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Abdin “Questioning the Meaning of Election in Africa”

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SGRAかわらばん594号(2015年11月12日)

(1)エッセイ:アブディン「スーダンの選挙からアフリカでの選挙の意義を問い直す」

(2)第50回SGRAフォームin北九州へのお誘い(11月14日北九州)(最終)
   「青空、水、くらし――環境と女性と未来に向けて」<当日参加も受け付けます!>

(3)第9回SGRAチャイナ・フォーラムへのお誘い(再送)
   「日中200年――文化史からの再検討」(11月20日フフホト、22日北京)
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(1)SGRAエッセイ#473

◆アブディン、モハメド_オマル「2015年スーダン総選挙・大統領選挙からアフリカでの選挙の意義を問い直す」

調査期間:2015年2月4日から3月26日
調査地:スーダン共和国ハルツーム

今回は、2015年4月に実施されたスーダン総選挙、大統領選挙に向けた各勢力の動員戦略に焦点を当てることが調査の大きな目的であった。特に、選挙キャンペーンの状況と各種政党のマニフェスト分析を調査対象の中心とした。選挙キャンペーンが始まる前、2月4日にスーダンへ渡航した。選挙キャンペーンが始まる2月中旬に向けて、毎日の新聞チェック、ラジオ、テレビのニュースや討論番組の視聴が欠かせなかった。さらに、政治家、研究者、ジャーナリストなどへのインタビューも重要な調査活動の一つであった。

しかし、私が調査地であるハルツームに到着すると、主要な野党の選挙ボイコットが確実となってしまっていた。調査する身として、何のために来たのかなと失望を覚えたが、念のためそのまま続けることにした。

まず、スーダン政治に詳しい研究者、ジャーナリスト、および若者への非公式なインタビューを通じて、今回の選挙の意義を問うことができた。しかし、5年前の2010年の選挙と比べて、インタビューの対象者は、匿名での取材を希望したり、慎重に発言したりしていると感じた。それは、政権が選挙キャンペーンに合わせて、締め付けをし始めたからである。

さらに、選挙キャンペーンの観察を通じて、与党の政治動員戦略に関する情報を手に入れることができ、それを分析して、現在論文にまとめる作業をしている。

さて、野党が不在ならば、はたして選挙キャンペーンの分析は意味のあることだろうか。最初はそう思ったが、野党の不在が、逆に現政権にとって思いがけぬ形で負の影を落としたといえる。

◇選挙の正当性

特定の候補者の支持者が車列を作ってクラクションを鳴らしながら、候補者の宣伝をする姿は、過去に実施された複数政党制選挙の特徴だったともいえるが、今回の選挙においては、このような華やかなパフォーマンスが確認できなかった。選挙キャンペーンも、街頭演説もほぼ確認できなかった。

さらに、私が20名程の有権者に対して「投票する?」と聴いたところ、投票に行くという有権者は1名にとどまった。

以上のことから、今回の選挙が正当性を得られなかった原因は二つあると考えられる。一つ目は、2010年4月の選挙に勝利して大統領に再選されたバシール大統領は、2015年の大統領選挙に立候補しないと国民に約束したにも関わらず、2014年10月に、「国民の声に応えるよう、再度立候補する」ことを発表した。そのことが、国民の間でバシールへの信頼性に大きなダメージを与えたと考えられる。

二つ目は、2011年7月の南スーダン独立以後に、石油収入の激減の結果、スーダンの人々の暮らしが逼迫して、政府に対する不満が、若者を選挙ボイコットへと導いたといえる

◇分裂の危機

今回の調査の間、発行される新聞の選挙報道を毎日チェックしていたが、そこで以下のようなことがわかった。

野党の完全ボイコットが、政権党である国民会議党(NCP)内の足並みがそろっていない現実を露呈した。党内の意見の衝突がもっとも明らかになったのが、NCPの州知事の任命を巡るグループ間の意見の不一致である。

そもそも、2005年に制定された暫定憲法において、州知事は直接選挙で州民によって選ばれることになっていたが、NCPの州支部が党本部に推薦する候補者は、必ずしも党本部が予定していた候補者とは一致していなかった。州支部の推薦を受け入れれば、その分地元志向の強い知事が誕生してしまう。党本部の支持に完全には従わないことが党本部にとって懸念材料の一つであった。一方では、党本部が、別の立候補者を公認してしまうと、選挙における州支部のサポートを得られず、NCPの候補者が落選する可能性が高まるので、党本部は厳しい選択肢を迫られていた。

実際に、2010年の選挙以降、NCPの党本部の支持に背く州知事が多くあらわれ、大統領が憲法に反する形で知事を更迭したり、州の再編を行ったりして、党本部の考えに近い人物を、更迭した知事の後に据えるケースが紅海州、ゲジラ州、および、ダルフールの三つの州で見られた。

2015年選挙に先立ち、NCPが大多数派を占める連邦議会が、これまでに選挙で選ばれた知事を大統領任命制に選挙法を変更したことが、NCPの本部と地方との不和を物語っている。

◇選挙の結果

私は3月中に調査を終えて日本に帰ってきたが、4月中旬に実施された選挙は案の定、バシール大統領の94%の支持率による再選と、NCPとともに与党を形成していた小政党の連合の圧勝に終わった。投票率は46%と選挙管理委員会が発表したが、この数字は多くの専門家によって疑問視されている。

◇終わりに

選挙の意義は、国民の真意を問うことであるが、近年アフリカ各地でも見られるように、現職による選挙プロセスの操作、不正、野党政治家への暴力が、選挙本来の意義に大きな疑問を投げかけている。スーダンの選挙キャンペーンを通じて、ここでも、同じ傾向がみられたことを報告する。民意を反映しない選挙は、税金の無駄遣いだけといっても過言ではないが、このような選挙の結果でも、結局、国際社会は容認している。そのことは、現職による選挙操作に拍車をかけている。もう一度、アフリカにおける選挙の意義を問い直す必要が出てきているように思う。今後とも、学術雑誌において、積極的に論文を発表していきたいと思う。

<アブディン モハメド オマル Mohamed Omer Abdin>
1978年、スーダン(ハルツーム)生まれ。2007年、東京外国語大学外国語学部日本課程を卒業。2009年に同大学院の平和構築紛争予防修士プログラムを終了。2014年9月に、同大学の大学院総合国際学研究科博士後期課程を終了し、博士号を取得。2014年10月1日より、東京外国語大学で特任助教を務める。特定非営利活動法人スーダン障碍者教育支援の会副代表。

*本エッセイは、渥美国際交流財団の海外学会参加等奨学金の報告書としてご提出いただいたものですが、執筆者の了解を得てかわらばんで配信します。

(2)第50回SGRAフォーラムin北九州へのお誘い(最終)

下記のとおり、第50回SGRAフォーラムを開催いたします。参加ご希望の方は、SGRA事務局にご連絡ください。当日参加も受け付けます!

◆「青空、水、くらし――環境と女性と未来に向けて――」

日時:2015年11月14日(土)午後1時~5時
会場:北九州市立大学北方キャンパス_本館2階C-202教室
http://www.kitakyu-u.ac.jp/access/kitagata.html

参加費:フォーラム/無料、 
フォーラム終了後の交流会/一般1000円、学生500円を予定

お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご連絡の上、参加申込みをしてください。
SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612)

◇フォーラムの概要:

北九州市は大気汚染や水質汚濁など1950年代、60年代の経済成長に伴ってもたらされた深刻な公害を克服し、今日では国から「環境未来都市」に選定されるなど「世界の環境首都」を目指したまちづくりを行っています。
その礎を築いたのは、当時、子どもの健康を心配した母親たちでした。母親たちは「青空が欲しい」というスローガンを掲げ、「反対運動」や「告発」ではなく、母親たち自らの活動により、企業や行政に改善を求める運動を起こし、それが公害克服と環境再生の原点となったと同時に女性(母親)の社会参加の象徴ともなったのです。
今回のフォーラムは《青空、水、くらし-環境と女性と未来に向けて-》と題して、北九州市のみならず、中国、韓国などの事例をもとに、深刻化する環境問題に直面する女性や母親の意識の変化や社会参加の試みについて議論します。

◇プログラム:

【事例発表】
事例発表1(日本)
「『青空がほしい』運動に学ぶ-現在に問いかけるもの-」
神﨑智子(アジア女性交流・研究フォーラム主席研究員)
事例発表2(中国)
「変わるのか、母親の意識-中国の母親の環境意識の変化と活動-」
斉藤淳子(北京在住フリージャーナリスト)
事例発表3(韓国)
「絶え間ない歩み-韓国YWCAの環境活動と女性の社会参加-」
李ユンスク(韓国YWCA運動局部長)
【オープンフォーラム】
モデレーター:田村慶子(北九州市立大学法学部教授)
神﨑智子(アジア女性交流・研究フォーラム主席研究員)
斉藤淳子(北京在住フリージャーナリスト)
李ユンスク(韓国YWCA運動局部長)
小林直子(特定非営利活動法人_里山を考える会)
【交流会】
希望者のみ(会費:一般1,500円、学生500円を予定)

◇プログラムの詳細は、下記のURLをご覧ください。
http://goo.gl/mYBk0g

(3)第9回SGRAチャイナ・フォーラムへのお誘い

下記の通り、第9回SGRAチャイナ・フォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前登録は不要ですので、直接会場にいらしてください。

◆「日中200年――文化史からの再検討」

【1】フフホトフォーラム
日 時:2015 年11月20日(金)15時~17時
会 場:内蒙古大学蒙古学学院2楼大会議室

【2】北京フォーラム
日 時:2015 年11月22日(日)15時~17時
会 場:北京大学外国語学院新楼501会議室

主 催:渥美国際交流奨学財団関口グローバル研究会(SGRA)
共 催:清華東亜文化講座
助 成:国際交流基金北京日本文化センター
協 力:北京大学日本言語文化学部(北京フォーラム)       
    内蒙古大学蒙古学学院蒙古歴史学部(フフホトフォーラム)

●フォーラムの趣旨:

従来、東アジアの歴史を語る時、ほとんどの識者が古代の交流史と対比して、近代の抗争史を強調し、両者の間に一つの断絶を見出そうとしてきた。たしかに政治、外交だけに目を向ければ、日中、日韓などの間に戦争も含む数多くの対抗や対立が頻発し、ほとんど正常な隣国関係を築くことができなかった。しかし、もしこの間の三国間の文化的交流、往来の足跡を精査すれば、そこには近代以前とは比べられないほど多彩多様な事実、事象が存在していることに気付くだろう。そしてその多くはいずれも西洋という強烈な「他者」を相手に、互いの成果、経験、また教訓を利用しながら、その文化、文明的諸要素の吸収、受容に励む努力の跡にほかならない。その意味で、東アジア、とりわけ日中韓三国はまぎれもなく古来の文化圏と違う形で西洋受容を中心とする一つの近代文化圏を形成していたのである。

また、従来、日本にせよ、中国にせよ、その歩んできた歴史を振り返る際に、往々にして周辺との関係を軽視し、あたかも単独で自らのすべてを作り出したかのような傾向も存在している。これはあきらかに近代以降のいわゆる国民国家という枠組みの中で成立したナショナリズムに由来する一国主義のもたらした影響である。ところが、多くの古代、近代の史実が示したように、純粋な国風文化はそもそも「神話」に過ぎず、われわれはつねに他者との関係の中で「自分」そして「自分」の文化を形作ってきたのである。近代日本にとって、この他者は、むろんまず西洋という存在になるが、ともにその受容の道程を歩んだもう一つの他者――中国や韓国も当然無視すべきではないだろう。

そして、昨今、とりわけ日中の間にさまざまな摩擦が生じる時に、よく両国の「文化」の違いが強調され、その文化の差異に相互の「不理解」の原因を探ろうとする動向も見られる。しかし、これもきわめて単純な思考と言わざるを得ない。文化にはたしかに変わらない一部の古層があるが、つねに歴史性を持ち、時代に応じて流動的に変化する側面も存在する。したがって共通する大事な歴史的体験を無視し、文化の差異ばかりを強調するのはいささかも生産的ではなく、結局は自らを袋小路に追い込むことにしかならない。

以上に鑑み、本フォーラムでは、いわば在来の一国主義史観、文化相互不理解論などの弊害を修正し、過去の近代東アジア文化圏、文化共同体の存在を振り返りながら、その経験と教訓を未来にむけていかに生かすべきかについて検討し、皆さんとともにその可能性を探ってみたい。

(参考文献:劉建輝著『増補・魔都上海――日本知識人の「近代」体験』2010年、同『日中二百年――支え合う近代』2012年)

●プログラム

【1】 フフホトフォーラム(講演)
総合司会:宝音德力根(内蒙古大学蒙古学学院蒙古歴史学部)
講 演:劉 建輝(国際日本文化研究センター)
討論者:王 中忱(清華大学中国文学科)
    周 太平(内蒙古大学蒙古学学院蒙古歴史学部)
    蘇德華力格(内蒙古大学蒙古学学院蒙古歴史学部)

【2】 北京フォーラム(パネルディスカッション) *日中同時通訳付き
総合司会:孫 建軍(北京大学日本言語文化学部)
問題提起:劉 建輝(国際日本文化研究センター)
モデレーター:王 中忱(清華大学中国文学科)
討 論 者:王 京(北京大学日本言語文化学部)
     劉 暁峰(清華大学歴史学科)
     王 成(清華大学日本言語文学研究科)

日本語プログラム http://goo.gl/Y1gESy
中国語プログラム http://goo.gl/BxGuv2
ポスター http://goo.gl/JHLYlK

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★☆★SGRAカレンダー
◇第50回SGRAフォーラム<参加者募集中>
「青空、水、くらし-環境と女性と未来に向けて」
(2015年11月14日北九州市)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2015/4961/
◇第9回SGRAチャイナ・フォーラム<参加者募集中>
「日中200年―文化史からの再検討」
(2015年11月20日フフホト、22日北京)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2015/5098/
◇第15回日韓アジア未来フォーラム(2016年2月13日東京)
「これからの日韓の国際協力-ODAを中心に」<ご予定ください>
◇第6回日台アジア未来フォーラム(2016年5月21日高雄)
「東アジアにおける知の交流―越境・記憶・共生―」
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2015/4439/
発表論文の投稿は締め切りました。

◇第3回アジア未来会議「環境と共生」<発表要旨募集中>
(2016年9月29日~10月3日、北九州市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2016/
一般の論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿締め切りは2016年2月28日です。
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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〒112-0014
東京都文京区関口3-5-8
渥美国際交流財団事務局内
電話:03-3943-7612
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