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KIM Yullee “Request for Clearing Up the Deep-Rooted Evils —Korea’s Presidential Election

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SGRAかわらばん674号(2017年5月25日)

【1】エッセイ:金律里「『積弊清算』への要求―今回韓国大統領選挙について―」

【2】レポート紹介:「日中韓の国際開発協力-新たなアジア型モデルの模索-」
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【1】SGRAエッセイ#535

◆金律里「『積弊清算』への要求―今回韓国大統領選挙について―」

2017年5月9日(火)に行われた韓国の大統領選挙で文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選し、韓国第19代大統領となった。

そもそも今回の選挙は、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾で大統領が欠位になったためであった。朴前大統領は、「大統領が全国民に対し『法治と順法の象徴的な存在』であるにもかかわらず、憲法と法律を重大に違反した行為」(憲法裁判所決定文中)をしたゆえに弾劾され、現在拘置所に収監中である。

周知の通り、朴槿恵前大統領は、1963年から1979年まで執権した朴正煕(パク・ジョンヒ)元大統領の娘である。朴正煕は軍事クーデターによって権力を握り、国家主導の強力な経済発展政策を施行したが、彼に対する評価は大きく2つに分かれる。1つは、朴正煕は植民地支配とそれに次ぐ朝鮮戦争の後の貧しい韓国を、高度経済発展へと導き、現在の韓国経済の礎を築いた「偉大な指導者」である、という見方である。こういった見方の極端な例ではあるが、彼の誕生日に生誕祭を行うなど彼を神格化し崇拝する人々も存在する。他方、朴正煕は自分に反対する人々を無残に除去しながら長期執権した独裁者で、現在韓国の政治・経済・社会が抱えている諸問題は、ある程度は朴正煕独裁政権時代の過ちに起因する側面があり、よってその時代を反省して乗り越えるべきである、という見方もある。

朴正煕に対する見解は、韓国の改革派と保守派を区別する基準の1つともされ、政治家としてそれほど実績もなかった朴槿恵氏が特に保守派の圧倒的な支持で大統領となり得たのは、その親の七光りが極めて大きかった。それに加え、数年にわたる韓国経済の低迷によって、韓国経済が量的に大成長した朴正煕時代を懐かしく感じる人が増加し、経済再建を掲げた朴氏の当選に影響を与えた。

しかし、朴氏の在任期間中、韓国国民の生活はより厳しくなった。とりわけ、「3放世代(サンポセデ)」と称される青年達の生活はみじめな状況まで陥ってしまった。3放世代とは、3つをあきらめた世代という意味で、その3つは、恋愛、結婚、出産である。大学生は就職のための勉強で恋愛ができず、また就職しても給料が十分ではないため多額のお金のかかる結婚ができない。結婚はできても、住宅を購入できる十分なお金もなく共働きしなければならず、また育児や子供の教育にもお金がかかるため出産をあきらめる、ということである。この新造語は李明博元大統領の在任時期である2011年頃登場したが、言葉が表す青年たちの状況は悪化する一方であった。2017年の最低時給は6470ウォン(約650円)であるが、平均ランチ代は6500ウォン前後である。つまり、コンビニなどで1時間働いても昼食代さえギリギリなのである。

若者ひいては大多数の国民は、生活難の深刻化のうえに、セウォル号事件やMERS事件で明らかになった国民の生命さえ守れない無能の極まりを見せた朴槿恵政府に幻滅し、崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件が起爆薬になって、大統領の弾劾に至った。

以上のような辛酸をなめてきた韓国国民は、今回の選挙で、もともと朴槿恵を支持しなかった人はもちろん、支持したことを後悔する人々も、「積弊清算」を掲げた文在寅を選択した。文氏の当選は、単なる政権交代にとどまらず、とりわけ朴前大統領の弾劾によって明確になった権威的な大統領、権力に迎合する検察、政官財の癒着などに対する改革の声であり、経済的不平等の緩和、社会的弱者に対する配慮などへの要求である。

<金律里(キム・ユリ)Kim_Yullee>
渥美国際交流財団2015年度奨学生。韓国梨花女子大学を卒業してから来日、2015年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を退学。

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【2】SGRAレポート紹介

SGRAレポート第80号のデジタル版をSGRAホームページに掲載しましたのでご紹介します。下記リンクよりどなたでも無料でダウンロードしていただけます。冊子本は6月中旬にSGRA賛助会員と特別会員の皆様にお送りいたしますが、その他でも送付ご希望の方はSGRA事務局へご連絡ください。

SGRAレポート80号(第16回日韓アジア未来フォーラム講演録)
◆「日中韓の国際開発協力-新たなアジア型モデルの模索-」
  2017年5月16日刊行

SGRAレポート80号(本文)
http://www.aisf.or.jp/sgrareport/Report80light.pdf
SGRAレポート80号(表紙)
http://www.aisf.or.jp/sgrareport/Report80_Cover.pdf

◇フォーラムの趣旨

日本には、経済発展と省エネルギー・環境の両立、防災、高齢化社会対応など課題先進国ならではの技術と知識、それに経験がある。圧縮成長を成し遂げ、さらに経済危機を乗り越えてきた韓国の経験もアジア地域における将来の発展に貴重な手掛かりを提供すると期待されている。近年は中国も、急速に援助量を増加させており、国際世論を意識しながら対外援助をさらに充実させようとしている。今後日中韓は、これらの知的資産を活用しながら、3カ国の切瑳琢磨を通じて、質量ともに開発援助の向上を図るべきであろう。

本フォーラムでは、日中韓が協力し、競争し合いながら、ともに進化し、開発協力の「アジアモデル」とでもいえるようなアーキテクテャを創り上げる可能性も視野に入れながら、議論を展開した。今回は、2016年2月に東京で開催された第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力―共進化アーキテクテャの模索―」、20l6年l0月1日に北九州で開催された第3回アジア未来会議の自主セッション「アジア型開発協力の在り方を探る」における議論を受け、日韓に中国を含めて東アジアの開発援助のあり方を考えた。

◇もくじ

はじめに:金雄煕(仁荷大学国際通商学科教授)

【報告1】李恩民(桜美林大学グローバル・コミュニケーション学群教授)
「中国的ODAの展開:レシピエントの視点」

【報告2】孫赫相(慶熙大学公共大学院院長・韓国国際開発協力研究センター所長)
「開発協力に対するアジア的モデルの可能性の模索:北東アジア供与国間の収れんと分化」

【ミニ報告及び討論1】李鋼哲(北陸大学未来創造学部教授)
「国際開発協力におけるアジアモデル構築に向けて」

【討論2】金泰均(ソウル大学国際大学院教授兼副院長)

【自由討論】上記報告者、渥美財団SGRA及び未来人力研究院の関連研究者

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★☆★SGRAカレンダー
◇第4回アジア未来会議「平和、繁栄、そしてダイナミックな未来」<論文募集中>
(2018年8月24日~8月28日、ソウル市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2018/
論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿を2017年5月1日から受付けます。
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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