選挙や住民投票での投票権を与えようと試みましたが、法的・政治的な障害に直面しました。現在、地方住民投票で一部の投票権を認めている自治体は1,718市町村(東京都区部を除く)のうち42しかありません。

 

例えば、東京の武蔵野市は2021年、外国人住民に地方選での投票権を認める条例案を提案しました。しかし、市議会は、「外国人に国家安全保障問題に関する発言権を与えると、日本の主権を損なう恐れがある」と主張する一部の保守派の反対により、この提案を否決しました。日本は労働力不足に対処するために今後ますます外国人労働者が必要な状況であるのに、このような反対は「同質的な国家」のイメージを強め、社会の多様性と活性化の議論をすること自体を抑圧してしまいます。

 

先日、統一地方選挙の運動期間中に、郵便箱に「外国人参政権に反対」ということを中心的なスローガンとして掲げた候補者の選挙チラシが届きました。候補者は、「外国人住民に投票権を与えることは、国益に反する可能性」があり、「日本の安全が危ぶまれる」と主張していました。しかし、この主張は根拠のない誤りです。まず、地方選挙や住民投票は、国家安全保障や外交政策ではなく、教育、医療、環境、交通、公共サービスなどの地域の問題に関するものです。これらは、国籍に関係なく、その地域に住むすべての人に影響する問題です。

 

外国人住民に地方選挙での投票権を認めることは、彼らに市民権や二重国籍を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き日本の法律に従い、日本の価値観を尊重しなければなりません。彼らが元の国籍やアイデンティティーを失うことではありません。単に所属感や参加感という新しい次元を得るだけです。

 

また、外国人参政権を認めることは、日本国民よりも不公平な優位性や特権を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き一定の基準や条件を満たさなければなりません。有効な在留資格を持ち、一定期間地域に居住し、有権者として登録すると、日本人有権者と同じ規則や手続きに従わなければなりません。

 

したがって、外国人住民に地方選挙での投票権を与えることは可能であり、望ましいことです。それは日本の民主主義と多様性を高めるとともに、社会的な結束と統合を促進し、相互理解と尊重を育み、市民的な参加と責任を奨励し、すべての人々の生活の質を向上させるでしょう。日本は今のところ外国人住民に参政権を与えず、二重国籍も認めない数少ない先進国ですが、外国人住民の地方政治への参加の価値を認めた他の国々のように、状況を変えるべき時が来ていると思います。

 

日本を愛し、その発展に貢献したいと思う外国人住民として、いつか自分の票を投じて自分の声を届けたいと願っています。この社会の真の一員として自分の投票権を行使できるようになることを望んでいます。

 

<モハッメド アキル シェッダーディ Mohammed Aqil CHEDDADI>
モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学中。同大学総合政策学部訪問講師。2022年渥美奨学生。

 

 

2024年5月9日配信