SGRAメールマガジン バックナンバー

  • [SGRA_Kawaraban] Husel ”Trip to Moscow and Kazan”

    **************************************************** SGRAかわらばん564号(2015年4月17日) 【1】エッセイ:フスレ「モスクワ・カザフへの旅」 【2】第5回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送)   「日本研究から見た日台交流120年」   (2015年5月8日台北) **************************************************** 【1】SGRAエッセイ#456 ■ ボルジギン・フスレ「モスクワ、カザンへの旅(その1)」 2014年9月14日から26日までK先生と一緒にモスクワとカザンに行った。今回は、主に 資料調査であったため、出発4ヶ月前に、ロシアに行く度に利用してきた旅行社のH社 長に、交通が便利で、文書館に近いホテルの手配などをお願いした。H社長は、私が 送った文書館のリストをみて、1ヶ月かけて調整し、モスクワとカザンのホテルを手 配してくれた。 最初に泊まったホテルはモスクワの地下鉄クロポトキンスカヤ駅とパールク・クリ トゥールイ駅の間に位置する。そこは国立ロシア連邦文書館や古文書館に近く、歩い て20分程度の距離だったし、ロシア連邦外交政策文書館にも近く非常に便利だった。 ホテルの朝食は豊富で美味しかった。ホテルの近くにはトルストイ博物館やモスクワ 博物館、ピョートル大帝記念碑、トレチャコフ美術館などの観光の名所が林立してい る。また音楽学校もあって、ホテルを出ると、楽器を背負った生徒たちの姿をよく目 にした。 モスクワに到着した翌日、国立ロシア連邦文書館と古文書館に行った。帰り道、ある 公園をとおった時に、ベンチに座ってひそかにビールを飲んでいるロシア人の青年に 出会った。通行人がくると、その青年はすぐビールを新聞の中に隠す。目のいいK先 生は遠いところからその青年を見て、「あいつはビールを飲んでいるよ」と言いなが ら、青年に近づいて声をかけベンチに座った。青年はハバロフスクから観光にきたそ うである。K先生は青年にプーチン大統領のことについて尋ねた。青年は「すばらし いじゃないか」と答えた。「新聞の中になにか隠していない?」とK先生は青年に聞 いた。青年は少し迷ったが、「よかったらどうぞ」と言いながら、新聞の中に隠して いたビールを出した。結局、K先生はその青年と一緒にビールを飲み始めた。 「プーチンがお酒に関するへんな政策を作ったから、あなたはこのようにビールを隠 したんだね。ロシアの国民にお酒を飲ませない大統領が悪いんじゃないか」とK先生 が言った。青年は、「いいえ」と、プーチン大統領を大いにたたえた。…話が長くな りそうだったで、私は2人から離れて、公園を散策することにした。私が離れて行っ てしまうことを心配したのか、しばらくして、K先生が追いかけてきた。 その日の夜、K先生と一緒にアルバ—ト通りに行った。アルバ—ト通りは詩・歌・芸 術の街として有名であり、歩行者天国である。また、カフェやレストラン、みやげ物 屋も多い。私たちはここで夕食をとった。 私が初めてロシアに行ったのは2011年の春だった。モスクワのクレムリンや赤の広 場、サンクトベテルブルクのエルミタージュ美術館や人類学・民族博物館などを見学 したほか、バレエやオペラなども鑑賞したが、ロシアは大帝国であることと、「多民 族・多文化国家」であるということが印象に残った。今回は、歴史と文化に培われた ロシアの時空をあじわった。宿泊したホテルから駅までの間の建築物のほとんどはロ シアの歴史文化財になっている。私たちが宿泊したホテルからクロポトキンスカヤ 駅、或いはパールク・クリトゥールイ駅までは、本来、歩いていずれも10分程度の距 離であるが、K先生と一緒に行くと、1時間もかかってしまう。というのは、毎日、文 書館から帰りの道で、K先生は、いつも各建物の壁にかざってある案内版をみなが ら、その建物の歴史、あるいはその建物とかかわる歴史人物のことをかたりつづけた からである。私にとっては、よい勉強になった。 クロポトキンスカヤ駅周辺にはエンゲルス像やゴーゴリ並木通り、プーシキン博物 館、救世主キリスト聖堂などがある。初めてクロポトキンスカヤ駅に行ったとき、エ ンゲルス像をみたK先生は、「エンゲルス像をここに立たせるのは相応しくない」と 不満げに言った。理由を聞いたら、返事はなかった。パールク・クリトゥールイ駅の なかの壁には、ゴーリキー像が刻まれている。それをみたK先生は非常にうれしそう に、「これは面白いんだ」と、ゴーリキーのことをかたりつづけた。 モスクワでのもう一つの発見は、キックスクーターである。本来、キックスクーター は子供たちの玩具だと思ったが、モスクワでは、本物の交通道具として大人たちに使 われている。街では、キックスクーターで走っている人の姿をよく目にした。 (つづく) 旅の写真を下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/info/Essay456Photos.pdf ----------------------------------- <ボルジギン・フスレ Borjigin Husel> 昭和女子大学人間文化学部国際学科准教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年 東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。昭和女子大学 非常勤講師、東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員をへ て、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945〜49年)——民 族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、共編『ノモンハン事件(ハルハ 河会戦)70周年——2009年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社、 2010年)、『内モンゴル西部地域民間土地・寺院関係資料集』(風響社、2011年)、 『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化——2011年ウランバートル国際シンポジ ウム報告論文集』(風響社、2012年)、『ハルハ河・ノモンハン戦争と国際関係』(三 元社、2013年)他。 ----------------------------------- 【2】第5 回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第5回日台アジア未来フォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前 にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。 ■テーマ:「日本研究から見た日台研究120年」 日時:2015年5月8日(金)午前9時00分〜午後6時30分 会場:国立台湾大学文学院演講庁20番教室/会議室 お申込み・問合せ:SGRA事務局 電話:03-3943-7612 Email:[email protected] ●詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/5120.php ○フォーラムの趣旨 日清戦争の帰結としての「下関条約」によって台湾が日本に割譲されるまで、台湾と 日本の関係は薄かった。しかしそれ以降「最初の植民地」としての台湾と宗主国の日 本との関係は急に緊密になった。戦前50年間の植民地の歴史は台湾社会のみならず、 日本と台湾の文壇や文学創作方向、また日本語教育にも多大な影響を与えた。戦後に なると、台湾は中華民国に復帰し新たな時代を経験してきた。中華民国政府は1972年 まで日本と近い友好国の関係を維持し、またその後国交はないものの、互いに親近感 の濃厚な「民間交流」関係が築かれ、今日に至っている。 そうした日台関係の「大還暦」を迎える2015年という大きな節目に、日台交流の諸相 に言及する際、さまざまな視点より語ることができる。戦前の経験はいかなる遺産と していかに再認識すべきか、また戦後東アジアが新たな秩序を模索する中、台湾と日 本との関係は様々な困難を乗り越えて再構築されるプロセスにおいて如何なる特徴を 有しているのか。一方、日本文学研究や日本語學・日本語教育の研究は日台交流の状 況につれ、如何に変わってきたかなどの問題も見つめ直さねばならない。さらに、 120年の経験を踏まえ、次の120年の日台関係を展望するには如何なるキーワードを念 頭にいれる必要があるのか。本フォーラムはこのような問題意識をもって議論を展開 し「日台関係120年」の実像に迫る。 フォーラムは「語学と文学」、「国際関係」そして「社会変容」という三つのセッ ションから構成され、台湾、日本、中国などからの第一線で活躍されている学者を招 き、斬新な視点より鋭い議論を通して新たな「日台関係論」の構築に資したい。今回 も、過去の実績を踏まえ、渥美国際交流財団関口グローバル研究会と国立台湾大学が 共催する。日中同時通訳付き。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム(2015年5月8日台北) 「日本研究から見た日台交流120年」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/5120.php ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Max Maquito “Manila Report 2015 Spring”

    *********************************************** SGRAかわらばん563号(2015年4月9日) 【1】エッセイ:マキト「マニラ・レポート2015年春」 【2】第5回日台アジア未来フォーラムへのお誘い   「日本研究から見た日台交流120年」   (2015年5月8日台北) *********************************************** 【1】SGRAエッセイ#455 ■ マックス・マキト「マニラ・レポート2015年春」 「格差と成長のバランス」をテーマに、毎年1〜2回、マニラで開催しているSGRAの 「日比共有型成長セミナー」は19回目を迎えた。 今回はフィリピンの3つの大学が会場を提供してくれたが、準備の都合や企画委員の 多い、フィリピン大学で再度開催することが決定した。次回は、このセミナーをさら に広げるために、別の大学で開催する予定である。今回のセッションで座長を務めた のは、昨年8月にバリ島で開催した第2回アジア未来会議に参加した先生方で、引き続 きSGRAフィリピンの活動にご協力いただいている。 このセミナーは6つのセッションに分かれていたが、これは学際的な交流を促すため に、同時進行のセッションを意図的に避けたことによものだった。 第1セッション「開会の趣旨と問題提起」 座長:F. マキト(SGRAフィリピン代表/テンプル大学) 第2セッション「持続可能農業について」 座長:J. トリビオ(フィリピン土地改革省) 第3セッション「農業と製造業に関して」 座長:J. ダナカイ(フィリピン アジア太平洋大学) 第4セッション「再生可能エネルギーに関して」 座長:G. サプアイ(フィリピン 廃棄物管理協会) 第5・6セッション「被災地における計画や設計の構想」 座長:S. ギッレス、M. トメルダン(フィリピン大学建築学部) 総合司会:A. ラセリス(フィリピン大学経営学部) 各座長がセミナーの前に各自のセッションの発表者と連絡をとりあい、当日はどの セッションでも活発な質疑応答が行われた。 セミナーの翌日、マニラの北の山岳地方に行き、一泊して、次の日の午前中にフィリ ピンの地方都市で初めての共有型成長セミナーを開催した。これは会場となった大学 の学長でもあるSGRAセミナー企画委員のジュン・アンダル先生のお招きによるもので ある。参加者はマニラのセミナーと同じく約50人であった。この地方で活動してい る、SGRAセミナー企画委員のジェーン・トリビオ先生のチームも参加し、マニラでは 報告されなかった興味深い側面を話してくださった。どちらかというと、マニラで は、彼女の地域の素晴らしいところが中心であったが、現地のセミナーでは、この地 域が抱えている問題がより多く語られた。 これらのセミナーを通じて考えさせられたことが二つある。 一つは、アンダル先生の誘いもあって、次回の共有型成長セミナーは首都マニラでは なく、地方で開催したほうが効果的かもしれない。フィリピンでSGRAの活動の可能性 を探るために、今西淳子SGRA代表と一緒に母校のアジア太平洋大学を訪ねてからもう 10年が過ぎた。マニラで数件の研究・調査を実施し、企業や大学や政府や非営利団体 ともネットワークを一所懸命作ってみた。これらの活動はある程度成功したと思う が、フィリピンにおけるSGRAの活動をより効果的にするために、そろそろ方向転換が 必要ではなかと思う。 もうひとつ考えているのは、環境的に持続可能というのは、共有型成長の自然な延長 線にあるものではないかということである。共有型成長という概念は下記の二つの解 釈を促すと思う。まず、世代間の解釈であり、それは、ある世代が成長を実現し、か つ次世代の成長を犠牲にせず、世代間で成長を共有するということである。たとえ ば、今の世代が大地の恵みを大切に扱い、次世代まで残す、ということ。そして、も うひとつの解釈は、ネットワーク的に成長を共有することである。中央集権型ではな く、地方分権型のネットワークのほうが、気候変動や環境破壊などに強いということ である。 ヴァチカンの教皇様は、今年の1月にアジアで唯一のカトリック国であるフィリピン を訪問なさった。今回のふたつのセミナーでは、僕の発表の最後に、フィリピン訪問 中の教皇様のお言葉を引用させていただいた。 「私が伝えたいことの中心は貧しい人たち、前に進みたい貧しい人たち、2013年の台 風ハイヤンで被災した、そして今でも苦しんでいる貧しい人たちです。」(フランシ ス教皇、2015年1月マニラにて) 引用してから、会場にこう問いかけた。「皆さんが、この教皇様のお言葉をどう理解 なさっているかはわかりませんが、これは私たちが目指している持続可能な共有型成 長へのご賛同ではないでしょうか」と。 セミナーの写真は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/information/Seminar19Report.pdf -------------------------- <マックス・マキト ☆ Max Maquito> SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。SGRAフィリピン代表。フィリピン大学機械 工学部学士、Center for Research and Communication(CRC:現アジア太平洋大学) 産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、アジア太平洋大学にあるCRCの研究顧 問。テンプル大学ジャパン講師。 -------------------------- 【2】第5 回日台アジア未来フォーラムへのお誘い 下記の通り第5回日台アジア未来フォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前 にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。 ■テーマ:「日本研究から見た日台研究120年」 日時:2015年5月8日(金)午前9時00分〜午後6時30分 会場:国立台湾大学文学院演講庁20番教室/会議室 お申込み・問合せ:SGRA事務局 電話:03-3943-7612 Email:[email protected] ● フォーラムの趣旨 日清戦争の帰結としての「下関条約」によって台湾が日本に割譲されるまで、台湾と 日本の関係は薄かった。しかしそれ以降「最初の植民地」としての台湾と宗主国の日 本との関係は急に緊密になった。戦前50年間の植民地の歴史は台湾社会のみならず、 日本と台湾の文壇や文学創作方向、また日本語教育にも多大な影響を与えた。戦後に なると、台湾は中華民国に復帰し新たな時代を経験してきた。中華民国政府は1972年 まで日本と近い友好国の関係を維持し、またその後国交はないものの、互いに親近感 の濃厚な「民間交流」関係が築かれ、今日に至っている。 そうした日台関係の「大還暦」を迎える2015年という大きな節目に、日台交流の諸相 に言及する際、さまざまな視点より語ることができる。戦前の経験はいかなる遺産と していかに再認識すべきか、また戦後東アジアが新たな秩序を模索する中、台湾と日 本との関係は様々な困難を乗り越えて再構築されるプロセスにおいて如何なる特徴を 有しているのか。一方、日本文学研究や日本語學・日本語教育の研究は日台交流の状 況につれ、如何に変わってきたかなどの問題も見つめ直さねばならない。 さらに、120年の経験を踏まえ、次の120年の日台関係を展望するには如何なるキー ワードを念頭にいれる必要があるのか。本フォーラムはこのような問題意識をもって 議論を展開し「日台関係120年」の実像に迫る。 フォーラムは「語学と文学」、「国際関係」そして「社会変容」という三つのセッ ションから構成され、台湾、日本、中国などからの第一線で活躍されている学者を招 き、斬新な視点より鋭い議論を通して新たな「日台関係論」の構築に資したい。 今回も、過去の実績を踏まえ、渥美国際交流財団関口グローバル研究会と国立台湾大 学が共催する。日中同時通訳付き。 ■プログラム http://www.aisf.or.jp/sgra/schedule/TaiwanForum5_Program.pdf 【開会の辞】范淑文(国立台湾大学日本語文学科学科長)(09:00−09:05) 【基調講演】「日本と台湾の120年〜「二重構造」の特徴と変遷〜」(09:30− 10:30) 座 長:陳弱水(国立台灣大学文学院院長) 講演者:松田康博(東京大学東洋文化研究所教授) 【休  憩】(10:30−10:50) 【第一セッション】政治環境・国際関係の変容から見た日台関係(10:50−12:20) 座長:呉密察(国立台湾大学歴史学科兼任教授) 【報告1】「「植民母国」から「国際関係」へ〜台湾社会における「国際観」の変容 と日台関係120年〜」 李承機(国立成功大学台湾文学科副教授) 討論者:周婉窈(国立台湾大学歴史学科教授) 【報告2】「戦後初期台湾の日本研究/日本の台湾研究」川島真(東京大学総合文化 研究科教授) 討論者:何義麟(国立台北教育大学台湾文化研究所副教授) 【報告3】「中国の視点から見た台日関係120年」王鍵(中国社会科学院近代史研究 所研究員) 代読:洪?誠(国立台湾大学政治学研究科修士課程) 討論者:石之瑜(国立台湾大学政治学科教授) 【昼  食】(12:20−13:20) 【第二セッション】日本研究の回顧と展望〜言語と文学〜(13:20−14:50) A .文学・文化 座長:范淑文(国立台湾大学日本語文学科学科長) 【報告1】「台湾における日本近代文学研究」黄翠娥(輔仁大学外国語学院副院長) 討論者:林水福(南台科技大学応用日本語学科教授) 【報告2】「台湾における日本古典文学研究の過去、現在と未来」 曹景惠(国立台湾大学日本語文学科副教授) 討論者:陳明姿(国立台湾大学日本語文学科教授) 【報告3】「台湾における日本研究〜思想、文化、歴史をめぐって〜」藍弘岳(国立 交通大学副教授) 討論者:辻本雅史(国立台湾大学日本語文学科教授) B.言語・語学 座長:林立萍(台湾大学日本語文学科教授) 【報告1】「データから見た台湾における日本語学研究」頼錦雀(東?大学外国語学 院院長) 討論者:林慧君(国立台湾大学日本語文学科教授) 【報告2】「朝鮮資料の成長性〜諸本『隣語大方』から考える〜」申忠均(韓国全北 大学教授) 討論者:?瓊慧(輔仁大学日本語文学科学科長)           【報告3】「台湾における日本語教育研究の現状と展望〜国際シンポジウムを中心に 〜」 葉淑華(高雄第一科技大学外国語学院院長) 討論者:林長河(銘傳大学応用日本語学科学科長) 【休  憩】(14:50−15:10) 【第三セッション】日台社会の変容と交流の諸相(15:10—16:40) 座長:張啓雄(中央研究院近代史研究所研究員) 【報告1】「日台企業間の信頼と協力の再生産」佐藤幸夫(アジア経済研究所新領域 研究センター長) 討論者:任耀庭(淡江大学アジア研究所所長) 【報告2】「根を下ろせし異郷、故郷となれり」鍾淑敏(中央研究院台湾史研究所副 研究員) 討論者:傅琪貽(国立政治大学教授) 【報告3】「反記憶政治論〜日台関係の再構築に関する歴史学主義の一考察〜」 呉叡人(中央研究院台湾史研究所副研究員) 討論者:張隆志(国立清華大学人文社会学部学士班副教授・主任) 【休  憩】(16:40−16:50) 【総合討論】 21世紀の日台関係を展望する(16:50—17:50) 座   長:徐興慶(国立台湾大学日本語文学科教授、日本研究センター長) パネリスト:范淑文、辻本雅史、甘懐真、松田康博、川島真、呉叡人、林泉忠(敬称 略)   【閉会の辞】 今西淳子(渥美国際交流財団関口グローバル研究会代表)(17:50— 18:00) ○日台アジア未来フォーラムとは 第一回「国際日本学研究の最前線に向けて」は、台湾に見られる「哈日族」の現象に 注目しつつ、日本の流行文化を取り上げた。第二回は「東アジアにおける企業法制の 継受及びグローバル化の影響」をテーマとして、法学の問題について議論を深めた。 第三回「近代日本政治思想の展開と東アジアのナショナリズム」は、政治思想とナ ショナリズムとの関係について、また第四回フォーラムでは、「東アジアにおけるト ランスナショナルな文化の伝播・交流−思想、文学、言語−」をテーマとした。 このように、関口グローバル研究会(SGRA)は、日本、台湾さらにはアジアの未来に 向けて、アジア各国の相互受容や影響関係に焦点を当て、文化、文学、言語、法学、 政治思想などの議題について考えている。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム(2015年5月8日台北) 「日本研究から見た日台交流120年」 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/5120.php ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Sim Choon Kiat “A Mission Impossible Made Possible by Mr Lee Kuan Yew”

    *********************************************** SGRAかわらばん562号(2015年4月2日) *********************************************** ☆本年度よりSGRAかわらばんを毎週木曜日に配信します。 SGRAエッセイ#454 ■シム チュン・キャット「生存不可能な国を可能にしてみせたリー・クアンユー 氏」 2015年、この年はシンガポールの歴史に深く刻まれる年となります。建国50周年を迎 えた年としてではなく、偉大なる建国の父がこの世を去った年として記録されること になるからです。 「偉大」という言葉を使うことで、まるで僕がどこかの国の国民みたいに独裁者を熱 狂的に崇める輩のような印象を持たせてしまうかもしれませんが、僕は死んでもそう いう人間にはならないことを僕のことを知る人なら分かるはずです。しかし誤解を招 きかねない表現であっても敢えて使います。リー・クアンユー氏は偉大です。 リー・クアンユー氏の功罪を分析する書籍、論文や新聞・雑誌記事などがたくさん出 ている中で、同氏の指導力、高圧的な政治手腕と独裁ぶりについては他の所を参考に していただくことにして、ここでは彼が率いる人民行動党による一党支配体制下で生 まれ育った一国民として自分の素直な気持ちを書きたいと思います。 発展途上国といわれるアジアの国々を訪れるたびに、僕はよくデジャビュに襲われま す。手入れの行き届かない住宅、クモの巣のように地上に張り巡らされている電線 網、衛生状態の悪い屋台の群れ、黒い水が流れる水路などなど、僕がまだ幼かった頃 にシンガポールでよく目にした風景とどこか似ていると、心のアルバムのページが開 くからです。現在一人当たりGDPが約6万USドルと日本の約4万USドルよりも高く、IMF や世界銀行などいずれの統計においても経済的豊かさが世界トップ10に入っているシ ンガポールからは到底想像できない風景でもあります。この驚くべき変貌を可能にし た国づくりの第一設計者がリー・クアンユー氏であることに異議を唱える国民はいま せん。国の発展と繁栄とともに成長し、多くの恩恵を受けてきた僕のような独立後世 代はなおさら否定することができません。 とはいえ、この世に完璧なものはあり得ません。完璧な民族、完璧な国なんて幻想で しかありません。 経済や社会がうまく回っているように見えるシンガポールでも、 他の国と同じくいろいろな課題を抱えていることは事実です。ただ、国土が小さく資 源も無いに等しい事情に加え、多民族・多言語・多宗教という複雑な国情の中で、文 化も習慣も言葉も信仰も異なる国民同士が仲良く共存できていることが不思議でなり ません。教会の近くにモスクが建ち、50メートル先に道教のお廟があって、そのすぐ 隣りのヒンズー教寺院から祈りの声が響く、という今のシンガポールでは当たり前の 風景でさえ、民族間不信や宗教暴動が頻発していた歴史から考えれば、これも奇跡の 一つなのかもしれません。そして、その背後に無宗教のリー・クアンユー氏の存在が 大きいことは、国民なら皆知っています。 もちろん、リー・クアンユー氏も完璧な人間ではありません。彼のことが嫌いだとい う人も少なくありません。実をいうと、僕もその一人です。超合理的でエリート主義 者でもある彼は、物議を醸す発言を連発した時期もありました。大卒の女性の多くが 独身であり、結婚しても産む子供の数が低学歴の女性より少ないという傾向を変える べきだとか、一人一票が最善の選挙方法であるとは限らず家庭と子供を持つ国民には 二票を与えるべきだとか、何の資源もない一国のあり方と将来を担う首相、大臣と上 級官僚が世界一の高給をもらって当然だとか、反対ばかりしてより良い政策を提案す る能力もない野党は要らないとか。一般の指導者であれば思っていても普通は決して 口には出さないことを、このように躊躇もせずに直球で見解を表明することに気持ち 良さすら感じてしまいます。また冷静に考えれば、それらの発言に一理がないわけで はなく、その独創的な発想に新鮮さと大胆さを覚えます。好きではありませんが、心 から尊敬はします。言ってみれば厳父のような存在です。 その厳父は優しいおじいさんでもありました。リー・クアンユー氏の7人の孫の一人 であり、長男であるリー・シェンロン現首相と亡くなった前妻との間に生まれた息子 であるイーペン氏は、アルビノで視覚障害があり、またアスペルガー症候群にもか かっています。この孫のことを一番可愛いと、リー氏は自身の回顧録にも書いていま す。リー・クアンユー氏の遺体が納められた棺が、一般国民の弔問を受けるために国 会議事堂へ運ばれたとき、イーペン氏は先頭に立っておじいさんの遺影を持って歩い ていました。その直後、国民による厳父への弔問の列は予想をはるかに超え最大で8 時間待ちとなり、政府が国民に弔問を控えるように勧告を出したほどでした。 亡くなられる数年前にリー氏はあるインタビューで、自分が下した難しい政治決断に 対して反対や不満を抱く人々もいただろうということを認めたうえで、次のように語 りました。「結局のところ、私が何を得たかって?それはシンガポールの成功だ。私 が何を捨てたかって?それは私の人生だ」と。 数年後、シンガポールのどこかにリー・クアンユー氏の銅像が建つのでしょう。いつ かシンガポールのお札の肖像も今の初代大統領のユンソ・ビン・イサーク氏から リー・クアンユー氏に変わるかもしれません。いずれにせよ、銅像がなくてもお札が 変わらなくても、その名は永遠に国民の心の中に生き続けるのでしょう。 ------------------------------- <シム チュン キャット☆ Sim Choon Kiat☆ 沈 俊傑> シンガポール教育省・技術教育局の政策企画官などを経て、2008年東京大学教育学研 究科博士課程修了、博士号(教育学)を取得。昭和女子大学人間社会学部・現代教養 学科准教授。SGRA研究員。主な著作に、「選抜度の低い学校が果たす教育的・社会的 機能と役割」(東洋館出版社)2009年、「論集:日本の学力問題・上巻『学力論の変 遷』」第23章『高校教育における日本とシンガポールのメリトクラシー』(日本図書 センター)2010年、「現代高校生の学習と進路:高校の『常識』はどう変わってきた か?」第7章『日本とシンガポールにおける高校教師の仕事の違い』(学事出版) 2014年など。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Economics learnt from Thomas Piketty and our everyday life”

    *********************************************** SGRAかわらばん561号(2015年3月25日) *********************************************** SGRAエッセイ#453 ■ 謝 志海「トマ・ピケティに学ぶ経済学と我々の生活」 フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」が世界的ベストセ ラーになっている。日本語版も昨年末に発売され売れ行きも好調。各誌がこぞってピ ケティ特集を組んでいる。日本の経済学者だけでなく、会社経営者たちもこの本、そ してピケティ本人に随分と影響を受けているようだ。新聞や雑誌のインタビューで彼 の本と発言の引用をよく目にする。私も実はそれらの記事からピケティ氏を知った。 そして今、本屋では「30分で理解する」などといった「21世紀の資本」の解読本のよ うなものがたくさん並んでいる。先日の衆院予算委員会でもピケティの名前が出てき た。 これまで話題性のあるカリスマ的経済学者というと、おきまりのようにアメリカ人も しくはアメリカの名門校の教授だった。彗星のごとくフランスから世界へ躍り出たト マ・ピケティ、話題の本の内容はというと「富というのは富があるところに集中す る、よって格差が生じる。手を打たないとこの格差は今後どんどん広がるだろう」と いうものだ。すなわち、資産を持っている人は、その資産を運用することで、さらに 富を増やすことができる。こういった資産の収入を不労所得という。資産がある人は 自分が働いて収入を得ている間も、その人の資産も自分で働きお金を稼いでいる。で は資産の無い人が資産を得ようとすると、自身が労働し報酬を得るしかない。不労収 入が無ければ、その人の労働時間は長くなるばかり。この資産ある人、無い人の差を ピケティ氏は指摘する。さらに現代の資本主義では、この格差は拡大の一途をたどる という。格差社会の先陣を切っているアメリカではあまり話題にしたくない題材かも しれない。 しかしこの本の英語版は昨年のアマゾンの売り上げランキング1位になった。賛否両 論あるそうだが、アメリカの経済学者も肯定的な評価をしている人が多い。この本が 経済学の内輪の世界にとどまらず、民間企業の経営者や一般市民までに知れ渡り、惹 きつけられるのにはいくつか理由がありそうだ。まず世界中の経済学者がこの本に注 目するのは、ピケティ氏が歴史を遡り、かつ過去の莫大なデータを集めて分析し実証 的に示したからであろう。つまり、机上の空論では無いということだ。次に、経済学 者だけにとどまらず、広く一般にこの本が読まれることとなった背景に、格差社会が どの国でも顕著な、極めて身近な課題だからではないだろうか。例えば、この本の日 本語版が出版された昨年は、日本では4月の消費税の増額にとどまらず、さらに増税 する時期について大いに盛り上がった1年だった。それだけではない、アベノミクス の下、日銀が掲げる「2%のインフレ達成」、どちらも日本人の日々の生活に直接影響 する。なんと絶妙なタイミングで現れた本だろうという感じがする。 「21世紀の資本」をただの一過性の話題本で終わらせてしまうのか、それとも、我々 一般市民が経済について一考するチャンスととらえるのか?私は後者を選ぼうと思 う。 ピケティ氏の「21世紀の資本」の中で結論とされる「r > g」という不等式、今では 本の題名と同じぐらいよく目にする数式になったが、簡単にいうと、債券や株、不動 産といった投資による資本収益率「r」は、経済成長率 「g」をつねに上回ってい る。しかもこの状態はいつの時代においても起こっていて、このまま続くと富の不平 等が固定化されてしまうという。この一見シンプルな不等式により表現されている現 実には、我々がどの国に住んでいようが、資本主義社会に生きていることを痛感させ られる。資本主義社会の基本的な仕組みである経済、その仕組みを知らずに生きてい くのはあまりに無防備だ。今こそ経済というフィルターを通して、自分の立ち位置を 知り、格差社会とどう向き合い、今後の世の中の動きを自分の考えで推測して将来に 備える、いい機会かもしれない。日本のこのピケティ・ブームはそう教えてくれてい る気がする。 まず自分の立ち位置についてだが、ピケティ氏は現代の社会における不平等の現状と して、所得に応じて、上位層(10%)、中間層(40%)、下位層(50%)と3つのグループに分 けている。上位層は資本所得が多く労働所得を上回っている。グループの半分を占め る下位層の資本所得は無いに等しく労働所得が収入だ。この分類だけで、経済学など 知らなくても、格差と機会の不平等が浮き彫りになっていることがわかる。自分はこ の3つのどの層にいるのかは、だいたいわかるだろう。なにしろ、90%の人が上位層で はないのだから。ピケティ氏と共同研究者によると、アメリカの上位層(10%)の富裕 層が総所得に占めるシェアは50%近く、さらにこの10%の中の上位1%の所得シェアは約 20%という結果だ。こんなショッキングな数字が出ればアメリカでこの本が売れるの は当然だ。日本のメディアもこぞって彼を追いかけるのは、動向があやぶまれるアベ ノミクスについてピケティ氏に聞きたいことがたくさんあるからだろう。 では、日本の格差はいかがなものであろう?今年の1月にピケティ特集を組んだ東洋 経済誌によると、日本の所得上位層の上位0.01%に該当する人の年収(税引き前、各種 控除前)は8057万円。アメリカだとこの階層はなんと8億円を超えている。さらに、注 目すべき点として、上位1%の年収が1279万円であること。これはおよそ上場大企業の 管理職クラスが該当するそうだ。「年収1千万プレーヤー」なんて言葉を日本ではよ く耳にする。この年収1000万円のラインに何歳で乗れるか否かがよく話題になる。そ れに上場大企業といえども、管理職クラスの人々もおそらく皆と同じ電車通勤してい るだろう。ということはこの上位1%の人の暮らしは、富裕層ではない人々にとって想 像の範囲内であり、日本はアメリカほど格差が拡大していないと言える。一見安心な 結果のようだが、日本では世代間格差や新卒の就職難、増える非正規雇用者など、雇 用機会そのものが問題だ。しかし迫り来る消費税10%、物価上昇は全ての人にふりか かる。今後日本は所得格差が縮まるということはなさそうだ。今のうちに自分がどの 階層に位置するかを知り、格差社会に負けない人生を構築しておきたい。 さしあたって、アベノミクスは今後どうなるだろう?と日々の日本の政治経済の動向 を観察して、自分なりに日本の未来を占うのもいい。今は盛り上がっているアベノミ クス、いずれ崩壊すると読むのなら、それが自分の生活にどう影響するのかも考えて おく必要がある。もちろんこのような危機管理を以前からしている人もいるだろう、 そういう人は意識的もしくは無意識に経済を気にかける生活を送っていると再確認出 来る。またこのピケティ氏が警笛を鳴らす今後の格差の広がりと、アベノミクスを考 慮して、なけなしの貯金で株を買いはじめる人もいるだろう。自分の身近なところか ら経済に対し自分の考えを持ち、出来ることはやってみること。ピケティ・ブームは 我々と経済学をこれまでになく身近な存在に近づけてくれた気がしてならない。 ----------------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Li Kotetsu “Chinas Dream of Going West, and the Future of Asia (Part 2)”

    ********************************************************************** SGRAかわらばん559号(2015年3月18日) 【1】エッセイ:李 鋼哲「西に向かう『中国の夢』と未来のアジア(その2)」 【2】新刊紹介:今西淳子編「アジアの未来へ—私の提案 Vol.2」 【3】催事紹介:中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム        (2015年8月18日〜21日 中国・延辺大学) ********************************************************************** 【1】SGRAエッセイ#452 ■李 鋼哲「西に向かう『中国の夢』と未来のアジア(その2)」 そうしたなか、アジアでは中国とインドの台頭が世界的に注目されている。IMFは昨 年(2014年)10月7日に発表した報告書『世界経済の見通し』のなかで、購買力平価 (PPP)ベースでみた中国のGDPは2014年末に17兆6,000億ドルに達し、アメリカの17 兆4,000億ドルを上回り、世界一の経済大国になると予測した。同じくPPPベースで、 新興経済国G7(BRICs4カ国、インドネシア、メキシコ、トルコ)のGDP合計(37兆 8,000億ドル)が、先進G7(米英仏独伊日加)のGDP合計(34兆5,000億ドル)を上回 るという見通しである。 その中国は、潤沢な外貨準備高を利用し、BRICS開発銀行(資本金500億ドル、2016年 発足)、BRICS外貨準備基金(資本金1,000億ドル、2015年発足)、アジア・インフラ 投資銀行(AIIB、資本金500億ドル、26か国参加、今年6月発足)などの構想を打ち出 し、既存のアメリカ主導のIMF、世界銀行のドル体制を脅かしている。 その中でも注目されるのが中国とインドの急接近である。かつて「犬猿の仲」であっ た両国は、今では手を携えてアジアの未来を共同で構築するという方向で動いてい る。習近平主席は「中国の夢」を実現すべく、「シルクロード経済帯」と「21世紀海 上シルクロード」という「一帯一路」構想を周辺外交の方針とし、昨年9月14日から9 日間にわたってタジキスタン、モルジブ、スリランカ、インドの4ヵ国を歴訪した が、その訪問を「一帯一路構想を実現する旅」と位置づけていた。 特に、インド訪問は中国の対インド政策の180度転換を印象づけた。9月17日、習主席 はインドのグジャラート州のアーメダバード空港に降り立ち、そこでモディ首相と首 脳会談を行い、以後2泊3日の全行程にモディ首相が同行した。モディ首相は、「イン ドの第一歩を、私の故郷に降り立ってくれて嬉しい。今年の7月にブラジルで初めて お目にかかった時、私はインドと中国は『二つの身体、一つの精神』であると述べ た。INDIAとCHINAの頭文字を取れば、INCHではないか。われわれはインチの距離にあ る関係であり、マイルの距離まで関係を発展させるのだ」と述べた。 習近平主席の回答は、次の通りだ。「グジャラート州は、唐代の高僧・玄奨が立ち 寄った場所で、中印交流の記念の地だ。両国は共に古代からの文明国であり、発展途 上にある大国だ。今回の私の訪問は、友誼の旅であり、提携の旅だ…。『世界の工 場』と『世界のオフィス』が組めば、怖いものはない。アジアの両大国が、『中国の 能力』と『インドの知恵』によって牽引していくのだ。両国は手を携えて、バングラ デシュ・中国・インド・ミャンマーの経済回廊の建設、シルクロード経済ベルト、21 世紀の海上シルクロードを進めていこうではないか。モディ首相が唱える『二つの身 体、一つの精神』に賛同する。『中国龍』と『インド象』が組めば、国際社会に大き く貢献できる」と述べた。 つまり、中国は「アジア未来の夢」を実現する最有力パートナーとしてインドを選ん だのである。言い換えれば、今まで東アジアで言われていた、日中両国(または日中 韓3国)が協力して「アジア共同体」をリードするという考え方からすると、大きな 方針転換である。 これにより私がSGRAフォーラムで発表した「アジア・ハイウェイ」構想は西に向けて 一歩前進するだろうが、東の日本と朝鮮半島の位置づけが変わることは間違いない。 *筆者は「アジア・ハイウェイ」の旅を夢見ており、その第一歩を今年5月2日に東京 からスタートし、博多で対馬海峡をフェリーで渡り、プサンからソウル、そして板門 店、中国経由でベトナム、カンボジア、ラオスまで走破する計画。SGRAからの参加者 を募集中! 「西に向かう『中国の夢』と未来のアジア(その1)」は下記リンクからお読みいた だけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/post_527.php --------------------------------- <李 鋼哲(り・こうてつ)Li Kotetsu> 1985年中央民族学院(中国)哲学科卒業。91年来日、立教大学経済学部博士課程修 了。東北アジア地域経済を専門に政策研究に従事し、東京財団、名古屋大学などで研 究、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、現在、北陸大学教授。日中韓3カ 国を舞台に国際的な研究交流活動の架け橋の役割を果たしている。SGRA研究員。著書 に『東アジア共同体に向けて——新しいアジア人意識の確立』(2005日本講演)、そ の他論文やコラム多数。 --------------------------------- 【2】新刊紹介: 沸騰するアジアの声を世界へ! ■「アジアの未来へ——私の提案 Vol.2」   Toward the Future of Asia: My Proposal   第2回アジア未来会議優秀論文集 驚異的な発展を遂げながらも、さまざまな問題と直面するアジアの国々。渥美国際交 流財団関口グローバル研究会(SGRA)は、このような問題を語り会う場を提供するた めに「アジア未来会議」を開催しています。第2回目の会場となったのは、2014年8 月のバリ島(インドネシア)。本書はこの会議において発表された優秀論文18本と記 念講演3本を集めたものです。 編者:今西淳子(渥美国際交流財団) 判型:A4変形 定価:本体3500円+税 ISBN978-4-902928-13-6 出版:ジャパンブック 購入ご希望の方は、amazon.co.jp あるいはお近くの書店でご注文いただくか、アジ ア未来会議事務局へご連絡ください。 ジャパンブック  http://www.japanbook.co.jp ちらし  http://www.aisf.or.jp/sgra/info/AFC3Book_Chirashi.pdf 【3】催事紹介 エッセイ執筆者の李鋼哲さんから、下記国際シンポジウムのご案内をいただきました ので、ご紹介します。 ■ 第四回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム 昨今、中日間で領土問題をめぐって不愉快なイシュが多発し、不協和音が続いていま すが、だからこそ、国家的・民族的・政治的な障壁を乗り越え、東アジア諸国を視野 に入れた、このような国際的・学際的シンポジウムを開催する必要があるのではない か、と思慮されます。したがって、今回も2009年度、2011年度、2013年度のシンポジ ウムに劣らず、ぜひ国内外の大勢の方々にご参加いただき、シンポジウムの主題をめ ぐる活発なご発表がありますことを、心より期待しております。 1.参加資格 日本研究を中心とした東アジア人文社会系の研究、特に比較・対照研究に興味のある 方ならどなたでも参加できます。 2.大会日程と会場 ◆会場:中国・延辺大学 8月18日(火) 受付 8月19日(水)〜20日(木) 開会式・基調報告・分野別の特別セッション・分科会 発表・閉会式 ◆8月21日(木)〜国内・国外旅行(長白山(日帰り)、防川・図門(日帰り)、ロ シア・ウラジヴォストーク(2泊)、北朝鮮・羅先市(2泊)予定。自由参加(諸費用 は自己負担)、但し、中国人以外は北朝鮮旅行は不可。なお、中国人以外の方がロシ ア旅行希望の際は、自国内においてビザを取得すること。 3.シンポジウムの主題 ■東アジアにおける日本学研究の新しい視点(暫定)(言語、文化、文学、教育、社 会、経済、法律等) (1)日本研究を中心とした中・日・韓・朝人文系の比較・対照研究と一般研究 (2)東アジアにおける日本研究の現状と展望 (3)多言語の共存と言語教育 (4)異文化の対話と価値観の多様性 (5)中国少数民族地域における教育 (6)偽満州国(旧満州国)をめぐる日本研究 4.お申し込み 参加希望者は申込書に必要事項をご記入後、日本語の要旨(800−1000字、必ず規定 を守ること)とともに、2015年5月30日まで下記のシンポジウム準備委員会に送って ください。 詳細は下記リンクよりご覧ください。 http://www.aisf.or.jp/sgra/info/Symposium_Announcement.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Li Kotetsu “Chinas Dream of Going West, and the Future of Asia”

    ******************************************** SGRAかわらばん559号(2015年3月11日) ******************************************** SGRAエッセイ#451 ■ 李 鋼哲「西に向かう『中国の夢』と未来のアジア(その1)」 去る2月7日、第48回SGRAフォーラム(第14回日韓アジア未来フォーラム)が東京代々 木の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。このフォーラムはSGRA 構想アジア研究チームと日韓アジア未来フォーラムが共催したもので、アジアの急速 な経済成長のダイナミズムを物流システム構築の側面から、その現状と課題について 議論した。 筆者は「アジア・ハイウェイと地域統合−その現状と課題−」をテーマに、アジアの 未来に向けた夢と現実について報告した。10年前、筆者は日本の国策シンクタンク NIRA(総合研究開発機構)で日中韓3カ国の国策シンクタンク(韓国のKRIHS(国土研 究院)、中国のDNRC(国土研究所))による共同プロジェクト「北東アジア・グラン ド・デザイン」の研究と政策提言に携わり、そこで北東アジア地域の物流統合の未来 ビジョンと現状や課題について数年間研究した。その中で、「アジア・ハイウェイ構 想」、「日韓海底トンネル構想」、「北東アジア物流ネットワーク構築」などについ て検討した。 アジアを一つに結びつける「アジア・ハイウェイ構想」は国連ESCAPが1950年代に提 唱し推進している。2004年の時点でアジアやヨーロッパ32カ国が参加し、政府間協定 に署名した。東は東京日本橋(AH1)が出発点で西はイスタンブールまで道路を繋ぎ、 アジア諸国が協力して共に発展し、平和・繁栄の夢を実現しようとするものである。 「アジア・ハイウェイ構想」の総延長141,714㎞のなか、中国本土だけで26,699㎞が 指定され、中国大陸を経由して東南アジア、西アジア、中央アジア、北アジアやロシ アまでその交通網が広がる構図である。 この「アジア・ハイウェイ構想」の実現に大きなインパクトを与える重要な構想が中 国から提案されている。習近平主席の「一帯一路」構想である。中国は「一帯一路」 構想をアジア諸国と進めることにより、新しい成長ベルトとして開発し、それを「新 常態」に突入した中国経済の新しい成長軸とすることを目論んでいる。 中国では、2014年春より経済成長が鈍化へ向っている現状を「新常態」という言葉で 表し、新しい中国経済の状態を認識し、受容するように習指導部が呼びかけ、それに 基づいた経済戦略や改革ビジョンを打ち出した。そして、対外経済関係・外交におい ては、「一帯一路」という「新しいアジア・グランド・デザイン構想」(筆者造語) を発表し、実行に移しつつある。いずれも、習近平政権の新しい経済戦略と外交戦略 構想である。もし、この構想通りに進むのであれば、アジアの勢力構図は大きく変わ るだろう。 「新常態」は、中国の経済成長の鈍化を前提としたソフト・ランディングを目指す新 しい成長パターンを示す用語として提起されたが、昨年後半の経済外交や政治外交を 観察すると、それは単純な経済の新常態を表す言葉の領域を遙かに超え、新しい外交 戦略の構想を示す国際関係の用語としても使われるようになった。それと共に、習近 平主席は「一帯一路」構想を提案し、9月には中央アジアや南アジアの諸国を訪問 し、その実現を訴えている。 「一帯一路」構想は、新しいアジア秩序において、今までの「ルック・イースト」戦 略から、「ルック・ウェスト」(西に向かう)の戦略的な転換を意味するものと見ら れている。分かりやすく言えば、今まで中国が重視していた日本、韓国などアジアの 先進国との関係や戦略的な価値は低下し、インドや東南アジア、中央アジアがこれか らの中国の戦略的開発方向だという意味である。経済開発のみではなく、政治的・外 交的にもインドと中国はアジアの二つの「象と龍」であり、「象と龍」が未来の世界 の中枢になるという考え方である。 このような中国の外交政策や世界戦略とアジア戦略の転換は、東北アジアの国際関係 や経済協力に大きなネガティブ・インパクトをもたらすと私は考えている。「東北ア ジア人」の私にとっては「夢と希望」に陰が落とされた重大な変化である。 日本の国際関係学者久保孝雄氏は「同時進行する南北逆転・東西逆転への胎動—加速 する世界の地殻変動—」(メールマガジン「オルタ」第133号、2015.1.20)という論 考で、「アメリカの覇権衰退が加速し、・・・世界経済における南北(先進国対新興 国)逆転と、世界政治における東西(アジア対欧米)逆転への動きが複合しつつ進展 している」と指摘する。(つづく) --------------------------------- <李 鋼哲(り・こうてつ)Li Kotetsu> 1985年中央民族学院(中国)哲学科卒業。91年来日、立教大学経済学部博士課程修 了。東北アジア地域経済を専門に政策研究に従事し、東京財団、名古屋大学などで研 究、総合研究開発機構(NIRA)主任研究員を経て、現在、北陸大学教授。日中韓3カ 国を舞台に国際的な研究交流活動の架け橋の役割を果たしている。SGRA研究員。著書 に『東アジア共同体に向けて——新しいアジア人意識の確立』(2005日本講演)、そ の他論文やコラム多数。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Kim Woonghee “Nikkan Asia Future Forum #14 Report”

    ********************************************************* SGRAかわらばん558号(2015年3月04日) 【1】金 雄熙「フォーラム『アジア経済のダイナミズム』報告」 【2】情報提供:2014年留学生数(日本学生支援機構) ********************************************************* 【1】SGRA催事報告 ■ 金 雄熙「第14回日韓アジア未来フォーラム『アジア経済のダイナミズム』報告」 2015年2月7日(土)、国立オリンピック記念青少年総合センターで第14回日韓アジア 未来フォーラム(第48回SGRAフォーラム)が開催された。今回は「アジア経済のダイ ナミズム−物流を中心に」というテーマだったが、2013年度から5年間のプロジェク トの第2年目として、日韓の交通・物流システムにおける先駆的な経験が、アジアの 持続可能な成長と域内協力にどのように貢献できるのかという問題意識に立ち、アジ ア地域で物流ネットワークが形成されつつある実態を探り出し、その意味合いを社会 的にアピールすることを目的とした。 フォーラムでは、未来人力研究院理事長の李鎮奎(リ・ジンギュ)教授による開会の 挨拶に続き、基調講演と2人の研究者による発表が行われた。基調講演では、「ミス ター円」と呼ばれた榊原英資(さかきばら・えいすけ)さんが、中国やインドが19世 紀初めまでは世界の2大経済大国であったことを考えると、昨今の高い経済成長は 「リオリエント」現象とも呼ばれるべきものであると力説した。また、インドネシア など東南アジア諸国も高い成長を続けており、次第に成長センターは西に移っている とした。おそらく20年後にはインドの成長率が中国のそれを越え、2050年のGDPでは 中国がアメリカを抜いてナンバーワン、インドはナンバーツーに近いナンバースリー になると予測されているとした。ちょうど15年前(渥美国際交流財団設立5周年)に 榊原さんがこの同じ場所で中国の浮上を熱く語ったことがあったのだが、いまや「G 2」論が話題になるようになった。これから15年後インドがグローバル経済という大 舞台でどういう役を演じるようになるのか、またどの国・地域が新しく浮上し、東ア ジア共同体の成功への期待を膨らませるか興味はつきない。 安秉民(アン・ビョンミン)韓国交通研究院ユーラシア・北朝鮮インフラセンター所 長は、北東アジアにおいて活発に行われている国境を越えた多国間開発事業、特に北 朝鮮、中国、ロシア、モンゴルなどの国々による交通・物流インフラなどをめぐる新 しい協力方式を中心に、北東アジアの交通・物流協力の実状と今後の展望について発 表した。 ド・マン・ホーン桜美林大学経済経営学系准教授は、GMS(大メコン圏)経済協力プ ログラムの中で、最も積極的に進められてきたプロジェクトである輸送インフラ整備 を中心に、同地域での物流ネットワークの現状を分析し、ソフト(制度など)とハー ド(インフラシステム)の両面に関わる課題について発表した。 休憩を挟んで、ラウンドテーブルでは、まず第48回SGRAフォーラムの仕掛け人でもあ る北陸大学未来創造学部の李鋼哲(り・こうてつ)教授が「アジアハイウェイの現状 と課題について」報告を行った。討論のたたき台としてのミニ報告を予定していた が、「アジア人」として長年にかけての「ロマンチックな」夢が熱く語られ、会場を 大いに盛り上げた。その後、畑村洋太郎(はたむら・ようたろう)東京大学名誉教 授、沼田貞昭(ぬまた・さだあき)鹿島建設顧問、韓国未来人力研究院の徐載鎭 (ソ・ジェジン)院長、滋賀県立大学のブレンサインさん、SMBC日興証券のナポ レオンさんらによるコメントが続いた。著しく成長しつつある物流ネットワークの域 内協力をキーとし、アジア経済のダイナミズムについてそれぞれの立場や専門領域を 踏まえた、そして夢が込められた素晴らしい議論であった。 今回は渥美財団20周年祝賀会と日韓アジア未来フォーラムが立て続けに開催され、準 備が本当に大変だったに違いないが、スタッフの皆さんは勿論のこと、家族的なラ クーン・ネットワークに支えられ、成功裏に終えることができ、改めて顔の見える ネットワークのパワーを実感した。交通の便が悪かったにもかかわらず、100名を超 える参加者が集まるというすごい反響は、これからのフォーラム運営により一層の活 力とやりがいを与えてくれた。なお、第2回アジア未来会議に続き、大学や研究機関 の研究者のみならず若い学生たちにも参加いただき、次世代への期待をフォーラム運 営の在り方につなげるものとなった。慌ただしい日程のなか、高麗大学の学生たちを 青少年総合センターまで案内してくれた今西勇人さん夫妻にこの場を借りて感謝した い。残念ながら、公式乾杯酒の「春鹿」、そして入り混じったラブショットはみられ なかったものの、日本ならではの節度ある良いフォーラムであったと思う。 前回のフォーラム報告でも言及したが、これから「ポスト成長時代における日韓の課 題と東アジア地域協力」について、実りのある日韓アジア未来フォーラムを進めてい くためには、総論的な検討にとどまらず、今回のように各論において掘り下げた検討 を重ねていかなければならない。次回のフォーラムの開催に当たっても、このような 点に重点を置きつつ、着実に進めていきたい。最後に第14回のフォーラムが成功裏に 終わるようご支援を惜しまなかった今西代表と李先生、そしてスタッフの皆さんに感 謝の意を表したい。李先生、今西さん、そしてラクーンのみなさん、日韓アジア未来 フォーラムも20周年祝賀会やりましょう! フォーラムの写真は下記リンクからご覧いただけます。 http://goo.gl/E3gsBQ フィードバック集計は下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/info/nikkan14feedback.pdf -------------------------------- <金雄煕(キム・ウンヒ)☆ Kim Woonghee> 89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年 博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研 究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部 専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジアに おける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012;『現代日本政治の理解』共著、韓 国放送通信大学出版部、2013;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本の国家 戦略」『日本研究論叢』第34号、2011。最近は国際開発協力に興味をもっており、東 アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を進めて いる。 -------------------------------- 【2】情報提供 日本学生支援機構(JASSO)では、例年、留学生施策に関する基礎資料を得ることを 目的として、留学生に関する各種調査を実施していますが、2014年度の調査結果が公 表されましたのでお知らせします。 ●平成26年度外国人留学生在籍状況調査等について(留学生受入れの概況) http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_g.html 各調査の結果ページは以下になります。 ●平成26年度外国人留学生在籍状況調査結果 http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14.html ●平成25年度外国人留学生年間短期受入れ状況調査結果 http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_c.html ●平成25年度短期教育プログラムによる外国人学生受入れ状況調査結果 http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_p.html ●平成25年度協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果 http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_s.html ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Borjigin Husel “New Start — 20th Anniversary of Atsumi International Foundation”

    ******************************************** SGRAかわらばん557号(2015年2月25日) ******************************************** SGRAエッセイ#450 ■ボルジギン・フスレ「新しい道を——渥美国際交流財団20周年記念祝賀会に参加し て」 2月6日、待ちにまった渥美国際交流財団20周年記念祝賀会が霞山会館で開催された。 その日、私が虎の門駅でおりた時には、すでにひぐれの時間であった。エスカレー ターを上がったところでまず目にしたのは、会場案内の看板を持って、来客を誘導し ている先輩の葉文昌さんであった。そして、霞山会館のビルの入口では、同じく道案 内の看板をもっている先輩の李恩民さんが待っていた。二人はともに大学の教授であ るにもかかわらず、寒いなか、熱心にみなさんの道案内をしている。先輩諸氏の姿を みて、まず、感動した。 あわてて、会場にかけこんで、財団の常務理事今西淳子さんに「なにかやることはあ りますか」と聞いたところ、「今日は落ち着いて、楽しんでください」といわれた。 中曽根康弘元総理大臣をはじめ、各国、各分野の200名を超す方々が参加し、祝賀会 が大盛会であったことはいうまでもない。 馴染みとの再会、新しい仲間との出会いの喜びはもとより、知見の豊かな意見交換、 そしてやや横道に逸れる話も、祝賀会に必要なものだと思われる。ことなる文化のぶ つかりあいによって智慧の火花が生まれるからであろう。 「故きを温ねて新しきを知る」。渥美伊都子理事長のご挨拶は、渥美財団の20年の歩 みをふりかえながら、新年会などでの留学生とのふれあいのエピソードをとりあげ、 国際交流における日本文化の位置づけも試みており、東洋の心に思いを馳せた。 長い間、渥美財団の人材育成、国際交流事業をあたたかく応援してくださっている明 石康先生のご挨拶は重みがあった。「人間でも、国でもどのように友達を選ぶのかは 非常に重要だ」というご指摘に非常に感銘した。 桐蔭横浜大学教授のペマ・ギャルポ先生に会って、モンゴル語で挨拶した。先生はか つてモンゴル国大統領の顧問を担当されたことがある。来日してすぐに先生のことを 知ったのだが、お目にかかったのは今回が初めてであった。 名古屋大学名誉教授平川均先生からは、東アジアの枠組みのなかの日本とモンゴルの 友好関係とその意義などについて聞かれて、うれしかった。バリ島でおこなわれた第 2回アジア未来会議では、平川先生からいろいろとご教示をいただいた。モンゴルは かつて日本の「生命線」と呼ばれる地域であったが、長い間わすれさられた。新しい アジアの秩序の構築において、日モ関係の強化は、ある意味では何をもっても代える ことのできないほどの重要性があると思う。 渥美財団のアドバイザー高橋甫氏は、寡黙でありながら、いつも物事を鋭く洞察して いる。モンゴルでおこなわれた7回のSGRAの国際シンポジウムの内、2回も参加してく ださった。その際、また、アジア未来会議においても、モンゴルの鉱山開発と環境保 護について、貴重な助言と情報をくださった。 公益財団法人かめのり財団の常務理事西川雅雄氏にお会いして、若い世代を中心とす る相互理解の国際交流等について話し合った。実は、かめのり財団は2012年に私が実 行委員長をつとめた第1回日本モンゴル青年フォーラムに助成してくださったことが あり、この恩は忘れられない。 設立以来長い間事務局にいらした谷原正さんは人気者で、たぬき(渥美財団の奨学 生)たちにかこまれて、いろいろと聞かれていた。慈愛にみちた美しさが感じられ る。 著名な、日本を代表する国際的ヴァイオリニスト前橋汀子氏のすばらしい演奏は、人 びとの心をうち、祝賀会をいやが上にも盛り上げた。日本に来る前に、ふるさとの芸 術大学で9年間教鞭をとったこともあったのだが、昔のさまざまなことが思い出され た。 先輩の李鋼哲さんは東アジアの秩序について、熱心にかたった。李さんはかつて『朝 日新聞』にモンゴルに関するユニークなコラムを書いたことがあり、たいへん注目さ れた。 再会した友人のなか、2003年度同期の奨学生林少陽氏、臧俐氏、張桂娥氏はそれぞれ 大学の教授になっている。4人で乾杯し、教育のことが話題になった。 祝賀会は、旧知の情を呼び覚ますだけではなく、また新しい仲間と知り合うことだけ でもなく、新しいスタートである。 子日く、「三十而立、四十不惑(三十にして立つ、四十にして惑わず)」。この意味 で、渥美財団はまだ基礎を固める段階にあるが、すでに目覚ましい成果を成し遂げて いる。国際理解や平和構築、人材育成に、渥美財団が寄与すべき責任(仕事)は多々 ある。財団の20年の歩みを誇り高く思うが、栄光は過去のものであり、新しい道を開 いていくことは、私達の使命である。 祝賀会の公式報告と写真、当日上映した動画は、下記リンクよりご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/jp/news.php?id=54eac4eb31a46 ------------------------------------------ <ボルジギン・フスレ Borjigin Husel> 昭和女子大学人間文化学部国際学科准教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年 東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。昭和女子大学 非常勤講師、東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員をへ て、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945〜49年)——民 族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、共編『ノモンハン事件(ハルハ 河会戦)70周年——2009年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社、 2010年)、『内モンゴル西部地域民間土地・寺院関係資料集』(風響社、2011年)、 『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化——2011年ウランバートル国際シンポジ ウム報告論文集』(風響社、2012年)、『ハルハ河・ノモンハン戦争と国際関係』(三 元社、2013年)他。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Blind Spots in Japan: Cold Residences in Winter”

    ***************************************************** SGRAかわらばん556号(2015年2月18日) 【1】エッセイ:謝志海「日本の盲点:冬の寒い住居」 【2】催事案内:「東アジアにおける漢字漢語の創出と共有」 ***************************************************** 【1】SGRAエッセイ#449 ■ 謝 志海「日本の盲点: 冬の寒い住居」 冬に日本へ一時帰国する海外在住の日本人の友人たちは、皆口を揃えて言う。「日本 の冬は寒くて、過ごしにくい」と。彼らはみんな日本より寒い国や地域に住んでいる というのに、日本の家(主に彼らの実家)が寒いというのだ。私が勝手に抱いていたイ メージは、日本の冬の「こたつでみかん」を楽しみにと思っていたのに、現実は違っ ていた。彼らが暮らしている国々は日本より冬が厳しいが、家中が暖かく保たれてい るそうで、日本の住居のように、暖房をつけた暖かい部屋を一歩出たら寒い廊下、そ して寒いトイレに行くということが無いそうだ。思えば私が長年暮らしていた北京の 冬は、日本より寒いが室内はどこも暑い程だった。家電製品は日々進化し、便利な生 活を整えるため次から次へと新しい技術が産み出される日本で、何故日本の家は寒い ままなのだろう。 ニューヨークから一時帰国してきた日本人の友人が教えてくれたのだが、ニューヨー ク州の法律では、冬季(10月から5月)に外気温が10度を下回ったら、アパートの大家 は室温を20度にしなければならないと定められているそうだ。しかもこの暖房費は家 賃に含まれているとのこと。セントラルヒーティングで家中に暖房がいきわたり、家 に帰れば家の中がすでに暖かいのはいいよと絶賛していた。このようなことが法律で 定められていることに驚き、ニューヨークの近隣の寒い地域についても調べたら、米 国東海岸の他の州はもちろん、カナダのトロントや、英国も同様に、住宅の最低室温 に関して規制があった。そしてこれは健康への配慮からなる法規制であった。日本に は住宅に対してこのような規制は無い。 インフラが整い、全てが完璧のような日本に落とし穴を見つけた気がした。日本のテ レビでは毎日のように健康についての番組が放映され、現に国民の一人ひとりが健康 への関心が高い。しかし日本の家の中は寒いままだ。そして冬のニュースでよく耳に するのが、高齢者のお風呂場、脱衣所で心臓発作による死。熱い湯船に浸かり、外気 と同じくらい寒い脱衣所に出る。この急激な温度変化で体調が急変することを「ヒー トショック」と言うそうだ。厚生労働省の報告書によると、入浴時の事故死だけで、 年間1万9千人以上と推計されるそうだ。 このような事故死を防ぐため、日本の冬の住居環境を見直すべきだろう。欧米のよう に住宅の法規制として、断熱化を進めるべきではないだろうか。光熱費が高い日本で は、家そのものの工夫が必要だろう。察するに、高齢の日本人は我慢強く、少しくら い寒くても我慢してしまうことが多い。暖房器具があっても使われなければ意味がな いし、何よりも住居内での温度差が危険なのだ。家中の室温を一定に保つことが重要 だ。北海道の家は冬も暖かいので、ヒートショックも少ないそうだ。身近な所から冬 を過ごし易い住環境を取り込み、改善すべきだ。それは日本の高齢者を守り、人口減 を緩やかにする。健康への関心が高い、先進国の日本人が、このように未然に防げそ うな事故で毎冬あっけなく命を失うのは大変惜しい。 ---------------------------------------- <謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai> 共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期 課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交 流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年 4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい る。 ---------------------------------------- 【2】催事案内 SGRA会員の孫建軍さんからシンポジウムのご案内をいただきましたのでご紹介しま す。 ■ 国際シンポジウム「東アジアにおける漢字漢語の創出と共有」 共催:漢字文化圏近代語研究会、早稲田大学孔子学院 日時:2015年3月21日〜22日(土・日) 場所:早稲田大学11号館901教室 (入場無料、一般来聴歓迎) プログラムは下記リンクよりご覧ください。 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shkky/2015_03_21program.pdf ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************
  • [SGRA_Kawaraban] Aingeru Aroz-Rafael “Nation and Identity”

    ******************************************** SGRAかわらばん555号(2015年2月11日) ******************************************** SGRAエッセイ#448 ■アロツ=ラファエル アインゲル「国とアイデンティティ:自分の居場所はどこ か」 多くの人は、自分が何人であるかについて話す時、つまり「私は日本人です」、「私 はスペイン人です」と言う時、おそらく何の違和感、疑問を感じないだろう。ただ し、私たちが「私は日本人です」、「私はスペイン人です」と言う時、自らの客観 的、正式的、パスポートに書いてある国籍を指しているだけではなく、自分がある 国、あるコミュニティーへの帰属意識、いわば自分のアイデンティティの一側面を表 現してもいると言えよう。 私は留学がきっかけで、自らの国・国籍とアイデンティティについてしばしば考える ようになった。そして、この課題についての私の考え方は留学によって大きく変わっ た。本稿では、私の考え方がどう変わったかを説明するために、まず私の背景につい て、次に10年以上前に初めて留学することによって私の観点がどう展開したかを、そ して最後に国とアイデンティティについての現在の私がどのような立場であるかを述 べたい。 私はスペイン北部にあるバスク地方で生まれ育ち、22歳までバスク地方の最大の都 市、ビルバオに住んでいた。バスク地方ではスペイン語と違う言語が話されており、 また、その歴史・社会構造・経済構造の面からも他のスペインの地方との相違点が多 く、バスク人の一部はスペインからの独立を願っている。このような複雑な地域で は、「あなたは自分をバスク人と考えていますか、スペイン人と考えていますか」と いうような質問を問いかけられることがよくある。しかも、バスク地方では、自分を スペイン人かバスク人かと認識することは、自分の家系や母語とは直接関係なく、む しろ自身の政治的立場や感情と深くかかわっている。例えば、自分の家族がスペイン の他の地方の出身であって、自分の母語がスペイン語であっても、自らをスペイン人 でなくバスク人と考える人もいれば、家族がバスク地方出身であり、バスク語を母語 とする人で自らをスペイン人と考える人もいる。 私自身は、バスク地方に住んでいた時、自信をもって「私はスペイン人ではなく、バ スク人である」と言うことができた。それは、バスク地方以外の地域に対して何らか の抵抗を感じていたからではなくて、むしろバスク地方の独自性、いわばユニークさ に一種の愛着を持っていたからであり、また、私の周りの人々、つまり家族や友だち が同様な観点を持っていたからであった。 しかし、私は22歳の時にイタリアのボローニャ大学に留学することになり、初めてバ スク地方ではない国で生活し、また、バスク地方以外のスペインの各地方やヨーロッ パの各国から来た友だちができることによって、私が、自分自身が、バスク人である ということの意味を深く考え直すことになった。バスク地方に住んでいた時の私はバ スク地方の特殊性、スペインの他の地域との相違点などを重視していたのに対して、 イタリアで生活を始めた当時の私にとっては、相違点というより、むしろスペインの 他の地域やヨーロッパ各国との共通点の重要性がわかるようになった。したがって、 私はイタリアで国籍を聞かれた時、だんだん違和感を持たずに「スペイン人です」と 答えるようになり、かつ、自分をバスク人だけと考えていた以前の私の立場を排他的 で度量の狭い立場のように見るようになった。そうして私は、「バスク人」「スペイ ン人」というような名称が自分の背景をある程度説明していることを理解すると同時 に、自分にとって実際それらの言葉にたいした意味がなくて、自分のアイデンティ ティとしてはむしろヨーロッパ人としてのアイデンティティがもっと重要なのではな いかと考えるようになった。なぜなら、ヨーロッパという概念からは、国境を超えた 豊富な歴史を背景としながら、多様で充実した社会を目的とする民主主義的プロジェ クトを構築していくことができると考えたからであった。 しかしながら、私は2007年に、ヨーロッパから離れて日本に留学することになり、自 分の立場をあらためて考えることになった。イタリアに留学することによって私の視 野が広くなったと同じく、はじめてヨーロッパ以外の国で生活し、日本およびアジア 各国から来た友だちができ、実際に人間同士をつなげるものは共通の文化的背景など ではなく、むしろ価値観、世界観であることがはっきり分った。 こうして、日本に留学することによって、私のバスク人、スペイン人、ヨーロッパ人 としてのアイデンティティが、いったいいかなるものであるかをふたたび反省するこ とになり、国とアイデンティティについて、より明確に考えるようになった。つま り、国とアイデンティティの間の関係において二つの側面を区別することができると 思う。一方では、「私はスペイン人です」、「私は日本人です」などの表現によっ て、私たちがどこから来ているか、どこで育ったかを説明しているのであって、例え ば私の個人的な場合に、やはり私がバスク人であること、スペイン人であること、 ヨーロッパ人であることのそれぞれが、私の背景、いわば私の個人的な歴史を語って いると言えると思う。他方では、「私はスペイン人です」「私は日本人です」などの 表現が、ある国、あるコミュニティーへの帰属意識を表しており、すなわち自らがど こから来たかだけを表すというより、むしろ自らがどこに帰属したいか、どこを自分 の居場所にしたいかということを表していると思う。この二つ目の側面は、一つ目の 側面より自由であり、個人が各々の人生において、様々な経験を重ねるにつれて、変 わっていくことが可能であろう。 留学生として日本で7年間生活してきた私は、自分がバスク人、スペイン人、ヨー ロッパ人であるということが、上述したように私のある重要な側面を捉えていると思 う。なお、上記の二つ目の側面については、つまり私がどこに帰属したいか、どこを 私の居場所にしたいか、「何人でありたいか」と聞かれるとしたら、バスク地方はも ちろん、スペインやヨーロッパももはや狭すぎて、ありふれたひびきのある言い方で あろうが、おそらく私の居場所が世界、地球であり、私が帰属したいコミュニティー は各国の狭い国境を超えた世界の市民のコミュニティーであると答えるしかないであ ろう。 ------------------------------- <アロツ=ラファエル アインゲル Aingeru Aroz-Rafael> 2005年Deusto大学文学部歴史学科卒業(ビルバオ、スペイン)。2008年マドリード自 治大学学部東アジア学科卒業。2008年同大学マドリード自治大学大学院哲学研究科比 較文学専攻修士課程修了。2003年ボローニャ大学留学(イタリア)。2007年上智大学 留学。2007年平和中島財団奨学生。2008年?2012年国費留学生。2013年渥美財団奨学 生。研究関心は近代日本哲学史、近代日本言語学史・国語学史・人文科学史、言語哲 学。現在、東京大学大学院学際情報学府博士後期課程。 ************************************************** ● SGRAカレンダー ○第14回日韓アジア未来フォーラム・第48回SGRAフォーラム 「ダイナミックなアジア経済—物流を中心に」(2015年2月7日東京) <ご参加いただきありがとうございました> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/14_2.php ○第19回日比共有型成長セミナー(2015年2月10日マニラ) 「都会・地方の格差と持続可能共有型成長」 <ご参加いただきありがとうございました> http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/19.php ○第5回日台アジア未来フォーラム 「日本研究から見た日台交流120年」 (2015年5月8日台北)<ご予定ください> ○第4回SGRAワークショップin蓼科 (2015年7月3日〜5日蓼科) ○第49回SGRAフォーラム 「日本研究の新しいパラダイム」 (2015年7月18日東京)<ご予定ください> ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員 のエッセイを、毎週水曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読 いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。下記URLより自動登録していた だくこともできますし、事務局までご連絡いただいても結構です。 http://www.aisf.or.jp/sgra/entry/registration_form/ ● アドレス変更、配信解除をご希望の方は、お手数ですがSGRA事務局までご連絡く ださい。 ● エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務 局より著者へ転送いたします。 ● 皆様のエッセイを募集しています。SGRA事務局へご連絡ください。 ● SGRAエッセイやSGRAレポートのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただ けます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/active/sgra2014/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3−5−8 渥美国際交流財団事務局内 電話:03−3943−7612 FAX:03−3943−1512 Email: [email protected] Homepage: http://www.aisf.or.jp/sgra/ **************************************************