2010年度渥美奨学生研究報告会



2011年3月5日(土)は暦の上では「啓蟄(けいちつ)」。冬ごもりしていた虫たちが目を覚ます日だそうです。好天気に恵まれて、雲一つない青空の下に膨らんだ桜の蕾が爽やかな風に揺れて微笑んでいました。このような素敵な日に、渥美国際交流奨学財団の2010年度研究報告会が、東京都文京区関口の渥美財団ホールで午後2時より開催されました。

報告会には、本年度・来年度の奨学生、ラクーン会会員、留学生支援団体などの来賓、財団の役員・スタッフを含め、約50名の方々が出席されました。会場の入り口に立派な七段飾りの雛人形が飾られており、会場の雰囲気をより一層和やかにしてくれました。

研究報告会は、渥美伊都子理事長のご挨拶から始まりました。理事長はご自身の雛人形にまつわるエピソードを交えながら、日本の春の風物詩の代表である雛祭りについてご紹介くださいました。

続いて研究発表に入りました。理工系5名、文系7名計12名の奨学生は、15分以内で、子供にもわかるようにやさしく説明するというルールに従って、パワーポイントを駆使しながら、それぞれの博士論文の内容を報告しました。仏教学、文化材保存学、日本文学、歴史学、材料工学、国語教育学、原子核工学、知能機能システム、政治学、中国学、生体材料工学、ジェンダー学際研究といった広い分野にわたる多彩な研究テーマをめぐって、理工系の方は絵図や写真、録画などカラフルな資料を用いて、文系の方は詳細な用例を提示しながら、発表を行いました。どうしても専門用語が使われるので消化しきれない部分が残っていますが、奨学生たちの研究に対する熱い情熱が伝わってきて、会場は熱気に包まれていました。

研究発表の後、来賓の渡辺章悟先生(東洋大学)、三林浩二先生(東京医科歯科大学)、里達雄先生(東京工業大学)の御三方からコメントを賜りました。渡辺章悟先生はご自身のインド留学の経験を踏まえながら「学問には『向上門』と『向下門』があるが、前者より後者のほうが大事で、しっかりと足元を見つめながら向上してほしい」とおっしゃいました。三林浩二先生と里達雄先生は奨学生の研究の深さや視点の新鮮さに感銘を受けると同時に、渥美財団の留学生に対する多方面への支援、サポートに感謝と敬意を表したいと述べられました。先生方は口をそろえて、奨学生にこれからも様々な分野で活躍し、各分野で中心的な役割を果たしてほしいと語られました。

報告会終了後、同ホールで親睦会が開催され、新旧奨学生、財団の役員、来賓の皆様が歓談をしながら、交流を深めました。共通語は日本語ですが、時々中国語や韓国語、ロシヤ語、フランス語などが耳に入ってきました。ここは国境なしの世界大家族であることを改めて感じさせられました。

3月に入り、冬のひんやりとした空気がまだ残っていますが、陽射しは確実に少しずつ春らしくなってきています。「本年度の奨学生はこれで終わるのではなく、これからもどこへいっても連絡を取り合いましょう」との今西淳子常務理事のお言葉を胸に、奨学生たちはこれから希望と夢を乗せてタンポポの種のように旅立とうとしていますが、渥美財団は暖かい光に満ちた故郷となることでしょう。

(文責:李軍)

当日の写真を下記よりご覧ください。

マキト撮影    谷原撮影