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Melek KABA: EACJS Session Report “Japanese Studies and Japanese Language Education in the Middle East”

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SGRAかわらばん996号(2023年12月22日)
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◆カバ・メレキ:第7回東アジア日本研究者協議会パネル発表報告
「中東における日本研究と日本語教育-マンガ・アニメの受容と若者の日本語への関心」

2023年11月4日(土)11:00-12:30に東京外国語大学研究講義棟102号室にてパネルセッション「中東における日本研究と日本語教育-マンガ・アニメの受容と若者の日本語への関心」を開催した。5名のパネリストがそれぞれの出身国における日本研究及び日本語教育と若者の日本語への関心について説明した。プレゼンテーションの後、質疑応答で討論が進んだ。

発表テーマとパネリストは次の通り。

1)「トルコにおけるマンガの歴史と教育」チャクル・ムラット(CAKIR,_Murat)関西外国語大学
2)「トルコにおける日本語教育とマンガの役割」カバ・メレキ(KABA,_Melek)チャナッカレ・オンセキキズ・マルト大学
3)「シリアにおける日本語教育の歴史と現状」アルメリ・ナヘード(ALMEREE,_Nahed)ダマスカス大学
4)「イランにおける日本語教育の歴史と現状」アキバリ・フーリエ(AKBARI,_Hourieh)白百合女子大学
5)「モロッコにおける日本語教育の歴史と現状」チェッダディ・モハンマド・アキ―ル(CHEDDADI,_Mohammed_Aqil)慶應義塾大学

最初にチャクルさんが「マンガ・漫画」という言葉の歴史と日本・トルコ両国におけるマンガの歴史の概略を説明し、特にトルコではマンガの歴史がオスマントルコ時代に遡ることを強調した。その後、マンガ熱が高まった1908年代に登場した主なキャラクターを紹介しながら、トルコの教育現場におけるマンガ使用事例を説明し、これからもマンガが日本語教育のみならず、教育のさまざまな場で活用できることを指摘した。

次は私でトルコの若者の間で日本のポップカルチャー熱が上がっていることを指摘し、日本のポップカルチャーの中でも特に注目を集めているマンガと日本語教育の関連性を考察した。事例として、私たちの学科で実践した「マンガ坊ちゃん」を教材とするオンライン日本語教育講座の研究を取り上げた。マンガ教材を利用することで、トルコ人の日本語学習者がより積極的に学習に臨んだことや、マンガ教材の面白さを知り日本文学に興味を持つようになり、日本文学を読むようになったことが分かった。

ナヘードさんはシリアにおける日本語教育の現状を紹介した。1979年に在シリア日本大使館で日本語講座が開講され、およそ20年間続いた。1995年にアレッポ大学学術交流日本センター、1999年にはダマスカス大学付属言語研究所に日本研究センターが開設され、2002年にはダマスカス大学人文学部に日本語・日本文学科が開設された。2010年にはアレッポ大学に日本研究専攻の修士課程が設置された。しかしながら、現在戦時下のシリアでは日本語教育は停滞しており、日本語教育機関では学習者がゼロとなっている。国際情勢が教育、特に日本語教育に与えるダメージが大きいことを実感した。

フーリエさんの発表はイランの日本語教育をまとめるものだった。日本語教育の始まりは1989年にテヘラン大学外国語学部内に必修選択第二外国語科目として日本語コースが開設されたことにさかのぼる。その後1994年に同学部に日本語・日本文学科が設置された。2013年にはテヘラン大学世界研究部日本研究コース(修士課程)が開講した。

以上から、シリアとイランとトルコでは1990年代に日本語教育に力を入れ始めたことが判明した。

最後のアキルさんの発表では、モロッコにおける日本語教育の現状が扱われた。1982年にモハメッド五世大学(ラバト)において、モロッコの公的機関における日本語教育が開始した。2002年以降は順次5つの大学で日本語講座が行われるようになった。マンガ・アニメへの関心は高く、これからも日本語教育に力を入れるべき状況である。

今回のパネルディスカッションで、中東における日本語教育はまだ力を入れつつある現状であることが分かった。地政学的な特徴が日本語教育に歯止めをかけていることも判明した。中東の5つの国の日本語教育状況を比較的に考察することができたが、日本のポップカルチャー、特にマンガ教材の開発はまだ十分に行われていないようだ。

パネリストは全員が渥美奨学生であり、今後も共同で研究集会や勉強会や交流を重ねて中東における日本語教育に力を入れることを目指すことで合意した。

当日の写真は以下のURLからご覧いただけます。
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/12/EACJS7Photo_Team_Melek.pdf

<カバ・メレキ KABA_Melek>
2009年度渥美奨学生。トルコ共和国チャナッカレ・オンセキズ・マルト大学日本語教育学部助教授。2011年11月筑波大学人文社会研究科文芸言語専攻の博士号(文学)取得。白百合女子大学、獨協大学、文京学院大学、早稲田大学非常勤講師、トルコ大使館文化部/ユヌス・エムレ・インスティトゥート講師、トルコ共和国ネヴシェル・ハジュ・ベクタシュ・ヴェリ大学東洋言語東洋文学部助教授を経て2018年10月より現職。

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