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エッセイ096:奇 錦峰「中国の大学の現状(その1:学生数)」
1990年代から毎年、中国の経済は奇蹟の成長率を記録し、さまざまな分野で急速な発展を遂げたことは世界中に知られている。然し、経済の発展とは対照的に、人口が増えた“繁栄”の辛さも徐々に解ってきた。どこへ行っても人で溢れていて、静かなところが見つけられない。中国に住んでいる中国人でさえも40歳以上のかたは、学校で仕事をしていなければ、膨張している学校の現状を恐らくご存知ないだろうが、外国人はもちろん、海外へいっている中国人にも全く想像できないと思う。
どのレベルにおいても、中国の“学校”というところへ行ってみれば、“溢れる”という言葉の意味を真に理解できる!この30年間、学校(特に大学及び専門学校)の数はあまり増えなかったが、既存の学校で募集する学生の人数は大幅に増えた。1980年以前と比べると、全国平均で二桁の倍数に達しているという中国教育部の統計がある。私の勤めている広州中医薬大学を例にしてみょう。
私の大学では、10年ぐらい前までは在校生が1500人ぐらいで、年に200人ぐらいの卒業生があったといわれている。だが、2006年の卒業生は970名、2007年の今年は1456名、更に近い将来の卒業生数の予測は、2008年に2400人、2009年には3200人であると、少し前の大学公報で公開された。今現在の在校生は3万人以上で、昔の20倍!(うちは単科大学なんですよ!欧米の言い方でいうとCollege!)。毎年これほどの卒業生が出るということは、4~6年前からこの数の新入生が入ってきていると理解して間違いないだろう。教育を担当している我々はたいへんだよ!例えば私の学部では、10年前と比べると学生数が約20倍増えたが、スタッフは僅か1.2倍ぐらい増えただけだと先輩たちがいう。昔40人だったクラスが、今は多い場合には200人まで膨張し、学科も1種類から5種類まで増加した。私は卒業してからずっと大学で教えているが、前の大学ではせいぜい週3回、6~8時間の講義をしていた。しかし、今は毎日講義のために走りまわっていて、週20時間ぐらい講義をしている。現在の中国の大学の教員は小中高校の教師みたいに、授業に追い回されている人が大勢いると言われている。
なぜ大学生がこんなに多くなったのか?高、中、小学生が多くなったからだ!もちろん政府が十数年前に大学教育を“エリート教育から大衆教育”に変えたのも原因の一つだろう。中国教育部の報告によれば、2007年に全国の大学受験生は初めて1000万人を超え、1010万人になった。入学率は56%で、567万人の新入生が入学する。現在、在校生数は1623万人に達し、全世界で1.1億の大学生の約15%を占めているといわれている。ちなみに小、中、高校の現状も少し言わせてもらうと、学校の数はもちろん大学と比べられないほど多くなっているけど、それでも在校生の数は驚くほどだ—–例えば昔1クラス40人の教室は、今や最低60人、ひどい場合は80人もいると聞いたことがある。同じ学年のクラス数が3~4倍まで増えているのは“普通”だ。学校が終わった後の教室棟の階段の様子を想像できますか?遊びたくてわくわくした顔でぎっしり!数年前、満杯の学生がいた階段が潰れるという事故が発生し、生徒が踏まれて死亡した。この悲惨な事故報道は何回も繰り返されていたから、教育者たちの頭の中にはまだ残っているだろう。
次に大学を卒業して社会に入る進路—–就職状況をみてみよう。近年、毎年800万人以上の大学卒業生が社会に入っているが、就職率は80%未満だそうだ。公式に発表された情報によれば、全国で毎年2000万人の雇用が準備されると予測されている。しかし、これから急増する大卒業者が含まれる“就労大軍”ははるかにこの数を超える。現在、既に約10%の大卒者が、辛い選抜試験を経て修士課程に進学しているが、その中の半数は、就職が難しいから仕方なく選んでいるそうだ。今年の受験生の56%は大学の卒業生だが、残りは“社会人”(主に大学を出てまだ就職できていない人、日本のフリーターにあたる?)らしい。勿論、修士のほうが学士より就職しやすいという事実も、大学院の受験生が増えた原因の一つである。
大学生の募集数が年々増えているが、大学院生(中国では研究生という)の募集数は近年あまり増えていないそうだ。その主な原因として、大学の修士、博士の教育資源に制限があり、大衆教育までは到底無理だからといわれている。それに去年から修士課程の“免試”制度(優秀な大学卒業生が学校の推薦で選抜試験に参加せず修士課程に直接入学する制度)ができたから、今や大学の受験より大学院の受験のほうの競争がもっと激しくなっている。中国教育部の発表によれば、2007年に全国大学院の受験生数は前年の2006年よりやや多い(7000人増)128.2万人で、進学率は約30%だそうだ。過去数年間の全国大学院受験生の数字を見ると、2001年は46万人だが、2005年は117万人となり、5年間で倍増している。年平均増加率は22%である。
ところで、過去10年間の世界の大学生数であるが、“グローバル大学改革ウェブ”というところの報告によると6860万人から1.1億人になっているらしい。60%の増加である。この中、発展途上国が2930万人から5830万人とほぼ100%増加しており、先進国は3080万人から4030万人と30%の増加となっている。1960年に全世界の大学生の数はたったの1300万人だったのだが、今はその8.5倍である。
中国の1623万人の大学生の質はどうかということに興味のあるかたは多いと思う。それは次回のお楽しみに。
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<奇 錦峰(キ・キンホウ) ☆ Qi Jinfeng>
内モンゴル出身。2002年東京医科歯科大学より医学博士号を取得。専門は現代薬理学、現在は中国広州中医薬大学の薬理学教授。SGRA研究員。
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