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[SGRA_Kawaraban] Kim Woonghee “Nikkan Asia Future Forum #14 Report”

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SGRAかわらばん558号(2015年3月04日)

【1】金 雄熙「フォーラム『アジア経済のダイナミズム』報告」

【2】情報提供:2014年留学生数(日本学生支援機構)
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【1】SGRA催事報告

■ 金 雄熙「第14回日韓アジア未来フォーラム『アジア経済のダイナミズム』報告」

2015年2月7日(土)、国立オリンピック記念青少年総合センターで第14回日韓アジア
未来フォーラム(第48回SGRAフォーラム)が開催された。今回は「アジア経済のダイ
ナミズム−物流を中心に」というテーマだったが、2013年度から5年間のプロジェク
トの第2年目として、日韓の交通・物流システムにおける先駆的な経験が、アジアの
持続可能な成長と域内協力にどのように貢献できるのかという問題意識に立ち、アジ
ア地域で物流ネットワークが形成されつつある実態を探り出し、その意味合いを社会
的にアピールすることを目的とした。

フォーラムでは、未来人力研究院理事長の李鎮奎(リ・ジンギュ)教授による開会の
挨拶に続き、基調講演と2人の研究者による発表が行われた。基調講演では、「ミス
ター円」と呼ばれた榊原英資(さかきばら・えいすけ)さんが、中国やインドが19世
紀初めまでは世界の2大経済大国であったことを考えると、昨今の高い経済成長は
「リオリエント」現象とも呼ばれるべきものであると力説した。また、インドネシア
など東南アジア諸国も高い成長を続けており、次第に成長センターは西に移っている
とした。おそらく20年後にはインドの成長率が中国のそれを越え、2050年のGDPでは
中国がアメリカを抜いてナンバーワン、インドはナンバーツーに近いナンバースリー
になると予測されているとした。ちょうど15年前(渥美国際交流財団設立5周年)に
榊原さんがこの同じ場所で中国の浮上を熱く語ったことがあったのだが、いまや「G
2」論が話題になるようになった。これから15年後インドがグローバル経済という大
舞台でどういう役を演じるようになるのか、またどの国・地域が新しく浮上し、東ア
ジア共同体の成功への期待を膨らませるか興味はつきない。

安秉民(アン・ビョンミン)韓国交通研究院ユーラシア・北朝鮮インフラセンター所
長は、北東アジアにおいて活発に行われている国境を越えた多国間開発事業、特に北
朝鮮、中国、ロシア、モンゴルなどの国々による交通・物流インフラなどをめぐる新
しい協力方式を中心に、北東アジアの交通・物流協力の実状と今後の展望について発
表した。

ド・マン・ホーン桜美林大学経済経営学系准教授は、GMS(大メコン圏)経済協力プ
ログラムの中で、最も積極的に進められてきたプロジェクトである輸送インフラ整備
を中心に、同地域での物流ネットワークの現状を分析し、ソフト(制度など)とハー
ド(インフラシステム)の両面に関わる課題について発表した。

休憩を挟んで、ラウンドテーブルでは、まず第48回SGRAフォーラムの仕掛け人でもあ
る北陸大学未来創造学部の李鋼哲(り・こうてつ)教授が「アジアハイウェイの現状
と課題について」報告を行った。討論のたたき台としてのミニ報告を予定していた
が、「アジア人」として長年にかけての「ロマンチックな」夢が熱く語られ、会場を
大いに盛り上げた。その後、畑村洋太郎(はたむら・ようたろう)東京大学名誉教
授、沼田貞昭(ぬまた・さだあき)鹿島建設顧問、韓国未来人力研究院の徐載鎭
(ソ・ジェジン)院長、滋賀県立大学のブレンサインさん、SMBC日興証券のナポ
レオンさんらによるコメントが続いた。著しく成長しつつある物流ネットワークの域
内協力をキーとし、アジア経済のダイナミズムについてそれぞれの立場や専門領域を
踏まえた、そして夢が込められた素晴らしい議論であった。

今回は渥美財団20周年祝賀会と日韓アジア未来フォーラムが立て続けに開催され、準
備が本当に大変だったに違いないが、スタッフの皆さんは勿論のこと、家族的なラ
クーン・ネットワークに支えられ、成功裏に終えることができ、改めて顔の見える
ネットワークのパワーを実感した。交通の便が悪かったにもかかわらず、100名を超
える参加者が集まるというすごい反響は、これからのフォーラム運営により一層の活
力とやりがいを与えてくれた。なお、第2回アジア未来会議に続き、大学や研究機関
の研究者のみならず若い学生たちにも参加いただき、次世代への期待をフォーラム運
営の在り方につなげるものとなった。慌ただしい日程のなか、高麗大学の学生たちを
青少年総合センターまで案内してくれた今西勇人さん夫妻にこの場を借りて感謝した
い。残念ながら、公式乾杯酒の「春鹿」、そして入り混じったラブショットはみられ
なかったものの、日本ならではの節度ある良いフォーラムであったと思う。

前回のフォーラム報告でも言及したが、これから「ポスト成長時代における日韓の課
題と東アジア地域協力」について、実りのある日韓アジア未来フォーラムを進めてい
くためには、総論的な検討にとどまらず、今回のように各論において掘り下げた検討
を重ねていかなければならない。次回のフォーラムの開催に当たっても、このような
点に重点を置きつつ、着実に進めていきたい。最後に第14回のフォーラムが成功裏に
終わるようご支援を惜しまなかった今西代表と李先生、そしてスタッフの皆さんに感
謝の意を表したい。李先生、今西さん、そしてラクーンのみなさん、日韓アジア未来
フォーラムも20周年祝賀会やりましょう!

フォーラムの写真は下記リンクからご覧いただけます。
http://goo.gl/E3gsBQ

フィードバック集計は下記リンクよりご覧いただけます。
http://www.aisf.or.jp/sgra/info/nikkan14feedback.pdf

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<金雄煕(キム・ウンヒ)☆ Kim Woonghee>
89年ソウル大学外交学科卒業。94年筑波大学大学院国際政治経済学研究科修士、98年
博士。博士論文「同意調達の浸透性ネットワークとしての政府諮問機関に関する研
究」。99年より韓国電子通信研究員専任研究員。00年より韓国仁荷大学国際通商学部
専任講師、06年より副教授、11年より教授。SGRA研究員。代表著作に、『東アジアに
おける政策の移転と拡散』共著、社会評論、2012;『現代日本政治の理解』共著、韓
国放送通信大学出版部、2013;「新しい東アジア物流ルート開発のための日本の国家
戦略」『日本研究論叢』第34号、2011。最近は国際開発協力に興味をもっており、東
アジアにおいて日韓が協力していかに国際公共財を提供するかについて研究を進めて
いる。
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【2】情報提供

日本学生支援機構(JASSO)では、例年、留学生施策に関する基礎資料を得ることを
目的として、留学生に関する各種調査を実施していますが、2014年度の調査結果が公
表されましたのでお知らせします。

●平成26年度外国人留学生在籍状況調査等について(留学生受入れの概況)
http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_g.html

各調査の結果ページは以下になります。
●平成26年度外国人留学生在籍状況調査結果
http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14.html
●平成25年度外国人留学生年間短期受入れ状況調査結果
http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_c.html
●平成25年度短期教育プログラムによる外国人学生受入れ状況調査結果
http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_p.html
●平成25年度協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果
http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data14_s.html

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● SGRAカレンダー
○第5回日台アジア未来フォーラム
「日本研究から見た日台交流120年」
(2015年5月8日台北)<ご予定ください>
○第4回SGRAワークショップin蓼科
(2015年7月3日〜5日蓼科)
○第49回SGRAフォーラム
「日本研究の新しいパラダイム」
(2015年7月18日東京)<ご予定ください>

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