SGRAメールマガジン バックナンバー

Dariyagul Shorina “Meeting Myself”

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SGRAかわらばん781号(2019年7月25日)

【1】エッセイ:ダリヤグル・ショリナ「自分との出会い」

【2】国史対話メールマガジン第6号を配信しました。
趙 珖「東アジア現代の『歴史化』のために」(韓国国史編纂委員長)

【3】第12回SGRAカフェへのお誘い(7月27日、東京)(最終案内)
「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」

【4】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送)
~行って、見て、感じて、考える~(9月21日~23日、飯舘村)

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【1】SGRAエッセイ#603(私の日本留学シリーズ#33)

◆ダリヤグル・ショリナ「自分との出会い」

日本に来てからの5年間を振り返ってみると、自分の人生において最も重要な経験になっていると思います。様々な刺激を受けて、学んだことが非常に多いです。以下に、私にとって最も重要な変化について紹介します。

来日後新しい生活に慣れるのに少し時間がかかりました。しかし、慣れてきたら、ある日、私の毎日が同じことの繰り返しになっているのではないかと気づきました。それは生活がある程度安定してきたということですが、自分の中で新しいことが何もなくて、人生を十分に味わっていないという非常に強い違和感がありました。

最初は、毎日しなければならない同じことが決まっているので、今は少し我慢するしかないと思っていました。それが終われば、少し時間の余裕ができて新しいことも増えるだろうと理想的な状況を待っていました。しかし、忙しい毎日は続いていましたが、待っていても、変わったのは仕事の内容だけです。いろいろ考えてみた結果、何かをしている時に私が注目するのは「今のこと」ではなく、ほとんどが「これからのこと」に移っており、「今」がただ流れてしまっているためだと気づきました。

このようにして、「今」をよりよく意識するために、自分に「今は何をしているか」という質問をするようになりました。細かいところまで注意を払って、自分の周りを見てみます。例えば、料理を作っているとき、切った野菜の色や形などを見て、楽しむようにします。食べているとき、お皿の色と料理の色を意識して味わいます。外に出るときには、街路樹、花、建物を眺めながら、周りの美しさに感動します。そうすると、毎日通っている同じ道でも、新しい発見がたくさんありました。特に、季節によって変わる自然の美しさを楽しむ趣味ができました。

正直に言うと、このように「今」を生きることが、いつもできているわけではありません。例えば、発表がある時には、どうしても思考は緊張感から「これからのこと」に移ってしまいがちです。しかしながら、それを意識的にするときと、以前のように無意識だったときとは、違いがとても大きいと思います。

できるだけ毎日、どんな小さなことでも何か新しいことをするようにチャレンジしています。いつも研究室にいるのではなく、大学の図書館あるいは都内の図書館に行くなど、日常的にできるちょっとしたこともあれば、思い切って非日常的なこと、たとえば竜安寺に行くなど、計画を立てることもあります。環境を変えることで、当然ながら景色も変わりますが、新たな出会いと発見にも繋がります。自分だけの小さい世界を作るのではなく、周りをよく見れば、目の前にある広い世界に触れることができます。理想的な時間を待たなくても、「今」を生きるという生き方によって、忙しい毎日でも楽しむことができます。

さらに、ちょっと離れて物事を見ることを通して、今まで見えていなかったことがより明確になると思います。今は家族から遠く離れて、日本にひとりで住んでいますが、その距離のおかげで、改めて分かったことが多くあります。その1つが両親に対する気持ちです。自分の両親に対して、考えが時代遅れとか、もっとこうすればいいじゃないか…等々、上から目線で捉えていた時期がありました。しかし、こうして少し距離を置いてみると、自分のそのような態度がとても子供っぽいものだったということが分かりました。

今では、かつてのように父と母を責めるのではなく、大切な命をくれた2人だという強い存在感があります。そして、お父さんとお母さんに対して感謝する気持ちを持つと、自分の両親にはすごいところがたくさんあると初めて気づいて感動しています。それは私の力にもなっており、2つの羽ができたような感じがします。また、そういう自分の気持ちを両親に言葉にして伝えるのがとても大事だと考え、自分の誕生日に感謝の気持ちを必ず伝えるようになりました。あまり話すことがなかった以前に比べて、電話をかけて、両親とおしゃべりすることが増えました。

最後に、人生の見方に関する変化について紹介します。それは、どんな出来事があっても、それを経験として捉えるという見方の変化です。以前は、何かの出来事を「よかった=成功した」あるいは「よくなかった=失敗した」という観点のみで評価していました。このように評価することも重要ですが、感情的側面のみに焦点が当てられて、その出来事から学ぶことがあまりできないと考えました。しかし、観察者として、ひとつの経験として出来事をみてみると、失敗した原因と成功を促した要因も発見することができます。その結果、自分の課題も明確に見えてきます。課題があると分かれば、次はその課題を解決するための具体的な行動を決めて、その行動を実行することが重要です。このように経験として捉えるという見方を通して、多くの新たな発見ができるようになり、それによって人生の質も変わってきたと実感しています。

今まで、日本に来たのは2回になります。最初は、日本の文化や日本語に関わる知識を中心にした「日本との出会い」だったと思います。今回は、日本滞在を通して自分のことをより深く理解する、「自分と出会う」経験となりました。

<ダリヤグル・ショリナ Dariyagul_Shorina>
カザフ国立大学東洋学部日本学科学士、政策研究大学院大学政策研究科修士、筑波大学人文社会科学研究科国際日本研究専攻後期過程在籍中。カザフ国立大学東洋学部日本学科専任講師、カザフスタン日本人材開発センター非常勤教師、筑波大学国際室中央アジアオフィス非常勤職員を経て、現在、明渓日本語学校(つくば市)開校準備室専任教師。研究分野は日本語教育。現在の研究テーマは海外の日本語教育における日本語教師のライフストーリー。

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【2】「国史対話」メールマガジン第6号を配信しました。

◆趙珖「東アジア現代の『歴史化』のために」(韓国国史編纂委員長)

http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2019ChoEssay.pdf

SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回、月末に配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。また、3言語対応ですので、中国語話者、韓国語話者の方々にもご宣伝いただきますようお願いいたします。

◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

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【3】第12回SGRAカフェへのお誘い(最終案内)

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い、議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。下記の通り第12回SGRAカフェを開催しますので、参加ご希望の方はSGRA事務局へお名前、ご所属と連絡先をご連絡ください。当日飛び込み参加も受け付けます。

◆「混血」と「日本人」ハーフ・ダブル・ミックスの社会史

日時:2019年7月27日(土)14時~16時、その後懇親会
会場:渥美財団ホール http://www.aisf.or.jp/jp/map.php
会費:無料
参加申込・問合せ:SGRA事務局 <[email protected]

◇趣旨:

『「混血」と「日本人」―ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』の著者、下地ローレンス吉孝さんを招き、いわゆる「ハーフ」と呼ばれてきた人々に注目し、「日本人」という実は曖昧な言葉の境界について参加者とともに考えます。「日本人」の境界線はどのように引かれているのか。その境界に生きる人々は、いかに生きているのか。時に侮蔑的な言葉を浴びせられ、時に差別され、あるいは羨望のまなざしで見つめられながら、「日本人」と「外国人」のはざまを生きてきた人びと。そんな彼らの戦後から現代までの生活史をたどることで、もうひとつの「日本」の輪郭線を浮かび上がらせます。

◇講師略歴:

[発表者]下地ローレンス吉孝
1987年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門は社会学・国際社会学。現在、上智大学、国士舘大学、開智国際大学などで非常勤講師として勤務。著書に『「混血」と「日本人」:ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』(青土社、2018年)がある。

[コメンテーター]ソンヤ、デール
社会学者。ウォリック大学哲学部学士、オーフス大学ヨーロッパ・スタディーズ修士を経て上智大学グローバル・スタディーズ研究科にて博士号取得。これまで一橋大学専任講師、上智大学・東海大学等非常勤講師を担当。ジェンダー・セクシュアリティ、クィア理論、社会的なマイノリティおよび社会的な排除のプロセスなどについて研究。2012年度渥美財団奨学生。

[ファシリテーター]ファスベンダー、イザベル
東京外国語大学博士後期課程在籍中(2020年3月修了見込)。専門はジェンダー社会学。立命館大学にてドイツ語講師、同志社大学にて非常勤講師(Japanese_Society_and_Culture,_Ethnicity_in_Japan)を担当。現在の研究テーマは生殖をめぐるポリティクス、妊活言説。2017年度渥美財団奨学生。

第12回SGRAカフェのちらしを下記リンクよりご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/06/Cafe12chirashiL.pdf

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【4】第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い(再送)

~行って、見て、感じて、考える~

関口グローバル研究会(SGRA)では2012年から毎年、福島第一原発事故の被災地である福島県飯舘(いいたて)村でのスタディツアーを行ってきました。そして、スタディツアーでの体験や考察をもとにしてAFCワークショップ、SGRAフォーラム、SGRAカフェなど、さまざまな催しを展開してきました。
2017年に7年間の避難生活が解除され、住民も徐々に「ふるさと」に帰り始めていますが、昔のままの生活を取り戻すことはできません。飯舘村の住民たちは、新しいふるさと作りに向けて進み始めています。今回のツアーでは、新しいふるさとつくりのシンボルとしての「佐須の地域再生可能エネルギー事業」と北川フラム氏を中心に計画されている「飯舘村アートプロジェクト」に焦点を当てて、新しいふるさとつくりのヴィジョンと計画を共に考えます。

テーマ:「ふるさと」の再生
日 程:2019年9月21日(土)、22日(日)、23日(祝)
人 数:10~15人程度
宿 泊:ふくしま再生の会体験宿泊施設「風と土の家」
参加費:一般参加者は12000円+新幹線往復料金
渥美奨学生・元奨学生(ラクーンメンバー)は補助あり
申込み締切:9月10日(火)

申込み・問合せ:渥美財団SGRA事務局 角田(つのだ)
E-mail:[email protected] Tel: 03-3943-7612

詳細は下記リンクよりご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2019/07/Fukushima8chirashi.pdf

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★☆★SGRAカレンダー
◇第12回SGRAカフェ(2019年7月27日、東京)
「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」

第12回SGRAカフェ「『混血』と『日本人』ハーフ・ダブル・ミックスの社会史」へのお誘い


◇第8回SGRAふくしまスタディツアー ※申し込みは9月10日まで
「『ふるさと』の再生」(2019年9月21日~23日、福島県飯舘村)

第8回SGRAふくしまスタディツアーへのお誘い


◇第5回アジア未来会議(2020年1月9日~13日、マニラ近郊)
「持続的な共有型成長:みんなの故郷みんなの幸福」
※参加申し込み受け付け中(早期割引は7月31日まで)
※論文募集は締切りました。
http://www.aisf.or.jp/AFC/2020/
アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)を開始!
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

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