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Lamsal Bikash “First Free Health Camp for Nepalese in Japan”

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SGRAかわらばん622号(2016年6月2日)
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SGRAエッセイ#494

◆ラムサル・ピカス「日本初ネパール人無料健康診断会(ヘルス・キャンプ)」

どんな事態であっても生きている限りは大切なものがある。それは健康な体である。健康な体なしには、何をしようとしてもうまく行かなかったり、やる気がなくなったりする。近年は特に、仕事ばかりに夢中になって、健康管理ができていない人も少なくない。特に、それは外国人にとって最大の問題!何か体に異常があった時に、母国に居るように何でも理解できている状態で病院に行くのとは違って、外国にいて言葉も何もわからないまま病院へ行くのは問題点が多い。栃木、群馬県内には留学生、技能実習生、自営業者など約3700人のネパール人がいる。その中には、国民健康保険証がない等で病院へ行けない人もかなりいる。

2015年4月15日にネパールで起きた地震で大きな被害が出たが、地震の後、ネパールとネパール人を助けようと足利市在住の渡辺好美さんと源田晃澄住職が中心となって、市内の企業に声をかけ、地元の15社に協力いただいた活動があった。今回、私は健康診断キャンプを開催したいと思い、渡辺さんと源田さんの支援を受けて、色々なところへ行き色々な人に相談した。おかげで、力を貸してくれる仲間と、支援してくれる人達が集まって、足利ネパール交流協会が誕生した。こうして、2016年4月30日と5月1日に「ネパール人向け無料健康診断と面談会(ヘルスキャンプ)」が、私の在籍する足利工業大学のキャンパスを借りて開催されることになった。

このイベントが始まったのは4月29日。朝6時に東京へ出発し、車でネパール人医師たち6人を迎えに行った。足利に到着し食事を済ませてから、皆と一緒に会場へ行き、会場設営や看板の設置など必要なことを準備した。夕方6時、医師たちの歓迎会のため足利健康ランドへ向かった。歓迎会には、協賛企業から17名、足利工業大学から3名、足利ネパール交流協会3名、医師10名、取材者1名とボランティア3名で合計36名が参加した。歓迎会終了後、医師たちと何人かのボランティアは健康ランドに宿泊した。

4月30日、イベントは9時開始なので朝早く会場に着いた。看板やら道案内などをセットしてから、医師やボランティアの方々と朝礼。受付を2ヶ所に設置し、1番目は調査のために使い、2番目は患者登録に使用した。受付ではパソコンをネットワークに繋ぎ、患者の個人情報保護に配慮した上で、それぞれの医師が患者の基本情報が見られるようにして、医師たちが面倒なことをしなくて済むように準備した。医師たちには「日本に居ても、ネパールのようにネパール語で患者の診断をすることができるのはとても嬉しい」と言われた。患者たちからは「ネパール語で診断を受けたのは久しぶりだね」、「ネパールに戻ってきた気分だよ」というような声が聞こえた。この日は午前9時から午後5時までの間に、82人が診断を受けた。

次の日も全体的な流れは初日とほとんど変わらなかった。診断を受けたのは68人。1日目より増えると想定をしていたが、それには届かなかった。しかし、何よりも、診断を受けた人々が満足してくれたのが嬉しい。

中に、アメリカ英語とイギリス英語の違いから日本の病院で伝わらなかったという患者がいた。その女性は「ちゃんと言ったのに分かってもらえなかった」と悲しんでいた。「痔核」はアメリカ英語では「Hemorrhoid」と言い、イギリス英語で「Piles」と言う。今はアメリカ英語が主流で、あまり「Piles」は知られていない。しかし、英国の植民地だったインド、パキスタンとかネパールでは今でも使われており、彼女は伝わると思ったのだが、残念ながら日本の病院では伝わらなかったのだ。

健康診断で解決できなかった問題が1つあった。若い女性がネパールでNorplantを入れたが、日本に来てから妊娠したくなったため、取ってもらおうと思い近くの産婦人科にかかったが断られたという相談だった。しかしながら、日本ではNorplantを取り扱っていないので処置はできない。Norplantとは簡単な細長い道具で皮下に数本植め込むのだが、取る時も小さい切開手術が必要である。

5月1日の午後4時半にネパール国臨時代理大使がいらっしゃるとのことだったので、4時に診断を中止し、交流会場を急いで設営した。臨時代理大使が到着して感謝会が始まった。ネパール国臨時代理大使ゲヘンドラ・ラジュバンダリ、足利ネパール交流協会会長渡辺好美、副会長源田晃澄を始め47名が参加した。ラジュバンダリ大使は「ネパール・日本友好60周年であるこの年に、ネパールと日本の友好関係がどれだけ強いのかを知ることができました。ネパールも日本も友好関係にあるからこそできるイベントです。」と話し、足利工業大学と足利ネパール交流協会に感謝状を贈呈した。医者たちへの感謝状は栃木産婦人科医院の栃木英磨医院長、ボランティアとして手伝ってくれた方々への感謝状は渡部好美会長と源田晃澄副会長によって手渡された。記念品としてネパール「ダカ・トピィ」を被せて、「カダ」で敬意を表した。最後に軽い食事会をして、イベントは終了した。

訪れた患者たちは、「このようなイベントを開いてくれてありがとう」、「こんなイベントが年に2回ぐらいあれば助かります」、などと語ってくれた。ボランティアの方々も「こんなイベントの一員として仕事をさせてくれてありがとう」と言ってくれた。皆の印象に残るイベントだった。

当日の写真・新聞記事は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2016/06/healthcamp.pdf

<ラムサル ビカス Lamsal Bikash>
渥美国際交流財団2016年度奨学生。トリブバン大学科学技術学部。物理学科を終えて、2010年1月に日本語学生をとして日本へ来日。2014年3月に足利工業大学大学院修士課程を取得。2014年4月から足利工業大学大学院博士課程情報・生産工学専攻に入学。現在は顔検出技術について研究中。

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(2016年7月16日東京)<参加者募集中>
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◇第3回アジア未来会議「環境と共生」
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