SGRAメールマガジン バックナンバー

XIE Suhang “Preparing for a Long Battle against COVID-19”

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SGRAかわらばん835号(2020年9月3日)

【1】エッセイ:謝蘇杭「コロナとの長期戦に備えて」

【2】国史対話メルマガ#21を配信:
金丹実「日中韓3言語でリアルタイムに眺めた新型コロナウイルス」

【3】第14回SGRAカフェへのお誘い(9月19日)(再送)
「国際的観点から見た日本の新型コロナウイルス対策」
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【1】SGRAエッセイ#644

◆謝蘇杭「コロナとの長期戦に備えて」

今年の4月4日、中国の清明節。中国における新型コロナウイルスとの戦いの初歩的な勝利を示すシンボルとして、政府は当日の午前10時、全国で3分間の黙祷を行い、1月23日の武漢封鎖を皮切りとした2か月にわたるコロナの防疫活動で犠牲になった医師と医療従事者たち、そしてコロナで逝去した人々に哀悼の意をささげた。中国におけるコロナの一時的収束と反対に、コロナの世界的大流行は4月を機にその傾向が顕著となり、日本も免れなかった。幸い、日本の感染者数は欧米諸国に比べると低いほうで、4月から5月の間、政府が発した緊急事態宣言によって、さらなる感染は一時的にコントロールできた。しかし思わぬことに、5月末の緊急事態宣言の解除に伴い、間もなくクラスター(感染者集団)が頻発し、東京都は連日、以前をはるかに上回る感染者が現れた。新型コロナウイルスの爆発の第二波はやはり現実になった。

日本における新型コロナウイルスの爆発の第二波は、まさしく次のような残酷な事実を我々に押しつけている――少なくとも、我々が当面予測可能な近い将来において、コロナは我々とともに生活し、我々の日常生活のあらゆる面でその影響の痕跡を残すに違いない――最初に我々が望んでいた、短い苦痛をしのげばきっともう一度普通の日常に戻れるという楽観的な夢が破れたのだ。したがって、この苦境のなかで新しい心構えを作り直さなければならないのである。我々は皆、自分の内面において、コロナとの長期戦に備えて粘り強い根性を持つと同時に、現実の日常生活での一挙手一投足において、所々に注意を払い、コロナの防衛策に自分なりの最善を尽くすべきである。これこそ、これからのウィズコロナの社会を生き抜くための、正しい態度だといえよう。

昔、ある記事を読んだことがある。その記事は、ひとりの人間、または一つの組織が、如何に長きにわたる困難にうまく対処し、やがて乗り越えることに成功したのか、という問題を検討している。そこで記事の著者が与えた答えは、「回復力」(立ち直る能力)である。では、この「回復力」は具体的に何によって構成されているのだろうか。

記事の著者はナチの強制収容所に収容されていたある生存者を対象にインタビューを行った。この生存者の話によれば、ほかの収容者と違って、彼は外の世界に希望を託しすぐにも救出されるという幻想を最初から持っていなかったという。それと反対に、彼は自分が生きてこの収容所から脱出できないかもしれないということを、真剣に受け止めていた。生存の限界状況に達する収容所において、彼が唯一考えていたことは、もし奇跡的に彼が生きて外の世界に戻ったら、必ず外の世界に対して、今彼が経験しているこの状況のすべてを暴き出さなければならないということであった。世界にここで発生している悲劇を伝えることで、このような悲劇を二度と起こすまいと、彼は心の中で強く願っていた。この信念をもって、彼は自分の創造力を最大限まで発揮し、収容所の冬を潜り抜けるありとあらゆる材料を収集し、最後にこの想像を絶する苦境を乗り越えたのである。

この生存者の経験は、「回復力」を成り立たせる3つの要素を明示してくれている。それはつまり、現実に向き合う勇気と、生きる意味への追求と、状況への柔軟な対処、という3つである。この3つの要素は、まさしく我々がこれからのコロナとの長期戦で向き合わなければならない苦境において、我々の生の価値を最大限まで引き出せるテーゼなのではないだろうか。

こうしてみれば、新型コロナウイルスの世界規模での横行は、世界中の多くの国の人々に災いをもたらしただけでなく、それと同時に、潜在的なウイルスの脅威、規制された不便極まりない生活、消費社会の一時的停滞、失業とともに失われた日常の達成感…などといった諸般の困難を我々皆に押しつけることで、我々にもう一度自分の生き甲斐と積極的な人生の態度を見極めさせ、拾い直させる機会でもあるのではないか。

今回のコロナの影響を引き金に、世界の情勢に急激な変化が発生する可能性は相当大きいといえよう。しかし我々は、この2020年に不運にも遭遇したコロナという災いを、悪いニュースとして受け止めるのではなく、良いニュースとして見るべきである。これから長期間にわたる限られた生活のなかで、無限の可能性を自らの手によって作り出そう!

<謝蘇杭(しゃ・そこう)Xie_Suhang>
渥美国際交流財団2019年度奨学生。中国浙江省杭州市出身。2014年江西科技師範大学薬学部製薬工程専攻卒業。2017年浙江工商大学東方語言文化学院・日本語言語文学専攻日本歴史文化コースにて修士号取得。現在千葉大学人文公共学府歴史学コース博士後期課程在籍中。研究分野は日本近世史、特に日本近世における本草学およびそれと関連した近世社会の文化的、経済的現象に注目を集める。「実学視点下の近世本草学の系譜学的研究」を題目に博士論文の完成を目指す。

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【2】「国史対話」メールマガジン第21号を配信しました。

◆金丹実「日中韓3言語でリアルタイムに眺めた新型コロナウイルス」

7月に今西女史よりこのお題で国史メルマガに寄稿してほしいという話をいただいたとき、思わず身を乗り出した。日本語で執筆することにし、中韓の2言語バージョン作成も二つ返事で承諾した。誰かの翻訳や編集された情報に頼る必要がない日中韓三言語の使い手である私が、北京からリアルタイムで見た日中韓三カ国のコロナ禍はどんなものか。2018年にソウルで開かれた「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議以降、スピーカーと通訳者という立場を超えて意見交換させて頂いた日中韓関係者の皆様と、半年来の新型コロナ所感を率直に共有したかった。

しかしいざ執筆となって困惑した。7月下旬に入って日本の新規感染者が急増し、明白な第2波がきており、積極的に感染を押さえ込んできたかに見えた韓国も大規模再流行の瀬戸際に立たされたのだ。新規感染がゼロとなって日常の賑わいが戻った北京で綴るこのエッセイが、最終的に日中韓3言語バージョンで同時発信されることを想起すると、慎重に言葉を選び、3カ国語の読者それぞれを気遣わなければならない。COVID-19 を「チャイナウイルス」「武漢肺炎」と呼ぶのは某国大統領だけではあるまい。ジョンズホプキンス大学の集計によると、8月24日現在、世界で2350万人が感染し、死亡者が80万人を超えた。いまさら時系列でCOVID-19の感染プロセスを私が刻々と追う意味があるのか。だから、個人的にインパクトを感じたことを気ままに綴ることにする。

続きは下記リンクからお読みください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2020JinDanshiEssay.pdf

※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは20日ごとに配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。また、3言語対応ですので、中国語話者、韓国語話者の方々にもご宣伝いただきますようお願いいたします。

◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

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【3】第14回SGRAカフェへのお誘い(再送)

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす皆さまに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回はオンラインZoomと渥美財団の会場とを繋ぎ、バーチャルとリアルを組み合わせて開催します。皆さまのご参加をお待ちしています。

◆第14回SGRAカフェ「国際的観点から見た日本の新型コロナウイルス対策」

日時:2020年9月19日(土)(日本時間)15時00分~17時00分
参加方法:オンライン(Zoom)または渥美財団へご来訪かを参加登録時にお選びいただけます。
言語:日本語
会費:無料
定員:オンライン100名/渥美財団ホールでの参加15名
(人数に達した時点で申込を締め切らせていただきます)
参加申込(下記リンクから):
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_73VDxBKBTBWzXdhjhSh3ow

問い合せ:SGRA事務局 [email protected]

◇プログラム
14:45 Zoom接続開始
15:00 開会
15:10 講演:大曲貴夫「国際的観点から見た日本の新型コロナウイルス対策」
15:40 各国リポート5ヵ国(1人5分程度)
16:20 質疑応答(会場+オンライン)
17:00 終了
17:00~ご希望の方々によるZoom懇親会(18:00頃終了予定)

◇趣旨
世界を席巻する新型コロナウイルス(COVID-19)。各国は感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指して試行錯誤を繰り返しています。
今回のSGRAカフェでは、国立国際医療研究センター国際感染症センター長の大曲貴夫先生をお招きしてお話を伺うと共にアジア各国からのリポートを交えて、今世界で何がおこっているのか、どのように向き合うべきかを考えます。
更に「感染症とリスクコミュニケーション」、「防疫の国際協力」等の議論も行いたいと思います。

◆講演「国際的観点から見る日本の新型コロナウイルス対策」
大曲貴夫(おおまがり・のりお)国立国際医療研究センター国際感染症センター長
新型コロナウイルス感染症の診断、治療、感染防止対策が医療上の大きな課題となっている。この感染症が社会全般特に経済に及ぼす影響は極めて大きく、その影響が今後数年以上継続すると予想されているなかで、今後この感染症にどのように向き合っていくべきかについて、私の意見をお伝えしたい。

◇司会
尹在彦(ユン・ジェオン):一橋大学大学院国際関係論専攻/元新聞記者(2020渥美奨学生)

◇各国リポーター
【韓国】金雄熙(キム・ウンヒ):仁荷大学国際通商学科教授(1996渥美奨学生)
【台湾】陳姿菁(チェン・ツチン):開南大学副教授(2002渥美奨学生)
【ベトナム】チュ・スワン・ザオ:ベトナム社会科学院文化研究所上席研究員(2006渥美奨学生)
【フィリピン】ブレンダ・テネグラ:アクセンチュアコンサルタント(2005渥美奨学生)
【インド】ランジャナ・ムコパディヤヤ:デリー大学准教授(2002渥美奨学生)

詳細は下記リンクをご覧ください。

第14回SGRAカフェ「国際的観点から見た日本の新型コロナウイルス対策」

【事前接続テスト】2020年9月7日(月)15:00~16:00にZoomの事前接続テストを実施いたします。テストをご希望の方は、SGRA事務局へ参加申込メールアドレスをお知らせください。担当者より折り返しご連絡を差し上げます。接続方法、ミュート機能のON/OFFの切り替え、チャットの見方などについてご不安な方はどうぞお気軽にこの機会をご活用ください。テスト時間内であればいつでも接続、参加可能、出入り自由です。

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★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

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