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[SGRA_Kawaraban] Husel “Trip to Moscow and Kazan (Part 2)”

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SGRAかわらばん565号(2015年4月23日)

【1】エッセイ:フスレ「モスクワ・カザフへの旅(その2)」

【2】催事紹介:連続公開講座「日中の映像文化」ご案内
   北京大学×早稲田大学・立命館大学連携講座
   (2015年5月8日から4回、東京)

【3】第5回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送)
  「日本研究から見た日台交流120年」
  (2015年5月8日、台北)

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【1】SGRAエッセイ#457

■ ボルジギン・フスレ「モスクワ、カザンへの旅(その2)」

モスクワ滞在中の9月16日午前、在ロシア日本大使館を表敬訪問した。今回の調査に
あたって、井出敬二駐クロアチア日本大使、倉井高志駐ロシア日本公使にはたいへん
お世話になった。2011年の調査の時にも、当時駐ロシア日本公使だった井出氏ご夫妻
がいろいろと手配して下さった。ここに記して、感謝を申し上げたい。

16日の午後は、ロシア国立人文大学哲学部准教授のウズマノヴァ・ラリサさんにご案
内いただき、ロシア国立軍事史文書館で資料を調査した。事前に連絡しておいたこと
もあり、また複数の紹介状もあったおかげか、意外にも質問もなく、閲覧証はすぐ発
行された。これと比べると、国立ロシア連邦文書館、ロシア国立社会政治史文書館で
の調査はたいへんだった。ロシア国立社会政治史文書館のある男性の職員は毎日、机
をたたいたり、叫んだりして怒っていた。よほどストレスがたまっていたのか、われ
われ調査にきた者に対してだけではなく、文書館のほかの職員に対しても毎日怒って
いた。しかし、相手がいくら怒っても、私は毎日、あきらめず、しつこく、調査しつ
づけた。実は、3年前の同文書館での調査でも、この職員に怒られていた。また、あ
る日、ロシア国立社会政治史文書館の職員と話が通じなかった時、そこで資料調査を
していた東京外国語大学図書館長の栗原浩英氏が助けて下さった。このように、今回
の調査では多くの方々からご協力いただいた。

後日、K先生に言われた。「文書館の職員、いいや、それだけじゃない。おそらく文
書館を利用しているすべての人は、フスレのことを知っているだろう。ロシア語はあ
まりできないくせに、毎日朝一番早くやって来て、閉館まで、一生懸命、ロシア語の
資料を調べている。そして、一番貴重な資料を手に入れた。本当に不思議だ」。実
は、調査の途中から、K先生は体調不良で、文書館に行けなくなった。その間に、私
は重要な史料をみつけて、文書館の許す範囲で、500ページほどコピーした。

K先生はいつも早寝早起きで、モスクワについてからも(世界のどこに行っても同じ
だと思うが)、同じであった。ある夜、私は遅くまで調査した資料のメモなどを整理
してから布団に入った。その時、隣の部屋で寝ているK先生が恐ろしい大声で叫んで
いるのが聞こえた。慌てて起きて、K先生の部屋に入った。K先生は部屋の鍵もかけず
に寝ていたようである。私が部屋に入ったところ、K先生はすでに起きて、ベッドに
座っていた。「どうしたんですか」と聞いたら、「悪い夢をみた」と。「どんな夢
だったんですか」と聞いたら、「知らない3人の女がやってきて、怖かった」と答え
た。「本当に来たんですか」と冗談で聞いた。「来るわけはないでしょう。まあ。怖
かった」と。その後、K先生に少しワインを飲ませて、寝かせた。私は自分の部屋に
戻って寝ようとしたが、今度は、自分がなかなか眠れなくなった。仕方がなく、起き
あがって、我慢できず、K先生の友人にメールを送って、先生の悪い夢の話をした。
先生の友人からきたのは、「女難の夢を見たんですね。おかしいですね。まったくK
先生らしくないね」という返事だった。

9月19日の夕方、日本センター長の浜野道博氏が、私たちのホテルを訪れ、食事に招
待してくださった。浜野氏はロシア語が堪能で、豊かな知識をもって、国際関係やロ
シア文化、そして日本の対ロ政策などについて、K先生と話し合った。2人の間では、
意気投合のところもあれば、はげしく論争したところもあった。

その日の夜、私とK先生は夜行列車でタタルスタン共和国の首都カザンに行った。カ
ザンはかつて東西貿易の中継地点であって、今はイスラム文化とロシア文化を中心と
して、多文化が共存する街である。一等車だったので、ビールは無料で提供された
が、お茶とコーヒーは有料であった。中年の女性の乗務員は熱心で、お茶とコーヒー
を飲んでいる私たちに、「どうですか?美味しいですか?」と聞き、「美味しいよ」
と返事したら、「それはもちろんよ。私が心をこめて作ったのだから」とにこにこし
ながら、満足そうに言った。

カザンに着いたら、荷物をホテルにあずけて、すぐにカザン連邦大学(カザン大学)
を訪問した。カザン連邦大学は歴史と伝統を誇る名門大学で、レーニンやトルスト
イ、ロバチェフスキー等は同大学の出身であり、モンゴル研究の発生地の一つでもあ
る。昼には、私たちは同大学の国際関係・歴史・東洋学部の教員と会談し、午後には
日本語コースの学生に会って話し合った。夕方はタタルスタン科学アカデミー歴史研
究所を訪問した。

翌日、歴史研究所長が私たちにカザンの歴史や宗教、文化などについて話してくれた
うえに、街の案内もしてくれた。カザン連邦大学国際関係・歴史・東洋学部の女子学
生ポリーナさんとディーナさんも同行した。2人の日本語のレベルは非常に高い。私
たちはモンゴル帝国のジョチ・ウルス時代から、カザン・ハーン国、日本人抑留、今
日の交流までについて話しがつきなかった。K先生の話は、最初は学問的であった
が、途中から下ネタを連発し始めた。その行動と話に驚いた学生の一人が私に「K先
生は本当に日本人ですか」とひそかに聞いたほどであった。「正真正銘の日本人だ
よ」と答えた。

カザンからモスクワに戻って、パヴェレツカヤ駅とトレチャコフスカヤ駅の間に位置
する、昨年オープンしたばかりのホテルに泊まった。さすがに新築のホテルで設備が
よい。また、ロシア国立軍事文書館に地下鉄で1本で行けるし、ロシア国立社会政治
史文書館に行くのもわずか2駅であり、調査には非常に便利で助かった。

日本に戻る前日の夜、浜野氏が私たちに東洋エンジニアリング社モスクワ事務所長の
宮崎哲二氏と菅原アソシエーツ社代表の菅原信夫氏を紹介してくれた。宮崎氏は埼玉
大学の出身で、菅原氏は東京外国語大学ロシア語科の出身である。宮崎氏等はK先生
と私、ラリサさんを食事に招待してくれたが、宴会開始直前に、昭和女子大学のもう
一人の教員とモンゴル科学アカデミー歴史研究所長がサンクトベテルブルクから駆け
込んできた。みんなで食事をしながら、日露関係やウクライナ危機等について話し
合った。

特別な国際関係・社会状況の中、日本はロシアに対して独自な政策をとるべきだと、
私は考えている。ロシアは、日本がかつて深い関心をもった地域であった。しかし、
戦後、北方領土問題があるものの、日本人のロシアに対する関心が次第に薄れてきた
ことを、残念に思う。NHKにロシア語を教えるテレビ番組がある。放送時間は木曜日
の深夜1時からの25分程度で、再放送は金曜日早朝の5時半からの25分間である。こん
な時間にロシア語を勉強するのは、どんな人たちなのかを知りたい。

ウクライナ危機をきっかけに、日露関係は冷やかになったが、こういう時だからこ
そ、日本がイニシアティブをとって、両国の関係を打開すべきではないかと思う。

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<ボルジギン・フスレ Borjigin Husel>
昭和女子大学人間文化学部国際学科准教授。北京大学哲学部卒。1998年来日。2006年
東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了、博士(学術)。昭和女子大学
非常勤講師、東京大学大学院総合文化研究科・日本学術振興会外国人特別研究員をへ
て、現職。主な著書に『中国共産党・国民党の対内モンゴル政策(1945〜49年)——民
族主義運動と国家建設との相克』(風響社、2011年)、共編『ノモンハン事件(ハルハ
河会戦)70周年——2009年ウランバートル国際シンポジウム報告論文集』(風響社、
2010年)、『内モンゴル西部地域民間土地・寺院関係資料集』(風響社、2011年)、
『20世紀におけるモンゴル諸族の歴史と文化——2011年ウランバートル国際シンポジ
ウム報告論文集』(風響社、2012年)、『ハルハ河・ノモンハン戦争と国際関係』(三
元社、2013年)他。
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【2】催事案内:「日中の映像文化」

SGRA会員で北京大学准教授の孫建軍さんより、下記公開講座のご案内をいただきまし
たので、お知らせします。参加申込み、お問い合わせは直接下記へお願いします。

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この度、北京大学×早稲田大学・立命館大学の連携講座「日中の映像文化」を開催し
ます!北京大学、早稲田大学と関西大学の教授が日中の映画文化について、様々な角
度から詳しく分析します。この4回に渡るシリーズを通して21世紀の中国映画の現
状、映画から見る今日の中国社会と文化、映画史など、日本との関わりを踏まえ、皆
様の理解を深めることができます。日中の映像文化に興味がある方、是非ご参加くだ
さい。講座は5月に合計4回を開催します。

◆講座実施詳細:
第一回
実施日時:5月8日(金) 15:00-17:00(質疑応答あり)
開催場所:早稲田キャンパス22号館201室
テーマ :映画から見る—今日の中国社会と文化— 
講演者 :戴 錦華
北京大学電影与文化研究中心主任 北京大学中文系比較文学研究所教授
    (日中逐次通訳 渋谷裕子)

第二回
実施日時:5月15日(金)  15:00-17:00(質疑応答あり)
開催場所:早稲田キャンパス1号館301室
テーマ :21世紀の中国映画芸術状況と文化形勢の紹介 
講演者 :陳 旭光 北京大学芸術学院教授
    (日中逐次通訳 渋谷裕子)

第三回
実施日時:5月22日(金)  15:00-17:00(質疑応答あり)
開催場所:早稲田キャンパス1号館301室
テーマ :「誰も知らない私の悩み——小津安二郎と女たちの戦後」 
講演者 :藤井仁子(早稲田大学文学学術院准教授)

第四回
実施日時:5月29日(金)  15:00-17:00(質疑応答あり)
開催場所:早稲田キャンパス1号館301室
テーマ :「映画館ではお静かに!」—上海における映画鑑賞の誕生— 
講演者 :菅原慶乃(関西大学文学部総合人文学科教授)

◆申込方法:
事前に参加者を把握するため、5月5日(火)までにご氏名、ご所属、受講希望日をメー
ルに記載の上、早稲田大学孔子学院事務所までお知らせください。

◆参加費:無料

◆詳細は下記リンクをご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/info/PekingWasedaLecture.pdf

◆お問合せ先・お申込先:
機関名:早稲田大学孔子学院
E-mail:wci@list.waseda.jp
Tel:03-3204-8244

【3】第5 回日台アジア未来フォーラムへのお誘い(再送)

下記の通り第5回日台アジア未来フォーラムを開催します。参加ご希望の方は、事前
にお名前・ご所属・緊急連絡先をSGRA事務局宛ご連絡ください。

■テーマ:「日本研究から見た日台研究120年」

日時:2015年5月8日(金)午前9時00分〜午後6時30分

会場:国立台湾大学文学院演講庁20番教室/会議室

お申込み・問合せ:SGRA事務局
電話:03-3943-7612
Email:sgra-office@aisf.or.jp

●詳細は下記リンクよりご覧ください。
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/5120.php

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● SGRAカレンダー
○第5回日台アジア未来フォーラム(2015年5月8日台北)
「日本研究から見た日台交流120年」
http://www.aisf.or.jp/sgra/active/schedule/5120.php
○第4回SGRAワークショップin蓼科
(2015年7月3日〜5日)
○第49回SGRAフォーラム
「日本研究の新しいパラダイム」
(2015年7月18日東京)<ご予定ください>

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● 配信されたエッセイへのご質問やご意見は、SGRA事務局にお送りください。事務
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