韮崎ワークショップ2026「戦争はなぜ繰り返されるのか」報告(7月例会)

7月3日(金)、心配した雨にも降られず、関西からの参加者を含めた一行は新宿センタービル前に集合し、貸切バスで一路、山梨県韮崎の「シャトレーゼホテルにらさきの森」を目指した。あいにくの渋滞で移動には予定よりも長い時間を要したが、かえってそれが幸いし、隣り合わせた同期やラクーンの先輩方と、時に深く、時に和やかに語り合ううちに、車内には早くも打ち解けた空気が流れていた。サービスエリアで昼食をとった後は、「日本一の渓谷美」とうたわれる御岳昇仙峡の雄大な自然を車窓に望みながら、影絵の森美術館へと向かった。そこで待っていたのは、「光と影の造形詩人」藤城清治さんの世界である。豊かな自然に包まれた館内で、童心あふれる緻密な影絵の数々を鑑賞し、光と影が織りなす幻想的な世界に、道中の疲れも取れ、心身ともに癒された。

シャトレーゼホテルにらさきの森に到着し、しばしの休憩をはさんだのち、いよいよ参加者全員が初めて一堂に会した。まずはアイスブレイクとして、「〜したことがある人」を探して回るビンゴ・ゲームが行われた。マス目を埋めるべく参加者同士が声をかけ合ううちに、それぞれの意外な経歴や趣味といった興味深い断片が次々と明らかになり、より多くのメンバーと最初の一歩となる交流を交わすことができた。夕食は品数豊かなビュッフェで、一日の道中の疲れも、充実した食事の前にほどけていった。

夕食後には、本ワークショップ最初のセッションとして、ウォーミングアップ・セッションが始まった。担当は2024年度ラクーンのイドジーエヴァ・ジアーナ(ジアーナ)さん。参加者はアイマスクをつけ、暗闇の中で前を行く人の肩に手を添えて進む。視覚を断たれ、ただ他者を信じるほかない体験を経たのち、皆で車座になり、ジアーナさんから戦争や争い、暴力についての問いが投げかけられた。暗闇という、いわば匿名性に守られた空間の中で、参加者は思い思いに、あるいは若々しく率直に、あるいは深く思索した言葉を口にした。3日間にわたる「思考の始まり」であった。

7月4日(土)の朝は、希望者によるラジオ体操第一を終えた後、同期のバンソクさんが演じる韓国式太極拳?を皆でまねて、眠気が覚めた。朝食を終えると、いよいよ各セッションが幕を開ける。

セッション?「なぜ戦争は繰り返されるのか」(担当:南基正〈ナム・キジョン〉さん/1996年度ラクーン)では、リアリズム、マルクス主義、リベラリズムといった各思想が戦争の発生をどう捉えてきたのかを紐解く、重厚なイントロダクションが展開された。しかしその着地点は、巧みにも「音楽」に置かれた。世界各地の人々が音楽という表現を通じて、それぞれの角度から戦争への思いを描いてきたことを、実際の楽曲とともに味わい、思想が音楽によって表現されうることを実感した。

セッション?「人間の原点としての争い」(担当:何星雨〈あめ〉さん/2023年度ラクーン)では、視点がマクロからミクロへと転じた。子ども時代の争いへの向き合い方が、大人になってからの無意識の振る舞いにも表れる??そんな問いを手がかりに、参加者は「絵本を取り合う二人の子どもに、保育士としてどう対応するか」というロールプレイに挑戦した。それぞれの対応をめぐって会場は大いに沸き、和やかな笑いに包まれながら午前のセッションを終えた。

昼食のためレストランへ移ると、雲の切れ間から富士山の山頂を望むという幸運に恵まれた。食後は三々五々連れ立って、木漏れ日の中を散歩し、腹ごなしのひとときを過ごした。

午後のセッションは、理系の視点から幕を開けた。セッション?「科学技術は人間の争いにどう関わってきたか」(担当:西本和生〈にも〉さん/2025年度ラクーン)では、科学技術の発展がもたらす新たな争いの形??それは私たちが21世紀に直面する最も大きな争いの一つでもある??を見つめ直した。技術とは「諸刃の剣」であり、いかにそれを善用し、新たな武器や紛争の火種としないかを、参加者一人ひとりが考えを深めた。

続くセッション?「平和を『仲良くすること』だけで考えない」(担当:郭立夫〈りふ〉さん/2021年度ラクーン)も、また21世紀の重要な主題を扱った。すなわち、社会生活の中で避けがたい人と人、集団と集団との摩擦をどう捉えるか、である。構造的な抑圧をいかに乗り越えるか??人の最も繊細で秘めやかな、口にしづらい話題でありながら、りふさんの柔らかな進行に包まれて、参加者はのびのびと胸のうちを語り合うことができた。

一日をかけて思考を重ねた後の夕暮れどきには、屋外でバーベキューが和やかに催された。その後、ラクーンの先輩に誘われた数名の奨学生が卓球室へと繰り出したのだが、噂を聞きつけた人々が次第に集まり、小さな卓球室はいつしか門前市をなすほどの盛況となった。応援する者、試合に挑む者が入り乱れ、さながら「世界卓球交流戦」のような勝負が夜遅くまで熱く繰り広げられた。

最終日、7月5日(日)のセッションは、3日間の総まとめとなるグループワークである。参加者は、このテーマを通じて自分が表現したいことを1枚のポスターにまとめ上げた。3日間の活動を振り返っての所感を描く者もあれば、「戦争はなぜ繰り返されるのか」という問いに対する自分たちなりのまとめとして発表する者もあり、それぞれがこの3日間で確かに多くのものを得たことがうかがえた。

答えを性急に出すのではなく、様々な視点から「戦争」や「争い」について考え、参加者同士で語り合う??韮崎ワークショップ2026は、まさにそのための3日間だった。暴力がどのように生まれ、人々の行動や社会にどう影響するのか。明快な結論に至ることはなくとも、多様な背景を持つ仲間と問いを分かち合った時間は、筆者の中に確かな思考の種を残してくれた。同期の皆様、ラクーンの先輩方、そして財団スタッフの皆様との絆を深めることができたことも、かけがえのない収穫である。このような素晴らしい学びの場を作ってくださった渥美国際交流財団の皆様に、心より御礼申し上げます。

文責:オウ シーウェイ(2026年度奨学生)