SGRAメールマガジン バックナンバー

Xie Zhihai “The Adults’ Role in the Relationship between Children and Smartphones”

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SGRAかわらばん589号(2015年10月8日)

(1)エッセイ:謝志海「子どもとスマートフォンの関係性における大人の役割」

(2)情報提供:帰国外国人留学生短期研究制度・研究指導事業(JASSO)

(3)第8回SGRAカフェへのお誘い(10月24日東京)
   「女子大は、要る?~『女』、『男』と大学について考えよう~」
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(1)SGRAエッセイ#470

◆謝志海「子どもとスマートフォンの関係性における大人の役割」

最近の子どもに関する事件は、彼らが所持するスマートフォンが密接に関わっている。夏休み後半には、愛媛県で同級生に暴行を繰り返し、その画像をLINEで拡散した中学生が逮捕されるという事件があった。似たような事件が日々報道されているが、なかなか改善策が見出せずにいる。それは、スマートフォンと共に成長した子どもが大人になった状態を、我々がまだ見ていないからではないか。急速に変化する子どもたちのネット環境により、ネット上でのいじめや、被害者にも加害者にもなりうる犯罪が起きてしまうようになった。

おそらく小中学校の教育現場では最重要課題の一つであろう。しかし、どれだけ学校で先生が注意喚起しても、生徒たちのLINEのネット上でのコミュニティには入れない。また親が子どもに与えるスマートフォンにフィルタリング機能を搭載したとしても、写真や動画のアップロードは防げない。ひとたび画像や動画がネット上にあがって拡散されてしまったら、学校や親はおろか警察さえ完全に削除することはできないだろう。教育現場ではどのように対処しているのだろう。

所変わって、私の出身地である中国でも状況は同じで、子どもとスマートフォンの関係については社会問題になっている。スマートフォンを使ったLINEと同じようなアプリ、「微信」(WeChat)で友達同士いつもつながっていないと気が済まないネット依存症の若者が多い。もちろん大人も便利に使っている。フェイスブック、ツイッターが使えない国だが「微博」(Weibo)なるツイッターと極めて似た機能を持つミニブログ、前出の微信、チャットの「QQ」、ネット上で人とつながり、意見を交換する場はいくらでもある。こうなると中国も世界に負けないネット依存大国だ。そして子どもとスマートフォンの関係性だが、日本と同様、国が定めた法令はないが、各学校が、授業中はスマートフォンを先生に預ける等の対応をとっている。こちらも各学校や、教育機関の手腕が問われるところだ。

日本ではLINE上での仲間外れなど、LINEばかりが目立っているが、LINEに追いつけ追い越せで、次々と新しいアプリが開発されている。最近の学生の間での流行りはスマートフォンで撮った動画をアプリで編集し投稿することだそうだ。インターネットのスピードが早くなり、Wi-Fiへのアクセスが増えたことで、動画は(ファイルのサイズが)重いという問題が払拭された。

先日、青少年育成団体に所属する方々と話す機会があったが、スマートフォンの使用で懸念しているのは、LINEだけではなく、芸能人を起用して派手にテレビコマーシャルを打つオンラインゲーム。これは父兄の方までハマっていることもあり、子どもとゲームを引き離すことが難しく、とても困っているようだ。また、最近トラブルが多いのは、不用品を売る専門のアプリで、18歳以下は使えないなどの制限がかかっていないものがあることが問題だそうだ。すなわち、18歳以下の子どもがアプリを操作し物が売れたら、お金を手にすることが可能になってしまう。次々と開発され便利で楽しい機能満載のアプリ、我々大人の方がついていくのに精一杯で、子どもへどのくらい悪影響を及ぼすのかまで想定しきれていないのが現実かもしれない。

このまま放っておくわけにはいかない子どもとインターネットの関係性。まずは親が現状を知り、家での利用時間の制限などモラル作りをしてあげ、子ども自身が上手にスマートフォンと付き合えるようになるのが理想だろう。

学校側は、父兄へのお願いとして大人のスマートフォン利用、すなわち自身のスマートフォンとの関係をも省みて欲しいとお願いしているそうだ。これは我々にとっても耳の痛い話である。ただ我々はスマートフォンが無かった時代も良く知っているが、今の子どもはそうではないことが問題だ。ネット上での何気ないやりとりが人を傷つける凶器になったり、事件に巻き込まれるなどの恐ろしいものになり得ることを良く理解させ、子どもたちが自分の身は自分で守れるように導いてあげないといけない。

<謝志海(しゃ・しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されている。

(2)情報提供

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)より下記の案内がありましたのでご紹介します。

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(1)(12/10締切・必着)「平成28年度帰国外国人留学生短期研究制度」募集開始
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日本での留学を終え、現在、自国において教育、学術研究又は行政の分野で活躍している元留学生に、日本の大学で短期研究を行う機会を提供する制度です。

■元留学生を招へいしたいと考えておられる先生及び日本で学んだ元留学生の皆さんにご案内ください。

【支援内容】
外国人研究者:往復渡航旅費、滞在費 (日額11,000円)
受入研究者:受入協力費(定額50,000円)

【募集要項】※募集を開始しております。
詳細はこちらをご覧ください。
http://www.jasso.go.jp/exchange/tanken.html

○帰国外国人留学生短期研究制度を活用した研究者の声○
http://www.jasso.go.jp/exchange/tanken_r_h26.html

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(2)(12/10締切・必着)「平成28年度帰国外国人留学生研究指導事業」募集開始
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日本の大学の教員を現地に派遣し、日本留学を終えて自国の大学等で教育、研究活動を行う元留学生の研究を指導する場を提供する制度です。

■元留学生を訪問したいと考えておられる先生及び日本で学んだ元留学生の皆さんにご案内ください。

【支援内容】
往復渡航旅費
滞在費(現地滞在日額16,000円)
研究指導経費(上限100,000円)

【募集要項】※募集を開始しております。
詳細はこちらをご覧ください。
http://www.jasso.go.jp/exchange/shidou.html

○帰国外国人留学生研究指導事業を活用した研究者の声○
http://www.jasso.go.jp/exchange/shidou_r_h26.html

(3)第8回SGRAカフェへのお誘い

SGRAでは、良き地球市民の実現をめざす(首都圏在住の)みなさんに気軽にお集まりいただき、講師のお話を伺う<場>として、SGRAカフェを開催しています。今回は、「性別やジェンダー(『女』『男』であること等)について、考えるきっかけをつくる」ことをめざし、シンガポール出身のシム_チュンキャットさん、ノルウェー出身のデール_ソンヤさんのお二人を中心とした座談会を開催します。
準備の都合がありますので、参加ご希望の方は、事前に、SGRA事務局へお名前、ご所属、連絡用メールアドレスをご連絡ください。

◆「女子大は、要る?~『女』、『男』と大学について考えよう~」

日時:2015年10月24日(土)14時~17時
会場:渥美国際交流財団ホール
会費:無料
お問い合わせ・参加申込み:SGRA事務局  [email protected]

講師からのメッセージ:

日本には、女子大学というものがまだ存在しています。男女平等という話題が盛り上がっている現在において、女性しか通えない大学は要らないと思っている人は多いかもしれません。男子大学はないし、男女平等の社会だったら、性別に関わらず誰でもどのスペースでも利用できるはずでしょう。

このカフェは、性別やジェンダー(「女」「男」であること等)について、考えるきっかけにしていただけたらと思います。大学というテーマを中心に、「女」である、または「男」であることと、その社会的な妥当性について考えましょう。

女子大や、大学でジェンダーの勉強することについての発表の後、このテーマについて話し合う場をつくりたいと思っています。このカフェは講演会ではなく、ディスカッションのためのカフェです。皆さんの積極的な参加をお待ちしています!

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<シム_チュンキャット Sim_ChoonKiat 沈俊傑>
シンガポール教育省・技術教育局の政策企画官などを経て、2008年東京大学教育学研究科博士課程修了、博士号(教育学)を取得。昭和女子大学人間社会学部・現代教養学科准教授。SGRA研究員。

<デール、ソンヤ Sonja_Dale>
2014年上智大学グローバル・スタディーズ研究科博士課号取得。東海大学他非常勤講師。ウォリック大学哲学部学士、オーフス大学ヨーロッパ・スタディーズ修士。2012年度渥美奨学生。

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★☆★SGRAカレンダー
◇第8回SGRAカフェ<参加者募集中>
「女子大は、要る?~『女』、『男』と大学について考えよう~」
(2015年10月24日東京)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2015/4990/
◇第50回SGRAフォーラム<参加者募集中>
「青空、水、くらし-環境と女性と未来に向けて」
(2015年11月14日北九州市)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2015/4961/
◇第9回SGRAチャイナフォーラム<ご予定ください>
「日中200年―文化史からの再検討」
(2015年11月20日フフホト、22日北京)
◇第6回日台アジア未来フォーラム(2016年5月21日高雄)
「東アジアにおける知の交流―越境・記憶・共生―」
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2015/4439/
発表論文の投稿は締め切りました。

◇第3回アジア未来会議「環境と共生」<発表要旨募集中>
(2016年9月29日~10月3日、北九州市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2016/
一般の論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿締め切りは2016年2月28日です。
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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