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エッセイ048:江 蘇蘇 「Culture Difference と Generation Gapの狭間(2)」

私も親と100%理解し合えているとは言えない。中国の一般家庭に比べたら、中国にいる親と、日本文化を親より何倍も吸収している私との間には、違った意味でのGeneration Gapが多くある。少しだけ私と親の対話を思い出しつつ書いてみる。

 

●八月のある日
母: 今度の日曜日会社の友達が遊びに来るの。いっぱいおいしい物作らないと。
私: 日本人はお客が来てもお茶とかお菓子ぐらいで、ご飯ご馳走しても質素な物しか出さないよ。中国にいる時みたいに豪勢に出したら逆にびっくりするよ。
母: そんなことないよ、きっと。お客なんだからお茶だけは失礼でしょう。見栄えも悪いし。それにきっとお土産持ってくるでしょ?
私: お土産って言っても中国人みたいに両手にいっぱい何かを抱えてくる感じじゃないよ。
母: いつからそんなに冷たい人になったの?友人には惜しまなく接さないと!こっちがどう接するかで相手も同じように接してくるもんだよ!人間は一人では生きていけないの。友達や周りの人を大切にしていかないと。
私: それは分かっているけど、日本の文化は豪勢にというのがなくて、シンプルでも充分友達付き合いがうまくいくの。中国の友達と性質は違うかもしれないけど。
母: あなたも日本に長くいすぎたね。常日頃自分は中国人だと思わないと。
私: 別に自分が日本人だと思ってこういうことを言っているわけじゃないよ。

 

●その日曜日。トータル10皿の料理:かに、えび、豚の角煮などなどゴージャスに飾られたテーブルも会社の同僚二人により遠慮なく姿形なく消費された。満足気に帰っていった二人を巡って:
母: 日本人は全く遠慮がないね!同じ皿でもいい食材ばかり食べるね!
私: そうだね。
母: それにお土産はケーキ5個、うちら家族一人一個ずつに、彼女ら二人一個ずつ・・・
私: だから言ったじゃん。
母: それにしてもちょっとひどくない?人によるのかなー
私: ・・・

 

●その二週間後、仕事から帰った母は不機嫌だった。
母: 前に家に来た二人、今日私に何を言ったと思う?
私: 何?
母: この前ご馳走様。本当においしかったわ。今度また行かせて!また李さんが作った料理食べないなーだって!招待されたら招待し返すのが道理でしょ?こっちは外国人で物静かだからってそれにつけこんで、恥ずかしくないの?!
私: まあ、あの二人も悪いと思うけど、日本ではめったにこういう風に友達づきあいをしないから。中国の文化だからと甘えている部分もあるんじゃない?
母: あなたは日本人の肩を持つわけ?自分が何人かしっかり考えなさい!
私: え・・・お父さん何とか言ってよ!
父: まあ、お母さんは今機嫌悪いから大目に見てあげて。でもお母さんの言う通り自分は中国人だという自覚は大事だよ。
私(心の中で):なんでこんなことで売国奴にされるわけ・・・

 

●ある夏休み
父: 最近研究はどう?
私: ぼちぼちかな。そんなに忙しくない。学校も毎日行かないといけないわけじゃないから、よくコーヒーショップで論文書いているよ。
父: コーヒーショップ?わざわざお金を払って論文書きに行くの?お金の無駄遣いでしょうが!!回りはうるさいし集中できないでしょう!!
私: でも家にいても寒いから暖房つけるでしょ?周りは人がいっぱいだけど、慣れれば居心地いいし、けっこう集中できるよ!
父: 寒いなら研究室に行きなさい。お父さんが日本で研究していた時は、朝5時起きでバイト先に行って、9時に仕事をあがって大学に行き、夕方5時ぐらいまで研究して、ご飯を食べる時間もなくまたバイト先に直行して、夜中の12時までバイトしていたよ!!よく実験のため夜研究室で寝泊りしていたし、お金がもったいなくて、生活費、学費以外は貯金するため、当時スーパーで一番安かった卵と鶏肉を毎日食べていたよ!味付けだけ変えたりして。あなたは何お嬢様生活しているの!!そんなコーヒーショップに行く時間があったらもっと研究して論文を出しなさい!年に一本は少ないでしょう。研究に疲れたらバイトに行きなさい。自分の将来のために今は節約する時でしょう!
私: お父さんの時代は今とは違うから仕方ないじゃん。若いうちは若いうちにしか使えないお金の使い方だってあるし。海外行ったり、旅行したり、いろんなことを経験して、いろんな遊びもいまのうちにしておきたいじゃん。研究は研究でしっかりしてるよ!
父: 海外で英語の勉強をしたり研究したりするのは分かるけど、海外で経験とかなんとか言って、日本人の若者みたいにブランドショップで買物をしたり、高級レストランで食事したり、毎日いい生活しているのは経験じゃないでしょう。時間とお金を無駄に使うんじゃない。
私: そこは私もちゃんと考えているよ。英語もしっかり勉強してきたし。
父: あなたは留学生であって日本人ではない!もっと留学生と接してみると分かるが、留学生はみんな苦労している。苦労して生活費も学費もすべて自分で稼いで、その上勉学に励んでよい成績を修めている。苦労してこそ幸せが何倍も訪れてくる。あなたは苦労を知らなさすぎ!奨学金を運よく獲得したからね。それでもできる限りいっぱい知識を身につけて、バイトでいろんな社会経験も積んで、苦労を知らないと。自分は常に留学生であることを忘れないでね!
私: また日本人とか中国人とか言っている・・・仕方ないじゃん。高校生の時に日本に来たら少なからず日本気質に染まるじゃん。私は自分の大半は中国人の性質を残していると思うんだけど。
父: とにかくほどほどにね。自分が強くないと外国人として日本で生きていくのは辛いよ!中国のニュースや新聞もよく読むようにしてね!
私: はい・・・

 

まあこんな具合である。私が中国人離れしていくことを恐れている両親は、よく私に「自分は中国人であることを忘れないで」と忠告をする。勿論自分は中国人だし、日本人だと思ってはいないが、両親の「中国人」と「日本人」の間を明確に一線引いているところは、やはり留学第一世代とその子供の違うところなのだろうか。
とにかく、日本に「長く居すぎた」私はCulture Differenceを時たま感じながら、留学第一世代であった両親との考え方の違いによるGeneration Gapにも柔軟に対応していかないといけない。
いつもこの二つの壁に挟まれて「苦労」している。

 

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江 蘇蘇(こう・すーすー ☆ Jiang Susu)
中国出身。留学する父親と一緒に来日。日本の高校から、横浜国立大学、大学院修士課程・博士課程を卒業。専門分野は電子工学。現在(株)東芝セミコンダクター社勤務。SGRA研究員。
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(このエッセイは、筆者の承諾を得て、2005年度渥美国際交流奨学財団年報より再録しました)