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エッセイ434:奇 錦峰「憂慮すべき現在の中国大学生(その3)」

「憂慮すべき現在の中国大学生(その1)」 「憂慮すべき現在の中国大学生(その2)」

 

 

1.3 卒業時の大処分

 

大学の校内では卒業が近づくと、ものを大量処分する(捨てる)季節になる。卒業生達は教科書も含め、使用していた物品をほとんど処分してしまう。処分しないものは、携帯電話とラップトップコンピューターぐらいか?デスクトップコンピューターまで処分する人もいるようだ。(清掃者は“つらーい!”と言いながら、使用可能なものをたくさん回収出来るため、内心は喜んでいる。)ゴミ捨て場へ捨てるのはまだ良いとしても、問題になるのは、わざと宿舎の窓から外へ捨てながら楽しむ事件が頻繁に発生していることだ。(ゴミ箱、枕、布団などの大きなゴミを窓から捨て、建物の下を通過していた人に怪我をさせたというニュースもあった。)大量処分のあと、宿舎の建物のまわりはゴミだらけだ。

 

物を捨てる行為の他に、更に驚いたことに、様々な特異的な卒業行動(大学の“卒業病”と言われている)が散見されている。例えば下品な卒業写真撮影、卒業スローガン掛け(シートにいろいろな言葉を書いて窓から垂らす)、卒業裸走り、卒業叫び(寮外で「XXさん!貴方をずーっと愛していたよ!」)、卒業セックス予約(中国語で“約砲”と言う、要は卒業生同士がセックスを約束する)などがある。一般の人々は、これらの現象について、現在の大学生たちが、自分たちは普通の人が行う行為と異なる方法で思い出と主張を表現し、自分の大学生活に区切りをつけ、新しい段階に入ることを宣言していると推測しているようだ。

 

2. 乱れるセックス及び性道徳の低下

 

今の大学生の二番目の問題は性的道徳の低下及び性的混乱であると思う。大学内の道路上、カフェテリア内、教室内などのいたる所で、熱愛中のカップル大学生が、まるでハネムーン夫婦のように、半分抱擁、半分ロマンスの姿がよく見られる。複数の機関の調査によれば、恋愛中の同棲は当然であり、上述した“約砲”も少なくない。一方、ガールフレンドのいない男性は買春に走っている(その証拠に、いくつかの大学自体がコンドームを無料あるいは有料で提供)。今の大学生の性体験について、高いという報告では80%であるが、それほど高くはなく30%という報告もある。大学生の80%が「ワン•ナイト•愛情」に反対していないそうだ。7%の大学生がホモだとも言われる。さらにレズビアンも大学生の中に多い(全国的に教育レベルが高いほどその割合も高くなるようだ)。今日の中国の女子大生の中には、平気で「パトロン」を有している人、週末のみ愛人になる人は、かなり認められる。また外国の国籍を得るため、来中の欧米人(特にアメリカ人)の男性に体を無償で提供する女子大生も少なくない。

 

女子大学生の中には、カードに「求包養」(意味は臨時妻として養ってくれる男を募集)と書いて、繁華街で配る者もいる。さらに面白いことは、北京大学の女子大生がお金のために自分の卵子を販売しているとか、北京外国語大学の女子大生がネット上に下品で挑発的な写真を載せ、「私の膣は云々」と宣伝していることもあった。

 

今の大学生は入学によって親や高校時代の厳しい監視から抜け出し、はるかに自由な大学のキャンパスに入ることが出来、自ずと解放感が生まれた。そのため、一部の大学生は理性を失い、動物的本能の亢進により性欲を満たすことに邁進するようになった。約1/3の大学生は勉学ではなく、“恋愛”に忙しく、またその半数が同棲し、伝統的中国のセックス観を無視するようになってしまった。調査によれば婚前交渉は大学生と言わず、今の中国の若い人々では一般化されている。恋愛中の二人は、互いに相手の家族の現状を重んじるのが多いようだが、一方で非常に現実的、ご都合主義的な愛を育んでいる。そのため、環境の変化を伴う卒業時期になると、愛情が揺れ、結果として別れの時間がやってくる。そのため今の大学生たちの恋愛の大半は、瞬間的な喜びのためのみで、真実の愛情ではない。他方、「パトロン依存」が急に流行し、お金のためか、生存のためか、それとも両方兼有かわからないが、現に一部の女子学生の一種の職業となっている。

 

3. 理性のこびと(dwarf)

 

“九つの罪”の中に記載されているように中国の昨今の大学生には、基本的な3つの能力が欠けている。真偽、是非を判別する能力、善悪を認識する能力、そして美しさと醜さを識別する審美的能力である。この3つの能力が欠けているから、これらの必要性(特に善悪)すら認識しない大学生がたくさんいる。そのため、無法、悪事は数え切れない!

 

一番目の問題として、朝寝坊がある。土日は言うに及ばず、平日でもギリギリの時間まで寝ており、自転車で超スピードでやってきて、朝食を講義室で済ませる大学生が多い。肉まん、焼きそばなど臭気のあるものが多く、毎朝2時間目の講義室までは“朝食室”と同じ状態(臭気)になっている。(こういう現象は一般的である)。経験がないので家事が出来ない人は山ほどいる。家へ帰っても、もちろん朝ごはんを作ったりしない。当然、夏休み、冬休みなどの長期休暇中にもしない(学校の寮で寝坊する学生は大勢いる)。

 

二番目の問題は、人間性が悪いことである。学校生活において利己主義、他の人との協調性の欠如や怠慢、無関心などは一般的な現象である。人間関係は薄く、大学生同志でも親友関係があるのは稀であり、相互間の助け合い言動は皆無である。その反面、お互いに何らかの形での“防止(防御)”のような行為、行動はよく見られる。礼儀に対する教養の不足により、普通の人にはもちろんのこと、自分の先生に対しても尊敬、尊重しない人が多くいる。例えば言葉づかいが汚いとか、講義中におしゃべりするとか、音をだして飲食するとか、メイクをするとか、携帯電話をするとか、教室を出入りしたりとか、イヤホンで音楽を聞くとか、ぐっすり寝るとか、恋愛中の学生はお互いにキスしたり抱擁したり(まるで誰もいない場所に自分たちだけがいるような行為)などの行為が見られる。先生に依頼する場合、例えば推薦書を書いてもらうとか、本を借りるとか、試験問題の傾向を聞くなどの時は非常に礼儀正しく、丁寧に対応する。しかし自分の要求がみたされると、豹変して、先生を無視する。その上、先生から借用した本、資料などは返却するのを忘れてしまう。

 

三番目の問題は社会に受け入れられない過激な行為。法律やルールの軽視、強盗のような行動は少数ではあるが現代大学生の中によくある行為である。交通信号を無視するのは国民全体に言えることであるが、しかし21世紀の期待の星である大学生なのに、これぐらいの人間のモラルを守れないことは、どうしても理解できない。そして、今の大学生は自分の競争相手(優等賞の選挙、留学及び奨学金のチャンス、さらには恋愛の同性相手)に対して、打ち負かすために善悪関係なしに可能な手段を行使する。極端な例ではあるが、競争相手を殺害する事件が、最近の十数年の間に十数例も発生している。

 

さらに、考えが浅く、かつ小心のため、些細なことで自殺をする学生はかなりいると報告されている。新華ネットの報道によると、自殺は中国の大学生の不自然死の一位であり、年間で100人もいると報道されている(10万人中2~4人が自殺)。例えば、広東省では2008年には26人が自殺した。2000~2008年の間、全国で自殺は500件発生し、400人余りが死亡している。このような行為が家庭、学校、社会に対してどのような影響を与えているのかを、利己主義が頭に満ち溢れている自殺者達は少しも考えていなかっただろうと思われる。(つづく)

 

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<奇 錦峰(キ・キンホウ) Qi Jinfeng>

内モンゴル出身。2002年東京医科歯科大学より医学博士号を取得。専門は現代薬理学、現在は中国広州中医薬大学の薬理学教授。SGRA会員。

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2014年11月19日配信