SGRAメールマガジン バックナンバー

KONDO Shinji, “Life’s Choice of Becoming an Academia Researcher”

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SGRAかわらばん1002号(2024年2月8日)

【1】エッセイ:近藤慎司「アカデミア研究者になるという人生の選択」

【2】催事紹介:NPO暖流主催「韓国と日本の歌を歌いましょう!」

【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(2月17日、東京+オンライン)再送
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【1】SGRAエッセイ#755

◆近藤慎司「アカデミア研究者になるという人生の選択」

2023年3月、無事に博士の学位を取得し、アカデミア研究者としてのキャリアをスタートする事が出来た。 少なくとも大学に入学した10年前の私は、こんな人生を歩むとは全く思っていなかった。振り返ると昔から明確な夢はなく、小学生の卒業文集に載せる将来の夢には「サラリーマン」と書いたほどである。大学の進路では、数学が好きだったために理系と決めたものの、興味のある専門はなく、周りの友人に化学科志望が多かったために「流されて」出願した記憶がある。

明確にやりたい事が見つからず、漠然とした将来を描いていた私にとって、人生で初めてのめり込んだのが大学での基礎研究だった。思い返すと、当時の先輩や指導教官のモチベーションの上げ方が非常に上手だったおかげかもしれない。いざ研究に没頭するとあっという間に時は過ぎるもので、修士2年になった。ここで博士課程への進学か就職かの選択に迫られるわけだが、周囲に流されてきた私にとって、いくら研究が好きとはいえ、博士課程の厳しさ・経済的不安を知っていたため決心がつかず、就職を選んだ。人生、所々に岐路があるわけだが、ここで就職を選んだことが結果的にアカデミック研究者という道に進む大きな分岐点になった。

企業での仕事は充実しており、電気自動車の制御部品の一部であるコンデンサーの材料開発だけでなく、量産化に向けた技術課題の解決や、品質管理部門との折衝など実用化に向けたプロセスを任せてもらっていた。製品として社会を豊かにするモノづくりの一端を経験させてもらう中で、将来どのように社会に貢献していきたいか改めて考えるようになった。そこで心残りであった博士課程に初めは社会人枠として入学し、企業の業務と大学の研究活動の両立に努めてきた。当時は自宅の大阪、時には出張先の佐賀から横浜の大学に土日だけの研究活動のために往復3~4万円の交通費を払って通った。

今考えると非効率的であり、根気があったなと思う。しかし、両方の活動をしてきたからこそ、長年の基礎研究の成果が既存技術の限界をブレークスルーし、革新的な製品を生み出すことに大きな魅力を感じ、アカデミック研究者になりたいと決意できた。当時25歳にして初めて人生の夢ができたわけである。決意したからには企業を退職、博士課程1本に絞り研究に没頭してきたおかげで今日を迎える事が出来ている。

こうした人生の選択は、もちろん自分だけでなく会社の上司や大学の指導教官、友人などの周囲の支えやアドバイスがあったおかげであることは間違いない。特に博士課程に進んでからは、国際学会で出会った人や渥美財団の奨学生たちとの交流を通して、自分の価値観や選択肢が大きく広がった。4月からオーストラリアの大学で研究を行えることになったのも間違いなく昔の私なら考えられない事である。今後も様々な人生の岐路があると思うが、どの選択をしても後になって悔いが残らないよう常に自分を見つめ直し、努力していきたい。

<近藤慎司(こんどう・しんじ)KONDO_Shinji>
2022年度渥美国際交流財団奨学生。2023年3月、横浜国立大学大学院理工学府博士号(工学)取得。現在はオーストラリアのDeakin大学JSPS海外特別研究員として、次世代リチウムイオン電池に向けた材料研究を行っている。

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【2】催事紹介

SGRA会員でNPO「暖流」代表の羅仁淑さんから催事のご案内をいただきましたのでご紹介します。
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第5期渥美奨学生の羅仁淑です。本業の傍らNPO法人を設立し細々とではありますが、有志の皆さんと日韓親善活動をしております。
この度、「韓国と日本の歌を歌いましょう!」という催しを企画しました。ぜひご来場いただき応援いただけましたら幸甚です。
◆日時:2024年2月18日(日)、13時~(12:30開場)
◆場所:国士館大学多目的ホール(中央図書館地下)小田急線「梅が丘」徒歩12分、世田谷線「松陰神社前」徒歩8分
◆お申込:下記リンクをクリックしてください。
http://bit.ly/3w7ruwz
◆お問合せ:[email protected] (090-6568-7652)
◆主催:NPO法人日韓親善交流協会暖流
◆プログラム:
第一部(90分)「李京順ピアノ弾き語り」、「ユキエ&マリコのトークショー」
第二部(30分)「日韓親善歌の共演」

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【3】第21回SGRAカフェ「日本社会における二重国籍の実態」へのお誘い(再送)

下記の通り第21回SGRAカフェを会場及びオンラインのハイブリット方式開催いたします。参加をご希望の方は、会場、オンラインの参加方法に関わらず事前に参加登録をお願いします。

テーマ:「日本社会における二重国籍の実態 複数国籍保持者に対するスティグマ付与と当事者らの実践」
日 時: 2024年2月17日(土)14:00~16:30
方 法: 会場及びZoomミーティング
言 語: 日本語
申 込: 下記リンクからお申し込みください
http://bit.ly/48hqt2o

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

■ フォーラムの趣旨

政治家やスポーツ選手等の「二重国籍問題」が炎上しやすい日本社会。日本国籍だけを保有する人々だけが「国民」なのだろうか。「外国人」と「国民」の境界線に居ながら日本社会で生きている多くの人たちは、どのような葛藤を抱え「二重国籍」と向き合っているのか。今回のSGRAカフェでは、このような問いをみんなで考えていきたい。
日本の国籍法は、国籍唯一の原則を取り入れているが、それは複数国籍保持の禁止又は違法性を意味するのだろうか。国籍法をめぐる様々な誤解を解いた上で、国籍唯一の原則が導入された背景を考察する。また、国際的動向に逆らって、日本では複数国籍容認への動きが全く見られないだけではなく、むしろ過去15年間、行政による複数国籍防止対策が以前より徹底されているようにさえ窺える。この動きの背景は何か。
最後に、複数国籍保持者の当事者らはどのような問題に直面し、どのような実践を繰り広げているのか。国際結婚によって生まれた人たち、帰化を経て日本国籍を取得した人たち、外国籍を取得した海外居住中の元日本国籍保持者の事例から、国籍選択制度や国籍喪失/はく奪条項等をめぐる各個人の実践と、近年の動きを検討していく。

■ プログラム

14:00 イントロダクション:「多くの誤解を生んでいる日本の国籍法」
コーベル・アメリ(獨協大学特任講師)

14:10 基調講演:「日本社会における複数国籍の実態―放置主義から摘発強化への政策転換」
武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員)

14:55 話題提供1「日本における国籍と社会福祉及びソーシャルワーク」
ヴィラーグ・ヴィクトル(日本社会事業大学准教授)

15:05 話題提供2「国際-国家、そして家族史における国籍」
金崇培(国立釜慶大学助教授)

15:15 話題提供3「日本と中国の間で起きている国籍問題」
高偉俊(北九州市立大学国際環境工学部教授)

15:35グループディスカッション

16:05ディスカッション結果の共有
司会/モデレーター: コーベル・アメリ

16:30 閉会

プログラムの詳細
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRACafe21Program.pdf
ポスター
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2024/01/SGRAcafe21v2-1.jpg

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