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SGRA Forum #49 ”Charting New Paradigm of Japan Studies” Report

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SGRAかわらばん585号(2015年9月10日)

(1)SGRAフォーラム「日本研究の新しいパラダイムを求めて」報告

(2)新刊紹介:鄭_淳一「九世紀の来航新羅人と日本列島」

(3)J.I.フォーラム「戦後70年_歴史記憶と歴史認識を考える」案内(再送)
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(1)第49回SGRAフォーラム「日本研究の新しいパラダイムを求めて」報告

2015年7月18日(土)、第49回SGRAフォーラム「日本研究の新しいパラダイムを求めて」が、早稲田大学大隈会館で開催された。フォーラムでは、中国、韓国、台湾を代表する日本研究機関と日本研究の第一線で活躍する研究者20名が一堂に会して、新しい日本研究のあり方についての活発な議論が交わされた。今回のフォーラムはセミ・オープン形式であったにも関わらず、予想を上回る延べ100人の参加者があった。

冒頭に今西淳子_渥美国際交流財団常務理事・SGRA代表から、過去2回のアジア未来会議で開催した「日本研究円卓会議」において日本研究の現状を危惧し、その将来を憂慮する声が多数挙がったことをきっかけに、中国、韓国、台湾の代表的な日本研究所と日本の国際交流基金、国際日本文化研究センターに声をかけたこと、そして、このように各研究機関の所長や副所長を始め、第一線の研究者の皆さんが参加してくださったことに主催者としても驚き、改めてこのテーマの重要性を再認識している、との開会挨拶があり、フォーラムがスタートした。

【基調講演】

平野健一郎先生(早稲田大学名誉教授、東洋文庫理事)は「新しい、アジアの日本研究に求めるもの」と題する基調講演の中で下記の2点を強調した。

(1)今回のフォーラムが目指す、国境を超える「知の公共空間」を構想するにあたっては、文化の相互依存性、共通性(普遍性)を視野に入れて、個別理解から国際間の経験・文化の相関関係により織りなされる現象として理解する「相互関係理解」へ、更には日本研究を地域、アジア、グローバルという重層構造の中に位置づけて理解しようとする「重層的理解」へと進まなければならない。

(2)これからの日本研究のテーマとして、平和と安全保障の問題を付け加えたい。戦後日本の経験を平和の問題として取り上げることは、誤った歴史の反省というだけでなく、各国にとっても重要な示唆を与えるものであろう。平和は、意思の力で築き上げて行くものである。日本研究者のみならずアジアの研究者は知的共同体を形成して行くことにより、東アジア共同体の構築、即ち平和の構築に参画することができる。

正に、「新しいアジアの日本研究」の方向性を示唆する内容であった。

【報告】

基調講演に引き続き、中国(楊伯江_中国社会科学院日本研究所副所長)、台湾(徐興慶_台湾大学日本研究センター所長)、韓国(朴喆煕_ソウル大学日本研究所長)から各国の日本研究の現状と将来に関する報告があり、日本(茶野純一_国際交流基金日本研究・知的交流部長)からは日本研究支援の現状と展望についての報告があった。

【円卓会議】

午後からの円卓会議では講演者とパネリスト計20名と会場の若手研究者を交えた、オープンディスカッションが3時間にわたって行われた。

劉_傑先生(早稲田大学社会科学総合学術院教授)による総括は以下のとおりである。

(1)文化現象として日本への関心が高まり、これまでの伝統的な枠組みでの日本研究とは異なる次元、異なる領域、異なる人脈での日本研究が広がってきている。しかし、こうした関心の広がりと「日本研究の深化」とは直接に結びつくものではない。これを、どのようにアジアで共有できる日本研究に結び付けるかは、今後の「新しい日本研究」構築にあたっての課題であろう。

(2)今、この地域にとって「方法としての日本研究」が特別に重要な時期である。日本研究のあり方は、この地域の国や人々のあり方を映し出す鏡のような意味を持つものであり、自己認識の方法とも言える。このフォーラムを通じて「方法としての日本研究」の重要性を確認することができた。

(3)「方法としての日本研究」が東アジアの和解、即ち平和に繋がることは間違いない。和解を安定化させるための重要なツールが「知」である。日本研究を一つの方法として用いることにより、知の共同空間、知の共同体が生まれ、この地域の和解、即ち平和と安定に寄与する可能性を垣間見ることができる。

(4)少なくとも、今回のフォーラムでは「アジアで共有できる日本研究」、「アジアの公共知としての日本研究」の構築を目指すというコンセンサスが得られた。

今回形成されたネットワークをどのように生かして行くか、の議論の中で朴喆煕_ソウル大学日本研究所所長から「東アジア日本研究者協議会」開催の提案があり、具体的な作業をどのように進めるのかを議論するための環境を整備し、対外的にも発信して行くこととなった。

フォーラム終了後、渥美財団ホールで渥美奨学生、ラクーン(元奨学生)を交えた懇親会が開催され、若手研究者と講師、パネリストの交流と議論が夜遅くまで続いた。

東アジアの日本研究の第一線で活躍する講師、パネリスト20名を招いての駆け足のフォーラムであったが、円卓会議のモデレーターである南基正教授(ソウル大学日本研究所研究部長/SGRA会員)の見事な司会により、短時間であっても極めて実り多いフォーラムとなった。

ご参加いただいた講師、パネリストの先生方に心から感謝すると共に、このSGRAフォーラムを契機にして形成されたネットワークの今後の飛躍に期待したい。

(文責:角田英一_渥美国際交流財団事務局長)

当日のアンケートの集計結果は下記リンクからご覧いただけます。
http://goo.gl/M602Wc

当日の写真は下記リンクからご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/?p=4952

(2)新刊紹介

SGRA会員の鄭_淳一さんよりご著書をご寄贈いただきましたので紹介します。

◆鄭_淳一「九世紀の来航新羅人と日本列島」

九世紀おける来航新羅人に焦点を当て、朝鮮半島と日本との交流の実態を明らかにする。
国家間の外交交渉が途絶え、商人の交流が活発化していくこの時期に顕著となった不特定多数の新羅人の来航現象が、列島社会をどう変化させていったのか、あるいはそういった変化に対して日本側はどう対応したのか。対新羅政策における対外意識の変化を支配層(国家)のみならず、諸階層の人々から考察。
また、中心と周縁・境界意識といった概念に対する問題提起を行うとともに、排外思想・危機意識・警戒心等に代表される対外認識に関する新解釈を提示する。

出版社:勉誠出版
ISBN:978-4-585-22115-9_CコードC3022
刊行年月:2015年3月
判型・製本:A5判・上製 392 頁
キーワード:交流史, 古代, 平安, 日本史, 東アジア

目次、詳細は下記リンクからご覧ください。
http://goo.gl/Gfp20s

(3)催事案内(再送)

渥美財団評議員の加藤秀樹さんが主宰する構想日本と下記フォーラムを共催しますのでご案内します。SGRA設立当初よりご協力いただいている2名の先生方のお話を伺います。参加ご希望の方は、構想日本事務局に直接ご連絡ください。

◆第216回J.I.フォーラム「戦後70年歴史記憶と歴史認識を考える」

7月に続き、戦後70年シリーズの第2弾として、公益財団法人渥美国際交流財団との共催で、中国と韓国の近現代史がご専門の劉傑さん、木宮正史さんに、歴史の大きい流れやその解釈における基本的な考え方の違いなどを話して頂き、日本人がいずれにしてもずっとつきあっていかないといけない中、韓両国との相互理解を進めるための材料を提供していただきます。

日 時:平成27年9月28日(月)18:30~20:30(開場18:00)

会 場:アルカディア市ヶ谷6F「伊吹」
http://www.arcadia-jp.org/access.htm

ゲスト:木宮正史(東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部教授)
    劉_傑(LIU_JIE)(早稲田大学社会科学総合学術院教授) 

コーディネーター:加藤秀樹(構想日本代表)

主催:構想日本、共催:(公財)渥美国際交流財団

参加費:一般_2,000円/学生_500円(構想日本会員は無料です)
※学生の方は受付にて学生証をご提示ください。

懇親会参加費:4,000円(ご希望の方は懇親会参加とお申込み時に明記して下さい)
※ゲストを囲んで、懇親会を開催いたします。
 
※フォーラムへの参加申し込みは下記リンクから、8月28日(月)12:00までにお願いします。
http://www.kosonippon.org/forum/index.php
お問い合わせ:[email protected]
 
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★☆★SGRAカレンダー
◇第4回SGRAスタディツアーin福島
「飯館村:帰還に向けて」(2015年10月2日~4日福島)
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/2015/4363/
◇第8回SGRAカフェ<ご予定ください>
「ジェンダーについて考える必要性(仮)」
(2015年10月24日東京)
◇第50回SGRAフォーラム<ご予定ください>
「青空、水、くらし-環境と女性と未来に向けて」
(2015年11月14日北九州市)
◇第9回SGRAチャイナフォーラム<ご予定ください>
「日中200年―文化史からの再検討」
(2015年11月20日フフホト、22日北京)
★☆★論文(要旨)募集中
◇第6回日台アジア未来フォーラム(2016年5月21日高雄)
「東アジアにおける知の交流―越境・記憶・共生―」
http://www.aisf.or.jp/sgra/combination/taiwan/2015/4439/
投稿締め切りは2015年9月20日です。
◇第3回アジア未来会議「環境と共生」
(2016年9月29日~10月3日、北九州市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2016/
一般の論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿締め切りは2016年2月28日です。
☆アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来について語る<場>を提供します。

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