SGRAメールマガジン バックナンバー

[SGRA_Kawaraban] Xie Zhihai “Blind Spots in Japan: Cold Residences in Winter”

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SGRAかわらばん556号(2015年2月18日)

【1】エッセイ:謝志海「日本の盲点:冬の寒い住居」

【2】催事案内:「東アジアにおける漢字漢語の創出と共有」
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【1】SGRAエッセイ#449

■ 謝 志海「日本の盲点: 冬の寒い住居」

冬に日本へ一時帰国する海外在住の日本人の友人たちは、皆口を揃えて言う。「日本
の冬は寒くて、過ごしにくい」と。彼らはみんな日本より寒い国や地域に住んでいる
というのに、日本の家(主に彼らの実家)が寒いというのだ。私が勝手に抱いていたイ
メージは、日本の冬の「こたつでみかん」を楽しみにと思っていたのに、現実は違っ
ていた。彼らが暮らしている国々は日本より冬が厳しいが、家中が暖かく保たれてい
るそうで、日本の住居のように、暖房をつけた暖かい部屋を一歩出たら寒い廊下、そ
して寒いトイレに行くということが無いそうだ。思えば私が長年暮らしていた北京の
冬は、日本より寒いが室内はどこも暑い程だった。家電製品は日々進化し、便利な生
活を整えるため次から次へと新しい技術が産み出される日本で、何故日本の家は寒い
ままなのだろう。

ニューヨークから一時帰国してきた日本人の友人が教えてくれたのだが、ニューヨー
ク州の法律では、冬季(10月から5月)に外気温が10度を下回ったら、アパートの大家
は室温を20度にしなければならないと定められているそうだ。しかもこの暖房費は家
賃に含まれているとのこと。セントラルヒーティングで家中に暖房がいきわたり、家
に帰れば家の中がすでに暖かいのはいいよと絶賛していた。このようなことが法律で
定められていることに驚き、ニューヨークの近隣の寒い地域についても調べたら、米
国東海岸の他の州はもちろん、カナダのトロントや、英国も同様に、住宅の最低室温
に関して規制があった。そしてこれは健康への配慮からなる法規制であった。日本に
は住宅に対してこのような規制は無い。

インフラが整い、全てが完璧のような日本に落とし穴を見つけた気がした。日本のテ
レビでは毎日のように健康についての番組が放映され、現に国民の一人ひとりが健康
への関心が高い。しかし日本の家の中は寒いままだ。そして冬のニュースでよく耳に
するのが、高齢者のお風呂場、脱衣所で心臓発作による死。熱い湯船に浸かり、外気
と同じくらい寒い脱衣所に出る。この急激な温度変化で体調が急変することを「ヒー
トショック」と言うそうだ。厚生労働省の報告書によると、入浴時の事故死だけで、
年間1万9千人以上と推計されるそうだ。

このような事故死を防ぐため、日本の冬の住居環境を見直すべきだろう。欧米のよう
に住宅の法規制として、断熱化を進めるべきではないだろうか。光熱費が高い日本で
は、家そのものの工夫が必要だろう。察するに、高齢の日本人は我慢強く、少しくら
い寒くても我慢してしまうことが多い。暖房器具があっても使われなければ意味がな
いし、何よりも住居内での温度差が危険なのだ。家中の室温を一定に保つことが重要
だ。北海道の家は冬も暖かいので、ヒートショックも少ないそうだ。身近な所から冬
を過ごし易い住環境を取り込み、改善すべきだ。それは日本の高齢者を守り、人口減
を緩やかにする。健康への関心が高い、先進国の日本人が、このように未然に防げそ
うな事故で毎冬あっけなく命を失うのは大変惜しい。

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<謝 志海(しゃ しかい)Xie Zhihai>
共愛学園前橋国際大学専任講師。北京大学と早稲田大学のダブル・ディグリープログ
ラムで2007年10月来日。2010年9月に早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士後期
課程単位取得退学、2011年7月に北京大学の博士号(国際関係論)取得。日本国際交
流基金研究フェロー、アジア開発銀行研究所リサーチ・アソシエイトを経て、2013年
4月より現職。ジャパンタイムズ、朝日新聞AJWフォーラムにも論説が掲載されてい
る。
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【2】催事案内

SGRA会員の孫建軍さんからシンポジウムのご案内をいただきましたのでご紹介しま
す。

■ 国際シンポジウム「東アジアにおける漢字漢語の創出と共有」

共催:漢字文化圏近代語研究会、早稲田大学孔子学院
日時:2015年3月21日〜22日(土・日)
場所:早稲田大学11号館901教室
(入場無料、一般来聴歓迎)

プログラムは下記リンクよりご覧ください。
http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shkky/2015_03_21program.pdf

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● SGRAカレンダー
○第5回日台アジア未来フォーラム
「日本研究から見た日台交流120年」
(2015年5月8日台北)<ご予定ください>
○第4回SGRAワークショップin蓼科
(2015年7月3日〜5日蓼科)
○第49回SGRAフォーラム
「日本研究の新しいパラダイム」
(2015年7月18日東京)<ご予定ください>

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