SGRAメールマガジン バックナンバー

Max Maquito “Manila Report 2021 Summer”

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SGRAかわらばん877号(2021年7月1日)

【1】エッセイ:マックス・マキト「マニラ・レポート2021初夏」

【2】国史対話メルマガ#31「宋志勇『私と日本史の縁』」を配信

【3】第16回SGRAカフェへのお誘い(7月17日/京都&オンライン)(再送)
「安全であること:環境と感覚、ジェンダー、人種、セクシュアリティから考える」
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【1】SGRAエッセイ#674

◆マックス・マキト「マニラ・レポート2021初夏」

ワイリー・オンライン図書館の『情報システム・ジャーナル』で、「私達は研究の社会的効果(ソーシャル・インパクト)を気にしているか」というタイトルの社説を見つけた。この社説は「H指数の独裁政治」、つまりジャーナル・インパクト・ファクターへの批判が高まっていることをはっきり指摘しただけではなく、V指数(Value-indices)、つまり僕がソーシャル・インパクト・ファクターと呼ぶものに明快に言及している。学術的研究と一般社会の関係者をどのように結びつければよいか――これはアカデミズム尊重の根強い伝統に対する正真正銘の反乱であり、僕は以前から考えていたポリシーブリーフの作成に努力しようという思いを改めて強く感じた。ポリシーブリーフとは、さまざまな政策案件に関して、政策研究のエビデンスに基づき、政策の選択肢について簡潔に解説を行うものである。自分自身はもちろんのこと、「戦略的計画の理論と方法」の授業を受けている僕の大学院生たちにも持続可能な共有型成長に関するポリシーブリーフを作成してもらうことにした。

この動きは、コロナのパンデミックのために1年間中止していた「持続可能な共有型成長セミナー」の復活となって実を結んだ。2021年5月31日、フィリピン大学ロスバニョス校公共政策開発大学院(CPAf)と渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)の共催で、第28回持続可能な共有型成長セミナー「持続可能な共有型成長へのポリシーブリーフ」が、初めての完全オンラインで開催された。

ロウェナ・バコンギス学院長と今西淳子SGRA代表の温かい開会挨拶の後、僕がセミナーの経緯と趣旨を説明し、最後に9人の大学院生が作成した5本のポリシーブリーフを発表した。9人は現役の教員や公務員で、ロックダウン中の最初の2学期間で僕が出したこの挑戦的な課題に真剣に応戦してくれた。

持続可能な共有型成長へのポリシーブリーフは次の通り。

1)ビバリー・デラクルス「農場から食卓(F2F)までのロス削減:持続可能な食料システムのための3つの良い解決策」。温室効果ガス排出の削減(SDG13)水(SDG14)と土(SDG15)の資源にかかる圧力の緩和、食料安全性と栄養による社会的状況の改善(SDG2)、責任ある消費と生産(SDG12)を通じた生産性と経済成長の向上(SDG8)をめざす。

2)マルク・イシップ、ダヤン・カベリョウ「強力な協同組合を通じたフィリピン国内の持続可能なハタ(魚類)の生産」。海洋資源の保全、高価値のある海洋生産物の業者間の公平分配や、漁業部門の生産性の向上のために強い共同組合を提案。

3)ヨルダ・アバンティ、ジョセフィン・レバト「イサログ山:共通の善か共通の対立か」。陸上の生物多様性の保全や中央・地方政府間の適切な権利分配やイサログ山コミュニティの活性化を促進する、適切な地方分権を提言。

4)フェ・アラザー、アイザ・スンパイ「公平な枠組みの構築:COVID-19時代に対応する採点方針」。学生達の多様な状況に配慮しながら、非正常でストレスが多いパンデミックの時代に合った採点システムを提言。

5)メルセル・クリマコサ、カテリン・アルガ「栄養と教育:国の将来の決定要因」。小学生とその親の世代間の関係に焦点を当て、子どもの栄養失調が国の未来に与える打撃を軽減するため、最近の栄養と教育の政策をサーベイ。

発表者たちのポリシーブリーフは、さまざまな完成段階にあったが、CPAfの教員であるメッリン・パウンラギ先生、ジン・レイェス先生、マイラ・ダビッド先生とアジア太平洋大学のジョヴィ・ダカナイ先生からの適切なコメントを頂いた。ダカナイ先生と私は、アジア太平洋大学の前身である「研究とコミュニケーション・センター(CRC)」時代の仲間である。当時はまだ大学院生であったが、今のポリシーブリーフに当たる「スタッフ・メモ」の定期的な執筆に動員され「火の洗礼」を受けた。あの時の熱気は、現在のアジア太平洋大学に立派に成長することになる魔法の種であった。あの時も今も、僕たちの関心は、誰かを置いてきぼりにするのではなく、全員を甲板に召集する事にある。これこそ、僕たちの社会が現在直面している最も深刻な問題を解決するために必要とされている。

当日の写真は下記リンクからご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/06/KKK-SGRA-Seminar-28-Gallery-light2.pdf

本セミナーの報告書(英語)は下記リンクからご覧いただけます。

SGRA Sustainable Shared Growth Seminar 28 Report

<フェルディナンド・マキト Ferdinand_C._Maquito>
SGRAフィリピン代表。SGRA日比共有型成長セミナー担当研究員。フィリピン大学ロスバニョス校准教授。フィリピン大学機械工学部学士、Center_for_Research_and_Communication(CRC:現アジア太平洋大学)産業経済学修士、東京大学経済学研究科博士、テンプル大学ジャパン講師、アジア太平洋大学CRC研究顧問を経て現職。

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【2】「国史対話」メールマガジン第31号を配信しました。

◆宋志勇(南開大学)「私と日本史の『縁』」

私は少年時代に色々な夢を持っていたが、歴史研究に従事することは考えもしなかった。小学・中学時代はちょうどあの荒唐で狂気に満ちた「無産階級文化大革命」の後期にあたり、学校で学んだ「歴史」は基本的に共産党の闘争史と農民一揆ばかりで、中国と外国の歴史を一通り勉強したことがない。中学卒業後、「亦工亦農」(鉱工業も農業も従事する)という形で労働に参加した。あの頃、大学入試(「高考」)が停止され、労働者・農民および革命家の家庭に生まれた少数の「優秀人物」だけが推薦で大学に入学できて、私は家庭の政治的出自がよくないとされたため、推薦入学の資格もなく、鬱陶しくなっていた。

幸い、1970年代末期に鄧小平の主導により「撥乱反正」が行われ、「改革開放」が実施され、大学入試制度も復活した。私のように大学での勉学を渇望していた若者に一条の光がさしてきた。

続きは下記リンクからお読みください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/kokushi/J_Kokushi2021SongZhiyongEssay.pdf

※SGRAでは2016年から「日本・中国・韓国における国史たちの対話の可能性」円卓会議を続けていますが、関係者によるエッセイを日本語、中国語、韓国語の3言語で同時に配信するメールマガジンを開始しました。国史メルマガは毎月1回配信しています。SGRAかわらばんとは別にお送りしますので、ご興味のある方は下記より登録してください。3言語対応ですので、中国語、韓国語の方々にもご宣伝いただけますと幸いです。

◇国史メルマガのバックナンバーおよび購読登録は下記リンクをご覧ください。
https://kokushinewsletter.tumblr.com/

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【3】第16回SGRAカフェへのお誘い(再送)

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす皆さまに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺い議論をする<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回は初めて京都を拠点とするハイブリッド形式で、第16回SGRAカフェを開催します。皆さまの積極的なご参加をお待ちしています。参加ご希望の方は、事前に参加登録をお願いします。

テーマ:「安全であること――環境と感覚、ジェンダー、人種、セクシュアリティから考える」
日時:2021年7月17 日(土)午後3時~4時30分
方法: 会場(定員20名)とオンライン(Zoom)開催
会場:Impact_Hub_Kyoto(京都市上京区)

アクセス


言語:日本語
参加申込:下記リンクよりお申し込みください
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_4VHnLNp6TU6FHQm01Bvnlg
お問い合わせ:SGRA事務局([email protected] 03-3943-7612)

■フォーラムの趣旨

日本社会は「安全」だと言われているが、「安全」であるということは何を指しているのだろうか?本イベントでは、様々な立場や視点から「安全」の意味および基準を考え直し、社会的な構造・環境と、その構造が個人に及ぼす影響について対談する。コロナ時代となった現在は社会格差が広がり、弱い立場にいる人たちがより危険な状況に陥りやすくなっている。ジェンダーや人種、セクシュアリティなど、様々な視点と立場から安全および社会における差別・不平等について話し合う。できるだけ多くの人々にとってより安全な社会をつくるために、自分は何ができるのか?自分にとって安全な場所を見つけるために何をすればいいのか?身近な問題から社会的な構造まで、安全について考えてみよう。

性暴力被害者の支援をしている中島幸子氏やBLM活動をしているキナ・ジャクソン氏、シェルター運営者など、さまざまな視点から安全について話し合う。本イベントの目的は、日本にいる人々の経験を知り、「知る」ことから活動につなぐことである。「安全」という単純に思われている概念を考え直し、自分は本当に「安全」と感じているかということを、参加者に考えてもらいたい。自分のまわりを安全にするため、もっと安全な環境を見つけるためにはどうすればいいのか、という実践的な話にまでつなぎたい。

会場とオンライン方式の同時開催で、質問はトークの中で受け付ける。東京の渥美財団ホールともオンラインでつなぎ、渥美奨学生有志がディスカッションに参加する。

下記リンクよりプログラムをご覧ください
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2021/06/SGRA-VCafe16Programfinal3.pdf

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★☆★お知らせ
◇「国史たちの対話の可能性」メールマガジン(日中韓3言語対応)
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