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[SGRA_Kawaraban] Tamayo Ruiz “Footprint and Our Responsibility”

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SGRAかわらばん568号(2015年5月21日)

【1】エッセイ:タマヨ「フットプリントと私達の責任」

【2】新刊紹介:法政大学国際日本学研究所編
  「百年後の検証・中国人の日本留学およびその日本観」
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【1】SGRAエッセイ#460

■タマヨ・ルイス エフライン・エドアルド「フットプリントと私達の責任」

フットプリント(「あしあと」、狭義には環境負荷、広義には影響を与える範囲)と
いう言葉は、しばしば、環境、特に産業や交通などから排出される温室効果ガスに使
われます。私はこのフットプリントという言葉を、もう少し広い意味でとらえ、それ
に伴う責任について考えてみたいと思います。毎日の生活のフットプリントとは、一
日の活動を通した人や環境とのかかわり合いのすべてを合わせたものです。言い換え
れば、私達が生きていく上で必要としたもの、及び排出したもの全ての合算です。例
えばエネルギー消費をインプット、その生産時に排出された二酸化炭素をアウトプッ
ト、消費する食糧をインプット、その食糧生産に伴う環境負荷をアウトプット、消費
するものをインプット、それに必要な素材とエネルギーをアウトプット、さらには、
学ぶことをインプット、活動することをアウトプット、などです。

各人のフットプリントの全体にはプラスとマイナス両面の効果があり、結果として環
境や社会を改善したり、負荷をかけたりします。ですから、私達はフットプリントに
対する責任を持つべきなのです。フットプリントを意識し、私達の決断がいかなる効
果をもたらすかを知ることによって、フットプリントを管理することが出来ます。誰
もが自分自身のフットプリントの全体と、それに対する責任について考え、それを管
理する方法について教育を受ける必要があると思います。

世界の人口は、過去300年で約10倍となり、2013年には70億人に達し、2050年には90
億人になるといわれています。人口の増加に伴い産業活動も増加し、資源の消費とと
もに廃棄物の発生も増えています。もし70億人が、現在の世界人口の10%に満たない
先進国と同じように資源を消費し、廃棄物を発生させたならば、地球は持ちこたえる
ことはできません。しかし、残り90%の国々は発展するに従い、先進国と同じような
道をたどっているのです。

私は、地球の天然資源や海の生き物を涸渇させないために、又、持続可能性を脅かす
ようなあらゆる種類の廃棄物の発生を減らすために、先進国、発展途上国、いずれの
国々においても、絶対に必要な、最小限の資源のみを使って生活し、マイナス面の
フットプリントを減らすことを提案します。このためには、「あなたが何かをする前
に、地球上の他の70億人があなたと同じことをしたらどうなるか考えてみましょう」
という、簡単な習慣付けが役立つと思います。これは一つの行為の70億倍の効果を考
えることです。例えば、リサイクルをしないで無意識にゴミを捨てる前に、環境を配
慮せずに生産された安価なものを無意識に買う前に、歩かずに自動車を使う前に、電
気をつける前に、などです。

人口が多いことが、全体として人類を存続の危機に陥れかねないほどのマイナス効果
を増大させるのと同じ理由で、もし私達全員が自分自身のマイナス効果のフットプリ
ントを減らすことができれば、それは劇的にプラス効果へ変化させることができま
す。キーポイントはいかに人々をそこに気付かせ、行動に導いていくかです。

人々はモノを「買うことが出来る」と思うと、資源やモノを「消費しても良い」、す
なわち「買うことが出来る」イコール「消費しても良い」と錯覚しています。しかし
問題は、ほぼすべての生産物、あるいは抽出された資源には、表に現れないコストが
あるということです。これらのコストは資源や物質の生産にかかわるコストの一部で
すが、値段には反映されていません。典型的な例が児童労働や労働搾取などの社会コ
スト、あらゆる種類の汚染や(森林の)濫伐などの環境コストです。これらのコスト
が価格に含まれれば、価格は間違いなく上がるはずです。私たちの日常生活におい
て、資源を大切に意識して使うことが、消費の決定要因であるべきなのです。ある商
品を購入することは、それを生産する産業をサポートし、生産を続けてほしいという
メッセージではありますが、同時に、責任ある消費は、社会と環境を意識した産業の
みを促進させる原動力となります。重要なのは誰もがこのことに自らコミットしてい
くかどうかであり、そこが分岐点となります。すべての人が同じ意識をもって行動す
れば良い結果につながるでしょう。

私自身は、日常生活で消費を減らす、CO2の発生を減らす、地元の食品を買うなど環
境負荷のマイナス面を減らしていますが、さらにその効果をあげるために不要なこと
は止めるということは非常に極端になる場合もあり、限界があることがわかりまし
た。どんなライフスタイルにも最小限のマイナス面の環境負荷があります。生きるた
めに必要な最小限まで環境負荷を削減するということであれば、私ももっと減らすこ
とが出来るでしょうが、自分にとって大切なこと、好きなことを削減することは出来
ません。誰もが見つけるべき大切なポイントは、自分の好むライフスタイルと、環境
負荷のマイナス面を最小限にするベストバランスを見つけ出すことなのです。 

人間の行為は相互依存の関係にあることと、資源は有限であることを無視してしまう
のが、利己主義の問題点です。自分本位の行動が、無意識のうちにマイナス面のフッ
トプリントを発生させ、富や収入の分配の不均衡をもたらします。私たちは、自分の
社会的な価値観に従って行動していますから、価値観をさらに高めることが、変化へ
の最も力強い推進力になるというのが、私がたとり着いた結論です。消費を増大させ
たり多くのモノを買い集めたりするのではなく、自己のフットプリント(影響を与え
る範囲)のマイナス面を減らし、不公平を是正する努力を促すような新しい社会的な
価値観が求められているのです。 

資源のインプットと私達の行為による廃棄物のアウトプットは、計算しやすく理解し
やすいと思います。大規模な人口増加のインプット/アウトプット問題が、環境面、
持続可能性に悪い影響を及ぼしており、それらに対して私達が何か行動しなければな
らないことは明らかです。私達のライフスタイルに合ったベストバランスを探し、マ
イナス面のフットプリントを減らす、あるいは最小限にする新しい価値観を創りま
しょう、というのが本論のもうひとつの提案です。

私達の行為の結果としてのフットプリントは、それが有形か無形か、積極的か消極的
かにかかわらず、いずれにせよ人類の進歩や持続可能性に影響します。行動する、し
ないにかかわらず、フットプリントに対する自分たちの責任に気付き、それに対して
日々の生活のなかで何が出来るかを探し求めることが大切なのです。      

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<タマヨ・ルイス エフライン・エドアルド Tamayo Ruiz Efrain Eduardo>
2010年フランストロワ工科大学材料工学部卒業。2010年トロワ工科大学大学院光学ナ
ノ工学修士課程修了。2008年(1年間)東北大学交換留学生。2010年(半年間)
(株)東芝の研究開発センターでインターンシップ。2014年東京大学大学院工学系研
究科先端学際工学専攻博士課程修了。現在、(株)日立製作所研究開発グループ社
員。
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【2】新刊紹介:

SGRA特別会員の法政大学王敏教授より編著書をご寄贈いただきましたので、ご紹介し
ます。

■ 国際日本学研究叢書23
「百年後の検証・中国人の日本留学およびその日本観」
 –法政大学清国留学生 法政速成科などの事例を中心に–

日中の交流は遣隋・遣唐使以来、留学の歴史ともいえる。いま相互交流の形で若い日
本人、中国人が学んでいる。中国で学ぶ日本人の留学生は現在17000人。日本で学ぶ
中国人留学生の方が多くて現在8万人という。中国人の日本留学生が増えた背景とし
て歴史的な事情があることはいうまでもない。19世紀末にさかのぼって清国の若者た
ちが日本への留学のレールを敷いた明治期を見逃せない。当時の資料などを検証する
につれ日本側の懸命の努力が浮かび上がってくる。(序論より)

編著者:法政大学国際日本学研究所 編
シリーズ名:国際日本学研究叢書 23
出版社:法政大学国際日本学研究所
出版年:2015年2月26日
ISSN:18838618

詳細は下記リンクをご覧ください。
http://hijas.hosei.ac.jp/tabid/1387/Default.aspx

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● SGRAカレンダー
○第4回SGRAワークショップin蓼科
(2015年7月3日〜5日)
○第49回SGRAフォーラム
「日本研究の新しいパラダイムを求めて」
(2015年7月18日東京)<ご予定ください>
★☆★第3回アジア未来会議:論文募集中!
(2016年9月29日〜10月3日、北九州市)
http://www.aisf.or.jp/AFC/2016/
奨学金・優秀論文賞の対象となる論文(要旨)の投稿締め切りは2015年8月31日で
す。
一般の論文・小論文・ポスター(要旨)の投稿締め切りは2016年2月28日です。
○アジア未来会議は、日本で学んだ人や日本に関心がある人が集い、アジアの未来に
ついて語る<場>を提供します。

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