SGRAメールマガジン バックナンバー

Xie Zhihai “Speediness in USA”

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SGRAかわらばん593号(2015年11月5日)

(1)エッセイ:謝志海「アメリカに見るスピード感――同性婚の容認」

(2)新刊紹介:リンチン「現代中国の民族政策と民族問題:辺境としての内モンゴル」

(3)第50回SGRAフォームin北九州へのお誘い(11月14日北九州)(再送)
   「青空、水、くらし――環境と女性と未来に向けて」
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(1)SGRAエッセイ#473

◆謝志海「アメリカに見るスピード感―同性婚の容認」

アメリカ連邦最高裁判所は2015年6月に同性間による結婚を認めた。すなわち同性婚は全米50州と首都ワシントンで合法となった。この判決は、アメリカだけでなく、世界中で大きな反響を呼び、ソーシャルネットワーク(SNS)上ではLGBT(性的少数者)の象徴である虹色を自身のプロフィール写真にスクリーンカラーとしてのせる人がたくさん現れた。ホワイトハウスが虹色にライトアップされた写真も同性婚容認のニュースと共に世界中に配信された。この写真を見て、私は米国民と政府の距離に親しみを感じた。法の改正をホワイトハウスそのもので表わす。国民にとってとても伝わりやすい。このような光景を日本や中国で見られる日はいつ来るだろう。アメリカの多様性の受け皿の大きさを痛感する。アメリカという国を少しうらやましく思う。そしてこの判決は単に同性婚が認められたという一つの事実以上にたくさんの事を教えてくれる。

まず始めに、この同性婚容認で一番感心したのは、アメリカ政府が世論の急速な変化に対応したというスピード感だ。2004年にマサチューセッツ州で初めて同性婚が認められたが、保守的な州では根強く同性婚禁止が制定されていて、後が続かなかったイメージだったのに。単にオバマ大統領が同性婚の支持を表明したからというだけではない。何かもっと大きな目に見えないものに動かされた判決のような気がする。先述の通り世論の変化だ。

アメリカではドラマの中でLGBT役の人物がよく登場する。大抵はそのドラマを面白くするキーパーソンとして、まるで自分の周りにもこういう友達がいればいいなと思わせるキャラクターが多い。主役でも悪者役でもなく、物語に自然に溶け込んでいる。ドラマの中ではLGBTが「普通」に存在している。日本や中国のドラマを観ていても遭遇しない登場人物達だ。また実生活でも俳優に限らず有名人がLGBTであることをカミングアウトしている。勇気ある行動だと思う。このようにアメリカでは法で認められるよりずっと前からLGBTの存在が大きくなってきている。政府がその「普通」な存在を見逃さなかったことは、LGBTの人に限らず、アメリカ国民にとって大きな意味があるのではないだろうか。

もちろんアメリカが同性婚容認に傾いたのはメディアや有名人のカミングアウトだけでない。アメリカの大企業が同性愛者をはじめ人種差別などの社会問題に関わりはじめたことが大きい。今年3月の最高裁に提出した意見書には379の企業・団体が名を連ね、国際的有名企業も含まれている。同性婚容認は、大手企業の(社会問題に関わろうという)姿勢の変化が政府にちゃんと届くのだ、ということを証明したとも言えるのではないだろうか。もちろん、企業はあらゆる層の顧客を獲得しなければならないし、政治家は票が欲しいから同性愛者を支持するまでだという見方もできる。一理はあるだろうが、企業が世の中の変化に対応して、社会問題を経営のテーマに取り込むことは、利益ばかり追うだけよりもずっとよいことではないだろうか。

経済学や政治学というサブジェクトにとどまらず、それらに同性愛者、人種差別、男女の賃金格差等の社会問題が含まれることは、広い視野で物事をとらえるチャンスであり、今の時代には必要なことだろう。日本版ニューズウィークの2015年7月14号によると、実際のところ、アップルやウォルマート(米国小売最大手)のような大企業はできるだけ多様な人材を雇い、消費者の変化に対応しようとしているそうだ。大手企業が始めると世の中のトレンドになってゆくので影響は大きい。従業員を雇う際、人種どころか同性愛者を差別していては優秀な人材を見逃すかもしれない。その優秀な人材がオープンな社風の他社に採用されてしまったら?世の中の変化に敏感になっておくことは経営のリスクを避けることができるのだ。同性婚支持の意見書に署名した企業の一つであるゼネラル・エレクトリック(GE)のCEOジェフ・イメルト氏は(LGBTについて)「ビジネスの観点で言えば、ダイバーシティは競争力であり、文化そのもの」と言う(日経ビジネス_2015年8月24日号より)。

もう一つ、アメリカらしいエピソードとして、政治家と国民の距離が近いと感じた瞬間を紹介したい。日本経済新聞2015年8月4日の記事「同性婚容認_米の変化」の中に、同性愛を公言する人が増えたことも世論に大きな影響を与えたとして、例を挙げている。同性婚禁止派のブッシュ政権時代のチェイニー元副大統領は、次女が12年に女性パートナーと結婚し、容認派に変わった。オバマ氏が同性婚支持を表明した理由も、娘からの抗議がきっかけ。娘の友人の両親が同性カップルで、「(同性婚禁止は)納得できない」と娘に言われたのだという。このような政治家、ましてや現職の大統領の私生活からのエピソードがアメリカ国民どころか、海を越えて日本の新聞にまで掲載されるとは。日本や中国の国民にとっては、首相や国家主席のプライベートな部分は知る由もないのだが。

世論の変化のスピードに国が追いつき、国を変える。日本や中国では国民の声が政治家に届くと国民が実感できるのはいつになるだろう。大国ゆえ解決すべき問題が山積みのアメリカ。同性婚が全州で合法にはなったものの、アメリカは州や裁判所の管轄区によって政令が違うので、LGBTに対する結婚以外の差別、例えば住居、雇用については完全に平等とはまだ言えない。引き続き、州や地方レベルで平等への戦いは続く。同性婚容認の流れに乗って、引き続き市民の声を吸い上げて欲しい。そしてそのムーブメントが今後アジアに影響を与えるようになるといい。

<謝志海(しゃ・しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。

(2)新刊紹介

SGRA会員で内モンゴル大学准教授のリンチンさんから新刊書をご寄贈いただきましたのでご紹介します。

◆リンチン(仁欽)「現代中国の民族政策と民族問題:辺境としての内モンゴル」

1950、60年代の内モンゴルは果たして「民族自治の黄金時代」だったのか?
放牧地開墾や漢人入植の実態と影響、末端地域における政治や言語政策、それに土地改革、反右派闘争、大躍進、文化大革命などの分析を通じて、中国でいち早く民族政策が実施された内モンゴル社会の変化を明らかにする。

発行所:集広舎
定価:5,500円+税
ISBN:978-4-904213-339 C0093
発行日:2015年10月28日

【目次】
序論
第1部 1950 年代の社会改革期における諸問題
 第1章 綏遠省蒙旗土地改革における問題
 第2章 牧畜業の社会主義的改造の再検討
 第3章 牧畜業地域における人民公社化政策の分析
 第4章 1950年代のモンゴル言語・文字使用の実態
第2部 経済的統合の拡大と漢地化の加速
 第5章 「大躍進」期における放牧地開墾と人口の問題 運動の展開
 第6章 国営農牧場・生産建設兵団の建設と漢地化の推進
第3部 政治運動の推進とイデオロギー的統合の強化
 第7章 反右派闘争におけるモンゴル人「民族右派分子」批判
 第8章 「四清運動」における民族問題
 第9章 知識青年下放運動の検討
結論

詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.shukousha.com/information/publishing/4307/

(3)第50回SGRAフォーラムin北九州へのお誘い(再送)

下記のとおり、第50回SGRAフォーラムを開催いたします。
参加ご希望の方は、SGRA事務局にご連絡ください。

◆「青空、水、くらし――環境と女性と未来に向けて――」

日時:2015年11月14日(土)午後1時~5時
会場:北九州市立大学北方キャンパス_本館2階C-202教室
http://www.kitakyu-u.ac.jp/access/kitagata.html

参加費:フォーラム/無料 
フォーラム終了後の交流会/一般1000円、学生500円を予定

お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局宛に事前にお名前、ご所属、連絡先をご連絡の上、参加申込みをしてください。
SGRA事務局(sgra-office@aisf.or.jp Tel: 03-3943-7612)

◇フォーラムの概要:

北九州市は大気汚染や水質汚濁など1950年代、60年代の経済成長に伴ってもたらされた深刻な公害を克服し、今日では国から「環境未来都市」に選定されるなど「世界の環境首都」を目指したまちづくりを行っています。
その礎を築いたのは、当時、子どもの健康を心配した母親たちでした。母親たちは「青空が欲しい」というスローガンを掲げ、「反対運動」や「告発」ではなく、母親たち自らの活動により、企業や行政に改善を求める運動を起こし、それが公害克服と環境再生の原点となったと同時に女性(母親)の社会参加の象徴ともなったのです。
今回のフォーラムは《青空、水、くらし-環境と女性と未来に向けて-》と題して、北九州市のみならず、中国、韓国などの事例をもとに、深刻化する環境問題に直面する女性や母親の意識の変化や社会参加の試みについて議論します。

◇プログラム:

【事例発表】
事例発表1(日本)
「『青空がほしい』運動に学ぶ-現在に問いかけるもの-」
神﨑智子(アジア女性交流・研究フォーラム主席研究員)
事例発表2(中国)
「変わるのか、母親の意識-中国の母親の環境意識の変化と活動-」
斉藤淳子(北京在住フリージャーナリスト)
事例発表3(韓国)
「絶え間ない歩み-韓国YWCAの環境活動と女性の社会参加-」
李ユンスク(韓国YWCA運動局部長)
【オープンフォーラム】
モデレーター:田村慶子(北九州市立大学法学部教授)
神﨑智子(アジア女性交流・研究フォーラム主席研究員)
斉藤淳子(北京在住フリージャーナリスト)
李ユンスク(韓国YWCA運動局部長)
小林直子(特定非営利活動法人_里山を考える会)
【交流会】
希望者のみ(会費:一般1,500円、学生500円を予定)

◇プログラムの詳細は、下記のURLをご覧ください。
http://goo.gl/mYBk0g

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★☆★SGRAカレンダー
◇第50回SGRAフォーラム<参加者募集中>
「青空、水、くらし-環境と女性と未来に向けて」
(2015年11月14日北九州市)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2015/4961/
◇第9回SGRAチャイナ・フォーラム<参加者募集中>
「日中200年―文化史からの再検討」
(2015年11月20日フフホト、22日北京)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2015/5098/
◇第15回日韓アジア未来フォーラム(2016年2月13日東京)
「これからの日韓の国際協力-ODAを中心に」<ご予定ください>
◇第6回日台アジア未来フォーラム(2016年5月21日高雄)
「東アジアにおける知の交流―越境・記憶・共生―」
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2015/4439/
発表論文の投稿は締め切りました。

◇第3回アジア未来会議「環境と共生」<発表要旨募集中>
(2016年9月29日~10月3日、北九州市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2016/
一般の論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿締め切りは2016年2月28日です。
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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