SGRAメールマガジン バックナンバー

  • .Mohammed Aqil CHEDDADI “The Right of Suffrage for Foreign Residents in Japan”

    ********************************************** SGRAかわらばん1015号(2024年5月9日) 【1】モハッメド アキル シェッダーディ「外国人住民の参政権について」 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#764 ◆モハッメド アキル シェッダーディ「外国人住民の参政権について」 7年以上日本に住んでいる外国人として、私はこの国でいつも歓迎され、尊重されてきました。大学院で研究するために来日、その後大学で講師として働くようになりました。大人の人生の半分以上を日本で過ごし、日本国民と同じように税金や年金保険料、健康保険料を支払い、さまざまな形で社会に貢献しています。日本とその文化が大好きで、日本を第二の故郷と考えています。 しかし、一つだけ気になることがあります。それは、どの選挙にも投票する権利がないことです。自分の生活や地域に影響を与える政策や決定について、何の発言権も持っていないということです。コロナ禍で日本が半年間、外国人居住者を含めて国境を閉鎖したとき、外国人は政策決定において考慮されなかったと実感しました。日本国民と同じ程度に社会に貢献しているにもかかわらず、まだ二等市民と見なされているのだと感じました。投票権がないということは、自分のような外国人居住者にとって重要な問題を解決することができないし、私の利益を代表する指導者を選ぶことができないということです。 これは不公平であり、民主的ではないと思います。外国人住民は単なる訪問者や客ではありません、永続的または長期的にここに住む社会の一員です。外国人住民は権利と責任を持ち、コミュニティーにおいても代表となり、未来を形づくる政治プロセスに参加することができるべきです。 この意見は私だけのものではありません。多くの外国人住民が同じように投票権を求めています。多くの日本国民もこの考えを支持しており、多様性と包摂のメリットを認識しています。一部の地方自治体は外国人住民に地方選挙や住民投票での投票権を与えようと試みましたが、法的・政治的な障害に直面しました。現在、地方住民投票で一部の投票権を認めている自治体は1,718市町村(東京都区部を除く)のうち42しかありません。 例えば、東京の武蔵野市は2021年、外国人住民に地方選での投票権を認める条例案を提案しました。しかし、市議会は、「外国人に国家安全保障問題に関する発言権を与えると、日本の主権を損なう恐れがある」と主張する一部の保守派の反対により、この提案を否決しました。日本は労働力不足に対処するために今後ますます外国人労働者が必要な状況であるのに、このような反対は「同質的な国家」のイメージを強め、社会の多様性と活性化の議論をすること自体を抑圧してしまいます。 先日、統一地方選挙の運動期間中に、郵便箱に「外国人参政権に反対」ということを中心的なスローガンとして掲げた候補者の選挙チラシが届きました。候補者は、「外国人住民に投票権を与えることは、国益に反する可能性」があり、「日本の安全が危ぶまれる」と主張していました。しかし、この主張は根拠のない誤りです。まず、地方選挙や住民投票は、国家安全保障や外交政策ではなく、教育、医療、環境、交通、公共サービスなどの地域の問題に関するものです。これらは、国籍に関係なく、その地域に住むすべての人に影響する問題です。 外国人住民に地方選挙での投票権を認めることは、彼らに市民権や二重国籍を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き日本の法律に従い、日本の価値観を尊重しなければなりません。彼らが元の国籍やアイデンティティーを失うことではありません。単に所属感や参加感という新しい次元を得るだけです。 また、外国人参政権を認めることは、日本国民よりも不公平な優位性や特権を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き一定の基準や条件を満たさなければなりません。有効な在留資格を持ち、一定期間地域に居住し、有権者として登録すると、日本人有権者と同じ規則や手続きに従わなければなりません。 したがって、外国人住民に地方選挙での投票権を与えることは可能であり、望ましいことです。それは日本の民主主義と多様性を高めるとともに、社会的な結束と統合を促進し、相互理解と尊重を育み、市民的な参加と責任を奨励し、すべての人々の生活の質を向上させるでしょう。日本は今のところ外国人住民に参政権を与えず、二重国籍も認めない数少ない先進国ですが、外国人住民の地方政治への参加の価値を認めた他の国々のように、状況を変えるべき時が来ていると思います。 日本を愛し、その発展に貢献したいと思う外国人住民として、いつか自分の票を投じて自分の声を届けたいと願っています。この社会の真の一員として自分の投票権を行使できるようになることを望んでいます。 <モハッメド アキル シェッダーディ Mohammed Aqil CHEDDADI> モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学中。同大学総合政策学部訪問講師。2022年渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
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    ********************************************** SGRAかわらばん1015号(2024年5月9日) 【1】モハッメド アキル シェッダーディ「外国人住民の参政権について」 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#764 ◆モハッメド アキル シェッダーディ「外国人住民の参政権について」 7年以上日本に住んでいる外国人として、私はこの国でいつも歓迎され、尊重されてきました。大学院で研究するために来日、その後大学で講師として働くようになりました。大人の人生の半分以上を日本で過ごし、日本国民と同じように税金や年金保険料、健康保険料を支払い、さまざまな形で社会に貢献しています。日本とその文化が大好きで、日本を第二の故郷と考えています。 しかし、一つだけ気になることがあります。それは、どの選挙にも投票する権利がないことです。自分の生活や地域に影響を与える政策や決定について、何の発言権も持っていないということです。コロナ禍で日本が半年間、外国人居住者を含めて国境を閉鎖したとき、外国人は政策決定において考慮されなかったと実感しました。日本国民と同じ程度に社会に貢献しているにもかかわらず、まだ二等市民と見なされているのだと感じました。投票権がないということは、自分のような外国人居住者にとって重要な問題を解決することができないし、私の利益を代表する指導者を選ぶことができないということです。 これは不公平であり、民主的ではないと思います。外国人住民は単なる訪問者や客ではありません、永続的または長期的にここに住む社会の一員です。外国人住民は権利と責任を持ち、コミュニティーにおいても代表となり、未来を形づくる政治プロセスに参加することができるべきです。 この意見は私だけのものではありません。多くの外国人住民が同じように投票権を求めています。多くの日本国民もこの考えを支持しており、多様性と包摂のメリットを認識しています。一部の地方自治体は外国人住民に地方選挙や住民投票での投票権を与えようと試みましたが、法的・政治的な障害に直面しました。現在、地方住民投票で一部の投票権を認めている自治体は1,718市町村(東京都区部を除く)のうち42しかありません。 例えば、東京の武蔵野市は2021年、外国人住民に地方選での投票権を認める条例案を提案しました。しかし、市議会は、「外国人に国家安全保障問題に関する発言権を与えると、日本の主権を損なう恐れがある」と主張する一部の保守派の反対により、この提案を否決しました。日本は労働力不足に対処するために今後ますます外国人労働者が必要な状況であるのに、このような反対は「同質的な国家」のイメージを強め、社会の多様性と活性化の議論をすること自体を抑圧してしまいます。 先日、統一地方選挙の運動期間中に、郵便箱に「外国人参政権に反対」ということを中心的なスローガンとして掲げた候補者の選挙チラシが届きました。候補者は、「外国人住民に投票権を与えることは、国益に反する可能性」があり、「日本の安全が危ぶまれる」と主張していました。しかし、この主張は根拠のない誤りです。まず、地方選挙や住民投票は、国家安全保障や外交政策ではなく、教育、医療、環境、交通、公共サービスなどの地域の問題に関するものです。これらは、国籍に関係なく、その地域に住むすべての人に影響する問題です。 外国人住民に地方選挙での投票権を認めることは、彼らに市民権や二重国籍を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き日本の法律に従い、日本の価値観を尊重しなければなりません。彼らが元の国籍やアイデンティティーを失うことではありません。単に所属感や参加感という新しい次元を得るだけです。 また、外国人参政権を認めることは、日本国民よりも不公平な優位性や特権を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き一定の基準や条件を満たさなければなりません。有効な在留資格を持ち、一定期間地域に居住し、有権者として登録すると、日本人有権者と同じ規則や手続きに従わなければなりません。 したがって、外国人住民に地方選挙での投票権を与えることは可能であり、望ましいことです。それは日本の民主主義と多様性を高めるとともに、社会的な結束と統合を促進し、相互理解と尊重を育み、市民的な参加と責任を奨励し、すべての人々の生活の質を向上させるでしょう。日本は今のところ外国人住民に参政権を与えず、二重国籍も認めない数少ない先進国ですが、外国人住民の地方政治への参加の価値を認めた他の国々のように、状況を変えるべき時が来ていると思います。 日本を愛し、その発展に貢献したいと思う外国人住民として、いつか自分の票を投じて自分の声を届けたいと願っています。この社会の真の一員として自分の投票権を行使できるようになることを望んでいます。 <モハッメド アキル シェッダーディ Mohammed Aqil CHEDDADI> モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学中。同大学総合政策学部訪問講師。2022年渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Mohammed Aqil CHEDDADI “The Right of Suffrage for Foreign Residents in Japan”

    ********************************************** SGRAかわらばん1015号(2024年5月9日) 【1】モハッメド_アキル・シェッダーディ「外国人住民の参政権について」 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#764 ◆モハッメド_アキル・シェッダーディ「外国人住民の参政権について」 7年以上日本に住んでいる外国人として、私はこの国でいつも歓迎され、尊重されてきました。大学院で研究するために来日、その後大学で講師として働くようになりました。大人の人生の半分以上を日本で過ごし、日本国民と同じように税金や年金保険料、健康保険料を支払い、さまざまな形で社会に貢献しています。日本とその文化が大好きで、日本を第二の故郷と考えています。 しかし、一つだけ気になることがあります。それは、どの選挙にも投票する権利がないことです。自分の生活や地域に影響を与える政策や決定について、何の発言権も持っていないということです。コロナ禍で日本が半年間、外国人居住者を含めて国境を閉鎖したとき、外国人は政策決定において考慮されなかったと実感しました。日本国民と同じ程度に社会に貢献しているにもかかわらず、まだ二等市民と見なされているのだと感じました。投票権がないということは、自分のような外国人居住者にとって重要な問題を解決することができないし、私の利益を代表する指導者を選ぶことができないということです。 これは不公平であり、民主的ではないと思います。外国人住民は単なる訪問者や客ではありません、永続的または長期的にここに住む社会の一員です。外国人住民は権利と責任を持ち、コミュニティーにおいても代表となり、未来を形づくる政治プロセスに参加することができるべきです。 この意見は私だけのものではありません。多くの外国人住民が同じように投票権を求めています。多くの日本国民もこの考えを支持しており、多様性と包摂のメリットを認識しています。一部の地方自治体は外国人住民に地方選挙や住民投票での投票権を与えようと試みましたが、法的・政治的な障害に直面しました。現在、地方住民投票で一部の投票権を認めている自治体は1,718市町村(東京都区部を除く)のうち42しかありません。 例えば、東京の武蔵野市は2021年、外国人住民に地方選での投票権を認める条例案を提案しました。しかし、市議会は、「外国人に国家安全保障問題に関する発言権を与えると、日本の主権を損なう恐れがある」と主張する一部の保守派の反対により、この提案を否決しました。日本は労働力不足に対処するために今後ますます外国人労働者が必要な状況であるのに、このような反対は「同質的な国家」のイメージを強め、社会の多様性と活性化の議論をすること自体を抑圧してしまいます。 先日、統一地方選の運動期間中に、郵便箱に「外国人参政権に反対」ということを中心的なスローガンとして掲げた候補者の選挙チラシが届きました。候補者は、「外国人住民に投票権を与えることは、国益に反する可能性」があり、「日本の安全が危ぶまれる」と主張していました。しかし、この主張は根拠のない誤りです。まず、地方選や住民投票は、国家安全保障や外交政策ではなく、教育、医療、環境、交通、公共サービスなどの地域の問題に関するものです。これらは、国籍に関係なく、その地域に住むすべての人に影響する問題です。 外国人住民に地方選挙での投票権を認めることは、彼らに市民権や二重国籍を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き日本の法律に従い、日本の価値観を尊重しなければなりません。彼らが元の国籍やアイデンティティーを失うことではありません。単に所属感や参加感という新しい次元を得るだけです。 また、外国人参政権を認めることは、日本国民よりも不公平な優位性や特権を与えることを意味しません。外国人住民は引き続き一定の基準や条件を満たさなければなりません。有効な在留資格を持ち、一定期間地域に居住し、有権者として登録すると、日本人有権者と同じ規則や手続きに従わなければなりません。 したがって、外国人住民に地方選挙での投票権を与えることは可能であり、望ましいことです。それは日本の民主主義と多様性を高めるとともに、社会的な結束と統合を促進し、相互理解と尊重を育み、市民的な参加と責任を奨励し、すべての人々の生活の質を向上させるでしょう。日本は今のところ外国人住民に参政権を与えず、二重国籍も認めない数少ない先進国ですが、外国人住民の地方政治への参加の価値を認めた他の国々のように、状況を変えるべき時が来ていると思います。 日本を愛し、その発展に貢献したいと思う外国人住民として、いつか自分の票を投じて自分の声を届けたいと願っています。この社会の真の一員として自分の投票権を行使できるようになることを望んでいます。 <モハッメド_アキル・シェッダーディ Mohammed_Aqil_CHEDDADI> モロッコ出身。モロッコ国立建築学校卒業。慶應義塾大学政策・メディア研究科環境デザイン・ガバナンス専攻修士号取得・博士課程在学中。同大学総合政策学部訪問講師。2022年渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • XIE Zhihai “Considering the History of International Relations in East Asia in Busan”

    ********************************************** SGRAかわらばん1014号(2024年5月2日) 【1】謝志海「釜山で東アジアの国際関係の歴史を考える」 【2】寄贈本紹介:ボルジギン・フスレ『日本人のモンゴル抑留の新研究』 【3】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#763 ◆謝志海「釜山で東アジアの国際関係の歴史を考える」 春休みに同僚の先生方と韓国・釜山へフィールド調査に行った。専門分野が違う5人がそれぞれの視点から釜山の町を観察して歩いたが、私にとっては自分の専門である国際関係の歴史について深く考える機会となった。 調査に行く前に、「国際市場で逢いましょう」という映画を観た。ほぼ実話に基づいた内容だという。朝鮮戦争で父親と妹と別れた主人公が、長男として母親を支え、兄弟の面倒を見ながら別れた家族を探し続ける話だった。おじいさんになっても、頑固に釜山の国際市場にある古い店を守り続けたのは、父親と別れた際にその店で再会しようと約束したからだ。 この家族に限らず、朝鮮戦争で離散を余儀なくされた人々は国際市場にある「40階段」というところで待ち合わせることを約束したという。今回はその映画の舞台となった釜山の国際市場を訪れ、実際その階段にも登ってみた。階段には家族を座って待つ銅像があった。 戦争によって家族が引き離されてしまうことが、歴史ではなく、現在も起きていることは非常に残念だ。先日テレビ番組で見たある家族の今を思い出す。ウクライナ人の女の子はロシアの侵攻の後、母親と一緒に来日し、日本の高校に通い、都内の大学に合格した。父親は祖国に残り戦争支援のために働いている。戦争により、家族にとっての日常が一瞬にして非日常的になるのは昔も今も同じだ。 釜山にある国連墓地も訪問した。朝鮮戦争に参戦した米軍をはじめとする国連軍の犠牲者を慰霊する場所だ。現地のパンフレットには、朝鮮半島の平和と自由を守るために戦ったと書いてあるが、中国と北朝鮮側から見たら、自分たちのほうが正義だと考えるだろう。実際、北朝鮮には中国志願軍の墓地もあり、昨年7月には朝鮮戦争休戦70周年を記念するため、金正恩総書記が訪問した。ロシアと中国の代表団も記念行事に参加。戦争の記憶は第二次世界大戦だけでなく、その後の朝鮮戦争をめぐっても参戦国の認識がかなり違うことを実感した。 近現代史博物館には日本植民地支配時代の韓国の歴史が紹介されていた。釜山は最初に支配された都市だった。中でも釜山の鉄道はなかなか興味深く、1900年代、日本の実業家で新一万円札の「顔」にもなる渋沢栄一らがソウルから釜山までの京釜鉄道を建設した。今回の調査とは関係なくたまたま読んでいた「鉄道と愛国」(吉岡桂子著、岩波書店、2023年7月)という本にも、まさに京釜鉄道はかつての植民地支配の道具でもあったと記されていたが、釜山の博物館でその歴史の痕跡を確かめることができた。 先述の映画では、韓国がベトナム戦争に巻き込まれていたことも描かれた。主人公は父親と約束した待ち合わせ場所の店を守るためのお金を稼ぐべく、ベトナム戦争の機械兵を志願して、現地で片足をけがしてしまった。韓国はベトナム戦争で米国に協力した。一方、北朝鮮は、北ベトナムを支援した。 ロシア研究の専門家によると、今回のロシア対ウクライナ戦争では、武器提供において北朝鮮V.S.韓国の構図が見えている。北朝鮮はロシアに武器支援をし、韓国が北大西洋条約機構(NATO)に輸出している武器は、ウクライナ支援に充てられている。戦争をめぐって、北と南の対立の構図は冷戦時代から変わっていない。 一緒に釜山へ行った日本人の先生が言うように、日本では戦争とは1945年で終わったものというイメージが強いが、実際には第二次世界大戦から時をあけずに朝鮮戦争が始まり、さらにベトナム戦争、そして今に至るまで、戦争は世界でひっきりなしに続いている。このことをもっとたくさんの人々に認識してもらいたい。幸いにも、今の東アジアは時に緊張はあれど戦争はなく、平和な状態が続いている。東アジアの平和を願いながら、ロシアとウクライナの戦争もガザでの中東戦争も一日も早く終わるように祈る。 <謝志海(しゃ・しかい)XIE_Zhihai> 共愛学園前橋国際大学教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師、准教授を経て、2023年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で昭和女子大学教授のフスレさんより新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆ボルジギン・フスレ『日本人のモンゴル抑留の新研究』 ~移送・抑留・引き揚げまで~ ソ連は対日戦で60万人の日本軍捕虜を獲得し、その中から1万2000人がモンゴルに送られ、苛酷な抑留生活を強いられた。極寒や飢餓、病、苛酷な労働の実態と、日本への引き揚げまでの経過をモンゴルの各文書館に秘蔵されている資料と証言をもとに明らかにする。 発行所:三元社 定価=本体 4,800円+税 2024年2月28日/A5判上製/296頁/ISBN978-4-88303-585-4 詳細は下記リンクをご覧ください。 http://sangensha.co.jp/allbooks/index/585.htm ---------------------------------------------------------------- 【3】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • SUN Jianjun “The 17th SGRA China Forum ‘The Birth of Modern Art in Southeast Asia’ Report”

    ********************************************** SGRAかわらばん1013号(2024年4月25日) 【1】孫健軍「第17回SGRAチャイナフォーラム報告」 「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 ********************************************** 【1】孫健軍「第17回SGRAチャイナフォーラム『東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生』報告」 2023年11月25日(土)北京時間午後3時(日本時間午後4時)より第17回SGRAチャイナフォーラム「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」が開催された。コロナが収束して4年ぶりに対面形式で行う予定だったが、スケジュールを決める9月の時点で2012年秋の事態を思わせる空気が漂い始め、オンライン方式を続けることに決めた。 テーマの通り、今回は美術史の返り咲きとなった。しかもこれまで焦点が置かれていた「東アジア」から初めて「東南アジア」に視点を向けたため、事前の準備はこれまでと異なり、チャイナフォーラムの歴史の中でかつてない国際的な展開となっていた。講師は北九州市立美術館館長の後小路雅弘先生、指定討論者は北京大学東南アジア学科准教授の熊燃先生、ナショナル・ギャラリー・シンガポール学芸員でコレクション部門ディレクターの堀川理沙先生のお二方をお迎えした。東京、北九州、北京、シンガポール、マカオと事前準備の連絡は広範囲にわたった。日本語だけでなく、英語によるメールの連絡もこれまでにないレベルで、渥美財団のスタッフ一同の国際色の高さに脱帽した。 例年通り、開催にあたり、主催者側から今西淳子・渥美財団常務理事、後援の野田昭彦・北京日本文化センター所長より冒頭の挨拶があった。野田所長の挨拶は前年同様にテーマに沿った問題提起があり、フォーラムのウォーミングアップともなった。 日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生の講演は、ご自身の東南アジアの実体験から始まった。東南アジアにおける近代美術の萌芽的な動きは1930年代に見られると指摘した。地域や国同士の相互の連動は見られなかったが、植民地において19世紀末から盛んになったナショナリズムや民族自決の高まりといった国際的な共通性から、ほぼ同じ時期に見られるようになったと、数多くの絵画の紹介を通じて語った。そして19世紀末から20世紀前半にわたって、東南アジアの近代美術運動を担うパイオニアたちが直面する課題、目指す目標、各国における共通性や相違を読み解いた。 自由討論はモデレーターの名手、澳門大学の林少陽先生によって進められた。美術作品を通して、その背後にあるより微妙で生き生きとした植民地支配に対する抵抗や民族解放を求める東南アジアの歴史の詳細を見ることができるという熊燃先生のご見解や、後小路先生のご研究の原点は東南アジアだけでなく、東アジア全体にあるのではないかという堀川理沙先生のご指摘が印象的だった。その後、会場およびオンライン参加者の質問に対し、後小路先生が丁寧に回答した。 最後に清華東亜文化講座を代表して、北京第二外国語大学趙京華先生より閉会の挨拶があった。趙先生は後小路先生のご講演により、美術史を専門としない人も美術界の新たな風潮を通じて、東南アジアの20世紀の複雑な歴史的プロセス、そして民族、言語、宗教、文化の多様性について初歩的な理解を得ることができたと指摘した上で、「どのような覇権も、世界を統一することも、差異を排除することもできない。私たちは各民族国家の多様性を尊重することでしか、文明の相互理解と平和共存の理想を実現することができない」と強く訴えた。 東京会場、北京会場、そしてオンライン参加を含め、合わせて150名の参加を得た。参加者からは「東南アジアにおける近代美術が生まれた背景や、その代表的な人物に関する基本知識を得ることができた。今後もこの研究領域に関するフォーラムを開催してほしい」などの感想が寄せられた。 フォーラム開催当日は趙先生の誕生日で、北京会場でささやかなお祝いをした。4年ぶりの会食も実現した。そして次回の第18回も引き続き後小路先生に依頼し、対面形式で北京で行うことが早々に決まった。 かつてのおなじみのチャイナフォーラムが確実に戻ってくる。 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/02/Chinaforum17_Photos.pdf アンケート集計結果 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/02/Chinaforum17_Feedback.pdf <孫建軍(そん・けんぐん)SUN Jianjun> 1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。専攻は近代日中語彙交流史。著書『近代日本語の起源―幕末明治初期につくられた新漢語』(早稲田大学出版部)。 ---------------------------------------------------------------- 【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送) 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Invitation to the 22nd Japan-Korea Asia Future Forum “Japan-Korea Relations on a Roller Coaster: What is Normal and What is a Mirage?”

    ********************************************** SGRAかわらばん1012号(2024年4月18日) ********************************************** ◆第22回日韓アジア未来フォーラム「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」へのお誘い 下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。 テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」 日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40 共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA) 方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom 言 語:日本語・韓国語(同時通訳) 参加費:無料 お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612) 参加方法: ◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。 ◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。 -ZOOM_ID:583_289_8745 -ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745 ◆フォーラムの趣旨 21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。 ◆プログラム 《開会》午後2時 司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事) 【開会の辞】 李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長) 南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) ◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分 司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授) 【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分 【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分 【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授) 「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分 【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分 【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分 【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分 ◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分 司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長) 【パネリスト】 西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学) 小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学) 安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所) 崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学) 李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学) 鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A 趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団) 【閉会の辞】 今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表) 金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長) 《閉会》午後5時40分 プログラム(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf ポスター(日本語) https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • MORI Takato “Quest for Truth”

    ********************************************** SGRAかわらばん1011号(2024年4月11日) 【1】SGRAエッセイ:森崇人「真理の探究」 【2】国史対話エッセイ紹介:キム・ホ「歴史と私」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#762 ◆森崇人「真理の探究」 私の研究は高エネルギー理論物理学、物性理論、量子情報理論の境界領域である。在学中は興味本位でこれら様々な分野から「量子もつれ」と呼ばれるミクロ特有の相関を調べていたため、博士論文の研究を一つの大きなストーリーにまとめるのが難しかった。そこで研究の原点に立ち戻る必要があった。このような振り返りは研究中にはあまりしないので、何を行ってきて、何を目指していたのか、そしてどこまで進んだのか再確認するには非常に有用であった。エッセイでは、私が何を目指して博士課程の間に研究をしたのか、そして在学中に感じたことを書き連ねたい。 研究目標は量子重力理論の解明である。量子重力というのは非常に微視的(量子的)なスケールで顕著になる重力の揺らぎや重ね合わせなどの量子効果を調べる分野で、その理論的枠組みを明らかにすることがゴールである。それにより、宇宙の誕生やブラックホール等に存在する時空の特異点(=これまでの理論が破綻する領域)を説明する理論構築につながると考えられている。このように重力が強く、その量子効果が無視できない領域では、我々が今持っている物理的理解・数学的手法が及ばないため、何か間接的な理解の仕方が必要となる。 そこで、近年はホログラフィー原理という対応を用いて、量子重力を、重力を含まない多自由度の量子系(例えば電子など)から理解する試みがなされている。私の研究ではその立場から、量子系の量子もつれなどの情報を調べることで、量子重力を理解しようとした。解析手法には、場の理論[高エネルギー理論物理]、テンソルネットワーク[物性理論]、一般相対性理論[重力理論]などの様々な分野の手法を援用した。このように分野を俯瞰しながら、ゆくゆくは情報理論の立場から量子重力を理解したいと考えている。 宇宙の誕生や時空の構成単位に迫る研究は理論物理の興味のみならず、哲学的にも意味があると信じている。古来より、人類は自身や宇宙の起源、存在に疑問を投げかけてきた。私の研究は、これらの問いに対して一つの答えを与えるものだと考えている。これまでの研究からの私の理解は以下である。 私たちが見ている世界、実存とは、実際のところ情報の集合体である。また、私たちが認識できるような世界というのは微視的情報が粗視化されたような解像度の低い世界(この構造を階層性と呼ぶ)で、理論的には一次元低い世界の情報の束として表現できる。従って、我々の世界や我々が行う観測という行為は一次元低いハードディスクのような記憶媒体、つまり情報源から、ホログラムのように情報を読み出す再生装置のようなものだと思われる。 では、私たちの上位存在である記憶媒体のことを我々は知り得るのだろうか。これは近年の量子コンピュータの発展とも無関係ではない。量子コンピュータ―は古典コンピュータ―より速いかもしれないと言われているが、果たして演算される入力と出力自体は量子性を認識できるのだろうか。我々が処理される情報のようなものであるなら、このような具体化はあながち間違いではないかもしれない。このように、理論物理は哲学とも深く結びついていて、自分とは何者か問いかけられる良い手法だと思う。 私が続けてきた学際的な研究は近年、急速に進んでいる。特に理論物理と情報理論の親和性は高く、これまでにない速度とレベルで研究交流がなされている。例えば、量子重力と量子情報や、物性理論と量子情報、非平衡熱力学と情報幾何学などがある。しかし、その一方で、どちらにも精通して分野を俯瞰しながら、新しい研究分野を創成することができるような成果はまだ少なく思える。もちろん一つの分野を極めて、そこからじわじわ境界領域を攻めていく方法は間違いではないし、むしろ強みがあった方が良い(自分はおろそかにしがちなので、この文章を書きながら自らに言い聞かせている)。 しかし、様々な分野を平等に攻めたからこそ、より根幹をなす普遍的な問題に気づけるのではないだろうか。そのような問題意識で量子重力・量子情報・物性理論・高エネルギー理論物理学の幅広い分野で研究を推し進めてきた。特に私の主な分野である量子重力分野に顕著だが、曖昧で弱い根拠の上に様々な論を組み立てるものがある。これ自体はインスピレーションの源泉にもなりうるし、実際多くの研究がなされた結果、元のアイデアがより厳密に示されたりするので、良い側面はある。 しかし、実際は驚くほど地に足をつけて議論できていないこともある。例えば、ある分野の研究対象Aと別の分野の研究対象Bの間に類似性がある。「A=B」とすればAかBのいずれかを調べることで両分野の進展につながる。しかし、「A=B」というのは仮定であり、それは検証されるべき前提条件である。残念ながらその緻密な検証作業がおろそかになっている側面は否めない。これは近年の競争原理の高まりによる論文至上主義(はやりの分野で、たくさん論文を書けば良い)の弊害だろうか。私もそのあおりを受けざるを得ないのだが、それでも地に足をつけながらバイアスを排除して真実を見落とさないように注意深く、じっくり研究していきたいと思っている。 これからは京都大学、そしてカナダのペリメータ理論物理学研究所で研究員として研究を続けていくことになるが、より一層様々な分野の人々と協力しながら真理の探究をしていきたい。 <森崇人(もり・たかと)MORI Takato> 2024年10月~:京都大学特定研究員(学振PD)、2024年6月~:ペリメータ理論物理学研究所研究員、2024年4月~9月:日本学術振興会特別研究員PD(京都大学基礎物理学研究所)、2023月3月:総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科素粒子原子核専攻5年一貫博士課程修了、2022年度渥美奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】国史対話エッセイ紹介 3月28日に配信した国史対話メールマガジン第55号のエッセイをご紹介します。 ◆キム・ホ「歴史と私」 昨年の秋に、日本の「国史たちの対話」事務局から原稿の依頼をいただいた。「賎学非才」な私なのに、研究を振り返ってくれという注文だった。これまで何を研究し、なぜそのテーマに関心を傾けたのか、久しぶりに振り返ってみた。中途半端ではなかったと思えて安心した半面、学部や大学院生時代から就職後においても、精神的彷徨は多かったことを告白せざるを得なかった。研究履歴は一人だけの研究結果というより、研究者のもう一つの顔であり子供のようなものなので、この文章を書いている最中はずっと恥ずかしく顔がほてっている。それでも、これまでの研究履歴を少しでも整理する機会にしてみようという気持ちから勇気を出した。 1980年代に韓国で大学に通った方々ははっきり覚えていると思うが、当時のキャンパスは毎日石と火炎瓶が飛び交い、煙たい空気で息をすることさえ難しかった。中学、高校時代ずっと歴史学に憧れていた私は、大学に入学さえすれば韓国史の勉強に専念できると思っていた。しかし連日のデモと休講が相次ぐ大学生活はいわゆる「勉強」とは程遠い状況だった。また、歴史を少しずつ知っていけばいくほど、私が知っていた歴史は歴史ではなかった。 「民衆」が強調された1980年代の韓国の雰囲気のせいか、私は支配階級である王や両班の歴史ではなく一般民衆の日常の方により関心を持つようになり、民衆の歴史を復元しようと決心した。幼い頃からなぜか強者より弱者の文化に関心があったという背景もある。ところが、100年前に遡ってみると、残っている史料や記録はすべて漢字だらけだった。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2024KimHoEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • Amelie CORBEL “SGRA Cafe #21 Report: The Reality of Dual Nationality in Japanese Society”

    ********************************************** SGRAかわらばん1010号(2024年4月4日) 【1】アメリ・コーベル「第21回SGRAカフェ『日本社会における二重国籍の実態』報告」 【2】寄贈本紹介:申惠媛『エスニック空間の社会学:新大久保の成立・展開に見る地域社会の再編』 ********************************************** 【1】アメリ・コーベル「第21回SGRAカフェ『日本社会における二重国籍の実態―複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践』報告」 2024年2月17日に開催された第21回SGRAカフェには57人が参加し、「日本社会における二重国籍の実態」が議論されました。今回のSGRAカフェを企画した理由の一つは、日本の国籍法を巡る誤解が多いことにあります。その最大のものは「日本は二重国籍を認めていない。二重国籍は違法だ!」という認識です。日本の国籍法が「国籍唯一の原則」という理念を取り入れていることは確かですが、それが二重国籍を禁止したり、不可能としたりするものではありません。 この原則の下、二重国籍のケースを減らすための制度がいくつか設けられていますが、その重国籍防止・解消制度の多くは必ずしも積極的なものではなく、また行政による運用についても同じことが言えます。例えば国籍選択制度の下では、選択の義務を果たしながらも日本国籍を選択した上で、外国の国籍を保持することは可能なのです。それに対して、海外在住の日本人が居住国の国籍を取得した場合等に適用されている規定(11条1項)は非常に厳しいもので、重国籍の存続は許されません。同じ二重国籍者でも、状況によって法の適用が異なることが示されました。 基調講演では、武田里子氏が「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」と題して35分にわたって発表しました。まず、国際結婚の研究から二重国籍の問題に関心を寄せ、特に台湾や韓国での調査を通じて現地男性と結婚した日本人女性たちとの交流から子どもの二重国籍問題が浮かび上がったことを紹介。日本国籍と外国籍の選択が22歳までに必要とされるが、実際にはこの義務を果たさなくても何も起こらないという混乱した情報の中で、母親たちが子供の将来について心配していることを指摘しました。 次に、日露ハーフの子どもたちに関する国籍問題が取り上げられました。通常、ハーフの子供たちは片方の親から日本国籍、もう一方の親から外国籍を取得しますが、日本に生まれたロシア人の子は出生によってロシア国籍を取得したとは見なされず、「簡易帰化のような手続きを経て取得した」と、日本政府は解釈します。そのため、ロシア大使館に出生届を提出した時点で日本国籍を喪失します。子どもの最善の利益の観点から、この国籍法の運用は許されるものなのかと、武田氏は問いかけました。 その後、発表のタイトルにある通り、過去40年の間、日本政府による複数国籍への対応がどのように変遷してきたのかを論じてくださいました。 40年前と言うと、ちょうど1984年の国籍法改正の時です。当時、女子差別撤廃条約の批准のための法整備の一環として、父系優先血統主義が父母両系血統主義に改められました。この法改正により、二重国籍者の増加が予測され、それに対処するために重国籍解消制度が導入されました。 1984年の国籍法改正後、複数国籍の議論が進まず現在に至っています。その間、海外では重国籍容認への動きがあり、国外居住者のロビー活動が影響力を持ちました。「日本ではなぜ在外邦人が国籍法改正に向けて大きな力を発揮しないのか」と武田氏は問いかけます。 2000年代に入り、日本政府は重国籍者に対する対応を変化させ、「放置主義から摘発強化」への方針転換が見られるようになりました。特に、在外公館ではこの転換が顕著に現れました。それまでは11条1項の定めるところによって、日本の国籍を喪失したはずの在外邦人に対し、日本政府は国籍喪失届の提出を指示することもなく放置していました。戸籍さえあれば、日本人扱いで構わなかったようです。しかし、2005年以降は、11条1項が適用される人たちの摘発に力を入れるようになりました。 近年、二重国籍者を萎縮させた最大の出来事は間違いなく、2016年に起きた蓮舫議員の二重国籍騒動です。メディア報道により、「重国籍=違法」という印象が強まり拡散しました。その結果、当事者の間には不安が広がり、国籍のことを友達にも話せなくなったと言う人もいます。 そして、この問題が日本国憲法の基本原則である平和主義、民主国民主権、人権擁護とどのように関連しているかについても議論が展開されました。武田氏は、複数国籍の容認は憲法に基づく要請であるとする憲法学者の見解を紹介し、複数国籍の問題が国の基本原則とも密接に関連していることを強調しました。 2010年代の終わり頃から、この状況の悪化に歯止めをかけようとする当事者らによる運動が見られるようになります。11条1項の違憲性を訴え、国を提訴した「国籍はく奪条項違憲訴訟」です。残念なことに、現時点では敗訴が続いていますが、今後、違憲判決が出ることを信じて、武田氏は弁護団と原告らを支援し続けています。 最後に「複数国籍の容認は日本国憲法の基本原則たる平和主義、民主国民主権、そして人権擁護に基づく要請である」と指摘する憲法学者の近藤敦氏と同意見であることを明確に述べて、基調講演を終えました。 話題提供を務めてくださった3人は、それぞれ異なる視点から二重国籍の問題に限らず、国籍のあり方そのものに疑問を投げかけ、カフェ参加者に「Food_for_thought」を与えてくれました。 最初の話題提供者は、社会福祉学の専門家であるヴィラーグ・ヴィクトル氏です。日本の公的な福祉制度と国籍の関係について説明し、多様性を尊重する必要性を強調しました。さらに、ソーシャルワークの視点から二重国籍問題を分析し、当事者の活動の重要性を強調します。参加者からは賛同する声が上がりました。 金崇培氏は、3世代にわたる自身の家族史やライフ・ヒストリーから、国際関係や国家の諸事情がいかに個人の国籍に影響を与えるのかを教えてくれました。1941年に朝鮮人の両親をもち日本で生まれた金氏の母親は、生まれつき日本国籍を有していましたが、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効に伴い日本国籍を失うことになりました。金氏の息子たちは、韓国人の父親と日本人の母親の間に生まれたことから、生まれながらの二重国籍者です。2011年に韓国が部分的に重国籍を認めたため、息子は成人した後も二重国籍を保持できるようになりました。ただ、韓国人男性に課されている徴兵制による兵役義務がネックとなりそうです。金氏の報告からうかがえるのは、国籍というのはアイデンティティーと絡む側面もあれば、権利・義務が発生する法的身分を表すものでもあり、時には実利的な事情で国籍を取得したり、放棄したりすることもあるということです。 高偉俊氏は個人的な経験を通じて議論しました。日本生まれ、日本育ちの娘が日本に帰化した際の手続きの複雑さや時間のかかり方を挙げ、日本で生まれ育った外国籍の子どもたちが、より簡単な方法で日本国籍を取得できる仕組みが必要だと提案しました。こういった子どもたちの多くは、日本にアイデンティティーを置いており、今後も日本社会に貢献していくことから、彼ら、彼女らに日本国籍を与えることが、本人たちのみならず、日本にとっても有益であると主張しました。 参加者は休憩を挟み、会場とオンラインの4つのグループに分かれてディスカッションを行いました。国籍制度自体に疑問を投げかける声が挙がり、国籍が人々を区別する制度として機能する側面について考えられました。また、国籍法改正に関して国の姿勢を批判するだけでなく、国を動かす方法を模索すべきだという意見も出されました。その他、国籍を捨てることがアイデンティティーの一部を捨てることと結びつく可能性が指摘され、日本で国籍が重要な境界線として果たしてきた役割についても議論が行われました。 当日の写真 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/SGRACafe21Photos.pdf アンケート集計結果 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/SGRACafe21Feedback.pdf 報告書の全文 https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/03/SGRACafe2Report_ALL.pdf <アメリ・コーベル Amelie_CORBEL> 獨協大学フランス語学科特任講師。パリ政治学院政治学研究科博士課程修了(政治学博士)。博士論文「日本の国際結婚の諸規制-ビザ専門の行政書士の役割を中心に」(仏語のみ)。2022年度フランス日本研究学会博士論文賞を受賞。専門は政策過程論、ジェンダー研究、法社会学。2018年度渥美国際交流財団奨学生。 ---------------------------------------------------------------- 【2】寄贈本紹介 SGRA会員で宇都宮大学助教の申惠媛さんより新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。 ◆申惠媛『エスニック空間の社会学:新大久保の成立・展開に見る地域社会の再編』 エスニックな観光地「新大久保」の出現は、居住空間としての大久保地域をいかに変容させたのか。定住を要件とする従来の多文化共生論や地域社会像を批判し、住民だけでない多様な人々の共在から成るプロセスとしての、新たな地域社会概念を提起する。 発行所:新曜社 出版年月日:2024/01/31 ISBN:9784788518322 判型・ページ数:A5・352ページ 詳細は下記リンクをご覧ください。 https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b640719.html ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 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  • Zahra MOHARRAMIPOUR “Living in Between Cultures”

    ********************************************** SGRAかわらばん1009号(2024年3月28日) 【1】SGRAエッセイ:モハッラミプール・ザヘラ「文化の狭間に生きること」 【2】催事紹介:第22回INAF研究会(3月30日、オンライン) 「人類史の転換期における朝鮮半島と日本列島の地政学的役割」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#761 ◆モハッラミプール・ザヘラ「文化の狭間に生きること」 飛行機から降りると、カラッとした懐かしい空気が鼻を通る。閑散とした空港の荷物受取所に着いて辺りを見回すと、ガラス越しに手を振る父の姿が目に入った。その瞬間、ようやく故郷に帰ったという実感が湧いてきた。2022年の夏、3年半ぶりに出身地テヘランに一時帰国したのであった。日本に留学して9年が経つが、コロナ禍がやってくるまで、1年か1年半のペースで帰国していた。しかし、2020年2月に予約していたフライトがコロナの影響でキャンセルになり、それ以来日本から出られないでいた。 今回の帰国で印象に残っているのは、研究に必要な資料を入手しようと、テヘランのとある図書館を訪れた時の経験である。まず図書館に入って期限が切れていた利用証を更新し、ロッカー・ルームへ進んだが使い方が分からない。説明書きがあるはずだと思って探していたところ、突然横から聞こえた思いがけない声に驚いてしまった。 「初めてですか?」 「あ、はい…」 「あそこにある機械を使わないといけないですよ。一緒に行きましょう。やり方を教えますね」 「あ、ありがとうございます」 ロッカー・ルームにいた大学院生らしき女性に助けられた。どこにでも説明書きがあるのは、日本での常識だったと気付かされる。かばんをロッカーに入れて一息つき、検索用パソコンがあるホールに向かった。一つのパソコンを選び、検索しようとしたが、うまくいかない。周りを見渡していたところ、今度は少し離れているパソコンの前にいた女性に声をかけられた。 「使い方、大丈夫ですか」 「いや、あの…久しぶりに来たので、うまく検索できないのですが…」 「一緒にやりましょうか」 「え?いや…あの…あ…ありがとうございます」 「まずはここをクリックしてみてください」 結局その女性は、私が必要な雑誌を見つけて、利用申請するまで付き合ってくれた。その後、なんとか閲覧室にたどり着き、受付のおじさんに資料の受け取り方を尋ねたが、システムに問題があり、時間がかかるとのこと。仕方なく閲覧室にある20世紀初頭の新聞を広げて読みはじめ、時間が経つのを忘れる。受付のおじさんは待っている私を気にかけ、何度か話しかけてくれた。資料が用意された時には、1時間以上も過ぎていた。おじさんは、私を別の席に案内しこう言った。 「こんなにも待たせて申し訳ない。スマホで写真を撮るのは本当はだめだけど、今日は待たせたお詫びに、必要な個所の写真を撮ってもいいよ」 「え?…ありがとうございます」 お礼を言って、ポケットからスマホを取り出した。日本の図書館ではこれほど待たされたことはない。とはいえ、このように柔軟にルールを変更する対応を受けた記憶もない。 次の日は別の資料室に行って、資料を申し込んだ。すでにスキャンされた資料はUSBメモリに入れてくれるとのことだった。日本で使っているUSBメモリを担当者に渡したところ、彼はファイル名が漢字になっているのに気づいてこう言った。 「中国で勉強しているんですか。それとも日本ですか」 「日本です」 「本当に難しそうですね。もう全部読めるんですか」 会話は自然と数分間続いた。日本では調査先の図書館で、このような何気ない会話をする機会が少なかったことを思い出した。おそらく、図書館の担当者が研究者の個人的なファイルを目にしたとしても、それについて相手に質問することは考えられないだろう。 改めて振り返ると、日本で勉強し働くことを選択した自分は、文化の狭間に生きているように感じる。両国の文化を行き来しながらさまざまなコミュニケーションを重ね、その社会の規範に沿って「自然」に振る舞おうとするが、それが周りの人に「不自然」や「滑稽」に映る場合もある。時には、「自然」と「不自然」の境界線さえも曖昧になってくる。一時帰国をする時は、長年故郷を離れていて、もう常識が分からなくなってしまったような感覚を覚える日もあれば、一日も離れていなかったような、ずっとそこにいたかのような錯覚に陥る日もある。文化の狭間に生きることは、ぎこちなく不安定でありながらも、何度も発見を繰り返す機会を作ってくれている。 <モハッラミプール・ザヘラ Zahra_MOHARRAMIPOUR> イラン出身。2022年度渥美国際交流財団奨学生。2023年7月、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻比較文学比較文化コース博士号取得。現在は、日本学術振興会外国人特別研究員(国立民族学博物館所属)。 ---------------------------------------------------------------- 【2】催事紹介 SGRA会員で北陸大学教授の李鋼哲さんより、自ら創設された(一社)東北亜未来構想研究所(INAF)の研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加ご希望の方は直接お申し込みください。 ◆第22回INAF研究会 講 師:小松昭夫(小松電機産業社長・会長、人間自然科学研究所理事長) テーマ:「人類史の転換期における朝鮮半島と日本列島の地政学的役割」 日 時:2024年3月30月18:00~21:00(オンライン、Zoom) 要 旨:緊張地帯の南北朝鮮、そして日本が、米国・中国・ロシアそして世界の理解を得て、対立と恨のエネルギーを止揚し、恒久的な平和の流れを作り出したら、日本と朝鮮半島の人々のみならず、その恩恵は世界に広がり、人類の恒久的な資産になるだろう。これは真の平和・環境・健康を作り出す出口である。 プログラムの詳細、参加申し込みについては下記リンクをご覧ください。 https://inaf.or.jp/ ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************  
  • YUN Jae-un “Tokyo’s Unknown (?) Base Issues”

    ********************************************** SGRAかわらばん1008号(2024年3月21日) 【1】SGRAエッセイ:尹在彦「東京の知られざる(?)基地問題」 【2】国史対話エッセイ紹介:金泰雄「歴史と私―道程と進路」 ********************************************** 【1】SGRAエッセイ#760 ◆尹在彦「東京の知られざる(?)基地問題」 東京の西部、「三多摩」もしくは「多摩地区」と呼ばれる地域への第一印象は「異色」だった。2015年、最初に住み始めた小平市の風景は予想していた東京のそれとは違った。まず驚いたのは最寄り駅の線路が単線だったことだ。小平市を縦断する西武多摩湖線の風景は「郊外感」であふれていた。多摩地区出身の何人かの方から「都内に行く」と言われた時には違和感を覚えた。厳然たる「東京都内」なのに23区と呼び分けていたからだ。 私の生活圏である東京都立川市は近年「多摩地区の王者」とも呼ばれる。より田園風景の印象の強い八王子市からその座を譲り受けつつあるという。実際に、新しい商業施設の建設や商業ビルの建て替えがコロナ下でも盛んに進められた。人口は約20万人と、八王子市(約57万人)の方が圧倒的に上だが、交通の利便性や「都内」との距離、適度な自然と都会との調和という面で注目されている。そのためか、最近の立川市の平均地価は練馬区とほぼ変わらないという。 立川駅の北隣には広大な「国営昭和記念公園」がある。有料の庭園が有名で、バーベキューもできるため、地元だけでなく様々な地域から訪問する人が後を絶たない。花見シーズンや花火大会にはいつも混み合う。空から見下ろすと、公園はアスファルトで覆われた区域と隣接している。これは、この公園の特殊な歴史を物語るいわゆる「傷跡」でもある。形状からも推察できるように、これは滑走路の跡だ。今は陸上自衛隊立川駐屯地が位置されているが、かつては米軍の立川飛行場があり、その前には日本陸軍が同じ用途で使用していた。米軍の立川飛行場返還と共に、1983年開園したのが現在の昭和記念公園だ。それまで立川市一帯は「基地城下町」で、米軍基地拡張反対のための「砂川訴訟」(日米安保のあり方が問われる)も行われた。現在でも米兵向けの歓楽街の名残が一部地域に残っている。 昭和記念公園からもう少し北上すると、また広大な現役の滑走路が登場する。米空軍の横田基地だ。難読地名に入りそうな福生(ふっさ)市などに位置しており、基地周辺には米軍のための飲食店やバーなども散見される。この1年間、用事があって定期的にこの地域に足を運んだ。そのため、隣接している昭島市のカフェなどで時間を過ごすことが何回かあったが、偶然にも自分の記憶(トラウマ?)がよみがえる経験をさせられた。久々に飛行機(戦闘機)の爆音にさらされたのだ。おそらく、昭島に初めて来たであろうカフェのお客さんは繰り返される爆音に衝撃を受けたようだった。それもそのはず、会話が続かないため、ただ単に騒音が収まるまで待つしかない。 韓国空軍出身の私は兵役の2年間を飛行場の中で暮らした。宿舎から滑走路までは走ると10分もかからない。戦闘機の爆音は昼間だけでなく、場合によっては夕方まで続く。年に数回ある軍事演習時には特にひどくなる。大がかりな演習時には韓国軍だけでなく米軍も増派された。その大半は沖縄駐留米軍で「米韓安保と日米安保がこのようにつながっているんだ」と、実体験として理解できた瞬間でもあった。基地内には少数の米軍が駐屯しており、個人的には食べ物(とにかく安く食べ放題のアメリカンスタイルの料理が楽しめた)や図書館の利用など、お世話になったこともあった。しかし、騒音のせいで、基地周辺では苦情が絶えず住民訴訟も数回起こされた。 横田基地の騒音が気になり、昭島市のホームページを調べた。そこでは「横田基地」と「立川飛行場」の騒音や各種演習に関する情報が頻繁に発信されていた。事前に演習情報を知ったって、何か対策をとることはできない。残念ながらそれが経験からも分かる現実だ。墜落事故が相次ぐオスプレイに関する情報も載っていた。去年11月、屋久島沖に墜落した米軍オスプレイ機は横田基地所属だ。この地域住民にとって基地問題は他人事ではない。 発がん性が疑われる有機フッ素化合物(PFAS)問題は最近偶然知った。米軍基地から流出したPFASが河川に流れ込み水質汚染を起こす可能性が提起されている。ただし、まだ人体への影響は定かでないようだ。これまで沖縄でも問題になっていた。昨年、野党系国会議員が配布したチラシに多摩地区の水質汚染に関する情報が載っていた。東京新聞記事(2月3日)によると、立川市の防災井戸1か所で国の暫定基準値の9倍を超える値が市の調査から確認されたという。昨年9月の選挙で勝利した野党系の市長がPFAS問題に厳しい発言をしていたことも思い出した。その候補が市長に当選し独自調査に踏み切ったのだ。NHKニュース(2023年12月1月)では、多摩地区の住民を対象に行った専門家(京都大学大学院の原田浩二准教授)と市民団体の調査では、政府による他地域の調査結果より2.4倍の高い血中濃度が検出された。 このように、「都内」でも防衛政策に関しては地域による「二重構造」が存在しているのだ。沖縄ほどではないにせよ、同様の構図が東京でも続いている。2年間「暮らしていた」韓国の空軍基地は結局、住民の苦情や政治家の圧力により移転が決定された。現在は大邱(人口約240万人)の中心部からほど近い場所にあるが、2030年を目途に人口の少ない地域に完全に移転される。費用は1兆円以上に上ると見込まれる。それなりに思い出(?)のある場所だったが、やむを得ないと思った。もちろん、全ての基地問題が移転という方法で解決できるとは思わない。費用や地域間対立も相当なものになるはずだ。それでも基地問題に対する情報提供への積極姿勢やその透明性、住民とのコミュニケーションはある程度必要ではないだろうか。東京でも基地問題は現在進行形だ。 <尹在彦(ユン・ジェオン)YUN_Jae-un> 立教大学平和・コミュニティ研究機構特別任用研究員、東洋大学非常勤講師。2020年度渥美財団奨学生。新聞記者(韓国)を経て、2021年一橋大学法学研究科で博士号(法学)を取得。国際関係論及びメディア・ジャーナリズム研究を専門とし、最近は韓国のファクトチェック報道(NEWSTOF)にも携わっている。 ---------------------------------------------------------------- 【2】国史対話エッセイ紹介 12月21日に配信した国史対話メールマガジン第52号のエッセイをご紹介します。 ◆金泰雄「歴史と私―道程と進路」 私は1961年10月に生まれた。この年は5・16軍事政変(訳注:1961年5月16日に朴正煕少将が主導した反共クーデター)が起きた年である。4・19革命(訳注:1960年4月19日、李承晩政権の崩壊の原因となった学生、市民の反政府デモ。警察の発砲で183人死亡)が花を咲かせる前にまた社会が激変し、韓国の政治・経済・社会・文化はもちろん、教育も新しい環境にさらされた。反共主義と国家主義が幅を利かせ、教育現場に軍事文化が根をおろし始めた。国民学校(訳注:小学校。後に初等学校に改称)1年の冬休みを目前にした1968年12月5日、国民敎育憲章の宣布と1972年10月の維新(訳注:1972年10月17日、朴正煕政権が非常戒厳令を宣言。独裁が始まった)の広報物は幼い国民学校の生徒にも国家と民族に対する献身と情熱を呼び起こす触媒だった。 中学校時代も同様だった。1975年のいわゆる「越南敗亡」(訳注:1975年4月30日南ベトナム政権が無条件降伏、臨時革命政府が全権掌握しベトナム戦争が終わった)直後の教育現場のいたるところで行われた反共雄弁大会(訳注:スピーチ大会)と演説者たちの血の滲むような絶叫は指導者へのる絶対的な盲信をもたらした。毎月開かれる民防衛訓練(訳注:民間人も参加する一種の軍事訓練)は戦争に対する恐怖を増幅した。自然と少年は過去への逃避を夢見た。高句麗の栄光に関心を持ち、韓国の古代史に心酔したりもした。ハリウッドの映画会社で制作された様々な時代劇映画を鑑賞し、歴史の広大な舞台と興味を引くストーリーに魅了されたりもしていた。他の少年達と同様に世界の八不思議に夢中になり、関連する文献を読み漁った。歴史は小説のように無限の想像力を発揮できるだけでなく、興味を呼び起こす知識の倉庫のように思えた。 しかし、私のこういった歴史観は1980年3月、大学に入学して崩れてしまった。いわゆる「ソウルの春」(訳注:朴正煕暗殺後の一時的な空白期間)後に成立した新たな軍事政権が光州民主化運動を弾圧したことを知り、韓国の近代史にとりつかれるようになった。滔々と流れるような韓国の近代史の中に韓国の暗い現実を打開できる鍵が隠されていると考えたのだ。 全文は下記リンクよりお読みください。 https://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2023KimTaewoongEssay.pdf ※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方はSGRA事務局にご連絡ください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。 ◇国史メルマガのバックナンバー https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ◇購読登録ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。 ********************************************* ★☆★お知らせ ◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応) SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方はSGRA事務局にご連絡ください。 https://www.aisf.or.jp/kokushi/ ●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。 ●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。 http://www.aisf.or.jp/mailmaga/entry/mailing_form/ ●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。 ●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。 ●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/ ●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。 http://www.aisf.or.jp/sgra/kifu/ 関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局 〒112-0014 東京都文京区関口3-5-8 (公財)渥美国際交流財団事務局内 電話:03-3943-7612 FAX:03-3943-1512 Email:[email protected] Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/ *********************************************