SGRAメールマガジン バックナンバー

XIE Zhihai “What We Can See From The Charge For Plastic Shopping Bags”

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SGRAかわらばん887号(2021年9月9日)

【1】エッセイ:謝志海「レジ袋有料化から見えてきたプラスチック削減の新たなチャレンジ」

【2】第6回日本・中国・韓国における国史対話の可能性へのお誘い(最終案内)
「人の移動と境界・権力・民族」(9月11日、オンライン)

【3】第67回SGRAフォーラムへのお誘い(9月23日、オンライン)(再送)
「誰一人取り残さない:如何にパンデミックを乗り越えSDGs実現に向かうか」

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【1】SGRAエッセイ#680

◆謝志海「レジ袋有料化から見えてきたプラスチック削減の新たなチャレンジ」

1年ほど前、日本でスーパーのレジ袋が有料化されたことについて書いたが、エコバッグ持参で買物する生活は定着してきたように思う。私が住む群馬県は車社会なので、エコバッグだけでなく、スーパーの買物かごと同じようなものを持参で来ている人も多数みかける。買ったものをポリ袋やエコバッグに移し替える必要がなく、エコと時短が同時にかなうものだ。スーパーの景色はこうして変わった。しかし、レジ袋有料化にともない家庭ゴミの排出量は減ったのだろうか?以前より週に2回のゴミ回収の山がひとまわり小さくなった、なんて変化はみられない。

雑誌「アエラ」でこんな記事をみつけた、「レジ袋断ってゴミ袋買う矛盾」(2021年6月14日号)。矛盾とは、これまでレジ袋を生ゴミ袋やゴミ袋として使っていた人々が、エコバッグを持つようになり、結局ゴミ捨て用のゴミ袋を買っているというものだ。確かに、日本のスーパーやコンビニのポリ袋は生ゴミ袋としても耐えられるしっかりとした作りになっている。レジ袋をゴミ袋に再利用していた人がいかに多かったかということか。エコバッグを使うようになり、生魚や肉のパックからの液もれでエコバッグを汚さないようにと、小さな透明ポリ袋(無料)を以前よりひんぱんに使うようになった、というコメントもあった。

エコバッグを持つようになって、なんらかの矛盾を抱きながら暮らしている人が多いのではないだろうか?私もゴミを出す量が減ったかという点においては、もやもやしたままだ。「アエラ」の記事によると、英国の環境庁が2011年に発表した調査では「地球温暖化の可能性」をレジ袋より少なくするにはエコバッグを131回使う必要があるという。こういう具体的な数字を出してもらえるのはありがたいが、それではポリ袋をもらってしまおうと思う人もいるだろうし、今ではエコバッグを複数枚持っている人が非常に多いという。我が家にも、買ってもいないのに気づけばサイズもさまざま何枚もある。

我々が感じるこの矛盾の理由は、お金を払ってレジ袋をもらうかエコバッグを持参するかのどちら派になるかでは、自分のしていることがエコかどうか明確に解決しないからだろう。そう、レジ袋だけがプラスチック製品ではないのだ。「アエラ」の記事はこの点においても疑問を呈し、最後にはすっきりと読み終わらせてくれた。「(レジ袋にかぎらず)トータルでエコを意識できているかが大事です」なるほどそういうことだ。レジ袋はもらうけれど、移動に自転車を使うならば、エコを意識しているといえるだろう。コンビニでお弁当とヨーグルトを買った知人が、レジ袋を断った後に、割箸とプラスチックのスプーンは当たり前のようにさっと取って出てきたことに違和感を持った。どちらも家に持ち帰るものだから、断わることができたはずだ。「レジ袋は有料だけど必要ですか?」という問いがなければ、ふたつとももらっていたかもしれない。

そう、レジ袋がゴミ削減に対するトリガーになるのであれば、それでいいと思う。実際のところ、プラスチックのスプーンやフォークを有料にする案も環境省と経済産業省が合同で具体化を進めている。食に関するものだけでなく、クリーニング店のハンガー、ホテルなどで提供される歯ブラシやヘアブラシなど12品目にもわたるという。この新制度の導入は、2022年4月を目指している。これが本格的に動き出したら、プラスチック使い捨て製品への意識はさらに高まると期待する。日々の生活で少しずつできることからやっていく、そうすれば、だれもがエコな活動に参加することになる。

<謝志海(しゃ・しかい)XIE Zhihai>
共愛学園前橋国際大学准教授。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイト、共愛学園前橋国際大学専任講師を経て、2017年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。

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【2】第66回SGRA-Vフォーラム/第6回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性「人の移動と境界・権力・民族」へのお誘い(最終案内)

下記の通り第6回日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性をオンラインで開催いたします。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。一般聴講者はカメラもマイクもオフのWebinar形式で開催しますので、お気軽にご参加ください。

テーマ:「人の移動と境界・権力・民族」
日 時:2021年9月11日(土)午前10時~午後4時20分(日本時間)
方 法: Zoomウェビナーによる
言 語:日中韓3言語同時通訳付き
主 催:渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)

*参加申込(下記リンクから登録してください)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_6j-ioNjbR86btwmocwljKg

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

■開催の趣旨

本「国史たちの対話」企画は、自国の歴史を専門とする各国の研究者たちの対話・交流を目的として2016年に始まり、これまで全5回を開催した。国境を越えて多くの参加者が集い、各国の国史の現状と課題や、個別の実証研究をめぐって、議論と交流を深めてきた。第5回は新型コロナ流行下でも対話を継続すべく、初のオンライン開催を試み、多くの参加者から興味深い発言が得られたが、討論時間が短く、やや消化不良の印象を残した。今回はやや実験的に、自由な討論に十分な時間を割くことを主眼に、思い切った大きなテーマを掲げた。問題提起と若干のコメントを皮切りに、国や地域、時代を超えて議論を豊かに展開し、これまで広がってきた参加者の輪の連帯を一層深めたい。

なお、円滑な対話を進めるため、日本語⇔中国語、日本語⇔韓国語、中国語⇔韓国語の同時通訳をつける。フォーラム終了後は講演録(SGRAレポート)を作成し、参加者によるエッセイ等をメールマガジン等で広く社会に発信する。

■問題提起

◇塩出浩之(京都大学)「人の移動からみる近代日本:国境・国籍・民族」

国や地域をまたいで移動する人々は、過去から今日まで普遍的に存在してきた。しかし歴史が国家を単位とし、かつ国民の歴史として書かれるとき、彼らの経験は歴史から抜け落ちる。逆にいえば、歴史をめぐる対話において、人の移動はもっとも好適な話題の一つになりうるといえよう。

「人の移動と境界・権力・民族」というテーマについて、この問題提起では近代日本の経験を素材として論点を提示する。まず導入として、アメリカ合衆国の沖縄系コミュニティに関する報告者のフィールドワークをもとに、現代世界における民族集団(ethnic_group)について概観する。

第一の問題提起として、近現代における人の移動を左右してきた国境と国籍に焦点をあて、具体的な事例として、20世紀前半における日本統治下の沖縄・朝鮮や、戦後アメリカ統治下の沖縄からの移民について紹介する。国境や国籍が、近現代の主権国家体制や国際政治構造(帝国主義や冷戦)と密接に関わることを指摘したい。

第二の問題提起として、人の移動が政治・社会秩序にあたえたインパクトとして、国家や地域をまたぐ民族集団の形成、そして国家間関係とは異なる民族間関係の形成に焦点をあてる。具体的な事例としては、20世紀前半のハワイにおける日系住民と中国系住民の複雑な関係についてとりあげる。

以上を踏まえて、近現代における人の移動は前近代とどのような異同があり、また国を単位として比較した場合には何がいえるのか、議論を喚起したい。

*プログラム・会議資料の詳細は、下記リンクをご参照ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/08/J_Kokushi6_ProjectPlan.pdf

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【3】第67回SGRAフォーラム「誰一人取り残さない」へのお誘い

下記の通り、第67回SGRAフォーラムをオンラインで開催します。一般視聴者はカメラもマイクもオフのZoomウェビナー形式ですので、お気軽にご参加ください。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。

テーマ:「誰一人取り残さない:如何にパンデミックを乗り越えSDGs実現に向かうか―世界各地からの現状報告―」
日時:2021年9月23 日(木・祝)午後2時~4時30分
方法: オンライン(Zoomウェビナー)開催
言語:日本語

申込:下記リンクよりお申し込みください
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_yju-0tGIRpygadlGG6YAKg

お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] +81-(0)3-3943-7612)

■フォーラムの趣旨

SDGs(Sustainable_Development_Goals持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで、国連加盟193カ国が採択した、2016年から30年までの15年間で持続可能で、より良い世界を目指すために掲げた目標。国連ではSDGsを通じて、貧困に終止符を打ち、地球を保護してすべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけている。具体的には、17のゴール(なりたい姿)・169のターゲット(具体的な達成基準)から構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave_no_one_behind)」ことを誓っている。SDGsに取り組むのは、国連加盟国の各国政府だけではなく、企業、NPO、NGOなどの各種団体、地方自治体、教育機関、市民社会、そして個人などすべての主体がそれぞれの立場から取り組んでいくことが求められている。

2020年はSDGsの5年目になる年であったが、新型コロナウイルスによるパンデミックが世界を席巻し、世界各国の経済や社会生活に多大な打撃を与え、世界大戦に匹敵する死傷者を出す悲惨な状況になってしまった。世界では先進国を中心にワクチン開発・供給などで取り組んで来ているが、多くの発展途上国は、資本主義の生存競争のなかで、パンデミックの対応に困難を極める状況に置かれているのが現状である。本フォーラムは、SDGsの基本理念と目標について理解するとともに、いくつかの国をケーススタディとしてとりあげ、パンデミックを如何に克服して「誰一人取り残さない」SDGsの実現に対応すべきかについて議論を交わすことを通じて、「地球市民」を目指す市民の意識を高め、一人一人がSDGsに主体的に取り組むアクションを起こすきっかけを提供することを目的とする。

◇プログラム:
総合司会:ロスティカ・ミヤ(大東文化大学/SGRA)

【第1部】基調報告(14:10~14:40):
佐渡友哲(さどとも・てつ:日本大学/INAF)
テーマ「SDGs時代における私たちの意識改革」
(参考図書:『SDGs時代の平和学』法律文化社、2019.12)

【第2部】世界各地からの現状報告(14:40~15:30):
報告1:フィリピンにおけるSDGs:フェルディナンド・マキト(フィリピン大学ロスバニョス校/SGRA)
報告2:ハンガリーにおけるSDGs:杜セキン(INAF研究員)
報告3:中東・北アフリカ地域におけるSDGs:ホサム・ダルウィッシュ(アジア研究所/SGRA)
報告4:朝鮮におけるSDGs:朴在勲(㈱コリア・メディア/INAF)
報告5:スーダンにおけるSDGs:モハメド・オマル・アブディン(参天製薬㈱/SGRA)

【第3部】自由討論・総括(15:40~16:30):
モーデレーター:李鋼哲(北陸大学/SGRA/INAF)
パネリスト:報告者全員
+羽場久美子(神奈川大学)、三村光弘(ERINA/北東アジア学会)その他数名
総括:平川均(名古屋大学名誉教授/SGRA/INAF)

下記リンクよりプログラムをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/09/SGRAForum67Program.pdf

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★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、2019年より関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。毎月1回配信。SGRAかわらばんとは別に配信するため、ご関心のある方は下記より登録してください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

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