SGRAかわらばん

エッセイ688:元笑予「日本と中国のいじめ問題―これからの研究課題」

近年、日本では子どもの間のいじめでパソコンや携帯電話等が使われることは珍しくない。「ネット上のいじめ」とは、携帯電話やパソコンを通じてインターネット上のウェブサイトの掲示版などに特定の子どもの悪口や誹謗・中傷を書き込んだり、メールを送ったりするなどの方法により、いじめを行うものを意味する。一方、いじめを受けた子どもがツイッターやLINE上でつぶやいたSOSが「放置」され、自殺という最悪の事態に至ってしまうこともあった。

 

さらに、子どものいじめや自殺などの相談にSNSのLINEを使ったところ、電話よりも相談件数が増えることが分かった。「SNSは若者にとっていちばん身近なので、相談に活用できるよう対応することが必要だ」と言う意見も強い。いじめの防止につなげようと、千葉市の市立中学校は2016年度から子どもたちが毎日持ち歩く生徒手帳に、いじめに遭ったり目撃したりしたときの対応やネット上の相談窓口を記載する取り組みを始めたという。ネットいじめを低減する重要な要因、解消のために必要な要因は何であると考えられるのだろうか。教育者にとって、この点を明らかにすることが喫緊の研究課題である。

 

中国では2017年に国家教育部が初めて「いじめ」の定義を明確に示したが、その後の対策はまだはっきりとしていない。中国でいじめ問題に人々が関心を寄せるようになったのは、ごく最近のことにすぎない。長い間、多くの中国人は子どもの間のいじめは免れられないことであると考えていた。一学年に250名くらいの児童・生徒が在籍しているとの報告があり、生徒数が多いことが影響していると考えられる。

 

いじめが起こる場面では傍観者が最も多い。傍観者の多くは、いじめをする人が悪いと思い、いじめられている人はかわいそうな人であると思っているが、どうしたら良いか分からないという状態にある。中国では、多くの児童・生徒は学校側からいじめについて認識を尋ねられた場合に、知りうるすべての真実を学校側に伝えると答えている。いじめを傍観している児童・生徒は、いじめを解決する上で鍵となる人物といえる。いじめが先進国ほど表面化していない中国においては、学級づくりでは多くの傍観者を取り込んで、良い雰囲気を構築することが極めて重要なことであり、いじめを減らす有効な方法になると考えられている。

 

良い雰囲気の学級を作ることはいじめの予防教育につながる。日本でも、いじめの早期発見と早期対応を促す教師のあり方として、教師が子どもに信頼されることと共に、教師の意識を変えることが必要であると指摘されている。いじめがないことを前提に児童・生徒たちに接するのではなく、いじめが存在する可能性を前提として子供に接することで、早期に的確な対応を取ることが可能となる。これからの研究課題は、教師がいじめをどのように把握するか、教室全体がいじめ防止・抑止に結び付く雰囲気をどのようにつくり出すかという点になるといえる。

 

 

英語版はこちら

 

 

<元笑予(げん・しょうよ)YUAN Xiaoyu>
2008年来日、中国南開大学の日本語学科を卒業して、埼玉大学教育学部の研究生、修士を経て、東京学芸大学大学院で2020年9月に教育学博士号を取得。専門は教育心理学。現在、玉川大学教育学部非常勤講師として勤務しながら、東京学芸大学個人研究員として研究を進めている。

 

 

2021年11月25日配信