SGRAメールマガジン バックナンバー

Lee Ji-Hyeong “About Thirties, Love, and Marriage”

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SGRAかわらばん714号(2018年3月8日)

【1】エッセイ:李志炯「30代、愛、結婚について」

【2】日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(3月16日、ソウル)
「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」(最終案内)
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【1】 SGRAエッセイ#560

◆李志炯「30代、愛、結婚について」

今年、自分の年齢が30代後半に入ることに気づき、少し驚いた。卒業したばかりで正式な会社員になったこともないままこの年齢に向かうなんて、ちょっと恥ずかしい気持ちもあった。だが、やりたい勉強に集中している人にはよくあることではないかと自分を慰めた。一方、仕事は歳をとっても自分が頑張れば何とかなる気がしたが、結婚は歳も重要であるため、自分が頑張っても望む結果を手に入れることは難しい気がした。だが、日本の厚生労働省(平成28年度人口動態統計特殊報告・婚姻に関する統計)の公開資料で年々平均婚姻年齢が上がっているのを見て、私はそんなに遅れていないともう一度自分を慰めた。

一方、30代は心理的、生理的に大きく変化する時期なので、これが結婚に及ぼす影響についても考えるようになった。心理的な問題としては、以前は考えていなかった経済的な側面、愛の持続性、私生活の確保なども考慮するようになり、これらを基に合理的な結婚とは何かについて考えるようになった。生理的な問題としては、主に出産のことを考えるようになった。さまざまな媒体で医学技術の進歩により40代でも健康な赤ちゃんを産めると言われているが、まだ高齢出産のリスクは大きいだろう。私は同年代の異性との結婚を望んでいるため、出産も結構気になるようになった。以前は結婚すれば出産は当たり前だと思っていたが、今は環境によって様々なのだと思っている自分に気づき、少し驚いた。

これらのことを考えると結婚について強迫観念が生じるようで、頭が痛くなる。そして、いつも結婚に対する考えは一周回って以下の質問に帰結する。

「結婚とは何か?」

日本の民法上では婚姻と表現されており、広辞苑では婚姻の定義として、「結婚すること」とした上で、「夫婦間の継続的な性的結合を基礎とした社会的経済的結合で、その間に生まれた子が嫡出子として認められる関係」とある。学術的には結婚は配偶関係の締結を指し、婚姻は配偶関係の締結のほか、配偶関係の状態をも含めた概念として用いられている(文化人類学事典、1987年)。たしかに婚姻が結婚より上位概念のようだが、現代社会では結婚を婚姻と同様な概念として考えているようだ。

これらの定義をみると、性的結合が社会的経済的結合より重要であると感じられる。一般的に性的結合は愛を基盤にする行為であるため、結婚において愛が占める割合は最も大きいと考えられる。筆者も愛が最も重要であると思うが、その愛が結婚生活の中でどれだけ維持できるのかが気になる。「愛は900日の旋風であります」という言葉がある。アメリカのコーネル大学の研究によると、愛の寿命は平均18ヶ月~30ヶ月であることを明らかにした。愛に落ちると脳の大脳基底核に位置する神経核である尾状核が活性化されるので、愛の妙薬と称するドーパミンが増加し、さらなる幸福感を感じるという。

また、他の研究では、フェニルエチルアミンやオキシトシンやエンドルフィンなどが愛を長く維持できるようにしてくれると論じられている。しかし、時間が経つとこれらは減少し、その代わりに理性的判断を行う大脳皮質の活動が増加するため、この視点から相手に対する見方に変化が現れる。そのため、愛の寿命が終わる前に子供を産んで男女間の愛が家族に対する愛に代わる必要があるという意見を示す進化心理学研究者も多数いる。

たぶん、多くの人は男女間の愛を家族に対する愛にうまく入れ替えていると思う。それで、男女関係としての愛は少し減るかもしれないが、それでも配偶者を愛し、自分の子供を愛することで自分の家庭をうまく維持していると思う。しかし、結婚により相手の人が恋愛の対象から家族(配偶者)に変わることに乖離を感じ、その入れ替えに失敗する人もいる。特に、人によっては結婚後にも結婚前と同様に配偶者からの男女間の愛を求めるが、相手との愛の相違によって男女間の愛を諦める場合もある。それで、ドーパミンやフェニルエチルアミンやオキシトシンなどが抑制され、愛の寿命がさらに短くなる場合もある。

こうなると結婚生活の意味や家族の意味や自分の存在についてもう一度深く考えることにならざるをえないと思う。この考えの方向性によって結婚生活が大きく変化するだろう。考えの方向性に基づく行動パターンはさまざまであるが、メディアでよく出てくるのが不倫の話である。また、配偶者に内緒で通帳を作り、財産を備蓄し、いつでも離婚できるような状態を保っている人の話も聞く。これを手伝う専門弁護士まで現れている。さらに、男性の間では定年退職で離婚されることを恐れている人も増加している。

このようなニュースと接するたびに現代社会で生きている既婚者たちは結婚して本当に幸せだと思っているのか疑問になる。また、どんな気持ちで生活しているのかも気になる。まだ愛は残っているのかも気になる。歳をとるほど結婚について慎重になる中、このようなニュースに接するとますます結婚に対する漠然的な不安が増加する。このようなニュースが結婚生活を代弁するものではないことは認識しているが、万が一のことまで考えるようになった今の年齢では看過できない部分もある。

平均婚姻年齢が上昇している現代社会における筆者のような年齢の未婚者は、結婚についてどのように考えればよいだろうか。

<李 志炯(イ・ジヒョン)Lee Ji-Hyeong>
2007年、啓明大学(韓国)産業デザイン科卒業。2007年6月来日。2012年、千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻修士課程修了。2011年~2013年、千葉大学発ベンチャー企業BBStoneデザイン心理学研究所研究員。2017年、千葉大学大学院工学研究科デザイン科学専攻博士課程修了。工学博士。2018年、第一工業大学建築デザイン学科助教。韓国室内建築技士・日本ユニバーサルデザイン検定の資格を保有。

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【2】第17回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(最終案内)

下記の通り日韓アジア未来フォーラムをソウルにて開催いたします。参加ご希望の方は、事前にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。

テーマ:「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」
日時:2018年3月16日(金)午後2時~5時
会場:韓国ソウルThe-K_Hotel
コンベンションセンター2Fオークルーム(Oak_Room)
http://www.thek-hotel.co.kr/main_sh.asp
参加費:無料
お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局 [email protected]

主催:(財)未来人力研究院(韓国)
共催:(公財)渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)

◇フォーラムの趣旨

北朝鮮問題がいかなる方式で解決されようとも、北朝鮮に対する開発支援は今後の交渉過程や問題の解決以降においても、韓国や日本を含め、国際社会が避けては通れない重要な課題である。
本フォーラムでは、北朝鮮開発協力に対する体系的な理解を深めるとともに、北朝鮮開発協力における主なアクターたちの対北朝鮮支援のアプローチとその現状について議論し、新たな開発協力モデルの可能性を探ってみたい。今回は、2016年2月に東京で開催した第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」、2016年10月1日に北九州で開催した第3回アジア未来会議の自主セッション「アジア型開発協力の在り方を探る」、2016年12月仁川松島で開催した第16回日韓アジアイ未来フォーラム「日中韓の国際開発協力:新たなアジア型モデルの模索」における議論を受け、北朝鮮開発援助のあり方について考える。日韓同時通訳付き。

◇プログラム
詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/wp-content/uploads/2018/02/Nikkan17Program.pdf

【報告1】孫赫相(ソン・ヒョクサン:慶熙大学公共大学院院長)
「北朝鮮開発協力の包括的理解と多様なアプローチ」

【報告2】朱建栄(しゅ・けんえい:東洋学園大学人文学部教授)
「中国と北朝鮮の関係につむじ風――その変化を注目せよ」

【報告3】文炅ヨン(ムン・キョンヨン:全北大学国際学部准教授)
「韓国、国連の北朝鮮開発協力:現状と評価」

【フリーディスカッション】
-報告者を交えたディスカッションとフロアとの質疑応答-

○モデレーター:
金雄煕(キム・ウンヒ:仁荷大学国際通商学科教授)

○討論者:
李恩民(リ・エンミン:桜美林大学教授)
李鋼哲(り・こうてつ:北陸大学教授)
李元徳(リ・ウォンドク:国民大学教授)
朴栄濬(パク・ヨンジュン:国防大学教授)

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★☆★SGRAカレンダー
◇第17回日韓アジア未来フォーラム(2018年3月16日、ソウル市)
「北朝鮮開発協力の理解-開発協力のフロンティア」<参加者募集中>

第17回日韓アジア未来フォーラム「北朝鮮開発協力:各アクターから現状と今後を聞く」へのお誘い


◇第8回日台アジア未来フォーラム(2018年5月26日、台北市)
「グローバルなマンガ・アニメ研究のダイナミズムと新た可能性」<ご予定ください>
◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」
(2018年8月24日~8月28日、ソウル市)
<論文募集中(締切:2018年2月28日)>
http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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