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エッセイ447:謝 志海「日本の人口減少問題」

昨年末の日本経済新聞で、厚生労働省による2014年の人口動態統計の推計が発表されていた。それによると、死亡数は、戦後最多の126万9千人、出生数は100万1千人で出生数が死亡数を下回る人口の自然減は26万8千人で過去最大となった。2011年以降この自然減は毎年20万人を超えているという。出生数が増えないことには人口の自然減は食い止められないということだ。今は元気な団塊の世代が減りはじめたら、日本はどうなってしまうのだろう。政府として何か策は練っているのか?


政府の中位人口推計では、このままだと2020年代初めには、60万人減、40年代は年に100万人と減少速度が加速、2050年を前に総人口が1億人を割る見通しだそうだ。私の母国である中国の人口13億人を思うと、国際社会において政治、経済のいずれの面からも見ても大国である日本は人口が1億人を下回る国になるのは想像し難い。このまま人口が減って行くと、日本の国力と国際発信力にも大きな影響を及ぼすのだろう。日本政府はどうにか人口1億人を維持したいようだが、実現性は不透明という気がする。内閣府に設置された、「選択する未来」委員会が2014年に中間報告として示した「人口減少数の将来推計」によると、2030年に出生率2.07となれば、2060年以降も1億人程度の人口を維持できるとの推計を示した。しかし2013年の出生率(合計特殊出生率)は1.43人であり、1975年以来ずっと出生率2人を割っている。この現状を見ると、内閣府の将来推計は現実味に欠ける。


減りゆく人口に嘆いてもしょうがないので、始まったばかりの2015年が人口減少問題の解決に大きく1歩踏み出す年になると良いなあと思う。幸い日本は民間企業が社会問題に向き合い、福祉を考慮しながら従業員を守っているので、改善の余地はあるはずだ。そして、日本が官民一体で立ち向かう人口減少問題は、今後追随するであろうアジア全体の高齢化の手本になるはずだと期待している。例えば、ソフトバンクは社員に子どもが産まれる度に出産祝い金なるものを支給していて、第二子、第三子と増えるにつれて、祝い金の額が上がる。たくさん産めばたくさんもらえる仕組みだ。また、大和ハウス工業では、子供1人の出生につき100万円を支給する制度(次世代育成一時金)がある。このように、日本では政府の対策を待たずに、企業が知恵を絞り、国の問題解決に積極的に関わる様はとても美しいし、大きな意味がある。


しかしながら、民間企業にばかり頼っていても、日本の人口減少は歯止めが利かないであろう。何しろ毎年20万人以上もの自然減が起きている国だ。地方自治体も自分の街から人が減るのを食い止め、かつ積極的に呼び込むことに早急に対処した方がいい。地方創生に関しては、頑張っている自治体とそうでないところの差がとても大きい。東京から遠い市町村の方が、移住者の呼び込みや、地元の活性化が盛んで、実は東京へのアクセスが良い市町村から若者がどんどん減っていたりする。切れ目の無い地方創生が実現すれば、日本全体が活気づいて、人口減少によりさびれる街も減り、人口の底上げにもつながるのではないだろうか?客観的な意見だが、日本は面積の狭い国ではあるが、砂漠のような住めない場所というのはそれほど無いのだから、人口減少と地方創生を一緒に解決出来るポテンシャルがあると思う。事実、日本のどんなに小さな町でも意外と外国人が住んでいたりするものなのだ。その辺りをヒントに住みやすい日本で人口維持に向けて全国的に取組んだ方が良い。


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<謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。
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2015年2月4日配信