SGRAメールマガジン バックナンバー

CHEN Hongyu “What AI Can and Cannot Do”

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SGRAかわらばん973号(2023年6月15日)

【1】エッセイ:陳虹宇「AIでできること、できないこと」

【2】催事紹介:第3回<東アジア学>全国研究生研修会「国境を越えた協力と東アジア研究」
(6月17日、台北およびオンライン)

【3】催事紹介:第15回INAF研究会「現在の台湾問題を見る多角的な視点」(6月27日、オンライン)

【4】催事紹介:国際シンポジウム「日韓の歴史教育における「新安沈船」」(7月2日、東京)
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【1】SGRAエッセイ#740

◆陳虹宇「AIでできること、できないこと」

人工知能(artificial_intelligence:AI)は1956年、計算機科学者・認知科学者のジョン・マッカーシー教授によって提案された言葉で、「知的な機械、特に知的なコンピューター・プログラムを作る科学と技術」と定義されていた。AIに関する研究が進んだ現在、その定義が研究者・研究領域ごとに異なり、さまざまな分野でAIを活用した自動化や効率化が進められている。例えば自動車の自動運転、工場における不良品検知、クレジットカードの不正使用検知などだ。これらの技術はコンピューターが画像や音声認識、あるいはパターン読み取りなどによって、大量の情報を自動的に取得し、学習することで実現されている。また、最近登場した人との自然なコミュニケーションや文章の自動生成、要約、情報収集ができる「ChatGPT」は専門的な知識が無くても活用できるAIとして、世界中で話題だ。

私の研究分野は有機化学。化学反応の開発の新たな潮流として、機械学習・データ科学の利用が注目されている。特に、現状では研究者の試行錯誤をもとに行われている立体化学を制御できる不斉触媒反応の開発をデータ科学により促進することは、有機合成の難題と位置づけられる。私は博士課程で複雑分子をグリーンに供給する立体分岐型不斉触媒システムの設計に機械学習を導入する方法論の構築と実証、および開発した不斉触媒システムを用いた新規有機合成に先鞭をつけることを目指して研究に取り組み、複雑な新規触媒システムの効率的な開発に成功し、AIの便利さを実感できた。

一方、「AIが発達することで人間の仕事が奪われるのではないか」と不安を持つ人が増えている。現在開発されているAIはほとんど問題特化型で、1つのモデル化・数学化した問題の解決にのみ機能しているが、将来、シンギュラリティ(技術的特異点=人間の脳と同じレベルのAIが誕生する時点)が近づくにつれ、人間にしかできなかった多くのことが機械に代替され、人間の生活環境は大きく変わるだろう。清掃や配達などの単純作業だけではなく、医療・金融など専門性が高い領域にも適用される可能性が高い。

では、どんなに技術が進歩してもAIに代替されない仕事があるのだろうか。原理的にはシンギュラリティに到達すると、コンピューターが人間と同じレベル、あるいはそれ以上の知恵を持つことになる。手間や人為的なミスを削減できるため、人間と比べコスト削減や効率向上が実現できる。しかし、仕事によっては、こういった「ミスが起きない」完璧さが逆にデメリットになる可能性がある。例えば、幼稚園教員。事前にシステムを設定すれば、AIが子供たちに知識やマナーを教えたり、遊んだりできる。しかし、幼稚園時代は発達において重要な時期であり、「人間教員」が無意識に表す感情やミスなども子供たちの性格や社会性の形成にとっては必要不可欠だ。AI教員を導入すると、この時期の子供たちにふさわしい生活リズムを獲得させにくい可能性が高い。

AI技術は急速に発展している。シンギュラリティに到達するまでにはまだ長い年月が必要かもしれないが、人間がどのようにAIと共存し、互いに補完しあう存在になるかが重要な課題だ。

<陳虹宇(チン・コウウ)CHEN_Hongyu>
2022年度渥美奨学生。大塚製薬株式会社CMC本部合成研究部研究員。東京大学大学院博士課程修了(薬科学博士)。研究領域は有機合成化学、計算化学。

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【2】催事紹介

SGRA会員で台湾東呉大学教授の徐興慶先生から公開研修会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。希望者は参加登録をお願いします。

◆第3回<東アジア学>全国研究生研修会「国境を越えた協力と東アジア研究」
日時:2023年6月17日(土)
会場:中国文化大学(台北市)およびオンライン
参加費:無料
プログラム参照、オンライン参加申込は下記リンクからお願いします。
https://forms.gle/nedzcY2pKYneLikC6

中国文化大学東アジア研究院が開催した第2回(2022年)全国大学院の研修は、国内21大学の大学院生から好評を博しました。第3回研修は、2023年6月17日(土)日本、韓国、中国大陸、台湾の著名な学者6名を招き、政治、外交、貿易、儒教、建築、移民など領域を超えた専門知識に関する特別講義を行います。「国境を越えた協力と東アジア研究の将来」として、東アジア研究の発展を深める方法について議論し、資源の共有に関連する問題を考えます。また、台湾の10大学の日本学科長と東アジア研究部長を招いて「東アジア研究に関する学生育成のための対策とリソース」について話し合います。
本研修会は、台湾以外の各国の大学生、院生の皆さんのオンラインでのご参加を歓迎します。奮ってお申込みください。

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【3】催事紹介

SGRA会員で東北亜未来構想研究所(INAF)所長の李鋼哲先生から研究会のお知らせをいただきましたのでご紹介します。希望者は主催者へ参加申込をお願いします。

◆第15回INAF研究会「現在の台湾問題を見る多角的な視点」
日時:2023年6月27日(火)19:00~21:00
方法:オンライン

近年、台湾を巡る国際関係が東北アジアおよび世界において最も注目され、とりわけ米中覇権争いと対立のなか、この2大国の対台湾政策は今後の東北アジア国際問題および平和と戦争の決定的な要因になっています。中台両岸関係、とりわけ「独立」と「統一」を巡る中国の姿勢と台湾国内政治および国内世論が錯綜しており、平和と戦争の駆け引きが始まっているように見えます。
台湾海峡の平和と安定を維持するために何が必要なのか?東北アジア関係諸国の対応のあり方について、 発表と討論を通じて、認識を深め、知見を高めることが本研究会の趣旨であります。

発表者
1.陳柏宇(INAF理事・新潟県立大学)
「台湾におけるナショナル・アイデンティティから見る中台関係」
2.李鋼哲(INAF理事・所長)
「台湾をめぐる国際関係の見取り図」
司会:松本理可子(INAF理事・早稲田大学現代中国研究所招聘研究員)

詳細は下記リンクよりご覧ください。
http://inaf.or.jp/

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【4】催事紹介

国史対話メンバーで立教大学教授の佐藤雄基先生から国際シンポジウムのお知らせをいただきましたのでご紹介します。参加希望者は直接会場へお越しください。

◆国際シンポジウム「日韓の歴史教育における「新安沈船」」
日時:2023年7月2日(日)14:00~17:00
会場:立教大学池袋キャンパス 12号館地下1階 第1~2会議室
https://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/
・事前参加申込は不要です
・お問合せ:事務局 [email protected] または佐藤まで [email protected]

・趣旨
日本史、なかでも中世史は既存の教科書叙述の見直しを迫る成果が数多く公刊されているが、新しい研究動向を組み込んで教科書叙述を見直す動きは十分とはいえない。とりわけ、日本史上の中世にあたる時期の日本と高麗・朝鮮との関係史は20世紀末以来、最も発展の著しい分野の一つでありながら、古代や近世・近代に比べて教育の場で取り上げられる機会は著しく乏しい。本シンポジウムでは、1975年に韓国の全羅南道新安郡の沖で発見された沈没船(新安沈船)が日韓の歴史教育においてどのように取り上げられているのかを切り口にして、日韓の歴史教育・歴史研究者による「対話」の場をつくるとともに、歴史教育における日麗・日朝関係史について再考するきっかけとしたい。

・プログラム
趣旨説明:佐藤雄基(立教大学文学部史学科教授)
1.鄭淳一(高麗大学校歴史教育科副教授、国際日本文化研究センター外国人研究員)
「韓国の歴史教育は「新安沈船」をどう語っているのか」
2.大西信行(中央大学文学部特任教授)
「日本の中学・高校教科書における「新安沈船」」
コメント:皆川雅樹(産業能率大学経営学部准教授)
総合討論

詳細は下記リンクからご覧ください。
https://www.rikkyo.ac.jp/events/2023/07/mknpps00000296dq.html

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