SGRAメールマガジン バックナンバー

JO Byeongwook “Excitement Might Be Important”

**********************************************
SGRAかわらばん992号(2023年11月23日)

【1】エッセイ:趙炳郁「ワクワクは大事かも」

【2】第17回SGRAチャイナフォーラムへのお誘い(最終案内)
「東南アジアにおける近代<美術>の誕生」(11月25日、ハイブリッド)
**********************************************

【1】SGRAエッセイ#751

◆趙炳郁「ワクワクは大事かも」

この春、博士課程の卒業で大学と大学院の9年間の学生生活が終わり、教員としての生活が始まった。留学生活を終えてそれほど時間がたっていないが、教員として感じたことを書いてみようと思う。

子供の頃、ロボットが登場する漫画を見ると男の子はワクワクする感情に包まれ、部屋で大騒ぎするものだ。私も同じで10歳の頃に「ガンダム」という漫画を初めて見て、似たような感情を持った。10年くらいたって高校生になった時も精神的に成長できておらず、ロボットを見るとワクワクしたが、子供の頃とは少し違って、勉強を頑張って良い大学に行けば、いつかあんなロボットを作れるだろうという期待感でそのような気持ちになったと思う。

1年間浪人して、2012年にやっと希望する大学の希望する学科に入学することになったが、実際に大学に行ってみると考えていた学問と適性が少し違っていたようで、実習や実験の時間は、もっと知りたいという思いより、面倒くさいと思うことの方が多かった。学部時代は新しいことをすることに対して、ワクワクすることより義務感でやることが多く、大学院への進学は決まったものの将来への確信がなかったので、まず軍隊に行ってくることにした。

軍隊は大学よりもさらに退屈な義務感しかない生活だった。毎年決まった行事があり、マニュアルがあり、新しいことをするよりも現状を維持することが重要な集団なので、私のように思い通りに動きたい人には満足できない場所だったが、学ぶことは多かった。

無事に兵役を終え、2018年から大学院生活を始めた。不思議なことに学部4年生の時にも研究したことがあるのに、今回は自分が主体的に研究をすることになったからか、高校や子供の頃に感じたワクワクする感情を8年ぶりに感じた。私の研究分野は細胞に関するもので、予測される結果が分かりにくいからかもしれないが、結果的に興味を持つようになり、そのまま博士課程に進学した。博士課程では思ったより楽しく研究を行うことができた。もちろん帰宅はいつも深夜で、審査を準備する最後の半年は言葉で表現できないほど大変だったが、いつも私の意見を尊重して指導してくれた指導教員のおかげで無事に卒業することができた。

今は同じ研究室で助教として学生の研究指導をしており、学生の頃とは比べ物にならないほど義務と責任が増え、ワクワクする機会が少なくなった。しかし、皮肉なことに研究室のボスは「研究は常にワクワクする気持ちでやるものだ」という持論をお持ちで、今はどうやって人をワクワクさせるかを常に考えながら日々を過ごしている。最近、初めてオムニバス式の大学院の授業を行う機会を得た。理論の説明1時間と簡単な実験30分程度の授業だったが、やはり過去の学者が見つけた真理を面白く伝えるのは難しい。それでも実験では「これワクワクするね!」と言ってくれた学生がいて、少し嬉しくなった。これが最近のワクワクのポイントであり、しばらくは現状を楽しみたい。

<趙炳郁(ジョウ・ビョンウク)JO_Byeongwook>
2022年度渥美奨学生。2023年3月東京大学大学院情報理工学系研究科にて博士号取得。博士(情報理工学)。2023年4月より東京大学大学院情報理工学系研究科助教。専門は機械工学、組織工学、バイオエンジニアリング、マイクロ流体工学。

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

【2】第17回SGRAチャイナフォーラムへのお誘い(最終案内)

下記の通りSGRAチャイナフォーラムをハイブリッド形式で開催いたします。会場でもオンラインでも参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。

テーマ:「東南アジアにおける近代<美術>の誕生」

日時:2023年11月25日(土)午後3時~5時(北京時間)/午後4時~6時(東京時間)

会場:東京会場、北京会場、オンライン(Zoomウェビナー)のハイブリッド形式
◇東京会場:渥美財団ホール https://www.aisf.or.jp/jp/map.php
◇北京会場:北京大学外文楼206 ※北京大学関係者対象

言語:日中同時通訳

共同主催:
◇渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)
◇北京大学日本文化研究所
◇清華東亜文化講座
後援:国際交流基金北京日本文化センター
協賛:鹿島建設(中国)有限公司

※参加申込(リンクをクリックして登録してください)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_G5EEnbsqQxSTV9xNknq-Pw#/registration

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

■要旨

東南アジアにおける近代美術の萌芽的な動きは、そのほとんどの地域が欧米列強の植民地であった1930年代に見られる。その運動は、相互に連動したものではなかったが、植民地において19世紀末から盛んになったナショナリズムや民族自決の高まりといった国際的な共通性を背景に、ほぼ同じ時期に見られるようになった。

フィリピンでは、アメリカ留学から帰国したエダデスを中心に結成された「13人の現代人たち」が、オランダ領東インドではスジョヨノとプルサギ(インドネシア画家組合)がその主な担い手であった。シンガポールではフランス留学からの帰国者たちが華人美術研究会を結成、華僑子弟の教育のために設立された南洋美術専科学校とともに、近代美術運動を推進した。独立国であったタイでは、「お雇い外国人」のイタリア人彫刻家フェローチが国立美術学校を設立し、仏領インドシナでは、フランス人画家タルデューが美術学校を設立して美術教育に取り組んだ。両校の初期の卒業生たちがそれぞれの近代美術の担い手となった。

こうした萌芽的な運動は、1940年代の旧日本軍の侵攻と占領によって頓挫し、本格的な開花は各国が独立を果たす1950年代以降を待つことになる。

この初期の近代美術運動の担い手であったパイオニアたちは何を目指し、何を課題としたのか。20世紀前半、激動のアジア近代史の奔流の中で、彼らは何と戦ったのか、そしてその思いは─各国における共通性と相違に目を向けながら読み解く。

■プログラム

総合司会 孫建軍(北京大学日本言語文化学部/SGRA)

【開会挨拶】今西淳子(渥美国際交流財団/SGRA)
【挨拶】野田昭彦(国際交流基金北京日本研究センター)

【講演】後小路雅弘(北九州市立美術館館長)「東南アジアにおける近代〈美術〉の誕生」

【指定討論】
◇熊燃(北京大学外国語学院)
◇堀川理沙(ナショナル・ギャラリー・シンガポール)

【自由討論】
モデレーター:林少陽(澳門大学歴史学科/SGRA/清華東亜文化講座)

【閉会挨拶】趙京華(清華東亜文化講座/北京第二外国語学院)

※プログラムの詳細は、下記リンクをご参照ください。
日本語版
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/10/J_SGRAChinaForum17.pdf

中国語版
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/10/C_SGRAChinaForum17.pdf

ポスター
https://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2023/10/ChinaForum17_posterLITE.png

*********************************************
★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

●「SGRAかわらばん」は、SGRAフォーラム等のお知らせと、世界各地からのSGRA会員のエッセイを、毎週木曜日に電子メールで配信しています。どなたにも無料でご購読いただけますので、是非お友達にもご紹介ください。
●登録および配信解除は下記リンクからお願いします。

無料メール会員登録


●配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務局より著者へ転送します。
●エッセイの転載は歓迎ですが、ご一報いただければ幸いです。
●SGRAエッセイのバックナンバーはSGRAホームページでご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/
●SGRAは、渥美財団の基本財産運用益と法人・個人からの寄附金、諸機関から各プロジェクトへの助成金、その他の収入を運営資金とし、運営委員会、研究チーム、プロジェクトチーム、編集チームによって活動を推進しています。おかげさまで、SGRAの事業は発展しておりますが、今後も充実した活動を継続し、ネットワークをさらに広げていくために、皆様からのご支援をお願い申し上げます。

寄付について

関口グローバル研究会(SGRA:セグラ)事務局
〒112-0014
東京都文京区関口3-5-8
(公財)渥美国際交流財団事務局内
電話:03-3943-7612
FAX:03-3943-1512
Email:[email protected]
Homepage:http://www.aisf.or.jp/sgra/
*********************************************