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SUN Jianjun “The 17th SGRA China Forum ‘The Birth of Modern Art in Southeast Asia’ Report”

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SGRAかわらばん1013号(2024年4月25日)

【1】孫健軍「第17回SGRAチャイナフォーラム報告」
「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」

【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送)
「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」
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【1】孫健軍「第17回SGRAチャイナフォーラム『東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生』報告」

2023年11月25日(土)北京時間午後3時(日本時間午後4時)より第17回SGRAチャイナフォーラム「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」が開催された。コロナが収束して4年ぶりに対面形式で行う予定だったが、スケジュールを決める9月の時点で2012年秋の事態を思わせる空気が漂い始め、オンライン方式を続けることに決めた。

テーマの通り、今回は美術史の返り咲きとなった。しかもこれまで焦点が置かれていた「東アジア」から初めて「東南アジア」に視点を向けたため、事前の準備はこれまでと異なり、チャイナフォーラムの歴史の中でかつてない国際的な展開となっていた。講師は北九州市立美術館館長の後小路雅弘先生、指定討論者は北京大学東南アジア学科准教授の熊燃先生、ナショナル・ギャラリー・シンガポール学芸員でコレクション部門ディレクターの堀川理沙先生のお二方をお迎えした。東京、北九州、北京、シンガポール、マカオと事前準備の連絡は広範囲にわたった。日本語だけでなく、英語によるメールの連絡もこれまでにないレベルで、渥美財団のスタッフ一同の国際色の高さに脱帽した。

例年通り、開催にあたり、主催者側から今西淳子・渥美財団常務理事、後援の野田昭彦・北京日本文化センター所長より冒頭の挨拶があった。野田所長の挨拶は前年同様にテーマに沿った問題提起があり、フォーラムのウォーミングアップともなった。

日本における東南アジア美術史の第一人者である後小路雅弘先生の講演は、ご自身の東南アジアの実体験から始まった。東南アジアにおける近代美術の萌芽的な動きは1930年代に見られると指摘した。地域や国同士の相互の連動は見られなかったが、植民地において19世紀末から盛んになったナショナリズムや民族自決の高まりといった国際的な共通性から、ほぼ同じ時期に見られるようになったと、数多くの絵画の紹介を通じて語った。そして19世紀末から20世紀前半にわたって、東南アジアの近代美術運動を担うパイオニアたちが直面する課題、目指す目標、各国における共通性や相違を読み解いた。

自由討論はモデレーターの名手、澳門大学の林少陽先生によって進められた。美術作品を通して、その背後にあるより微妙で生き生きとした植民地支配に対する抵抗や民族解放を求める東南アジアの歴史の詳細を見ることができるという熊燃先生のご見解や、後小路先生のご研究の原点は東南アジアだけでなく、東アジア全体にあるのではないかという堀川理沙先生のご指摘が印象的だった。その後、会場およびオンライン参加者の質問に対し、後小路先生が丁寧に回答した。

最後に清華東亜文化講座を代表して、北京第二外国語大学趙京華先生より閉会の挨拶があった。趙先生は後小路先生のご講演により、美術史を専門としない人も美術界の新たな風潮を通じて、東南アジアの20世紀の複雑な歴史的プロセス、そして民族、言語、宗教、文化の多様性について初歩的な理解を得ることができたと指摘した上で、「どのような覇権も、世界を統一することも、差異を排除することもできない。私たちは各民族国家の多様性を尊重することでしか、文明の相互理解と平和共存の理想を実現することができない」と強く訴えた。

東京会場、北京会場、そしてオンライン参加を含め、合わせて150名の参加を得た。参加者からは「東南アジアにおける近代美術が生まれた背景や、その代表的な人物に関する基本知識を得ることができた。今後もこの研究領域に関するフォーラムを開催してほしい」などの感想が寄せられた。

フォーラム開催当日は趙先生の誕生日で、北京会場でささやかなお祝いをした。4年ぶりの会食も実現した。そして次回の第18回も引き続き後小路先生に依頼し、対面形式で北京で行うことが早々に決まった。
かつてのおなじみのチャイナフォーラムが確実に戻ってくる。

当日の写真
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/02/Chinaforum17_Photos.pdf

アンケート集計結果
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/02/Chinaforum17_Feedback.pdf

<孫建軍(そん・けんぐん)SUN Jianjun>
1990年北京国際関係学院卒業、1993年北京日本学研究センター修士課程修了、2003年国際基督教大学にてPh.D.取得。北京語言大学講師、国際日本文化研究センター講師を経て、北京大学外国語学院日本言語文化系副教授。専攻は近代日中語彙交流史。著書『近代日本語の起源―幕末明治初期につくられた新漢語』(早稲田大学出版部)。

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【2】第22回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(再送)

下記の通り第22回日韓アジア未来フォーラムをソウル大学国際大学院会議室とZoomのハイブリッド形式で開催しますので奮ってご参加ください。

テーマ:「ジェットコースターの日韓関係-何が正常で何が蜃気楼なのか」
日 時:2024年5月18日(土)14:00~17:40
共同主催:(財)未来人力研究院(韓国)、ソウル大学日本研究所、(社)韓国現代日本学会、(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)

方 法:ソウル大学国際大学院140-2棟4階国際会議室およびZoom
言 語:日本語・韓国語(同時通訳)
参加費:無料
お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

参加方法:
◇会場参加ご希望の方は、直接会場へお越しください。
◇オンライン参加ご希望の方は、下記リンクより聴講していただけます。
-ZOOM_ID:583_289_8745
-ZOOMリンク:https://snu-ac-kr.zoom.us/j/5832898745

◆フォーラムの趣旨
21世紀の新しい日韓パートナーシップ共同宣言後、雪解け期を迎えた日韓関係は、その後浮き沈みを繰り返しながら最悪の日韓関係と言われる「失われた10年」を経験した。徴用工問題に対する第三者支援解決法を契機に、2023年の7回にわたる首脳会談を経て日韓関係は一挙に正常化軌道に乗った。一体、日韓関係において何が正常で、何が蜃気楼なのか?徴用工問題解決の1年後の成果と課題、そして日韓協力の望ましい方向について考える。日韓同時通訳付き。

◆プログラム
《開会》午後2時
司会:嚴泰奉(オム・テボン:現代日本学会総務理事)

【開会の辞】
李鎮奎(イ・ジンギュ:未来人力研究院理事長)
南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長)

◇第1部 報告と指定討論:日韓関係の復元、その一年の評価と課題100分
司会:李元徳(イ・ウォンドク:国民大学教授)

【報告1】西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学教授)
「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:政治安保」15分

【報告2】李昌ミン(イ・チャンミン:韓国外国語大学教授)
「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:経済通商」15分

【報告3】小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学教授)
「日韓関係の復元、その一年の評価と課題:社会文化」15分

【討論1】金崇培(キム・スンベ:釜慶大学日語日文学部准教授)7分
【討論2】安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所上席主任調査研究員)7分
【討論3】鄭美愛(ジョン・ミエ:ソウル大学日本研究所客員研究員)7分

◇第2部 パネル討論:日韓協力の未来ビジョンと協力方向80分
司会:南基正(ナム・キジョン:ソウル大学日本研究所長)

【パネリスト】
西野純也(にしの・じゅんや:慶応大学)
小針進(こはり・すすむ:静岡県立大学)
安部誠(あべ・まこと:アジア経済研究所)
崔喜植(チェ・ヒシク:国民大学)

李政桓(イ・ジョンファン:ソウル大学)
鄭知喜(チョン・チヒ:ソウル大学日本研究所)A
趙胤修(チョ・ユンス:東北アジア歴史財団)

【閉会の辞】
今西淳子(いまにし・じゅんこ:渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表)
金雄煕(キム・ウンヒ:韓国現代日本学会長)

《閉会》午後5時40分

プログラム(日本語)
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/J_JKAFF22_Program.pdf

ポスター(日本語)
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/04/Poster_20240412_J1-scaled.jpg

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