SGRAかわらばん

エッセイ064:韓 京子 「韓国は今―商い編―」

かわらばんということなので、「韓国の今」をお伝えしなければと思うのですが、実際本国の人より、外国の人の方がよく見、よく知っていることが多いようです。「かわらばん」は読売されてもいたので、今回はお話口調といたします。

 

帰国して一年。なぜかまだまだ新発見ばかりの毎日です。さて、今回は商いについてお話しようと思います。店舗でもなく行商でもないような商いを。

 

まず、電車編。ソウルの電車はほとんどが地下鉄です。たまに茗荷谷や後楽園駅のように地上に駅のあることもあります。駅構内、といっても改札にいたる前ですが、階段の踊り場、通路にいろいろなものが売られています。日本でも駅構内にお店があるのが普通となってきて珍しいことと思われないでしょうが、ちょっと違うんです。階段や踊り場にはおばさんが野菜、特に山菜とかをきれいにお手入れして売っています。おじさんは綿棒(これは重宝してます。100本入りが4つで1000ウォン!)や、虫眼鏡、老眼鏡、その他小道具を売ってます。これらは以前からありましたが、新しいのは南米系の男女がアクセサリーを売っていることです。目新しいせいか、結構売れてそうでした。通路で最近はじめて見たのは「家訓書きます」です。大きな机を広げ、まわりの壁や床にはおじさん(書道の先生かと思われます)が書いた家訓が展示されています。ずいぶん長くいらっしゃるのですが、誰かが注文しているのを見たことないので商売になっているのかちょっと心配です。

 

改札を通ってからホームにたどり着くまでの空きスペースでは、DVDやブランドバッグ、ジャージ(すべてバッタもん)を売ってたり、ちゃんとしたお店のスペースでは入れ替わり立ち代り倒産したお店の洋服が売られたりしています。意外とないのはキオスクのようなもの。ガムとか飲み物は自販機です。新聞、雑誌の売り場はあるのですが、乗客は駅の入り口によく置いてある無料のタブロイド誌を読んでることが多いです。

 

電車内ではお年寄や体の不自由な方が(たまには怖そうなやーさんっぽいお兄さんが)ガムなどを売ったり、倒産した会社の品物(傘、かっぱ、電気かみそり、腰サポーター、なつかしのメロディのCD)を売ったり。

 

続いてバス停編。バス車内ではさすがに見かけなくなりました。こちらは降りてからです。団地の近くのバス停には結構いろんなものが売っています。屋台もありますが、トラックがお店となって止まっていることが多いです。果物やたまには魚(冷凍)、かに(茹で)、いいだこ(生)など。そして、バーベキューチキン(中にはお米とかが入っていて、スープのない参鶏湯みたいです)まで。朝の出勤の時間帯にはサンドイッチとトーストを売るミニトラックが出ます。バスの待ち時間にちょいと朝食って感じです。子供たちの下校時間にはトッポッキ(甘辛く炒めたお餅)やおでん、鯛焼き(韓国では「金魚パン」っていいます)など、おやつ系の屋台、トラックが並びます。時間帯によってお店が変わります。

 

道路編。ソウル市内の道路でも見かけるのは、渋滞の際、道路の真ん中でお菓子や茹でたトウモロコシ、するめなどを売ってる人です。高速道路などに多く、天から降ったのか、地から湧いたのか、いったいどこからあらわれたのだろうって思います。渋滞でお腹がすいてたまらないとき、退屈なとき、重宝します。これは何も韓国だけのものではなく、日本で見かけないだけらしいです。そういえば、「車のへこみ、きず、きれいになおします」もあります。ソウル近郊の道路では、なぜか釣竿(近くに川も海も貯水池もありません)、くつ、車関連グッズを売っていて、不思議だらけです。

 

そうそう。韓国は電車より車社会です。そして飲むと車を“つれて”帰りたいので「代理運転」を頼みます。これは日本にもあるそうです。ソウル近郊まで3万ウォンでタクシーとあまりかわらない値段らしいです。でも、代理の運転手さんはそこからどうやって帰るのか気になります。

 

韓国では、あれば便利な「ありがたい」ものから、「え、誰が買うの?」ってものまで、思いがけないところで購入できます。まだまだ話は尽きませんが、今日はこのへんで。

 

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ハン・キョンジャ(Han Kyoung ja)
韓国徳成女子大学化学科を卒業後、韓国外国語大学で修士号取得。1998年に東京大学人文社会系研究科へ留学、修士・博士号取得。日本の江戸時代の戯曲、特に近松門左衛門の浄瑠璃が専門。現在、徳成女子大学・韓国外国語大学にて非常勤講師。SGRA会員
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