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VILLEGAS教授「日本の少子高齢化問題について」

7月末のSGRAフォーラムin軽井沢に来てくださった、フィリピンのアジア太平洋大学のBERNARDO M. VILLEGAS教授が関連記事をフィリピンの新聞に書いてくださいましたので、翻訳してお送りします。

 

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PROFITING FROM JAPANESE SENIOR CITIZENS (フィリピンの一般誌「Bulletin Today」2002年8月9日に掲載)

 

7月19日から21日まで、東京から電車でおよそ一時間かかる、美しい『軽井沢』という山のリゾートで50人ぐらいの日本人、韓国人、中国人などの国際的な学者の集まりに参加した。軽井沢は、フィリピンのバギオ市に相当し、東京が35-40度の猛暑で苦しんでいたのに、こちらは爽やかで涼しかった。

 

フォーラムは関口グローバル研究会(SGRA)の主催で、渥美国際奨学財団、鹿島学術振興財団、韓国未来人力研究所の協賛によって開催された。鹿島は日本で最大の建設会社の一つである。フォーラムは「グローバル化のなかの新しい東アジア」というテーマで開催され、宮澤喜一元総理大臣とのオープン・ディスカションがハイライトであった。

 

このフォーラムで、私は、90年代初めに起きた不動産と金融バブルが弾けた後、12年間も続いている日本の経済低迷について、より深い見解を得ることができた。東アジア近隣諸国は、日本が、かつて米国についで果たしていた、世界経済の第2のエンジンとして復活するのを待ち望んでいる。

 

現在の経済低迷の理由としては、いろいろと取り上げられているが、そのなかで最も深刻なのは少子高齢化問題であると思う。日本は国民の寿命を伸ばすのに著しく成功した。現在、日本人は65歳の定年後にも数十年間生き延びている。今後10~15年間には、人口の25%ぐらいは高齢者で構成される(84歳になれる宮澤さんのように)。宮澤さんが私の質問に答えてくださったように、この高齢者の多くがお金持ちで、優雅な生活を楽しむことができる。実は、軽井沢の豪華な別荘の殆どは、お金持ちの高齢者が所有しているとのことである。

 

しかし、食料、飲料、電気製品、携帯電話、パソコン、自動車などといった伝統的な企業が生産する消費材については、高齢者は利益を生む市場としてならない。彼らのニーズは限定的で、医療、観光などに集中している。高齢者の人口が大きいことは活気のある消費市場にかならずしも繋がらない。

 

状況を悪化させるのは高齢者による消費の低下を補うだけの若者の人口が増えていない。日本の出産率はつねに人口を維持できるための2.1%を下回っている。日本は1.4%ぐらいで、移民がなければ人口が年々減っているということを意味する。最も警戒すべきなのは、定年者を維持できる労働人口が減っていることである。

 

何人かの日本人と話してみて、定年後の保証が十分でないため、病気になった時に不安を感じて支出を控える高齢者が増えているという、私の観察を確認した。また、年金制度に不安をもつ若い日本人の消費が抑制され、不確実な未来に備えるよう貯蓄を進めている。
この故、政府がいくら利子率を下げて拡大政策をとっても、日本の国内市場は、なかなか回復しない。

 

日本の社会問題は特殊ではないことを、私はフォーラムで指摘した。シンガポール、スペイン、イタリーなどが同じような問題を抱えている。しかし、これらの国々は労働力不足の問題の解決策として発展途上国からの移民を大量に受け入れている。シンガポールの労働人口の25%あまりは外国人で構成されている。イタリーには20万人あまりのフィリピン人が出稼ぎに行っている。日本はこの社会的問題を克服したいのだったら、外国人労働者に対して、特にサービス部門において、より開放的にならないといけない。

 

日本に1,686,444人の外国人が登録されているが、その内フィリピン人は8.6%を占め、韓国人の37.7%、中国人の19.9%、ブラジル人の15.1%についで第4目の人口を占めている。しかしながら、日本の人口の1.3億人に比べると、これらの数字は大したことではない。

 

日本人の「国際化」には長い期間が必要であろう。そのあいだ、限られた年金を使って、医療、観光、高齢者用リゾートマンションなどで毎年数ヶ月間を過す、日本の高齢者をフィリピンに招く機会があるだろう。このようなサービスは日本語ができる、日本へ出稼ぎに行ったフィリピン人ができるだろう。このようなビジスネス・チャンスを考えると、私達はアロヨ大統領の「強い国家」戦略を支持すべきであることがわかるだろう。この戦略は誘拐などのテロ活動を防止するためであるから。