SGRAメールマガジン バックナンバー

Xie Suhang “New Culture of Emerging in Connections”

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SGRAかわらばん801号(2019年12月19日)

【1】エッセイ:謝蘇杭「繋がりの中で『創発』する新しい文化」

【2】「国史対話」メルマガを配信:鄭淳一「日韓青少年大学生歴史対話の可能性」(再送)
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【1】SGRAエッセイ#615

◆謝蘇杭「繋がりの中で『創発』する新しい文化」

2019年9月23日、私は東北新幹線やまびこ50号でSGRAふくしまスタディツアーからの帰途につきました。これは私にとっての人生初の新幹線でもあり、同時に人生初の福島旅行でもありました。新幹線の座席でツアーの「栞」と先輩方の感想文を読みながら、私はこの3日間を過ごした飯舘村での様々な経験の一つ一つを思い返していました。

一番印象に残ったのは2日目の夜の「お国自慢料理パーティー」でした。私は同行した金弘渊さんとコンビを組み、中国代表チームを結成しました。料理上手の金さんがシェフ、私はその助手を務めました。助手ながらも、渥美財団の角田事務局長が道の駅で中国では鎮痛剤として広く使われている「雲南百薬」を発見したことをきっかけに、私も本草学研究者として、金さんの考えた献立に、この「雲南百薬」を素材とした料理を一品加えさせていただきました。料理自体は「ニラとたまごいため」の手順に「雲南百薬」を加えた簡単なものでしたが、料理の薬効を紹介し、金さんの作った献立のオマケとして提供すると、来場した方々が興味を持って下さり、「雲南百薬とたまご炒め」と名付けられて、好評を博し、かなり早い時期に皿が空となったので、本草学研究者として大変嬉しく思いました。

懇親会では、ツアー参加者が作った各国の自慢料理を一緒に食べながら、暖かい雰囲気の中で村の皆さんと歓談することができました。歓談の後、村の方々に教えてもらい、私達も一緒になって盆踊りを踊りました。その光景を見て、この村はまだまだ活気が溢れているとしみじみ感じました。ここに居合わせた人数は数十人に過ぎないかもしれませんが、ツアー参加者と村の方々が手を繋いで作った、リズムに合わせて回っていく「輪」は、やがてより大きな輪となって、飯舘村を再生していくのではないか、私の目にはそのような「輪」に見えていたのです。

私の研究分野は日本近世本草学です。日本の近世本草学は、東アジアの中だけではなく、同時期のヨーロッパの西洋博物学と比べてみても、ユニークな存在です。西洋博物学は、自然の中に存在する全ての動植物を、表象化し分節化していくプロセスを経て、最終的に一つの体系を持つ学問として成立しました。一方、日本の近世本草学は、社会の動態的枠組みの中で、文化的・経済的・政治的な諸要素と関わりながら発展した「関係と変化の学問」です。学問を媒介にして、多様な要素が相互作用することによって、社会全体が変化し、新たな社会の特質を産み出すことがあり、それは「創発現象」と呼ばれています。近世日本の本草学は「関係のネットワーク」の中で、人と自然・社会の繋がりの媒介として、さまざまな文化的現象を「創発」したのです。

今回のスタディツアーで、折にふれて私が飯舘村で感じた人と人、人と自然の「繋がり」は、まさに近世日本における本草学の基底に存在した、人と自然・社会の繋がりそのもののように思いました。例えば、東京の大学と連携して行われた飯舘村における芸術文化の復興活動は、しっかりと飯舘村の地形・風土などの特色を考慮に入れた上で展開されています。また、村の方々が開発した除染方法も、環境省が組織した政府の除染作業と異なり、現地の生態環境と農地状況を把握した上で、みんなが連携をとって、細やかに土地の実情に即して作業を行っているように見受けられました。このように「繋がり」を大切にしている地域では、きっとまた「創発現象」が起きるに違いなく、かつて原発事故によって大きな損害を被った飯舘村の文化的・社会的・経済的秩序基盤は、それらの繋がりによって形成された「関係のネットワーク」を通して、地域社会の様々な関係性の新しいバランスを構築しつつ、再生されていくことでしょう。

このツアーの終了後、程なくして、思いもかけず「ふくしま再生の会」の田尾陽一理事長からメールをいただきました。田尾さんは、飯舘村の山津見神社の庭先で、たまたまセンブリやオトギリソウなどの薬草が生えているのを見て、それらの薬効や、人工栽培法、経済的価値などについての情報を私に尋ねてきたのでした。私は、すぐに、栽培法に関する論文や中国の農村での栽培例などの情報を収集して、田尾さんに返事をしました。そして同時に、田尾さんの飯舘村復興に対する情熱に改めて感心しました。田尾さんと村の方々のように、常に人と人、人と自然の繋がりを念頭において、村の再生を図る方々がいらっしゃるなら、飯舘村の再生は、それほど遠い未来を待つまでもなく実現するように思えました。私の本草学に対する研究も、飯舘村の再生のためにほんのわずかでもお役に立てるものになればとの思いを新たにしました。

<謝蘇杭(しゃ・そこう)Xie_Suhang>
渥美国際交流財団2019年度奨学生。中国浙江省杭州市出身。2014年江西科技師範大学薬学部製薬工程専攻卒業。2017年浙江工商大学東方語言文化学院・日本語言語文学専攻日本歴史文化コースにて修士号取得。現在千葉大学人文公共学府歴史学コース博士後期課程在籍中。研究分野は日本近世史、特に日本近世における本草学およびそれと関連した近世社会の文化的、経済的現象に注目している。「実学視点下の近世本草学の系譜学的研究」を題目に博士論文の完成を目指す。

※楊チュンティンさんのふくしまツアー報告は下記よりお読みいただけます。

楊淳婷「第8回ふくしまスタディツアー『ふるさとの再生』報告」

※江永博さんのふくしまツアー感想文は下記よりお読みいただけます。

エッセイ614:江永博「1年4ヶ月ぶりに、私は『ふくしま』に帰った」

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【2】「国史対話」メールマガジン第10号を配信しました(再送)

※12月5日に配信したSGRAかわらばん799号で、国史メルマガの鄭淳一さんのエッセイをご紹介しましたが、タイトル等に間違いがありましたことをお詫びし、訂正して再送いたします。

◆鄭 淳一「日韓青少年大学生歴史対話の可能性」

https://mailchi.mp/d6a195745e4f/sgra-kokushi-email-newsletter-12071037

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