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エッセイ203:マイリーサ「日本の団塊世代が凄い」

戦後の日本を支えてきた団塊世代が、定年退職を迎えている。彼らの多くは、定年後、地域で自分探しを始めている。ここで一例をあげる。最初のうちは、地域の道路や河川の清掃のボランティアをやっていたが、いつの間にか、NPO法人を立ち上げて地域の公益事業に関わるようになった。

 

町田市の境川の旧河川敷棚に囲まれた未利用の広い公共空間がある。そこはかつて不法投棄のターゲットになっていた。これまで近所の住民が、かろうじて自主的な清掃活動と不法投棄ゴミの撤去作業をやってきた。近年、団塊世代がリーダーシップをとって、この作業をやるようになった。彼らは町田市と「住民による管理」協定を締結し、河川や道路の清掃活動違反広告物の撤去や不法投棄監視活動などの活動をやってきた。

 

そのうち、彼らは、境川沿いに親水公園を作りはじめた。境川流域では洪水対策として急にコンクリート壁が作られた。それにより、河川周辺道路を散策する人々が水に直接触れる機会がなくなった。旧河川敷に水辺の広場を作れば、水のある自然環境が少し取りもどすことができるのではないかと、彼らは思った。

 

「水辺の広場」概要

 

旧河川敷の広場にビオトープのせせらぎとよどみを作る。せせらぎの水深は20~30cmで、よどみは約10cmである。よどみは小動物や湿生植物の棲家となる。ここに棲む生物たちはなるべく境川に昔から棲む種にしたい。このせせらぎ広場の水源を井戸で賄う。ここが境川を散策する人達のいこいの場になる、子供達の遊び場になる。

 

親水公園を作るために、メンバーたちが積極的に関係部署と協議し、関連制度の活用を生かし、事業を可能にした。地域の造園専門家がボランティアで設計と指導を行った。

 

1、地下水を汲み上げる。それから井戸掘り作業をする。
2、水路や浅瀬のある親水広場を作る。
3、憩いの場としての公園整備をする。

 

現場での稼動日数は76日であり、稼動人数は400人以上である。最初の井戸掘りは、シニアを中心としたメンバーにとっては重労働であったが、徐々に地域住民の関心も高まり、多くの支援を得ることができた。力仕事は、地元小学校の「父親の会」の若い「お父さんパワー」の助けを得た。また、ホームページでの呼びかけに応じて、護岸工事に使う毛布や石塊の一部が寄付されたほか、住民からは手押しポンプを、そして、地元アウトレットからベンチを寄付してもらった。

 

広場には、かきつばたを植えた浅瀬があり、木の橋を渡ると草木の間を抜け、水路の向こう側に出られる。また、水路には小さな魚が泳いでいる。ここは、子供から大人まで、地域のコミュニティーをつなぐ交流空間として機能している。散策の途中で広場により、ベンチで休んだり、井戸汲みを楽しんだりする姿が多く見られる。

 

現在、親水広場づくりの活動は、点から面へと広げられつつある。調査や勉強会などを通して旧河川敷棚に囲まれた未利用の広い公共空間から、25か所の整備ポイントを決定した。その計画書はすでに市民の政策提案として市長に手渡された。

 

金の卵といわれる日本の高度経済成長を支えてきた団塊世代が定年を迎えている。彼らは、これから地域社会に戻り地域をベースに生活をする。団塊世代の大量到来は、間違いなく日本の地域社会に大きな影響を与えるにちがいない。

 

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<マイリーサ ☆ Mailisha>
一橋大学社会学博士。立教大学、昭和女子大学非常勤講師。
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2009年4月29日配信