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エッセイ165:キン・マウン・トウエ「時の流れと健康」

 

「40歳になると、身体機能、生活環境、職場環境などの影響によって、人間の視覚知識や視覚機能が低下する」・・・視覚工学研究や眼工学研究をしていた大学院時代に、論文や研究発表などの「概要」で良く使われていた表現でした。しかし、当時の私は、視力もよく、視覚知識が低下は自分で体験できないことでした。コンピューターシミュレーションによる実験で、本当の基礎データ-から求められた視覚機能低下者の画像結果を計算した時も、理論から考えて「このように見えるのだろう」と考えながら、研究を行っていました。

 

 
その頃、40歳を過ぎた方々から良く聞いたのが、「20代や30代の頃と比べると、体の調子が悪い。体のあちこちが痛い。生活環境を改善しなくては...」と言うことでした。留学時代は、徹夜をして2~3日続けて実験することもよくありましたし、研究室の方々や友達と一緒に無理なお酒を飲むこともありました。しかも、このように無理な生活をしていても、楽しく研究を行い、健康に暮らしていました。

 

 
ミャンマーに帰国後も、30代の後半までは、日本留学時代と変わらずに、職場でも自分がしたいことがあれば、昼夜関係無く、無理なこともよくしました。「健康」よりも「自分の目標」が大事で、体調は気に掛けずに、「私は大丈夫です。いくら無理しても、健康ですから」とよく言いました。

 

 
時の流れによって、私も昨年40歳になりました。まず、自分の視覚能力が低下してきたことを感じ、とってもショックを受けました。つまり、老眼が始まりました。40年間使用した眼の水晶体(レンズ)の働きが低下したということです。細かい作業をするときや、小さな字の本を読むときに、良く見えない。また、乱視にもなってしまい、雨の日の夜に車を運転する時は、見にくいので大変です。かつて私がシミュレー
ションをしていた視力低下者の「見え方」を、自分で体験することができたわけです。そして、時の流れによる「年齢」を感じ、「健康の大切さ」について気づいています。  

 

 
最近、また大きなショックを受けました。高血圧になり始めています。私の父が高血圧、母親が糖尿です。父も40代の時に高血圧の診断を受け、76歳の現在まで、生活環境にとても注意しながら血圧レベルを管理しています。母親も40代に糖尿病になり、62歳で糖尿病と関連する疾病が原因で亡くなりました。次兄も糖尿病を患っているし、姉も高血圧です。こんな家族の情況ですから、私も30代後半から食生活に大変注意してきました。

 

 
しかし、先月、風邪をひいて体調が悪いのに無理した時、眼の前が真っ暗になって、地球が回転して、その後何もわからなくなり、気づいた時は、病院のベッドの上でした。血圧が非常に上がった状態になっていたそうです。しばらく入院させられ、健康管理を行いました。検査の結果は、高血圧になり始めたけれども、その他の病気はまだ発生していない状態とのことです。今後、食生活の管理と運動によって血圧のレベルをコントロールしなければなりません。今まで健康な体でしたが、時の流れによって健康問題が発生してきました。

 

 
退院後、大きな問題はありませんが、コンピューターの前の仕事に影響が出ています。今まで、コンピューターの前に座って仕事するのは、何時間でも全く問題なかったのですが、退院後2~3週間ぐらいは、短いメールを書くのが精一杯でした。このエッセイも、締め切りに大変遅れて、申し訳ございません。今は、とっても健康でバリバリ仕事をしています。

 

 
一方、時が流れてよくなることもあります。5月のサイクロンによって甚大な被害を受けた地域は、かなり回復してきました。皆様の御支援を受けて支援活動を行った村も、寄贈したトラクターを使用して米を栽培し、まもなく村の人々の喜び季節がやってきます。今回は雨季の米の栽培でしたが、乾季栽培にも、寄贈したトラクターを利用する予定で、配置や分担などの準備が進んでいます。

 

 
時の流れによってよくなってきたこともあり、悪くなってきたこともあります。石や鉄でさえも、さまざまな要因によって、時が流れて無くなることもあります。我々人間の場合、健康を大事にすることが、自分の目標を達成するために、とっても重要なのだ感じています。

 

 
今回のエッセイは、私の体験に基づいて、皆様の健康管理の参考にしていただける内容を考えました。皆様のご健康をお祈り致します。

 

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 <キン・マウン・トウエ ☆ Khin Maung Htwe>
ミャンマーのマンダレー大学理学部応用物理学科を卒業後、1988年に日本へ留学、千葉大学工学部画像工学科研究生終了、東京工芸大学大学院工学研究科画像工学専攻修士、早稲田大学大学院理工学研究科物理学および応用物理学専攻博士、順天堂大学医学部眼科学科研究生終了、早稲田大学理工学部物理学および応用物理学科助手を経て、現在は、Ocean Resources Production Co., Ltd. 社長(在ヤンゴン)。SGRA会員。
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