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エッセイ805:閻志翔「私と仏像」
私の専門分野は古代の仏教彫刻史である。仏像を研究する際、すでに刊行された写真資料などを参照するだけでなく、現地で仏像を調査し、詳細な研究資料を入手する必要がある。日本における8年間の研究生活を振り返ってみると、一番印象に残っているのは、やはり自分が参加した数々の仏像の調査だ。
2018年の夏休み、初めて本格的な仏像の調査活動に参加した。場所は岩手県の中尊寺。当時は自分が何をすべきか全く分からず、指導教官の指示をこなすだけで精一杯だった。現場の緊張感と自分の無力さを今でも鮮明に覚えている。日本の仏像研究は長い歴史がある。仏像に対する調査の方法などに関しては、厳格な学術規範が確立されている。私は多くの現場を経験し、ようやく仏像を調査する方法を熟知することができた。しかし、仏像の特徴はそれぞれであり、毎回多くの新たな知識を得る。そして、普段の旅行では行けない日本の地方を回り、多くの楽しい思い出ができた。
同じ時期、奈良文化財研究所蔵の薬師寺西塔跡塑像片の調査に参加した際は、初めて仏像の撮影を任された。これをきっかけに、それ以降はほとんど、私が仏像の撮影を担当した。しかし、仏像をどう撮るかについて、どこにも書かれていない。仏像には色々な種類がある。尊格からみれば菩薩像、如来像、神将像などがあり、姿からみれば立像、坐像、半跏像などがある。木彫像、塑像、乾漆像など材質もさまざまだ。2018年の夏休み以降、数々の調査現場で指導教官の松田誠一郎先生(東京芸術大学美術学部教授)より一から仏像の撮影を教わった。「仏像を撮影すること自体は高い撮影の技術が必要ではなく、重要なのは仏像に対する理解である」と、松田先生はいつもおっしゃっていた。仏像の何を撮っているかを正しく理解していないと、仏像を上手に撮ることができないということだ。
例えば、仏像の頭部を撮影する時、カメラの位置は仏像の目線に合わせる必要がある。仏像は視線を下に向けていることが多いため、頭部の正面を撮る時、仏像の視線にあわせて、目より低い位置で少し上に向けてカメラを構える。そうすると、仏像の顔の雰囲気がよく伝わってくる。位置だけでなく、カメラ自体の設定やライティングなども各カットによって異なる。留学中の仏像撮影の経験は、かけがえのない財産となった。そして、いつの間にか展覧会の図録に載っている仏像の写真を撮影の点から鑑賞することが趣味の一つとなっている。
松田先生は千葉県文化財保護審議会委員を務めていたため、千葉県の多くの仏像調査に参加する機会を得た。これらは仏像を修理するための事前調査であることが多い。県の文化財関係の担当職員や仏像を修理する方々など、多くの関係者が参加する。文化財の保護に多くの方々が関わっていることに深い感銘を受けた。特に仏像は研究の対象だけでなく、信仰の対象でもあり、お寺の歴史、またはそれを信仰する人々の絆がある。自分が微力ながら仏像の保護に貢献できたことを誇りに思う。
2023年、博士論文の執筆のため、関係する仏像の調査を行った。特に高知での調査は私が計画したもので、印象深い。仏像調査は、ほとんどの場合、時間がごく限られている(大体午前10時から午後4時まで)。現場にいる時間を無駄にしたくないために、事前に調査の時間配分を決め、調査機材などをお寺に送った。調査する前には、仏像の写真を見ながら調書を作成し、現場で特に確認したい点を把握しておいた。お寺は山奥にあるため、交通ルートなどの確認やタクシーの手配も重要である。前日まで調査がうまくいくか心配していたが、幸いにも現場でこれまで知られていなかったことを発見し、奇麗な仏像の写真も撮ることができた。この達成感こそが、私の研究生活を支えてきた。そして、数年前、中尊寺の現場でただボーと立っていた自分を思い出すと、自身の成長を実感するとともに、次の調査での仏像との新たな出会いが楽しみでならない。
<閻志翔(えん・ししょう)YAN Zhixiang>
中央美術学院人文学院美術史専攻学士、東京藝術大学大学院美術研究科芸術学専攻日本・東洋美術史研究分野修士、同大学院美術研究科美術専攻芸術学研究領域(日本・東洋美術史)博士。2021年4月〜2023年9月、日本学術振興会特別研究員(DC2) 。2024年度渥美奨学生。現在、京都大学人文科学研究所外国人特別研究員



