SGRAメールマガジン バックナンバー

XIE Zhihai “Politics and Entertainment in the U.S. Presidential Election”

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SGRAかわらばん1006号(2024年3月7日)

【1】エッセイ:謝志海「米大統領選で見る政治とエンターテインメント」

【2】国史対話エッセイ紹介:江沛「歴史研究と私の学術の歩」
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【1】SGRAエッセイ#759

◆謝志海「米大統領選で見る政治とエンターテインメント」

米国では今年の11月に大統領選挙が行われる。4年に一度のこの時期が近づくと、米国にはまだ自由が残っているなと思う。国内だけを見ても、人種問題、移民問題、度々起こる銃乱射事件、物価上昇に伴う経済格差が引き起こす強盗など実に様々な問題を抱えているようにしか見えないが、なにが自由かというと、まず一つはやはり国民が直接、大統領候補に投票できること。同じく民主主義の日本でも、国民が総理大臣を選ぶということがない。大統領制と議院内閣制の根本的な違いだ。もう一つは、俳優などの著名人が公に民主、共和どちらの党を支持するか、はたまた候補者の誰を支持するのか自由に発言できる環境があることだ。

国民と政治、広い意味でエンターテインメント業界と政治の近さには、中国と日本でしか暮らしたことのない私は驚いてしまう。「国のトップを決める選挙に国民が口を挟めるとは!」という感じだ。

最近では世界ツアーで来日し、4日間東京ドームを満席にした歌手、テイラー・スウィフトに、来たる大統領選を巡る「陰謀論」まで勃発、その火はまだ消えていない(陰謀論についての説明はここでは割愛させていただきたい)。あのような華やかな歌姫と政治?なにが接点?と思うが、米国では真剣に信じている人々がたくさんいるのだから不思議だ。なぜこの様な若い歌手に陰謀論がつきまとうのかといえば、やはり米大統領選は国民が参加できるからではないか。

実のところ、バイデン大統領よりもトランプ前大統領よりもテイラー・スウィフトの方が幅広い世代の支持者(ファン)を集めている。彼女の「つぶやき」が民主党を応援するものとなると、「スウィフティーズ(ファンはこう呼ばれている)」に少なからず影響を及ぼす。前回の大統領選では、テイラーはバイデン氏支持を公言した。そして大統領選の前は「みんな(選挙のための)登録に行こう!」とツイッター(現X)で呼びかけた。彼女が政治に関心を持っているのは明白だ。ゆえにテイラーをアンチ・ヒーローとする人々が彼女を危険視して、とんでもない陰謀論をでっち上げてしまうのも無理はない。

日本で言うところの都市伝説レベルの陰謀論がテレビニュースで論じられてしまうのもまた、皮肉の意味を込めて言う自由だ。歌手や俳優も自由に自分がどの党を支持するのか発言でき、ファンに「投票に行こうよ!」と呼びかける。これはテイラーに始まったことではない。これまでも多くの有名人がしていることだ。そしてそれらの意見に影響されようがされまいが国民は自分の権利を行使すべく、投票所に行く。若者の投票率も高い。

今回の大統領選に関して、テイラーはまだ何も発言していない。今は世界ツアーの真っ最中で、春には新しいアルバムがリリースされることも発表され、今は自身の評判(Reputation)を上げることに忙しいことだろう。政治的発言だけでなく、彼女の一挙手一投足に世界中が目を離せない状況はしばらく続く。一人の歌手がこれほど政治に影響を及ぼすとは!一方で民主党、共和党には厳しい夏(Cruel_Summer)が待ち構えている。

<謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai>
共愛学園前橋国際大学教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師、准教授を経て、2023年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。

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【2】国史対話エッセイ紹介

2月28日に配信した国史対話メールマガジン第54号のエッセイをご紹介します。

◆江沛「歴史研究と私の学術の歩」

このタイトルで学術経歴をまとめるのが適切でしょう。
私が生まれたのは中国の河南省開封市で、宋の時代には東京と呼ばれ、現在の日本の東京と同じ名前でした。開封市は唐の時代に繁栄しはじめ、宋の時代に頂点に達し、明と清の時代に衰退して、現在は河南省の省都である鄭州市の裏庭と位置付けられるようになっています。このように時代によって開封市は大きく変化してきましたが、その長い歴史的伝統と深い文化は廃れることなく伝わってきました。この都市で育ち、幼い頃から『水滸伝』を熟読した私は、小説で描かれた東京城に生活しているような感覚を持ち、騒々しい屋台料理の売り声と地元のたけだけしい気風を浴びて、天然の歴史的感覚が思わず知らずに身につきました。

文化大革命が家庭にもたらした災難や改革開放後の自由な雰囲気を経験したことで、1980年代に南開大学で勉強した私は中国以前の発展の道筋を振り返って考え直し、その制度的な原因を突き止めようという思いをずっと持ち続けました。この執着が、私が文革史という分野を選んだ最初の原動力となり、中国初の紅衛兵運動史の専門書である『紅衛兵狂飆』を執筆しました。しかし、中国における経済と政治の双方の変動が原因で、文革史研究の勢いは弱まってしまいました。

中国社会の特性は政治社会であることを有名な歴史学者である劉沢華先生から教わりました。文革史は現代史にあたりますが、その動力を解明するにはより前の時代に遡り、広い視野と長期的な視点を持たなければなりません。そのため、私は国民党史と中国共産党史の比較研究に着手しました。

全文は下記リンクよりお読みください。
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