SGRAメールマガジン バックナンバー

WANG Huijun “About My Job to Support Foreign Students’ Study of Japanese”

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SGRAかわらばん606号(2016年2月11日)

【1】エッセイ:王慧雋「留学生の日本語学習を支援する仕事」

【2】第15回日韓アジア未来フォーラムへのお誘い(2月13日東京)(最終)
   「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」
   ~当日参加も歓迎です~

【3】催事紹介:第221回JIフォーラム(2月29日東京)渥美財団共催
「紛争、テロ、難民、その本質を考える。
そして、私たち、日本、がするべきこと。出来ることを考える」
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【1】SGRAエッセイ#483

◆王慧雋「留学生の日本語学習を支援する仕事」

気がつけば、大学院の修士課程に進学するために2007年3月に来日してから、もう10年目を迎えようとしている。初めて日本に来たのは2005年の夏で、インターンシップ事業の研修生として、東京で大学3年目の夏休みを過ごした。初めての海外生活で、実に新鮮かつ刺激の多い2ヵ月だった。それは、大学1年生のときから習ってきた日本語を使い、ホームステイ先の家族、研修先の会社の社員、また日本に来てから知り合った友人など、様々な人と話をする楽しさに目覚めた期間でもあった。のちに大学卒業後の仕事を考えはじめた私は、その日本滞在の体験がきっかけとなり、より多くの日本語を学ぶ外国人が自分と同じように、日本語で伝え、相手を理解する楽しさを体験できたらと思うようになった。さらに、そうした人の日本語学習を支援する仕事に携わりたいと思い、日本の大学院で日本語教育を専攻することを決心した。

大学院に進学して以来、研究に専念していたが、昨年の4月に、主に留学生を対象に日本語の授業を実施する大学の日本語教育機関で助手の仕事に就いた。それまでの8年間は、一留学生として勉学を進めてきたが、今度は留学生の日本語学習をサポートする側として教育活動の補佐に携わるのだ。日本語の授業を実施することはないが、身近な立場から、留学生がより良い日本語の学びができるようにお手伝いする。日本語でのコミュニケーションの楽しさを覚え、日本語教育を学ぶという道を選んだ自分にとって、まさに本望というべき仕事だ。初めて日本に来た時のことを思い出すと、日本でこのような仕事に就く機会が得られるとは夢にも思わなかった。

助手の仕事に就いてもうすぐ1年が経つが、特に最初に手伝った日本語科目履修に関する個別相談会のことが印象深くて、ときどき思い出す。その日、相談会の会場に到着したのは、開始時間より少し前だったが、日本語の授業科目をコーディネートし、実際の授業も担当している教員と、それぞれ英語や中国語、韓国語で相談に対応できるボランティアの方々が既に着席しており、準備万端のようだった。開始時間になると、会場の外に留学生の姿が現れはじめた。緊張しているせいか、会場の様子を窺っているだけで、中に入ろうかどうしようかと躊躇している人も少なくなかった。会場の外をうろうろしていて、なかなか中に入ろうとしない留学生たちに声をかけ、会場内へ案内したところ、何人かから不安げな眼差しを向けられた。特に、日本語がまったくしゃべれない人の場合、助けて!という心の声が聞こえそうな眼差しだった。そうした留学生の不安を少しでも和らげようとして、なるべくゆっくり、所属や困っていることなど、話を聞くように心がけた。

誘導と案内の仕事を手伝っているうちに、一つ気づいたことがある。来場者はみな、日本語の授業の履修に関する相談のために来ているはずだが、実際は何を相談すれば良いかが分からないという人もいた。何人かの中国人留学生を、先生とボランティアのところに案内しようとしたところ、「何を聞いたらいいかを考えてから行く」と言われたのだ。自分も留学生なので、緊張しているのは身にしみるほど分かるが、正直なところ、少し驚いた。支援する側としては留学生が困っていることを解決するために設置した個別相談会だが、留学生にとっては、相談というのは必ずしも気軽にできるものとは限らないもののようだ。日本語があまりできないから、不安で躊躇することは普通に考えても分かる。どうやらことばの問題だけではなく、大きな会場で面識のない人と相談することに不慣れなこと、あるいは、相談しようとする意識をこれまで持っていなかったからということもあるかもしれない。

相談のテーブルに向かう前に質問を一生懸命考えている留学生たちの姿を見ていて、彼らの真剣さに感服したと同時に、同じく留学生の身分を持つ自分がこれまで体験したことがないものを味わえたような気がした。自分が留学生として来日したとき、大学で日本語を専攻したというのもあって、意思疎通で特に困ったことはなかった。しかし、今の留学生たちは、日本語ができる人よりも、むしろあまり話せない人のほうが多い。助手の仕事に就いて留学生に接する機会が多いこの1年間、常にそう感じている。しかも、同じ母国語で話す留学生であっても、日本語のレベルだけでなく、来日するまでの経験など、それぞれが抱えている背景も留学の目的も様々で、まさに多様化の時代であることを実感させられる。

一人ひとり異なる留学生の日本語の学びをサポートしていくうえでは、もちろん、自分の経験をそのまま活かせるところもあるが、それだけを頼りにすると、想像すらつかないことも多いだろうと、今はそう思う。悩みや困っていることが似ているとしても、それぞれ持つ背景と目標が違うのであれば、方程式のような問題の解決法はない。まずは、それぞれがこれまでどのような学習をしてきて何を目指しているのか、そして、今、何に不安や躊躇を抱えているのかなどの話を聞くことから始めなければならない。2月が終わったら、また新しい留学生たちを迎える時期となり、留学生向けの支援活動も展開されていく。まだまだ経験が浅いが、一人ひとりの話にきちんと耳を傾ける姿勢を忘れず、頑張っていきたいと思う。

<王慧雋(おう・けいしゅん) WANG_Huijun>
早稲田大学大学院日本語教育研究科博士後期課程在籍。2015年4月より、早稲田大学日本語教育研究センター助手。明治大学理工学部中国語非常勤講師。

【2】第15回日韓アジア未来フォーラム「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」へのお誘い(最終案内)

下記の通り、第15回日韓アジア未来フォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前にSGRA事務局へお名前、ご所属、緊急連絡先、懇親会の出欠をご連絡ください。

第15 回日韓アジア未来フォーラム
◆「これからの日韓の国際開発協力:共進化アーキテクチャの模索」

日時:2016年2月13日(土)午後1時30分~午後4時30分 その後懇親会
会場:東京国際フォーラムガラス棟G-510号室
参加費:フォーラムは無料、懇親会は一般2000円、SGRA会員は1000円。
申込み・問合せ:SGRA事務局 [email protected]

◇フォーラムの趣旨:
日本は、国際開発協力、経済発展と省エネルギーの両立など、多くの分野において先駆的な取り組みや技術を蓄積しており、圧縮成長を成し遂げてきた韓国も、その経験やノウハウを東アジア地域における将来の発展や地域協力の在り方への貴重な手掛かりとして提供している。

本フォーラムでは、政府開発援助(ODA:Official_Developmental_Assistance)分野におけるアジアのフロントランナーとしての日本の特色ある国際協力と韓国の開発経験が、東アジアの持続可能な成長と域内協力にどのように貢献できるか、という問題意識に基づき、日韓の理念(idea)、制度(institution)、国益(interest)の収斂(convergence)と発散(divergence)が織りなすODAの国際政治経済について考えてみたい。また、円卓会議においては、日韓の比較にとどまらず、今後、日韓が協力し合いながら、ともに進化し、ODAの「東アジアモデル」とでもいえるようなアーキテクチャを創り上げる可能性も視野に入れながら議論したい。(日韓同時通訳付き)

◇プログラム:
【講 演 1】「韓国の学者たちがみた日本のODA」
孫赫相(ソン・ヒョクサン:慶熙大学公共大学院教授・韓国国際開発協力学会会長)

【講 演 2】「韓国の開発経験とODA戦略」
深川由起子(ふかがわ・ゆきこ:早稲田大学政治経済学術院教授)

【円卓会議(ミニ報告と自由討論)】
モデレーター:金雄煕(キム・ウンヒ、仁荷大学国際通商部教授)

ミニ報告1:平川均(ひらかわ・ひとし:国士舘大学教授・名古屋大学名誉教授)
「日本のODAを振り返る:韓国のODAを念頭においた日本のODAの概括」

ミニ報告2:Maquito_Ferdinand(マキト・フェルディナンド:テンプル大学講師)
「日本の共有型成長DNAの追跡:開発資金の観点から」

《パネリスト》:上記講演者、報告者及び下記の専門家
園部哲史(そのべ・てつし:政策研究大学院教授)
広田幸紀(ひろた・こうき:JICAチーフエコノミスト)
張ヒョン植(チャン・ヒョンシク:ソウル大学行政大学院招聘教授・前KOICA企画戦略理事)
その他 渥美財団SGRA及び未来人力研究院の関連者

詳細は、下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/asia/2016/5995/

【3】渥美財団共催 第221回JIフォーラムへのお誘い

渥美国際交流財団関口グローバル研究会(SGRA)は(一社)構想日本と下記フォーラムを共催します。SGRA会員のアブディンさんもお話ししますので、奮ってご参加ください。参加ご希望の方は、下記リンクより構想日本へ直接お申込みください。

◆「紛争、テロ、難民、その本質を考える。そして、
     私たち、日本、がするべきこと。出来ることを考える。」

〇ゲスト:
 アブディン・モハメド・オマル(東京外国語大学 特任助教)
 瀬谷ルミ子(NPO法人日本紛争予防センター理事長)  他
モデレーター:加藤秀樹(構想日本代表)

〇日時:2016年2月29日(月) 18:30~20:30(18:00開場)
〇場所:日本財団ビル2階 大会議室
 http://www.nippon-foundation.or.jp/who/about/access/

参加費:一般 2,000円、学生 500円(構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。
※ラクーン会会員には特別割引がありますのでSGRA事務局にもご連絡ください。

親睦会参加費 4,000円(参加希望の方のみ)
※ゲストを囲んで、下記の会場で懇親会を開催いたします。
 「頤和園(いわえん)溜池山王店」 
  港区赤坂1-1-12 TEL 03-3584-4531
※懇親会直前のキャンセルについてはキャンセル料を申し受けます。ご了解くださいますようお願いいたします。

〇参加申込みは下記リンクよりお願いします。
 http://kosonippon.org/forum/index.php

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★☆★SGRAカレンダー
◇第15回日韓アジア未来フォーラム(2016年2月13日東京)
「これからの日韓の国際開発協力」<参加者募集>
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/asia/2016/5995/
◇第9回SGRAカフェ(2016年4月2日東京)
「難民を助ける」<ご予定ください>
◇第6回日台アジア未来フォーラム(2016年5月21日高雄)
「東アジアにおける知の交流―越境・記憶・共生―」<ご予定ください>
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2015/4439/
◇第3回アジア未来会議「環境と共生」<発表要旨・参加者募集中>
(2016年9月29日~10月3日、北九州市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2016/
一般の論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿締め切りは2016年2月28日です。
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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